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目次


通知

医薬審第672号

平成10年8月11日

各都道府県衛生主管部(局)長殿

厚生省医薬安全局審査管理課長

外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について

外国で実施された臨床試験データの医薬品の製造(輸入)承認申請に当たっての取扱いについては、平成10年8月11日医薬発第739号厚生省医薬安全局長通知「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」により通知されたところである。これにより、一定の条件に適合する外国臨床データについては医薬品の製造(輸入)承認申請書に添付される資料として受け入れること、この際に、当該資料を申請医薬品の日本人における有効性及び安全性の評価を行うための資料として用いることが可能か否かを判断するために、原則として、国内で実施された臨床試験成績に関する資料を併せて提出すべきこととされた。別添の指針は、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)における合意に基づき作成されたもので、外国臨床データを利用して医薬品の製造(輸入)承認申請を行おうとする際に、医薬品の有効性及び安全性に与える民族的要因の影響を科学的に適正に評価するための基本的な考え方並びに当該外国臨床データの日本人への外挿可能性を評価するために国内で実施すべき臨床試験の内容を記述するものである。なお、希少疾病用医薬品については、患者数が少なく、国内で必要とされる臨床試験が実施できない場合があることに鑑み、本指針を一律に適用することとはしない。

以上の点を御了知の上、貴管下関係者に対し周知徹底方御配慮願いたい。

本指針の理解を深めるために添付した質疑応答集については、今後得られる外国臨床データの受入れに関する知見に基づき、修正及び拡充する予定である。

1.はじめに

本指針の目的は、医薬品の効果(特定の用法・用量における有効性及び安全性)に与える民族的要因の影響を評価するための基本的な考え方を示すことにより、ICH地域における医薬品の承認を促進することである。そして、民族的要因の影響を適正に評価し得る規制及び開発上の方策を提供し、臨床試験の国際的な重複を最小限にして、患者へ有益な医薬品を迅速に提供することを意図している。本指針は、ICHの他のガイドラインと相互に補完し合って活用されるべきである。なお、本指針においては、民族的要因を集団の遺伝的・生理学的(内因性)特徴と文化的・環境的(外因性)特徴の双方に関連した要因と定義する(補遺A参照)。

1.1 目的

本指針の目的は、以下の4点である。

1.2 背景

全ての地域は、承認申請を行おうとする地域で受け入れ得る規制要件及び臨床試験の実施基準を満たす外国臨床データが利用されることが望ましいと考えている。

しかしながら、民族的要因が新地域における医薬品の安全性、有効性及び用法・用量に影響を与え得るとの懸念から、これまで外国臨床データに頼ることが躊躇されてきた。このため、過去において、このことが新地域の規制当局が承認のために外国臨床データの全部又は多くを国内で重複して収集することをしばしば求めてきた理由の一つとなっていた。確かに、住民集団間の民族的な差が医薬品の安全性、有効性及び用法・用量に影響を与える場合があるものの、多くの医薬品は、どの地域でも類似した特性や効果を示している。全ての医薬品について臨床評価を広範囲に重複して行わせることは、新しい治療法の導入を遅らせ、また、医薬品開発における資源の浪費となる。

1.3 適用範囲

本指針は、医薬品の臨床開発プログラムの全体を新地域で繰り返す必要はないという前提に基づき、新地域において新医薬品の承認の根拠をなすデータの全て又は一部として外国臨床データを受け入れるための方策を示すことを意図している。ただし、本指針は、新地域における承認に必要とされる申請資料の内容を変更することを意図するものではなく、外国臨床データを用いてどのように申請資料に関する要件を満たし得るかを示すものである。外国臨床データを含む臨床データパッケージ中の全てのデータは、臨床試験の計画及び実施方法に関する新地域の基準を満たすべきであり、承認申請に利用するデータは新地域の規制要件を満たすものでなければならない。臨床データパッケージを完全なものとするために、新地域が追加の臨床試験をいずれかの地域で実施することを求めることもあり得る。

臨床データパッケージが新地域における規制要件を満たす場合、外国臨床データの受入れに関しては、当該臨床データパッケージが新地域の住民集団に外挿可能かどうかのみが問題となる。規制当局又は新医薬品の承認申請者が、民族的要因の差が新地域の住民集団における医薬品の有効性や安全性を変化させる可能性を懸念する場合には、臨床データを外挿する(両地域間で“ブリッジング”する)ために、ある程度の臨床試験を新地域で実施する必要が生じることもあり得る。

申請者が新地域の規制要件を満たすために追加の臨床データを収集する必要がある場合には、これらの臨床試験をブリッジング試験としても利用可能なように計画することも可能である。

このように、申請者と新地域の規制当局は、以下の2つの観点から、外国臨床データを含む申請資料を評価する。

  1. 新地域の規制要件を満たすかどうか。
  2. 外国で実施された臨床試験に基づいて作成された申請資料(申請資料全体の大部分又は全てを構成することがあり得る)が新地域に外挿可能かどうか(補遺B参照)。

2.外国臨床データを含む臨床データパッケージの新地域の規制要件への適合性に関する評価

地域の規制当局は、外国臨床データを含む臨床データパッケージについて、それらのデータがどこの地域で得られたかに関わらず(全て外国で得られたデータであっても、外国及び承認申請がなされる新地域の双方で得られたデータであっても)、データの特性と質に関して当該地域の規制要件を満たすか否かを評価する。地域の規制要件を満たす臨床データパッケージは、承認申請に際し提出される“完全な”臨床データパッケージと定義される。そして、完全な臨床データパッケージ中の外国臨床データの受入れが可能かどうかは、それが新地域の住民集団に外挿可能かどうかにより決まる。

