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「遠くへ行きたい」という歌がある。 故中村八大 さんと永六輔さんの 名曲である。 初出はNHKの「夢で逢いましょう」ではなかったか。 この六八コンビ(これに坂本九を加えて六八九という言葉も あった)は 昭和20年代末から40年代にかけて、数々の名曲を作っているが、その中でも この「遠くへ行きたい」はずば抜けた名作だと思う。 甘く切ない旅と愛への憧れが溢れる、ノスタルジーの権化ともいうべき 名曲である。 某民放の旅番組のタイトルにもなっているので、そちら でご存じの方もあるかも知れない。 もし、この曲を未だ聞いていない 方があるならば、是非とも一度お聞きになっていただきたい。 フランクの弟子であるアンリ・デュパルクに、ボードレールの詩による 「旅へのいざない」という歌曲がある。 勿論 「旅へのいざない」 とこの「遠くへ行きたい」とは、曲想も内容も全く異なるが、共通するのは 「あこがれ」と「せつなさ」という、音楽によって呼び覚まされる人間の 感情の表出だろう。 知らない街を歩き、知らない海を眺め、そして愛する人とめぐり逢う。 今自分が存在するこの現実ではなく、誰も知らないどこか遠くへ行けば、 そのようなめぐり逢いが在るのかも知れない。 愛と信頼と幸福が、 いつの日かどこかの土地で得られるのかも知れない。 それは今現在のこの現実の世界では決してない。 しかし、いつの日か ここではない世界でそれは得られるだろう。 現実の世界では決して得られぬものへの、その憧れとその切なさが、 甘美でノスタルジックな旋律となって心を撃つ。 やはりこれは中村八大さん畢生の名曲である。 中村八大さんは戦後の日本のポップス系作曲家の中でも、最高の才能を 持った作曲家であったと今でも信じているが、残念ながらまだこれから という年齢で逝ってしまった。 九ちゃんも飛行機事故で既にこの世の人 でない。 六八九トリオの中で残っているのは永六輔のみ。 ああ・・・ |