真空管アンプを自作する前に



1.
はじめに

 真空管アンプを自作しようとされる方には色々な理由があると思います。 ここでは、一般的な回路設計、製作上の注意事項等を筆者のなりに纏めて紹介します。 従って、未熟さによる解釈の間違い等もあるかも知れませんし、音質追求至上主義の方の意見とは全く逆のこともあるかも知れません。
 以上のことを予めご了承頂き、記載内容の採用にあたっては、内容を十分吟味頂き、また
真空管アンプの自作は、製作中の怪我、火傷、高圧感電、稼動中の火災等の様々な事故、リスクの伴う危険行為であることを十分ご理解のうえで、自己責任でお願いします。当方は発生する如何なる不都合にも責任を負いかねますので、予めご了解下さい。

2.部品の選定基準
 真空管アンプの製作には、真空管以外に以下の写真のような部品を使用します。


金属皮膜抵抗
キンピ
金属皮膜抵抗
キンピ
可変抵抗
ボリューム
発光ダイオード
LED
インダクタンス
コイル
フィルムコンデンサ
フィルムコン
オイルコンデンサ
オイルコン
フィルムコンデンサ
フィルムコン
電解コンデンサ
電解コン
巻線抵抗
マキセン
酸化金属抵抗
サンキン
メタルクラッド抵抗
メタクラ
トランジスター



(1)抵抗器(俗に抵抗)
 抵抗には以下の種類があり、それぞれ使用する場合には抵抗で消費させる電力条件、温度条件等を加味して選定する必要があります。
 抵抗はその名の通り電流を流れにくく(抵抗)し、電流を制限する素子です。電流を阻害されることで電気エネルギが熱となり発熱します。
 従って、誤った低格電力の素子を選定した場合、一瞬にして、或いは時間経過と伴に、断線、発煙/発火に至る可能性があります。
 一般的な素子ですが、時限爆弾となってしまう場合が多々ありますので注意してください。
 また、電灯のニクロム線と同じように、電流を流すことで抵抗体が細るため、故障モードは断線となります。

@炭素皮膜抵抗(俗にカーボン)
 炭素皮膜抵抗は文字通り炭素皮膜を抵抗体に使用した素子です。
 電流を流す抵抗皮膜の断面積を変えることで設定した抵抗値を作っています。
 高抵抗ほど抵抗体が細いことになります。
 炭素被膜抵抗は高温状態とした場合、抵抗体が細ってしまい、最悪焼損を伴い断線に至ってしまいます。(抵抗値は上がっていきます)
 従って、一般に炭素被膜抵抗は温度が高い状態(環境温度と自分自身の温度上昇を合わせて表面温度が50度以上)では使用させてはならないといわれております。
 常温で使用した場合、定格電力で使用した場合には、間違いなく表面温度50度(内部の素子温度は90度)を超えてしまうでしょう。
 音質は暖かい癖の無い音質と言われています。
 価格は一般的なものは安価。

定石 
 常温が確保できる場合は、定格電力の50%以下で使用する。
  例)250mW消費する部分には1/2W以上の定格の素子を使用する。
  キャビネ内で温度40度位に温度が上昇する場所で使用する場合は、25%以下、もしくは迷わず温度耐力のある素子を選定する。(出力管のソケットに直付けするような場合は要注意)
  正確な抵抗値の安定を求められる部分には使用してはならない。
  万一の素子の発煙/発火の恐れがあり、絶対に付近には燃える部品は置かない。(紙エポの基板等)

A金属皮膜抵抗(俗に金皮)
 金属皮膜抵抗は文字通りベリリウム等の金属皮膜(箔)を抵抗体に使用した素子です。
 金属皮膜抵抗も炭素被膜抵抗と同様、(金属)皮膜の断面積を変えることで、抵抗値を設定しています。
 金属皮膜抵抗は炭素被膜抵抗と比較して、抵抗値が正確であること、温度の影響を受けにくい等のメリットがあります。
 故障モードは断線で、素子自体の発煙/発火による焼損被害は少ないと言われています。
 音質は金皮の癖が出ると言われますが音質重視の素子です。
 価格は比較的高価。
定石 
 常温が確保できる場合は、定格電力の50%以下で使用する。
 例)250mW消費する部分には1/2W以上の定格の素子を使用する。
 キャビネ内で温度40度位に温度が上昇する場所で使用する場合は、25%以下とする。