外挿を考慮する前提として、新地域に提出される外国臨床データを含む完全な臨床データパッケージは、以下の内容を含んでいなければならない。

臨床試験の計画、実施、解析及び報告を取り扱っているICHガイドラインは、完全な臨床データパッケージの概念を実際に応用する際に役立つ。これには、次のものがある。GCP(E6)、用量反応の評価(E4)、安全性データの適切性(E1及びE2)、高齢者における臨床試験の実施(E7)、臨床試験結果の報告(E3)、臨床試験の一般指針(E8)及び統計的原則(E9)。臨床試験の計画における対照群の選定に関する指針(E10)が作成段階にある。

2.1 新地域の規制要件を満たすための追加臨床試験

外国臨床データが地域の規制要件を満たさない場合には、当該地域の規制当局は、例えば以下のような追加の臨床試験の実施を求めることがある。

3.外国臨床データの新地域への外挿可能性の評価

3.1 医薬品の民族的要因による影響の受けやすさ

医薬品の民族的要因による影響の受けやすさを評価する際には、当該医薬品の薬物動態や薬力学的性質を知り、さらに、それらが臨床上の有効性や安全性とどのように関係するかを知ることが重要である(補遺C参照)。化学構造、代謝経路、作用機序や薬理学的分類上の特徴により民族的要因による影響の受けやすさが異なる(補遺D参照)。民族的要因による影響を受けにくい(異なる住民集団においても同様の作用を示す)医薬品については、通常、ある地域から別の地域へのデータの外挿がより容易であろうし、そのために必要なブリッジングデータはより少なくて済むであろう。

医薬品の民族的要因による影響の受けやすさを左右する要因は、異なる地域での医薬品の効果を比較することによって、将来、よりよく理解され、記述されていくであろう。しかしながら、現時点での知見によると、例えば、遺伝多型を有する酵素によるクリアランスを受ける、又は急峻な用量反応曲線を示す等の特性を有する薬物は、その作用に民族的な差を生じることが多いことは明らかである。逆に、代謝や能動的な排泄を受けない、広い治療量域を有する、又は平坦な用量反応曲線を示す等の特性を有する薬物は、その作用に民族的な差を生じることは少ないであろう。新地域における類似薬の臨床経験も、新医薬品の民族的要因による影響を評価する際の参考となる。例えば、新地域において類似薬が既に元の地域と同様の用法・用量で臨床試験に供され、承認されていれば、当該新医薬品の薬力学的・臨床的特性が外国及び新地域で大きく異ならないと推定できよう。

3.2 ブリッジングデータパッケージ

3.2.1 ブリッジングデータパッケージとブリッジング試験の定義

ブリッジングデータパッケージは、以下のものから成る。

  1. 薬物動態データ、並びに(可能であれば)予備的な薬力学データ及び用量反応データを含む、新地域を代表する住民集団に関する情報であり、完全な臨床データパッケージから選択されたもの。
  2. 必要な場合には、新地域に外国臨床データ(有効性・安全性)を外挿するためのブリッジング試験データ。

ブリッジング試験とは、外国臨床データを新地域の住民集団に外挿するために新地域で実施される臨床試験であり、新地域における有効性、安全性及び用法・用量に関する臨床データ又は薬力学的データを得ることを目的として行われる。有効性に関するブリッジング試験が新地域の住民集団における薬物動態に関する追加の情報を与える場合があろう。有効性に関する臨床データを提供するためのブリッジング試験を必要としない場合には、新地域における薬物動態試験がブリッジング試験とみなされる場合もある。

3.2.2 ブリッジング試験の性質と範囲

本指針は、新地域の規制当局が規制要件を満たす臨床データパッケージを提示された場合、当該規制当局は、完全な臨床データパッケージ中の外国臨床データを新地域に外挿できるかどうかを評価するために必要な追加データのみを求めるべきであることを提案する。追加データの量は、薬物の民族的要因による影響の受けやすさにより異なる。ほとんどの場合、一つの試験によって新地域における追加データが得られ、かつそれにより元の地域のデータが新地域に外挿可能であることが立証されれば、その試験で十分であり、それ以上の繰り返しは必要ない。ただし、有効性に関するデータについて“ブリッジング”するためには一つの試験で十分であっても、申請者が複数の試験を行うことで必要な情報を得ることが適当と考える場合もあり得ることに留意すべきである。例えば、ブリッジング試験として、臨床的エンドポイントを用いて固定用量での用量反応試験が必要と考えられる場合に、その試験で用いる用量を選定するために、事前に薬理学的エンドポイントを用いた短期間でより小規模の試験を実施することが考えられる。

規制当局がブリッジング試験の実施を求める、又は申請者がその実施が必要と判断する場合には、可能であれば、規制当局と申請者が必要なブリッジング試験の内容について協議することが薦められる。ブリッジング試験の必要性及びその性質は、薬物の民族的要因による影響の受けやすさによって異なる。外国臨床データに基づく承認経験が乏しい地域においては、民族的要因による影響を受けにくいと考えられる薬物についても、規制当局がブリッジング試験を求めることがあり得る。地域間の相互受入れ経験の蓄積に伴い、ブリッジ試験が必要とされる状況に関する理解が深まるであろう。経験の蓄積に伴い、ブリッジングデータの必要性が少なくなっていくことが期待される。

ブリッジング試験により得られたデータの外挿可能性に関する一般的な指針を以下に示す。

3.2.3 有効性に関するブリッジング試験

一般に、民族的要因による影響を受けにくいと考えられる薬物について必要となるブリッジング試験の種類は、類似薬に関する経験並びに当該薬物の安全性、有効性及び用量反応に与える外因性民族的要因(臨床試験の計画及び実施方法を含む)の影響の可能性により異なる。民族的要因による影響を受けやすい薬物については、両地域の住民集団が異なる場合は、多くの場合ブリッジング試験が必要である。以下に、種々の状況に応じて考慮すべきブリッジング試験の例を示す。

