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新人行政書士のための法律&業務知識
 
情報誌シリーズ掲載<債権回収>副題=頭脳的な債権回収方法(第9回)より
経済情報誌シリーズ掲載 『<債権回収>副題=頭脳的な債権回収方法』 より
 
4.直接弁済以外のその他の回収方法
 
(経済情報誌 平成14年11月12日 第1165号よりつづき・・・)
 
仮登記担保契約がある場合の代物弁済予約による債権回収
 
 金銭消費貸借や商品代金など債務を担保する手段としては、通常は根抵当権や抵当権、あるいは質権とかの方法がとられているが、これらの方法では、イザ、債権者が債権の回収につき担保権の実行をしようという時においては、一々裁判所に対して担保権の実行の申立をしなければならない。

 このように抵当権などの実行をなすには、そのための競売手続に関して面倒な手続を経なければならないばかりか、その手続の煩わしいことに加え、相当長期間を要することになる。競売が終わるまでは、通常は早くても2〜3ヶ月はかかり、しかも、担保権の目的である不動産が時価よりも相当低くなければ競落する者がいない(売れない)というのが実状である。さらには競売ブローカーなどの妨害にあったりすると最低競売価格以上での競落が見込めない時などは競売が一時停止されることさえある。そこで、考えられるのが、もっと簡単な債権の回収方法がないかということになるのだが、抵当権実行よりも簡単な債権回収の一方法として利用すべきものとして「仮登記担保契約」がある。

仮登記担保契約とは?

 仮登記担保契約とは、金銭債務を担保するため、「代物弁済の予約」、「停止条件付代物弁済契約」、「その他の契約
(注1)」により、その債務につき債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的とするものであるが、もっと噛み砕いて、解り易くいうと、金銭消費貸借や商取引における債権につき抵当権設定登記もしくは抵当権設定登録と合わせ債務履行に代え、もしくは債務不履行等、一定の条件を満たすに至った場合は、その「抵当不動産の所有権を債権者に移転するものとする」という、つまり、債務履行に代え、もしくは債務不履行等の場合においては、債務者等所有の不動産(土地又は建物及びその土地又は建物に対する賃借権、地上権等)又はその他の権利(注2)につき、その所有権を移転することで債務の履行に代えるという予約を債権者と債務者等の間でなし、債権者においては、その予約につき所有権移転請求権の仮登記もしくは仮登録を得ることである。

(注1)「その他の契約」とは、売買、贈与、その他の有償契約をいう。したがって、契約の内容が金銭債務の不履行につき担保に供している債務者の所有権が債権者に移転するという内容であれば、どのような有償契約でも良い。

(注2)「その他の権利」とは仮登記担保契約による権利取得の目的と成り得る物または権利であり、かつ「仮登記もしくは仮登録のできるもの(できないものもある。例:自動車は所有権移転と抵当権設定のみ)」であり、船舶、航空機、ダム、工場財団、鉱業財団、漁業財団、港湾運送事業財団、道路交通事業財団、自動車交通事業財団、観光施設財団、鉄道財団、軌道財団、運河財団、農業用動産、建設機械、自動車、著作権、著作隣接権、出版権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回線配置利用権、育成者権、鉱業権、租鉱権、砂鉱権、特定鉱業権、漁業権、入漁権等がある。い。

 これら以外の権利や物(仮登記又は仮登録できないもの)でも仮登記担保契約自体は有効(注3)であるが、第三者に対する対抗力がないことでは優先弁済請求権が認められないことになる。(後述)
(法第13条)

 なお、仮登記担保契約の目的である権利をこれら登記・登録のできるものに限定している根拠としては、国税徴収法第23条(担保のための仮登記)及び地方税法第14条の17(同様規定)を参照して下さい。

(注3)契約自体は有効であるというのは、契約をしただけで、仮登記を得ていない時は、債権者は単に所有権を取得するだけという意味であり、この場合、債務不履行があった際は、債権者は債務者等に対し、後述の「仮登記担保契約による権利の実行及び所有権の移転の制限」の規定に従い、精算金の見積額等を通知するまでもなく、また、清算期間の二ヶ月が経過するまでもなく、当然に所有権が債権者に移転するということであるも、この場合は、単に所有権が移転するというだけなので、他の債権者に優先して弁済請求権が認められるということにはならないのである。つまり、単に所有権が移転するだけでは、他に債権者がいる場合においては、その物や権利を差し押さえられ、競売されるなどの際には弁済請求につき優先権もないということである。