B酸化金属皮膜抵抗(俗に酸金)
 酸化金属皮膜抵抗は文字通り金属酸化物を抵抗体に使用した素子です。
 酸化金属皮膜抵抗も炭素被膜抵抗と同様、(金属)皮膜の断面積を変えることで、抵抗値を設定しています。
 酸化金属皮膜抵抗は温度環境が厳しく比較的大容量の素子を求められる場合に使用します。
 故障モードは断線で、素子自体の発煙/発火による焼損被害は少ないと言われています。
 音質は電流が流れにくい物質(金属酸化物)を通すことからザラツキ感あると言われますが、それでは半導体は何なんだということになります。
 価格は比較的安価。
定石
 常温が確保できる場合は、定格電力の50%以下で使用する。
 例)250mW消費する部分には1/2W以上の定格の素子を使用する。
 キャビネ内で温度40度位に温度が上昇する場所で使用する場合は、25%以下とする。

C巻線抵抗器/セメント抵抗器
 巻線抵抗は文字通りニクロム等の高抵抗金属線をコイル状に巻きつけた素子です。
 巻き線の太さと長さで定格電力と抵抗値を設定しています。
 陶器の中空ボビンにコイル状に巻きつけしたものと、コイル状の巻き線を陶器で固めたものがあります。
 放熱に気をつければ、温度環境が厳しく、大容量の素子を求められる場合に使用します。
 故障モードは断線、素子自体の発煙/発火による焼損被害は少ないと言われています。
 音質は巻き線であることから磁界、インダクタンスの影響を受けたくない回路には使用を避ける方が良いでしょう。
 価格は比較的安価。
定石
 50度以下で定格電力の50%以下で使用する。
 高周波信号回路には使用しない。
 磁界の影響を受けては困る場合は無誘導タイプを使用する。
 簡単に燃えては困る場合にはこれを使用する。

Dメタルクラッド抵抗器(俗にメタクラ)
 抵抗体を金属ケースに入れ固めたもので、放熱フィンがつけられている。
 低抵抗の素子で、シャント抵抗等としてしようされるような常時発熱ながらも、高精度を求められる回路に使用する。自己バイアス回路のカソード抵抗等に使用される。
 音質についての評価は不明。(即ち自然ということか)
 価格は高価で、時として使用をためらう。
定石 
 50度以下で定格電力の50%以下で使用する。
 高精度を要求され、簡単に燃えては困る場合にはこれを使用する。

(2)コンデンサ

(3)ダイオード

(4)トランジスタ

3.真空管アンプの製作に使用する工具(ツール)

真空管アンプの製作には、通常のドライバー、ニッパー、ラジオペンチ、ワイヤーストリッパー、半田ごてといった一般的な電工工具に加えて、シャーシの加工に必要な工具や、製作した真空管アンプの性能等を評価するための測定器が必要とないます。 あせらず一般的なものから順番に備えるしかないですね。
私も、 道具を揃えるのに数年以上掛かりました。もともと持っていたものをあわせても、以下の冶工具を揃えました。


シャーシパンチャ ホイルソー テスタ(デジタル) テスタ(アナログ)


発振器 低歪発振器 電子電圧計 オシロスコープ 歪率計


(1)シャーシパンチャ ・・・ 真空管を取り付ける穴をねじの力で開ける道具
(2)ボール盤
(3)ホイルソー ・・・ 真空管を取り付ける穴をドリルで開ける道具
(4)金鋸
(5)オシロスコープ
(6)オシレータ(低周波発振器、低歪率発振器)
(7)電子電圧計(ミリボル)
(8)テスタ(アナログ、デジタル)
(9)歪率計
(10)各種ドライバー(±)
(11)各種スパナ、レンチ等
(12)半田ごて