次のような場合には、ブリッジング試験なしで臨床データの外挿が可能であろう。

薬物が民族的要因による影響を受けにくく、かつ両地域における外因性民族的要因(医療習慣や臨床試験の実施方法等)が類似している場合。

薬物が民族的要因の影響を受けやすいものであっても、両地域が民族的に類似しており、薬理学的に類似した薬物における十分な臨床経験から、当該薬物の類似薬について有効性、安全性及び用法・用量に関して両地域で大きな差がないことを保証できる場合。両地域で(全く同じではないにしても)類似の用法・用量が採用されており、十分に評価が確立されている薬効群に属す薬物について当てはまり得る。

両地域が民族的に類似しておらず、薬物が民族的要因による影響を受けやすいものの、外因性民族的要因(医療習慣や臨床試験の計画及び実施方法等)が類似しており、類似薬が新地域で既に用いられている場合には、薬物の作用を反映すると考えられる薬理学的エンドポイント(確立された代用エンドポイントでもよい)を用いた薬力学的比較試験を新地域で実施することにより、元の地域で得られた有効性、安全性及び用法・用量に関するデータを新地域に適用することが可能な場合がある。同時に血中濃度等の薬物動態データが得られれば、当該試験結果の解釈の際に参考となろう。

以下の場合には、通常、新地域において比較臨床試験(多くの場合、固定用量による無作為化用量反応試験)を実施することが必要である。

@用法・用量の設定のための十分な根拠がない場合。
A当該外国で実施された比較臨床データの受入れについて十分な経験の蓄積がない場合。
B併用薬の使用等の医療習慣や、臨床試験の計画及び実施方法等が異なる場合。
C新地域では当該薬物の類似薬に関する経験が乏しい場合。

状況に応じて、外国で実施した臨床試験をそのまま新地域において繰り返す、標準的な臨床的エンドポイントを用いたより短期の臨床試験を実施する、又は血圧やコレステロール値のような既に確立された代用エンドポイントを用いた臨床試験を実施する(外国の第3相試験において、より長期の試験や他のエンドポイントを用いた試験が行われている場合もあろう)こと等がブリッジング試験として想定され得る。

薬力学データにより薬物反応に地域間で差があることが示されている場合には、原則として、臨床的エンドポイントを用いた比較臨床試験を新地域において実施することが必要である。薬物動態が地域間で異なる場合でも、新たな臨床試験を実施することなく用量調整を行うことができれば、臨床的エンドポイントを用いた比較臨床試験は必ずしも必要とされない場合もある。ただし、代謝パターンに大きな相違がある場合には、多くの場合比較臨床試験が必要となろう。

併用薬の使用に関する医療習慣が大きく異なる場合や、補助療法が薬物の有効性や安全性に影響を与える懸念がある場合には、ブリッジング試験は比較臨床試験とすべきである。

3.2.4 安全性に関するブリッジング試験

外国臨床データが、外国地域において有効性と安全性を立証していても、新地域における安全性については懸念が残る場合がある。比較的発生頻度の高い有害事象の新地域における発生率の正確な決定や、重篤な有害事象発生の有無の確認を要する場合がその例である(一般的に発生率1%の有害事象の検出には300症例の臨床試験が必要である)。安全性についての懸念の性質に応じて、安全性に関するデータは以下のような状況において得ることができる。

4.世界的規模での開発戦略

薬物動態のみならず、薬力学及び用量反応をも開発過程の早期に明らかにすれば、ブリッジングデータの必要性及びその内容を決めやすい。世界的規模で開発される医薬品の候補については、民族的要因による影響を受けやすいか否かにつき特徴づけられるべきである(補遺D)。理想的には、この特徴づけは臨床薬理試験、探索的臨床試験のような医薬品臨床開発の早期段階においてなされるべきである。場合によっては、臨床データパッケージを完成させる前に、ブリッジング試験のデザインについて規制当局と協議することが有益であろう。

ただし、ブリッジング試験の必要性とその種類は、完全な臨床データパッケージ中のデータの分析に基づいて決められる。世界的規模での開発においては、医薬品の承認申請先の地域を代表する住民集団を対象として含み、かつICHガイドラインを遵守した試験を実施すべきである。

申請者は、新地域を代表する住民集団における薬物動態、薬力学及び用法・用量の評価を医薬品開発プログラムの後期まで残しておきたいと考えるかもしれない。薬物動態の評価は、標準的な薬物動態試験を実施するか、又はポピュレーションファーマコキネティクス法を新地域を代表する住民集団又は新地域で実施される臨床試験に適用することによってなし得る。

5.要約

本指針は、新地域での承認のための医薬品開発を行う申請者が、異なる住民集団において、民族的要因が医薬品の効果(安全性と有効性)及びリスク/ベネフィットの評価に影響を与える可能性にどのように対処し得るかを示したものである。新地域の規制要件に従って実施されていれば、外国臨床試験の結果が、新地域で承認申請に用いられる臨床データパッケージの大部分、場合によっては全てを構成することがあり得る。このような外国臨床試験データの新地域における受入れは、安全性及び有効性に関するデータを外国地域の住民集団から新地域の住民集団に外挿するために“ブリッジング”データを作成することによって達成できるであろう。

 


用語集

適切な対照を置き、よく管理された試験(Adequate and Well-Controlled Trial):

適切な対照を置き、よく管理された試験は、以下の特徴を備えている。

ブリッジングデータパッケージ(Bridging Data Package):

新地域を代表する住民集団に関する情報として完全な臨床データパッケージから選択されたデータ(薬物動態データ、予備的な薬力学及び用量反応データを含む)並びに必要な場合には、外国の安全性及び有効性データを新地域の住民集団へ外挿することを可能にする新地域で実施されたブリッジング試験で得られた補完的なデータ。

ブリッジング試験(Bridging Study):

外国臨床データを新地域に外挿するために新地域で実施される補完的な試験。新地域における有効性、安全性及び用法・用量に関する臨床データ又は薬力学的データを得るために実施される。このような試験が薬物動態に関する付加的な情報を含むことがある。

完全な臨床データパッケージ(Complete Clinical Data Package):

承認申請に用いられる臨床データパッケージで、新地域の規制要件を満たし、かつ新地域を代表する住民集団における薬物動態データを含んでいるもの。

民族的要因の影響を受けにくい化合物(Compounds Insensitive to Ethnic Factors):

