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コンピューターゲームには、「旅ゲー」というジャンル がある。 名前のとおり旅をテーマにしたゲームの総称である。 代表的なものには、レッドカンパニーの「北へ」、「北へDD」、fog の「みちのく秘湯恋物語」、「風雨来記(ふうらいき)」などがある。 内容は、若者が何かの精神的転機に際して旅をし、その旅を通じて知り合っ た異性との交流により成長してゆくという、判で押したようなものがほとん どだ。 早く言えば萌えゲーのツーリスト版というところ。 旅行先は北海道が圧倒的に多いが、これはやはり北海道の大陸的大自然と、 そのエキゾティシズムによる魅力が強いからだろう。 fogの「風雨来記」はその旅ゲーの典型的なものの ひとつだ。 駆け出しのルポライター兼カメラマンの主人公が、バイクに 乗って北海道へ旅立つ。 目的は北海道の風物を新しい視点から見直すルポを書くことともそれによっ てフォトルポルタージュのコンテストに参加することだ。 旅の過程で主人公は様々な美少女と知り合い、愛に落ちてゆくが、そのス トーリーは正にご都合主義の日本フル代表みたいなもので、 Xファイルも裸足で逃げ出すというしろもの。 それでも「北へ」よりは大分ましで、「北へ」のストーリーは ご都合主義を通り越してSFに近い。 「北へ」の主題歌の 「カニが一杯〜 ホタテも一杯〜」というくだりを聞いた北海道の人は 大層怒ったそうだ。(^^; おまけに「北へ」の背景は、ろくにフィルターもかけない撮ったままの 生の実写写真。 それに大槍蘆人氏(NOCCHI氏)のあのめるへんちぃい くなCGがデンとのっているのだから、その非現実感はこの世のも のとも思えないほどである。 シュールレアリスムというのは、正にこのことを言うのだろう。 商業 ゲームをシュールレアリスムで表現するとは、いやあ、王子様は やはりくーるだにぃ。 このように旅ゲーはスタイルとしてはアドベンチャーゲームの範疇に入る ものが大半だが、アドベンチャーゲームとして見ればどれも駄作に近く、 「北へ」のように愚作に近いものさえある。 しかし、旅ゲーの魅力はアドベンチャーゲームの魅力と完全に重なって いるわけではない。 アドベンチャーゲームとしては駄作或いは愚作で あっても、旅ゲーとして見れば秀作傑作というものも ある。 「風雨来記」はその典型である。 そのストーリーを語る勇気は私には ない。 臭いセリフ、不自然な設定、そしてダサイお説教。 そんなも のをわざわざ聞きたいという方もいないと思われるので、お話し関係は 一切すっ飛ばす。 「風雨来記」の魅力は、その綿密な取材とそれによる背景の風物CGであ る。 道北と道東を中心に、 ゲームで使用される全ての行程の写真を撮影し、背景CGとし ている。 その数なんと3千枚!。 ガイドブックにさえ載っ ていないような、 珍しいスポットにも焦点を当てているのは凄いことである。 又、「北へ」と異なり、こちらは原画家が典型的な劇画調の岸上大策氏な ので、実写にCGをのせてもさほどの違和感は感じない。 ゲーム中主人公(=プレーヤー)はバイクを駆って北の大地を駆けめぐる。 その全ての行程で使用される背景CGが素晴らしい。 背景CGはレストラン などの飲食遊興施設はほとんどなく、大半が北海道の雄大な風物である。 その風物も移動中の道路の背景が大半で、これがまたいい。 東京など 本州の人間にはまず見ることができない遙かな地平線と、ゆった りとうねる丘陵。 そしてどこまでも拡がる深い緑の平野・・・ どれも観光地とは全く無縁の、ただの道路沿いの風景だ。 なのにそれが 実に新鮮で素晴らしい。 私にとっては阿寒や摩周などの観光地よりも遙 かに好もしかった。 東京の人間は、ただ地平線が見えるだけで感動して しまうのである。(笑) おまけに時間の経過と共に背景CGを少しずつ拡大して、バイクで移動して いる感じを出すなど、中々芸が細かいところもある。 随分前のことだが、私も北海道の一人旅を二度程したことがある。 最初は高校生の頃、チャリンコにキャンプ道具を満載し、一週間ほど 道南を旅した。 二度目はもう30年以上も前のことだが、車で2週間ほどかけて道東と道北 を回った。 どの旅も、それは夢のような旅であった。 なにもかも美し くなにもかも懐かしい。 そんな旅であった。 その楽しくも甘酸っぱい思い出が、このゲームをプレイしていると脳裏に 蘇ってくる。 ゲームの中で遙かな地平線に向かってバイクを駆っている と、同じように地平線に向かって車を駆っていた自分と重なり、鼻の奥に つーんと来るものを感じるのである。 それは二度と帰り来ぬ青春への愛惜の情か、はたまた現在の自分に対する 哀惜の念か・・・ |