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通知本文

薬審第227号
平成7年3月20日

各都道府県衛生主管部(局)長殿

厚生省薬務局審査課長

治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて

近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されている。

このような要請に応えるため、日・米・EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)が組織され、品質、安全性及び有効性の3分野でハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われている。

治験中に得られる安全性情報については、昭和55年10月9日薬発第1330号薬務局長通知によりそのすみやかな報告を求めているところであるが、本通知は、ICHにおける三極の合意事項に基づきその具体的な取り扱いに関して指針を示すものである。

貴管下関係業者に対し周知方よろしくご配慮願いたい。


治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて
目次


治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて

1.はじめに

治験中に得られる重要な安全性情報の収集方法を各国で統一し、必要に応じて適切な措置を講じることは有益なことである。その際、手続きのみならず、用語や定義についても国際的な合意がなされることが望ましい。医科学国際組織委員会(Council for International Organizations of Medical Sciences;CIOMS)の作業委員会による市販中の医薬品についての副作用の緊急報告と定期的な安全性情報の報告に関する先駆的な活動は参考となる。しかしながら、開発中の医薬品、その中でも特に開発初期段階にあるものやいかなる国においてもまだ市販されていないものについては、特別な配慮が必要となる。一方、諸外国において既に市販中である医薬品については、市販後の情報として得られる安全性データは、当該医薬品がまだ治験段階にある国の規制当局にとって関心が持たれるものである。従って、市販前後における安全性情報の報告の考え方とその実施は相互に関連しているとみなすのが妥当であり、実際的でもある。

本通知の目的は、治験中に得られる安全性情報の取り扱いに関する下記の事項について国際的な合意を得ることである。

2.安全性情報の報告に関連する用語と定義

1)基本用語

有害事象、副作用、予測できない副作用という用語の定義については、WHO 国際医薬品モニタリングセンター(Uppsala,Sweden)の30を超える協力センターで合意がなされている。*1 これらの定義は、臨床試験を含む全ての場合に適用し得るものであるが、特に承認前の開発段階で使用するためには若干の修正が必要である。WHO協力センターでの定義を参考として、本通知における定義は以下のとおりである。

@ 有害事象(Adverse Event (or Experience))

医薬品が投与された患者または被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。必ずしも当該医薬品の投与との因果関係が明らかなもののみを示すものではない。

つまり有害事象とは、医薬品が投与された際に起こる、あらゆる好ましくない、あるいは意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)、症状、または病気のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。

A 副作用(Adverse Drug Reaction)

病気の予防、診断もしくは治療、または生理機能を変える目的で投与された(投与量にかかわらない)医薬品に対する反応のうち、有害で意図しないもの。

医薬品に対する反応とは、有害事象のうち当該医薬品との因果関係が否定できないものを言う。

B 予測できない副作用(Unexpected Adverse Drug Reaction)

副作用のうち、治験担当医師用治験薬概要(Investigator's Brochure以下、治験薬概要)に記載されていないもの、あるいは記載されていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないもの。

2)重篤*2 な有害事象または副作用

治験中に有害事象が発現し、当該医薬品との因果関係が疑われる(すなわち副作用)と、その後の開発方針に重要な変更(用法・用量、患者層、必要な観察・検査項目、同意書式等の変更)が必要となる場合がある。これは、生命または生理機能を脅かすような副作用の場合に特に言えることである。このような副作用は直ちに規制当局へ報告されるべきである。

従って、その副作用の性質(重篤度)、またはそれが重要な予測できない情報であるか否かにより緊急報告の必要性の有無を判断するための医療上または行政上の特別な基準が必要となる。

現在使用されている、または議論中の各国の規制上の定義などを検討した結果、下記に示す項目がそれらの意図するところを包含すると考えられる。

重篤な有害事象または副作用とは、医薬品が投与された(投与量にかかわらない)際に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごとのうち、以下のものを言う。

  1. 死に至るもの
  2. 生命を脅かすもの*3
  3. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの
  4. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの
  5. 先天異常を来すもの

その他の状況、すなわち即座に生命を脅かしたり死や入院には至らなくとも、患者を危機にさらしたり、上記a〜eのような結果に至らぬように処置を必要とするような重大な事象の場合には、緊急報告を必要とするか否かを医学的および科学的根拠に基づいて判断する必要があり、通常、それらも重篤とみなすべきである。この例としては、救急室等で集中治療を必要とする気管支痙攣、入院には至らないものの血液障害または痙攣を来した場合、薬物依存症または薬物乱用などが挙げられる。