その性質上、民族的要因が安全性、有効性又は用量反応に対して臨床的に重要な影響を与える可能性が少ない化合物。

民族的要因の影響を受けやすい化合物(Compounds Sensitive to Ethnic Factors):

薬物動態的、薬力学的又はその他の性質上、内因性・外因性民族的要因が安全性、有効性又は用量反応に対して臨床的に重要な影響を与える可能性がある化合物。

用量(Dosage):

一投与当り又は一日当りに与えられる医薬品の量。

用法(Dose Regimen):

一定期間にわたり投与される医薬品の投与経路、頻度及び期間。

民族的要因(Ethnic Factors):

民族性(ethnicity)という語は、国家又は人々を意味する“エスノス(ethnos)”というギリシア語に由来している。民族的要因は、共通の特性や習慣に基づきグループ分けされる人種又は大きな住民集団に関係する要因である。民族性は、遺伝的のみならず文化的な意味合いも有するので、この定義は人種的(racial)のそれよりも広い意味となっていることに留意されたい。民族的要因は内因性又は外因性のどちらかに分類されよう(補遺A)。

外因性民族的要因(Extrinsic Ethnic Factors):

外因性民族的要因とは、個人が住んでいる環境や文化に関連した要因である。外因性要因は遺伝よりも文化及び行動様式によってより強く決定される傾向がある。外因性要因には、地域の社会的及び文化的な側面に関係するものが含まれる。例えば医療習慣、食事、喫煙、飲酒、環境汚染や日光への暴露、社会経済的地位、処方された薬の服用遵守、並びに異なる地域の臨床試験の信頼性にとって特に重要なものとして、臨床試験の計画及び実施方法が挙げられる。

内因性民族的要因(Intrinsic Ethnic Factors):

内因性民族的要因は、住民集団のサブグループを定義、同定する際に有用で、地域間の臨床データの外挿可能性に影響を与え得る要因である。内因性要因の例としては、遺伝多型、年齢、性、身長、体重、除脂肪体重、身体の構成及び臓器機能不全が含まれる。

外国臨床データの外挿(Extrapolation of Foreign Clinical Data):

外国地域の住民集団で得られた安全性、有効性及び用量反応に関するデータを新地域の住民集団に対して一般化し適用すること。

外国臨床データ(Foreign Clinical Data):

新地域の外(すなわち外国地域)で得られた臨床データ。

ICH 地域(ICH Regions):

ヨーロッパ連合、日本及びアメリカ合衆国。

新地域(New Region):

新医薬品の承認申請が行われる地域。

新地域を代表する住民集団(Population Representative of the New Region):

新地域内の主要な人種集団を含む住民集団。

薬物動態試験(Pharmacokinetic Study):

薬物がどのように生体内で処理されるのかを明らかにする試験で、通常、血液中(場合によっては尿中又は組織中)の薬物及びその代謝物の濃度の経時的な測定を伴う。薬物動態試験により血液中又は他の適切な部位における薬物の吸収、分布、代謝及び排泄を特徴づけられる。薬力学的試験の手法と組み合わせることにより(PK/PD試験)、血中濃度と薬力学的作用の程度及び発現の時間との関係が特徴づけられる。

薬力学試験(Pharmacodynamic Study):

個体に対する薬物の薬理学的又は臨床的効果についての試験で、用量や薬物濃度と効果との関連を調べることを目的とする。薬力学的効果としては、有害作用となり得る作用(三環系薬剤の抗コリン作用)、臨床上の利益に関係すると考えられる作用の測定値(β遮断についての種々の測定値、ECGインターバルに及ぼす効果、ACE阻害すなわちアンギオテンシンTからUへの反応阻害)、短期間で発現する意図された効果(血圧やコレステロール値等のサロゲートエンドポイントが、しばしば採用される)、又は最終的に意図した臨床上の利益(疼痛、抑うつ、突然死に対する効果)などが採用され得る。

ポピュレーションファーマコキネティクス法(Population Pharmacokinetic Methods):

臨床試験に参加した全て又は特定の一部分の患者から、通常、一患者当り定常状態で2又は3回血中薬物濃度を測定し、これを集団に基づいて評価する方法。

治療量域(Therapeutic Dose Range):

最小の有効用量と更なる利益を与え得る最大の用量との間の範囲。

 


補遺A:内因性及び外因性民族的要因の分類

 

 


補遺B:臨床データパッケージの受入れ可能性の評価

※1 訳注:規制要件を満たすためには、臨床データパッケージには、外国臨床データに加え、新地域を代表する住民集団における薬物動態の特性を示すデータが含まれていなければならない(2.項参照)。

※2 規制要件を満たすための追加試験が必要。

※3 規制要件を満たすための追加試験及びブリッジング試験が必要。(訳注:前者をもって後者を兼ねることができる。)

 


補遺C:薬物動態、薬力学及び用量反応に関する考察

ICH地域の3つの主要人種群(アジア人種、黒人種、白人種)についての薬物動態及び薬力学の評価とそれらの比較可能性は、ICH地域での医薬品の承認において極めて重要である。基本的な薬物動態の評価として、吸収・分布・代謝・排泄(ADME)、並びに適切な場合には、食事−薬物及び薬物−薬物相互作用を特徴づけなければならない。

2つの地域の住民集団における薬物動態の適切な比較によって、どのような種類の臨床試験(薬力学的試験を含む。ブリッジング試験)を新地域においてさらに実施する必要があるかを合理的に考察することが可能となる。薬物動態については、主に内因性民族的要因によって住民集団間の差が生じ、それは容易に同定できる。これと対照的に、薬力学的反応(臨床的有効性、安全性及び用量反応)は、内因性及び外因性の両方の民族的要因によって影響される場合もあるので、新しい地域で臨床試験を実施しない限り、この影響を明らかにすることは困難な場合もあろう。