【参考までに】仮登記担保の歴史及び法制定の背景・経緯について

 仮登記担保は、古くは民法典制定(明治29年4月27日・法律第89号)当時から広く一般で活用されていたものであり、
仮登記担保契約に関する法律(昭和54年4月1日施行)が制定される以前は、所謂民法上の「代物弁済」または「その予約」のことにほかならず、主に高利貸しが暴利を貪るために利用していたこともあり、例えば100万円の債務につき150万、200万の土地でも代物弁済による所有権移転が罷り通っていた時期があり、それが次第にエスカレート、代物弁済により債権額の約6倍や8倍もの土地を取られた事案につき裁判所は、このような暴利行為は公序良俗違反として無効であると判示するようになり(最高裁昭和27年11月20日第一小法廷判決・最高裁昭和32年2月15日第二小法廷判決)、さらには、最高裁の昭和42年11月16日の第一小法廷判決では、この種の「仮登記」は本来の代物弁済とは異なり、その目的は金銭債権を担保するために仮登記を利用しているにすぎないのだから、100万円の債権で300万円の不動産を取るような時には、差額の200万円を債務者に返還すべきだという判断をするようになり、その後、最高裁大法廷においては、従前の判例理論を集約、仮登記担保に関する判例法理を事細かく整理、詳述するに至ったのです。(昭和49年10月23日民集28巻7号1473頁)これを受け政府は法制審議会民法部会財産法小委員会の審議を経て、「金銭債権を担保するためにされた代物弁済の予約」を「本来型の代物弁済の予約」と区別して取り扱うこととし、仮登記担保契約に関する法律案要綱を決定後、閣議決定を経て法案を国会に提出、審議の結果、現行の「仮登記担保契約に関する法律」が制定されたのである。

担保仮登記契約では、その被担保債権を特定しておくことが重要である。

 仮登記担保においては、その債権は仮登記担保契約の時に特定されるものであるかぎり、取引時においては不特定の債権でも良く、金銭債権として特定できさえすれば良い。この点については、仮登記担保契約自体の有効性においては、根抵当権のように「一定の取引範囲内」という制限もなく、取引においては所謂包括根抵当のような場合でも良い。

 仮登記担保契約にあっては、もともと債権者と債務者との間に生ずる債権であるかぎりにおいては、金銭債権でありさえすれば、どのような債権でも良く、そのような契約も根担保仮登記契約として契約自体は有効(前述の注3を参照)なのである。この点、根抵当権の場合は、「一定の取引範囲内」という限定された債権については、その範囲内の不特定債権を被担保債権とすることができるが、所謂「包括根抵当権」は判例により無効とされているのである。

 そこで問題となるのが、仮登記担保権者と根抵当権者や抵当権者等、仮登記担保権者と他の担保権者等の間における弁済請求権の優劣であるが、仮登記担保契約は包括根抵当権とは異なり、根担保仮登記自体有効であることはもとより、その仮登記についても如何なる場合でも根抵当権者や抵当権者等に対し、優先弁済請求権ありということになると、仮登記担保権者と根抵当権者や抵当権者等の間における公平が損なわれるばかりか、根抵当権や抵当権の規定そのものの存在意義が失われることになる。

 したがって、仮登記担保契約に関する法律では、このような仮登記担保契約に基づく根担保仮登記は、強制競売においては無効とすることで、根抵当権や抵当権等他の担保権者との公平を図っているのである。ちなみに、強制競売においては、根担保仮登記をしている仮登記担保権者は一般債権者と同様な立場での配当に預かるしかないのである。(法第14条)

仮登記担保契約における被担保債権は「金銭債務」に限る。

  登記担保契約における被担保債権は、金銭債務に限られ、抵当権のように「特定物の引渡」につき請求できるというような債権を対象とすることはできないものとされている点で抵当権とは異なる。

 ちなみに、抵当権の場合は、物の引渡を求める債権(例:牛一頭の引き渡しを求めるという債権)つまり金銭債務以外の債権であっても、抵当権の被担保債権になりうるものとして、そのため債権額を登記簿に記載させるようにしている(参照:登記法第120条・同法第51条2項)のであるが、

 仮登記担保契約による仮登記や仮登録の場合は、その債権額を登記や登録により公示する必要がない点、登記、登録上は債権の種類が金銭なのか、金銭以外なのか区別ができないような債権については、優先弁済請求権が認められていない。(法第1条)