3)副作用の予測可能性

緊急報告の目的は、重篤な副作用に関する新しい重要な情報を規制当局、治験担当医師およびその他の適切な関係者に提供することである。従って、通常、緊急報告は今までに観察または報告されていない事象に関して行うこととなり、ある事象が「予測できるものか否か」を判断するための指針が必要になる。(当該医薬品の薬理学的性質から予測の可否を判断するのではなく、現在までに観察されたか否かの観点から予測できるかどうかという意味である。

2)の1)のBで述べたように「予測できない」副作用とは、副作用のうち、治験薬概要に記載されていないもの、または記載されていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないものを言う。治験薬概要が改訂されるまでは、当該事象の発現の場合、緊急報告が必要となる。

ある有害事象または副作用が予測できるか否かの判断は、次のような資料または状況に基づいて行われる。

3.緊急報告のための基準

1)報告すべきもの

@重篤で予測できない副作用

 重篤で予測できない副作用は、全て緊急報告の対象となる。これには副作用の自発報告、及びデザイン、目的に関係なく全ての臨床試験または疫学研究中の副作用報告も含まれる*4。また、治験依頼者または企業に直接報告されない症例についても適用される(例えば出版物中に見られるものなど)。報告の情報源(臨床試験、自発報告など)は、常に明確にされるべきである。

 重篤であっても予測できる副作用は、通常、緊急報告の対象とはならない。また、臨床試験中に生じた重篤な事象で当該医薬品との因果関係が否定されたものは、それが予測できるか否かとは関係なく緊急報告の対象とはならない。重篤でない副作用は、それが予測できるか否かとは関係なく、通常、緊急報告の対象とはならない。

治験依頼者または企業は、重篤で予測できない副作用の報告を受けた場合、それが緊急報告の必要条件に当てはまる内容の場合は、情報源が何であれ該当する規制当局に迅速に報告しなければならない。

治験における症例については、因果関係の評価がなされるべきである。治験担当医師または治験依頼者により当該医薬品と因果関係が示唆されると判断されたものは、全て副作用とみなされる。市販中の医薬品に関する有害事象の報告(自発報告)は、当該医薬品と因果関係がある可能性が大きい。

医薬品と事象との因果関係の大きさを記述するために多くの用語、尺度が用いられるが、「因果関係があるらしい」、「因果関係が疑われる」または「因果関係は否定できない」のような用語は、因果関係を示唆していると考えられる。

Aその他

重篤な副作用の症例報告以外にも、迅速に規制当局に連絡し、状況に応じた適切な医学的・科学的判断を下さなければならない場合がある。一般的には、当該医薬品のリスク・べネフィット評価に著しく影響を与えるような情報、または投与方法や治験計画全体の変更を考慮しなければならないような情報がそれに当てはまる。下記のような例が挙げられる。

  1. 「予測される」重篤な副作用の発現頻度が臨床的に重要と判断されるほど増加した場合。
  2. 生命を脅かすような疾患に使用される医薬品がその効果を有しないなど、患者が大きな危険にさらされる場合。
  3. 新たに得られた動物試験成績から安全性に関する重大な知見(発癌性など)が得られた場合。

2)報告期限

@ 死亡または生命を脅かす予測できない副作用

副作用の中には、当該医薬品、またはその効能・効果、用法・用量、剤型等が未だ承認されていない国の規制当局に対して、極めて迅速な報告が必要となる程度に重要なものもある。治験計画の中止またはある種の制限を考慮せねばならないものである可能性もあるからである。治験中に生じた死亡または生命を脅かす予測できない副作用については、迅速な報告が必要である。この場合、治験依頼者は、その副作用が緊急報告の必要条件に当てはまると知った日から7日以内のできるだけ早い時期に規制当局に電話またはファックス等で知らせ、可能な限りの完全な報告書をさらに8日以内(計15日以内)に提出すること。この報告書には、同一または類似医薬品に関連する過去の経験を含めて、その新しい知見の重要性および影響の評価を記載する必要がある。