ICH−E4文書(訳注:「新医薬品の承認に必要な用量−反応関係の検討のための指針」)においては、用量反応を評価するための様々な方法が記載されている。一般に用量反応(又は濃度反応)は外国において薬理学的効果(適切な場合)と臨床的エンドポイントの両方について評価されるべきである。新地域を代表する住民集団における薬理学的効果(用量反応を含む)を外国で評価できる場合もあろう。臨床的有効性及び用量反応のデータを新地域において得る必要があるか否かは状況により異なる。例えば、当該薬物の類似薬が新地域で広く使われていて、その薬理学的効果が臨床的有効性や用量反応性と密接に関連しているのであれば、外国で得られた薬力学データは、医薬品承認の十分な根拠となり得るであろうし、臨床的エンドポイントを用いた有効性や用量反応に関するデータを新地域で再度得る必要はないであろう。薬力学的評価及び可能な臨床的評価(用量反応を含む)は、新地域の住民集団では外国人における反応曲線が移動する可能性があるので重要である。こうした実例は文献上の報告も十分にあり、例えばアンギオテンシン変換酵素阻害剤は、黒人種で血圧低下反応が小さいことが知られている。

 


補遺D:医薬品の民族的要因による影響の受けやすさ

薬物動態、薬力学及び治療効果に民族的要因が与え得る影響に関して医薬品を特徴づけることは、新地域でどのようなブリッジング試験が必要となるかを決定する上で役立つであろう。医薬品の効果に対する民族的要因の影響は、その医薬品の薬理学上の性質、適応症、患者の年齢、性別によって異なる。民族的要因の影響を受けやすさを、医薬品のひとつの特性のみで予測することは出来ない。必要とされるブリッジング試験の種類は、結局のところ状況に応じて判断していく以外にないが、当該薬物の民族的要因による影響の受けやすさの評価が、その判断に役立つであろう。

次のような特性を有する化合物は、民族的要因の影響を受けにくいと考えられる。

次のような特性を有する化合物は、民族的要因の影響を受けやすいと考えられる。

 


「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関する質疑応答集質疑応答集

(用語について)

Q1. 本指針は、全てのICH参加国(地域)に適用されるものとして作成されていると思われるが、本指針に基づき、日本において外国臨床データを利用して新医薬品の承認申請を行おうとする際には、「新地域」及び「規制当局」の用語をどのように解釈したらよいか。

(答)
以下のように解釈されたい。

新地域:日本

規制当局:狭義には、厚生省医薬安全局審査管理課及び国立医薬品食品衛生研究所・医薬品医療機器審査センターを指すが、申請者がブリッジング試験の内容等に関する協議を行う際には、それに対応する機関として医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構を含むものとする。

Q2. 日本における「規制要件」の具体的内容を示していただきたい。

(答)
我が国における臨床試験に関する「規制要件」とは、薬事法第14条第3項の規定に基づく「医薬品の臨床試験の実施に関する省令」(GCP)及び「申請資料の信頼性の基準」(薬事法施行規則第18条の4の3)、「医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について」(昭和55年5月30日薬発第698号薬務局長通知)に示された添付資料に関する要件、並びに臨床試験に関連する各種ガイドラインを指す。ただし、ガイドライン、特に薬効群別の臨床評価ガイドラインについては、それに合致していなくとも、学問の進歩等を反映した合理的根拠に基づく適切な方法を採用した臨床試験に基づくデータであれば、これに準拠したものと判断する。

(本指針の基本的性質について)

Q3. 本指針は、外国で承認申請に必要な臨床データの殆どが得られている場合について主に論じられている。必要な臨床試験の大部分を国内で行い、外国で得られた臨床データを部分的に用いる場合や、国内・国外で得られた臨床データをほぼ同じ程度の割合で用いる場合の外国臨床データの受け入れについてはどのような取扱いとなるのか。

(答)
いずれの場合も、承認審査資料として用いる外国臨床データが日本人に対して外挿可能であることを示す必要がある。その際に、国内で既に実施された臨床試験データをブリッジングデータとして利用することができ、それを基に外挿可能性の判断が行えるならば、新たなブリッジング試験を行う必要はない。

Q4. ある国(地域)で臨床データパッケージが完成した後に、新しい国の規制当局がそのデータの自国の住民集団に対する外挿性を評価し、結果としてブリッジング試験を要求するというプロセスを踏むと、新しい国での承認が遅れることが懸念される。当該臨床データが各国の住民集団に外挿できるよう予めブリッジング試験を行い、各国に同時に申請する場合について説明をお願いしたい。

(答)
指摘のように、本指針は、外国で実施された臨床試験成績を中心とした臨床データパッケージが存在する状況において、我が国においてブリッジング試験を追加実施し、その外挿可能性を評価するという視点から記述がなされている。本指針の基本的な考え方を踏まえた上で、臨床データパッケージの作成のための臨床試験とブリッジング試験を並行して実施することは可能と考える。ただし当然であるが、当該ブリッジング試験の実施妥当性(被験者の安全性の確保等)を示すデータは、その開始前に得られていることが必要である。

(外国臨床データの受け入れに関する基本的考え方について)

Q5. 外国臨床データの日本人への外挿可能性の評価には、医療環境などの外因性要因や規制当局の受け入れ経験が影響することとされているが、これまでの経験から、日本と欧米の診断基準、医療習慣などが類似しており外国臨床データの外挿可能性が高いと考えられる疾患、薬効群について示していただきたい。

(答)
例えば、感染症に対する抗生物質の有効性の評価において、臨床分離株に対する感受性が外国と日本で差がない場合には、用いられるエンドポイントや対照群の選定についての考え方が日本と諸外国でほぼ共通しているので、その成績の外挿可能性は高い。また、癌に対する化学療法剤の有効性の評価において、腫瘍縮小率は各国で多く採用されているエンドポイントの一つであるので、その成績の外挿可能性も高いものと考える。

Q6. 「外国」の定義について、ICH参加国(地域)以外で収集・作成されたデータであっても、必要な要件を満たしていれば、日本での申請資料として利用可能であるのか。