仮登記担保契約による権利の実行及び所有権の移転の制限

 仮登記担保による権利の実行は根抵当権や抵当権の実行よりは、簡便である。

 その実行は「代物弁済の予約」においては、「予約完結の意思表示」をなした日、「停止条件付代物弁済契約」においては、「停止条件が成就」した日、「その他の契約」においては、「所有権を移転するものとされている日」以後に、債権者が精算金(債権額よりも土地等の価格が高い場合)の見積額(土地等の見積価額並びにその時の債権及び債務者等が負担すべき費用で債権者が代つて負担したもの
(注4)、以下精算金の見積額という)を通知し、精算金がないと認めるときは、その旨を債務者等(債務者又は第三者)に通知し、かつ、その通知が債務者等に到達した日から二ヶ月を経過し、精算金が支払われることで所有権移転の効力が生ずるものとされており(法第2条及び第3条2項)、この点が単なる民法上の「代物弁済の予約(注5)」と異なる。

(注4)債務者等が負担すべき費用で債権者が代つて負担したものとは、清算金の見積額を算定するに当っては、先ずは土地又は建物もしくは動産その他の権利の見積価格、債権額としての元本及び利息や遅延損害金(注4の2)について計算し、その他の額につき債権者が負担したものでも本来は債務者が負担すべきものは、その額を含め計算し、精算金を算出するのであるが、その他の額としては、具体的には次のような費用が揚げられる。

○ 土地や建物等不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定報酬につき債権者が債務者の了解を得て鑑定の依頼をし、その結果、債権者が不動産鑑定士に報酬を支払った場合は、その額は債務者が支弁すべきである。

 ちなみに精算金について争いがあり、その結果として訴訟になった場合でも通常、裁判所は不動産鑑定士などを鑑定人に選任し、その鑑定人の鑑定に従い判断することになり、その費用は訴訟の場合においても債務弁済の費用として判断されることから債務者が支払うことになる。(民法第485条本文)

○ 当事者が互いに協力しあって不動産屋や税務署などで土地の路線価や建物の販売市場価格などを調査するに当り、債権者が費やした日当や旅費又は通信費等はその妥当な範囲の額につき債権者が支弁すべきである。(同条本文)

(注4の2)利息その他の定期金を請求する権利を有する場合又は債務不履行により生じた遅延損害金等を請求する場合は、最後の二年分についてのみ、権利が認められる。(法第13条2項及び3項)

(注5)民法上の「代物弁済の予約」においては、債権者が「予約完結の意思表示」をすれば、直ちにその土地等の所有権が債権者に移転するが、仮登記担保契約の場合は、債務者等所有の土地等は、あくまでも債権の担保としての位置付けであり、この点、仮登記担保に関する法律は、抵当権の規定が「民法の規定の特則」であるのに対し、その「民法の規定の特則」中の「特則」、すなわち仮登記担保に関する法律は、民法の「特則」中の「特則」を定めるものと言える。

債権者が精算金を支払わない時は?(債務者の受戻権)

 債権者が清算期間後においても精算金を支払わない時は、第三者が所有権を取得していない場合で、かつ、清算期間終了後5年間にかぎり、債務者は債権等の額(債権が消滅しなかったものとすれば、債務者が支払うべき債権等の額)に相当する金銭を債権者に提供
(注6)すれば、土地等の所有権の受戻しを請求することができるものとされている。

(注6)精算金の支払と土地等の引渡し及び所有権移転登記等を求める権利は同時履行の関係に立ち、民法第533条(同時履行の抗弁権)の規定が準用されている。(法第3条2項)
 したがって、債権者が正当に見積もった精算金の支払債務を弁済するまでは、債務者は、自分が負担している債務、つまり借りた金に利息と遅延損害金、さらに債務者の負担すべき費用(法第2条で定める精算金の見積額通知の期間が経過した際の土地等の見積価額並びにその時の債権及び債務者等が負担すべき費用で債権者が代わつて負担したもの)があれば、その費用をつけて債権者に提供すれば、その土地等の受戻しをすることができるのである。(法第11条)

仮登記担保権者と後順位の抵当権者等の関係

 清算期間(債権者が見積額を債務者等に通知が到達後、二ヶ月が経過するまでの期間)内に仮登記担保権者よりも後順位の仮登記担保権又は先取特権、質権、抵当権等を有する者は、精算金請求権を物上代位によって差し押さえると、登記の順位にしたがって優先弁済を受けることになる。(法第4条1項)

 この場合、後順位の仮登記担保権者又は抵当権者等は、先順位の仮登記担保権者が債務者等に清算金の払渡しを行なう前にその精算金の差押えをしなければならない。(法第4条1項及び同条2項・3項)