A その他の重篤で予測できない副作用

重篤で予測できない副作用のうち、死亡または生命を脅かすもの以外については、治験依頼者は、その副作用が緊急報告の必要条件に当てはまると知った日から15日以内のできるだけ早い時期に報告すること。

B 報告に必要な最低限の情報

上記に示す報告期限内に症例報告に必要な十分な記述や評価を行うための情報が入手できない場合もある。しかしながら、緊急報告の目的に鑑み、初回報告は、少なくとも次の情報が得られている限り期間内に提出すること。

患者が特定されていること、被疑薬、報告の情報源、重篤で予測できない副作用と判断できる事象または転帰、及び治験においては被疑薬と当該事象または転帰との因果関係が否定できないこと

なお、その後も追加情報の入手に努め、入手次第速やかに報告すること。

3)報告方法

特定の報告様式は定めないが、緊急報告書中には基本的な情報項目(入手できる範囲で)が記載されることが重要である。記載が望ましいと考えられるデータ項目は、別添に示されている。緊急報告時に全てのデータが得られていない場合には、それらを追加入手するように努力する必要がある。

全ての報告は、当該医薬品を開発中の国の規制当局、及び報告が必要とされる他の公的な機関に提出されなければならない。

4)ブラインド治療症例の取り扱い

二重盲検試験のように治験依頼者も治験担当医師も個々の患者の治療内容を知らされていない時に重篤な事象が生じた場合、その患者のキーを開けるべきか否かの決定に迫られることがある。治験担当医師またはコントローラーによりキーが開けられれば、治験依頼者もその患者に対する治療内容を知ることになる。試験結果の最終解析が終了するまで全患者に対して盲検性を維持することは望ましいことであるが、ある重篤な事象が緊急報告するべきものである(予測できない事象であり、因果関係が疑われる)と判断された場合は、その症例についてのみ開鍵されることが望ましい。しかしながら、可能であれば、最終結果の解析・評価を担当する統計解析担当者らに対しては盲検性が維持されることが望ましい。 盲検性を維持する利益よりも不利益の方が大きい場合もある。盲検性を維持した場合、プラセボや比較実対照薬(通常は市販薬)による有害事象発現症例が不必要にデータべースに登録され、最終的に開鍵した時点(規制当局に報告をした後、数週間から数ヵ月後になると思われる)で治験依頼者と規制当局のデータべースを確定的なものに改めなくてはならなくなる。事象が新規、重篤なもので当該医薬品との因果関係が疑われた際に、盲検性を維持したまま治験薬概要を改訂し、関係者に情報を知らせることは、適切でなく、また誤解を生じさせることにもなる。さらに1症例のみの盲検性を破っても、通常はその後の試験の実施や最終のデータ解析に有意な影響を与えることはほとんどないと考えられる。

しかしながら、致死的またはその他何らかの重篤な転帰が有効性の主要評価指標である場合は、盲検性が破られるとその試験の信頼性に問題が生じる可能性がある。このような、またはこれに類似する状況の場合には、重篤な有害事象のうち、疾患に関連する事象として取り扱い、通常の緊急報告の対象とはしない事象について、治験依頼者と規制当局との間であらかじめ取り決めをしておくことが適切であることもある。

5)その他の問題

@ 比較実対照薬またはプラセボに関連した副作用

比較実対照薬に関連した副作用を対照薬提供企業に報告するか、または規制当局に直接報告するかは、治験依頼者の責任により決定すること。治験依頼者は、決定に従い、当該副作用を対照薬提供企業または規制当局に報告すること。

プラセボに関連する事象については、通常は「副作用」の要件を満たさず、従って緊急報告の必要はない。

A 複数の剤型または用法・用量のある医薬品

副作用の緊急報告は、正確を期すため、適応症、剤型、投与方法等ごとに行い、併せて他の適応症や剤型についての情報を提供すること。

複数の剤型、処方、投与方法をもつ有効成分が治験中または市販中であることは珍しくない。剤型、処方、投与方法等により安全性に著しい差が生じることもあり、また、同じ製剤が異なる適応症、患者集団に用いられるときも同様である。従って、それぞれの場合によって「副作用がどの程度予測できるか」も異なってくると考えられ、それぞれに治験薬概要を分けて作成することが必要な場合もある。しかしながら、この種の資料には他の剤型等にも当てはまる包括的な副作用情報(全身的副作用等)も記載することが望ましい。必要があれば、剤型または用法特有の安全性情報などの個々の検討内容も含めるべきである。