(答)
本指針は、GCP等の臨床試験に関する規制が整備されているICH参加3地域間での外国臨床データの受入れを想定して作られている。しかし、臨床試験に関する規制要件(定義についてはQ2の答を参照)に鑑み、我が国で受け入れ得ると判断される場合であれば、それ以外の地域の臨床データについても適用できる。

Q7. 臨床試験における有効性の評価基準などには国(地域)により差があることがあることから、臨床データパッケージの中に、我が国の評価基準とは異なる基準で評価された成績が含まれることがあると考えられる。これらについて、どこまでを許容範囲とするのか。

(答)
外国で実施された臨床試験において採用された評価基準等が科学的に合理的なものであり、日本で受け入れられると判断できるものであれば、我が国で採用されているそれと厳密に同じである必要はない。

Q8. 当該外国の住民集団と日本人の薬物動態に差があっても、用量を調節することにより類似の薬力学、有効性、安全性データが得られれば、外国臨床試験データの日本人への外挿は可能と考えられるのか。その際、当該外国で承認された(又は申請中の)用法・用量と日本での申請用法・用量が異なってもよいのか。

(答)
外国人と日本人とで薬物動態プロファイルの類似性が示されることは、外国臨床データの受入れに当たっての必要条件ではない。薬物動態に差があったとしても、適切に用量を調整することで同様の有効性、安全性を示すことができるのであれば、外国臨床データを日本人に外挿できることがある(指針3.2.2項参照)。この場合、外国の用法・用量と日本のそれが異なることはあり得ることである。

なお、薬物動態に差がないことのみをもって、外国臨床データが日本人に外挿可能であると判断することはできないことにも留意していただきたい。

Q9. 外国において、日本では承認されていない医薬品を対照薬とした比較試験が行われている場合、あるいは承認されていても我が国の承認用法・用量と異なる用法・用量により試験が行われている場合、当該試験データは日本での承認申請に際し利用可能か。

(答)
その対照薬が、適切な臨床試験データを持って承認されていることが確認できる場合には、日本での承認申請に用いることは可能である。ただし、当該対照薬の評価がどの程度確立されたものであるか、あるいは作用機序がどの程度類似しているか等によって、当該データがもたらす説得力の度合いはケースによって異なる。

Q10. ブリッジング試験により外国臨床データの日本人への外挿可能性を評価する際に、用量反応、安全性及び有効性などが「類似している」、「大きな差がない」などと見なせる具体的な基準について説明いただきたい。

(答)
「類似している」、「大きな差がない」ことを示すための具体的な基準などを一律に示すことはできない。ただし、この場合、統計的な意味で「同等性」が示されることや、外国データと日本のデータとで結果が厳密に一致することを求めるものではない。

なお、薬力学的(作用-濃度)曲線が急峻であったり、治療量域が狭い薬物については、用量反応、安全性及び有効性の差の大きさや、それに基づく外挿可能性について、より慎重に評価する必要があろう。

Q11. ブリッジング試験を実施した結果、外国臨床データの日本人への外挿が困難と判断された場合は、どのような対応を採るべきか。

(答)
ブリッジング試験の結果、臨床データパッケージを日本人に外挿できないことが判明する状況としては、例えば、外国人と日本人とで用量反応性が大幅に異なったり、日本人において特殊な副作用が発生するなどの理由で臨床推奨用量が外国と日本とで大きく異なり、その結果として、臨床データパッケージのうち、外国での推奨用量を用いた比較試験データ等が外挿不可能と判断される場合が想定される。このような場合には、臨床データパッケージを構成する個々の臨床試験につき、そのデータが日本人に外挿できるかどうかを検討する必要がある。その結果、外挿可能なデータのみでは不足する部分(データ)について臨床試験を行い、日本で承認申請をするために必要な臨床データパッケージを構築する必要がある。

Q12. 希少疾病用医薬品に関するブリッジング試験の取扱いについて説明していただきたい。

(答)
希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)については、患者数が少ないために外国臨床データの外挿可能性を厳密に示せるようなブリッジング試験の実施が困難であることが多い。このような場合には、市販後に臨床試験や特別な調査の実施を義務づけた上で、限定されたブリッジングデータに基づき外挿可能性を判断することとなろう。

Q13. 2.1項に、新地域の規制要件を満たすための追加臨床試験の例として「新地域で承認されている医薬品を対照とした新たな比較試験」の例が挙げられている。例えば外国で既にプラセボを対照とした比較試験が行われている場合でも、日本で実薬対照試験の実施が求められるということか。

(答)
適切な標準薬が存在する領域では、申請医薬品と当該標準薬との有効性、安全性の相対的な比較に関する情報を得ることで、申請医薬品の医療上の位置付けが明確になり、また、市販後の適正使用に役立てることができる。この考え方は、我が国で公表されている複数の薬効群別臨床評価ガイドラインに反映されている。

しかしながら、国内での実薬対照試験の実施は承認のための必要条件ではなく、日本人に外挿可能と判断できる外国で実施されたプラセボ対照試験により当該薬物の有効性が立証され、さらに、当該薬物の我が国の医療環境における有用性が確認できる場合には、国内での実薬対照試験の実施は不要である。そうでない場合には、日本における標準薬を対照とした比較試験の追加実施が必要となる。

Q14. 高齢者や腎機能・肝機能低下患者等の特別な集団において得られた外国臨床データの日本人の同様の集団に対する外挿については、どのような取扱いとなるのか。

(答)
当該新薬の適応対象となる一般患者における外国臨床データが日本人に外挿可能と判断できる場合には、一般に、特別な集団における外国臨床データも外挿できると考えてよい。

なお、例えば「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」で計100例程度の高齢者におけるデータが必要とされているが、上述のように、高齢者におけるデータの外挿が可能と結論されれば、国内外の臨床例の合計がこの数を超えることで足りる。

(民族的要因の影響の評価について)