 これに対し、仮登記担保権者である債権者は、清算期間中は債務者に清算金を支払うなどの処分ができないのであるが、精算金の見積額の通知が債務者等に到達した時点において、仮登記担保の仮登記以後に登記または仮登記がなされている先取特権、質権もしくは抵当権を有する者又は後順位の仮登記担保権を有する者に対し、債務者等に精算金につき通知した事項及びその通知が到達した日を通知し、清算期間が経過した時点で精算金を供託所に供託することで、その限度において精算金支払の債務を免れることができる。この場合、債務者等の供託金の還付請求権につき、差押え又は仮差押えの執行がされたものとみなされる。(法第5条・6条・7条)

【債務者が破産した場合は?】

 「予約完結の意思表示をなした日」または「停止条件が成就した日」もしくは「所有権を移転するものとされている日」以前に債務者が破産した場合

 債務者が予約完結の意思表示をなす以前に破産した場合においては、債権者は破産管財人に対し、予約完結の意思表示をなすことができ、それで担保の目的物につき所有権を取得することができる。

 この場合、当然ながら、精算金がある場合は、その精算金は管財人に支払うことになる。また、管財人が破産法第203条の規定により仮登記のある不動産を競売する時には、仮登記担保権者は、別除権者として扱われる。つまり、債務者が破産した場合においては、債権者は破産手続によることなく、その権利を行使することができるのである。
(法第19条1項及び同条2項)

 なお、債務者の破産につき民亊再生手続もしくは会社更生手続が開始される場合には、仮登記担保権者は、民亊再生手続にあっては、民亊再生保護者となり、会社更生手続にあっては、会社更生保護者となり、その登記、登録の順位に従って抵当権者等他の担保権者と同様な処遇が受けられる。
(法第19条3項)

 さらには、国税滞納処分による差押がある場合においても、抵当権者等他の担保権者と同様な処遇が受けられるのである。
(附則第4条による国税徴収法第23条及び同法第129条4項)

仮登記担保権も抵当権と同様、担保に供したり、相続や売買、贈与等の対象として処分することができる。

 債権者が死亡した場合には、債権者の相続人が仮登記担保権を承継する。また、債権者は仮登記担保権を売買や贈与により譲渡することができ、これら仮登記担保権の処分については、仮登記担保に関する法律では特に規定がなされていないことから、一般の規定、つまり民法や商法の規定に従い判断することになる。

【参考までに】

仮登記担保による金融、商取引はバブル経済崩壊による不動産担保融資の行き詰まりを解消する一手法である。

 これまで述べたとおり、仮登記担保にあっては、根抵当権のように不特定の債権についは、優先弁済が受けられないということであるも、仮登記(登録)担保権は根抵当権や抵当権などの手続よりは簡便であることに加え、仮登記担保の目的とすることが可能な債務者等の所有物の範囲(根抵当権や抵当権等にあっては、その目的となる不動産やその不動産に関する所有権以外の権利のみにであるのに対し)、は、前述の(注2)のとおり、不動産以外の登録可能な動産やその他権利にまで及ぶことでは、制度としての利用範囲は広い。

 私見ながら、筆者はバブル経済崩壊以後の不動産価格の下落による不動産担保融資による金融機関の貸付先の減少、金融営業の先細りの打開策として、仮登記担保による不動産以外の権利を担保とする融資が行なわれるべきものと期待するものである。

 ちなみに最近では、コンピュータプログラムやバイオテクノロジーによる種苗改良などに関する著作権や特許権等が仮登記担保に利用される事例も多く出つつあるが、その数は今なお不動産担保融資との比では、まだまだという感である。

 ともかくも、今後、このような事例が徐々にでも増えれば、これまでの不動産担保融資中心の金融や商取引から不動産以外の物や権利を担保とする金融や商取引へとシフトして行くのではないかと思う。そういう意味で、今後においては、中小零細な企業と雖も(むしろ中小零細企業こそ)先進的な担保融資市場の例に習い、それらと足並みをあわせ、これまでの債権保全回収法としては、比較的に常識と言われたような不動産担保一辺倒のノウハウだけに依存していた状態から脱却すべきである。

 また、このような意味会いでは、この「仮登記担保」による債権回収というテーマは、債権回収法全体のなかでも重要な位置付けとして考えられる。

 本誌の読者が一般の方であるだけに、今回は些か専門的な解説に終始した嫌いがあるが、それでもなお、今後必要になると思われる仮登記担保契約についての法知識や実務能力を養うべき良い機会ではなかろうかと思う。

(続く)

                                         根角香織行政書士事務所
                                          行政書士 根角 香織
 
< 続 く >
 
仮登記担保契約に関する法律(昭和54年4月1日施行)
 
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【 更新日=2002/11/21 木曜日
 
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