1つの剤型または用法に関して観察された副作用が緊急報告の対象となる場合、その有効成分を含む他の剤型または用法に対してもその情報が提供されることが望ましい。

これは、場合によっては過剰報告または不必要な報告になるかもしれないが(例えば、静脈内投与で生じた静脈炎についての報告を経口投与だけで開発、販売されている国の規制当局に知らせること等)、過少報告は避けられる。

B 試験終了後の事象

治験が完全に終了(治験計画書で定められた治療後の追跡調査も含む)した後に、重篤な有害事象の発現について治験担当医師から治験依頼者に報告がなされることがある。ラグタイムがどんなに長くても、これはその試験についての報告であるので緊急報告の対象とされるべきであり、因果関係の評価と予測の有無により緊急報告が必要か否かが判断される。

6)治験担当医師と治験審査委員会に対する安全性に関する新たな情報の報告

安全性に関して新たに得られた情報については、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCP)に従って適切な対応をとること。

治験依頼者は治験薬概要を適宜改訂し、安全性に関する情報を最新のものにしておく必要がある。


*1 Edwards,I.R.,et al,Harmonisation in Pharmacovigilance. Drug Safety 10(2):93-102,1994.

*2 「重症」という言葉は、ある特定の事象の強さ(激しさ)を表現するために使われることが多い(心筋梗塞の程度が軽度(mild)、中等度(moderate)、高度(重症、severe)のように)。しかしながら、重症の場合でも医学的意義は比較的小さい(重症の頭痛のように)こともある.重症は「重篤」と同義ではない。

「重篤」は、患者の生命または機能を危険にさらす事象に関連した患者や事象の転帰または処置基準に基づく用語である。重篤度(重症度ではない)が規制上の報告義務を規定する指針になる。

*3 「生命を脅かす」とは、その事象が起こった際に患者が死の危険にさらされていたという意味であり、その事象がもっと重症なものであったなら死に至っていたかもしれないという仮定的な意味ではない。

*4 本通知は、治験中に得られる安全性情報の取り扱い、重篤で予測できない副作用の緊急報告について規定したものであるが、例えばある医薬品が日本では治験中で米国では市販されている場合、米国での市販後の疫学研究中に重篤で予測できない副作用が報告された場合には、日本の厚生省にも本通知に基づいた緊急報告が必要となる.


別添:重篤な副作用の緊急報告に含まれるべき必須情報

以下の項目リストは、CI0MS-1、WHO国際医薬品モニタリングセンター、及び各国の規制当局が現在使用中あるいは提案している書式やガイドライン中で既に確立されている事項に基づいたリストである。項目中のいくつかは、状況によっては必要のないものもある。緊急報告の目的に最低限必要な情報は、

患者が特定されていること、被疑薬、報告の情報源、重篤で予測できない副作用と判断できる事象または転帰、及び治験においては被疑薬と当該事象または転帰との因果関係が否定できないこと

である。

また、リスト中の他の項目についてもできるだけ多くの追跡情報を得るように努める必要がある。

1.患者の詳細

2.被疑薬

3.他の治療

併用薬(一般用医薬品を含む)、併用療法についても被疑薬と同様の情報を提供する。

4.副作用の詳細

当該副作用を重篤と判断した基準、発現部位と重症度を含めた副作用の詳細を示す。報告された徴候、症状の詳細に加え、可能な限りその副作用の診断名を特定するよう努めるべきである。

5.報告者の詳細

6.治験依頼者または企業の詳細、及びその他の連絡事項


治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて Q&A

Q1.本通知の適用範囲、及び国内における報告先を明確にしていただきたい。

日本、米国、またはEUのいずれかにて治験中にある医薬品に関して得られる安全性情報が対象となる。

1)日本で治験中にある医薬品

新有効成分として我が国で治験がなされている医薬品について、実施中の治験で重篤で予測できない副作用が発現した場合、あるいは疫学研究中や自発報告により重篤で予測できない副作用が報告された場合(外国を含む)には、本通知に基づいて厚生省審査課に緊急報告を行っていただきたい。