Q15. 外因性民族的要因の主要なものと考えられる医療習慣や食事の影響はどのように評価すればよいのか。事例を重ねないと分からないと考えるべきなのか。

(答)
医療習慣や食事の内容が薬物の体内動態や効果の発現、薬効評価の方法などにどのように影響するかは、薬物によって異なるため、一概にその評価法を述べることはできない。最終的にはケースバイケースの判断を行う以外にはないが、類似した構造の薬物や同様の作用機序を有する薬物の経験から類推する方法は一つの方法と言えよう。

Q16. 複数の国(地域)で同時に臨床試験(多施設国際共同試験)を実施し、その結果について民族による層別解析を実施し、民族的要因の影響を検討することは可能であるか。

(答)
同一の試験実施計画書に基づく複数国における臨床試験が適正に実施され、民族間の差を検討するための解析に足る十分な数の被験者が確保されるならば、そのような方法も可能であろう。主要な臨床試験をこのような試験とすることにより、外国臨床データの外挿可能性の評価を行うことが可能である。

Q17. 従来、日本で承認申請する場合には、臨床データの解析の際に民族についての考慮はなされていないが、今後は必要とされるのか。

(答)
複数の民族を対象とした臨床試験においては、民族を考慮した解析は当然必要となる。

Q18. 外国で行われた臨床試験における被験者選択基準が国内で認められている診断基準と異なる場合、日本の診断基準から外れる症例を除いたデータセットでの解析も行う必要があるか。

(答)
試験実施計画書に規定されていない解析(部分集団の検討等)の結果のみをもって申請医薬品の有効性、安全性の主張を行うことは適切でないことは「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5月1日薬審第335号)や「臨床試験のための統計的原則」(近日中に通知予定)に示されているとおりであり、質問のような解析を試みる場合は、被験者集団全体における解析結果とそこからある一定の条件下で抽出された部分集団における結果とで結論に差がないことが前提となる。

ただし、外国臨床試験で用いられた選択・診断基準が科学的に妥当で、かつ我が国で受入れ可能なものであれば、我が国のそれと厳密に同じものでなくても、当該外国臨床データを基に申請医薬品の評価を行うことが可能である。

(有効性に関するブリッジング試験について)

Q19. 国内で実施された第2相臨床試験(用量反応試験)成績から、外国臨床データの日本人への外挿が可能と見なせる場合、通常行われる既存薬(又はプラセボ)との検証的な比較試験を国内で実施することは不要と考えてよいのか。

(答)
国内で実施した用量反応試験により外国臨床データが日本人に外挿可能と判断できる場合などには、一般に、国内における検証的な比較試験の実施は不要である。

Q20. 3.2.3有効性に関するブリッジング試験について、どのような場合にどのような試験が必要となるか、その規模も含めて具体的に説明していただきたい。

(答)
本指針の3.2.2項に、必要となるブリッジング試験の内容及びその状況を大きく3つの場合に分けて示している。現在の状況において、多くの場合にまず考慮すべきブリッジング試験は、用量反応試験であると考えられる(指針3.2.3の比較臨床試験の項に「多くの場合、固定用量による無作為化用量反応試験」と記載されている)。日本人での用量反応性に関する情報は、多くの場合、外国臨床データの日本人への外挿可能性の評価に重要な役割を果たす。なお、特に民族的要因による影響を受けにくいことが明らかな薬物では、比較試験を実施することなしに外国臨床データの外挿が可能と判断できるケースがあり得る。

試験の規模(必要な症例数)については、その目的や用いられるエンドポイントによって様々であり、一律に示すことは困難である。

Q21. 3.2.3比較臨床試験によるブリッジング試験が必要な場合として「当該外国で実施された比較臨床データの受入れについて十分な経験の蓄積がない場合」が挙げられている。このことから、日本では当面の間、国内での比較試験が必要と解釈すべきであるか。

(答)
指摘のように、我が国は、一般に外国で実施された比較試験データを主たる根拠として新薬の承認の可否を判断した経験が多いとは言えず、この観点から、当面は、国内において比較試験の実施が必要となるケースが多いと考えられる。

Q22. 3.2.3比較臨床試験の項の「類似薬」の定義は何か。

(答)
ここでは、化学構造や薬理作用等を総合的に勘案し、申請医薬品と類似した医薬品を指す。

(安全性に関するブリッジング試験について)

Q23. 安全性に関するブリッジング試験を別個に行う必要があるのは、どのような場合か。

(答)
安全性については、外国人と日本人での副作用(有害事象)の発生頻度の一致や正確な比較を求めるものではない。実際、例えば、軽度な副作用の発生頻度が外国人と日本人とで多少異なっていても大きな問題とはならず、外挿可能性にも影響しない。有効性に関するブリッジング試験の結果や類似薬に関する知見から、当該薬物の日本人における安全性に関し重大な問題が示唆されるような場合を除いては、安全性に関する別個のブリッジング試験を実施する必要はないと考えられる。

なお、低頻度で発生するの副作用(有害事象)の検出やその発生率の正確な決定は、市販後調査において行われるべきである。

Q24. 3.2.4比較的一般的な有害事象の発現率の測定や重篤な有害事象の検出に関する記述の箇所に具体的な数値(1%、300例)が示されているが、この数字の根拠を示していただきたい。

(答)
承認前の臨床試験段階において1%程度以上の発生頻度を有する有害事象の検出がなされるべきであるとの考えに基づき算出される「1%、300例」の数値が示されたものである。ICHでの合意に基づき作成された「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間」についてのガイドライン(平成7年5月24日薬審第592号)に同様の考え方が取り入れられている。

ただし、同ガイドラインでは、単一の民族を被験者としたデータのみで長期投与時のただし、同ガイドラインでは、単一の民族を被験者としたデータのみで長期投与時の安全性データが構成されることを求めているわけではないので、本件についても、国内・外の症例数の合計が、ここに掲げられた数字を上回ることが求められていると解される。

従って、通常、有害事象やその発生率等のプロファイルが日本人と外国人とで全く異なることが判明した場合等の例外的な状況を除いては、安全性に関する情報(比較的高頻度の副作用の検出等)を収集するためだけに300例を対象としたブリッジング試験を実施する必要はない。なお、本指針に沿って外国臨床データを利用して新薬の承認申請を行おうとする際には、国内での安全性評価症例数が少ない場合が多いと考えられることから、このような場合には、市販後調査においてこれを補うべきである。

Q25. ブリッジング試験の結果、安全性に関するデータについても日本人に外挿可能であると結論づけられた場合、外国でガイドライン(ICH E-1)に準拠した長期安全性データが得られていれば、国内で新たに長期投与試験を実施する必要はないと理解してよいか。

(答)
長期投与時の安全性を含めて、安全性に関する外国臨床データが日本人に外挿可能と判断できる場合には、国内で新たな長期投与試験を実施する必要はないと考えられる。

(臨床薬理試験について)

Q26. 外国在住の日本人(日本人の両親を持ち、日本で生まれ育ち現在外国で生活している)、あるいは日系2世、3世(外国で生活している日本人の両親から生まれ、又は祖父母が外国に移住しさらに両親が日本人で外国で生活している)などを対象に実施した薬物動態試験データは、日本人の薬物動態に関するデータとして利用可能であるのか。

(答)
食事や環境などにより薬物動態に差が出ることが想定される場合を除いては、利用可能である。

Q27. 日本人と外国人との薬物動態プロファイルの比較を行う際の留意点について示していただきたい。

(答)
両集団間の薬物動態プロファイルの比較は、標準的な薬物動態試験又はポピュレーションファーマコキネティクス法により得られた適切なパラメータ(AUC、Cmax、クリアランス等)を比較することによってなされる。この場合、パラメータの比較可能性が確保されていることが前提となる。すなわち、両集団において比較するに足る被験者数が確保されていること、複数の用量(少なくとも3用量)に関するデータが得られていること、試験条件(採血ポイントや薬物の定量法等)やパラメータの算出法が同様であることなどである。計画段階からこれらの点について留意した上で、薬物動態に関する検討を行うべきである。

結果の解釈については、ある特定の用量でのパラメータに関して、日本人と外国人の値に統計的有意差がないことをもって「差がない」と結論づけることは適当でない。薬物動態の非線形性の有無を確認した上で、少なくともパラメータの「差」又は「比」の信頼区間を算出し、評価を行うことが必要である。

Q28. 抗悪性腫瘍薬の第1相試験に関する外国臨床データの利用について、どのように考えたらよいのか。

(答)
殺細胞効果が明瞭な薬物については、利用可能な適切な外国臨床データがある場合には、国内で新たに最大許容量の推定のためのフルスケールの試験を行う必要はなく、当該外国データから適切と判断される用量を用いて、日本人に対する安全性を確認することで足りる。また、薬力学的評価を十分に含んだ適切な薬物動態試験を実施し、日本人に対する用量調整の必要性を検討する必要がある。

Q29. 外国において日本人以外を対象として実施された生物学的同等性試験データは、臨床データの一部として利用可能か。

(答)
新医薬品の開発過程で用いられた含量違い製剤間や開発途中で処方変更がなされた前後の製剤間の生物学的同等性については、外国人及び日本人における当該薬物の薬物動態プロファイルに大きな差がない場合には、外国人を対象に実施された生物学的同等性試験データが利用可能である。また、承認後の剤型追加や含量違い製剤の追加、処方変更についても同様である。

後発医薬品については、「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」(平成年12月22日医薬審第487号)及びその質疑応答集(平成10年10月30日事務連絡)を参照されたい。

(その他)

Q30. 臨床データパッケージの取扱いについて、日本で承認申請する際に外国で実施されたすべての臨床データを提出する必要があるのか、それとも申請者が必要と判断したものだけでよいのか。

(答)
我が国で新薬の承認申請を行う際には、承認審査資料として提出する外国臨床データ以外についても、当該医薬品について外国で実施された臨床試験のリストと、主要なものについてはその内容の要約を提出すべきである。(我が国で申請を行った後に終了した外国臨床試験についても同様。)なお、国際的に複数地域で同時に開発される医薬品が今後増加することが予想されることに鑑み、臨床試験に関する承認審査資料を国内臨床データのみによって構成できる場合にも上述のリスト等を提出すべきである。

なお、当該医薬品の有効性、安全性等を疑わせる調査結果、試験成績等が得られた場合には、それについての検討及び評価を行った上で資料として提出する必要があることは、薬事法施行規則第18条の4の3に規定されているとおりである。

Q31. 外国臨床データを申請資料に含めた場合、副作用情報をどのように使用上の注意や添付文書に反映したらよいのか。

(答)
承認審査資料として提出された外国臨床データにおける安全性に関する情報については、国内でのデータと同様に取り扱い、両者を併せて使用上の注意等に記載していただきたい。なお、民族的要因が安全性の評価に大きな影響を与えることが明らかにされているなど、合理的な理由がある場合には、国内でのデータと外国データを分けて記載することも可能である。

(規制当局との協議について)

Q32. 本指針では、ブリッジング試験の必要性、その種類などについて、申請者と規制当局との間で協議することが薦められており、日本では医薬品機構が対応することとなると考えられる。今後、相談に対応する規制当局の体制をさらに充実し、また、相談結果について可能な限り公表していただきたい。

(答)
ブリッジング試験の実施に関する原則は、本指針に述べたとおりであるが、個々のブリッジング試験については、医薬品の特徴や対象疾患をとりまく医療環境、類似薬の臨床経験の蓄積等を考慮して決める必要がある。したがって、医薬品機構の治験相談を利用して、個々の医薬品についてどのようなブリッジング試験が必要となるかを相談することが薦められる。治験相談の内容の公表については、企業秘密の保持の観点からその詳細を公表することはできないが、一般論化したケースを公表するルールを作ることを検討したい。