また、効能追加、新剤型、新投与経路等の医薬品として治験がなされている場合には、当該治験に関係する副作用であれば審査課に、それ以外の副作用については安全課に報告することとする。

なお、上記の判断が難しい場合には、事前に担当課に相談されたい。

2)米国、あるいはEUで治験中にある医薬品

米国、あるいはEUで治験中にある医薬品について、我が国(治験中、市販後等を問わない)で重篤で予測できない副作用が発現した場合には、必要とされるそれぞれの規制当局に緊急報告が必要になる。

Q2.報告期限は日曜、休日を含めて計算すると理解してよろしいのか。

よろしい。

Q3.本文3.1)@で「治験担当医師や治験依頼者により当該治験薬と因果関係があると判断されたものは、‥‥」とあるが、治験依頼者が単独で因果関係の評価ができると考えてもよろしいのか、また、因果関係の評価に際しての治験担当医師と治験総括医師、治験依頼者の関わりについて説明願いたい。

発現した事象と治験薬との因果関係は、基本的には実際に治験を実施している治験担当医師によって評価がなされるべきである。

しかし、治験担当医師により因果関係が否定された事象でも、治験依頼者が先行する治験や実施中の治験の他施設での情報等を考慮した際に因果関係が疑われる等の状況にある場合には、当該治験担当医師や治験総括医師等とも相談の上で因果関係の再評価を行っていただきたい。

Q4.「因果関係不明」の症例はどのように扱えばよいのか。

「因果関係不明」は、因果関係が否定できないととるべきで、それが重篤で予測できない有害事象であれば、緊急報告の対象となる。

Q5.因果関係を評価するための指針を作っていただきたい。

因果関係の評価の方法を一律に規定することは難しい。基本的には、因果関係が否定し得ない事象は「因果関係あり」に分類し、必要な手続きをとっていただきたい。

投与中止後の当該事象の経過(投与を止めると当該事象も消失するか否か)、また、投与を中止し当該事象も消失した後の再投与時に当該事象が再発現するか否かに関する情報等は、因果関係の評価に有益な情報を与えると思われる。

Q6.比較実対照薬に関する副作用の報告方法は、提供企業を通して報告するか、または直接規制当局に報告するのかどちらかに統一すべきではないか。
また、厚生省への報告先はどこになるのか示していただきたい。

治験依頼者が直接報告した方がより迅速な報告ができると思われること、一方で提供企業の方が当該対照薬に関する情報を多く保有しているためより的確な報告ができるとも思われること等、どちらにも一長一短がある。よって、このような場合にいずれの報告方法をとるかを依頼者、提供会社間であらかじめ決めておき、両者が協力し合って的確な報告を行っていただくことが重要であると考える。

報告先については、当該副作用がその後の治験の実施に影響を与えるかも知れないこと、一方で対照薬は既承認薬であることを考慮し、審査課、安全課双方に提出していただきたい。

Q7.二重盲検比較試験中に重篤な副作用が発現したが、何らかの理由によりすぐにキーを開けることができない場合には、どのように対処すべきか。

やむを得ず当該患者のキーがすぐに開けられない場合には、盲検下でもとりあえず当該副作用の発現に関する第一報をキーを開けることができない理由と共に提出していただきたい。

その後、開鍵してより詳細な情報が得られれば、追加報告をしていただければよいと考える。

Q8.別添「報告者」は治験担当医師と理解してよろしいのか。

通常、報告者は治験担当医師になると思われる。

Q9.治験担当医師用治験薬概要に記載すべき安全性情報を定めていただきたい。

現在、ICH E6 GCPグループにおいて治験担当医師用治験薬概要の作成方法に関する検討を行っているところである。そこでの結論を待って治験薬概要の作成に関するガイドラインを示す予定である。

基本的には、先行する臨床試験及び海外での臨床試験結果から得られている安全性情報、並びに動物試験から予測される安全性に関する情報を既述するとともに、新たに得られた情報を盛り込み、適切な頻度で改訂をしていくことが必要である。

Q10.ハーモナイズされた報告用紙の作成を望みます。

報告用紙の様式を定めることでより迅速で確実な報告が行えるようになり、また各極で情報の統一化が図れると思われる。なるべく早い時期に報告様式を定めたいと考えているが、当面は、GCPマニュアル別紙4を参考にされたい。