山口トート千秋楽
− エリザベート −
帝国劇場(平成12年8月29日)


山口祐一郎オンステージ!
山口トート楽は、もうこの一言につきます。 何度ものショーストップ、いつもに増してのなが〜いタメ。いつもと違う振り。 そして、笑いいっぱいのカーテンコール。

まずは第1幕第4場の「愛と死の輪舞」
日がたつにつれて徐々にタメが長くなっていた ♪生きたお前に愛されたいんだ・・・♪は
♪生きたお前にあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ (そんなにのばしたら「いされたいんだ」が間に合わないよ〜っ!)  ・・・ぁぁぃされたいんだ・・・♪ (ふぅよかった、メロディにおさまった!)
と手に汗握る「愛と死の輪舞」でした。もちろん歌のあとは1回目のショーストップ。 エリザベートが部屋に連れて行かれるまでの間が、微妙に長かったのは いうまでもありません。

第9場の「最後のダンス」
やはり‘明るいストーカー’っぽい山口トートですが、ますます「もう今日で 終わりだけど、何が何でもおれのもんだぁー」といつも以上の力強さで歌いあげる。 一路エリザベートもいつも以上に目に涙し、必死に逃げ回っていたように見えます。 そんな迫力で帝劇中を手中にしつつ、♪俺さ〜のあとは拍手が止まらないのはいつものこと。 そしてトートがあげた手を下ろすタイミングで拍手が止まるのが恒例でしたが、 今回はちがう。手を下ろしても拍手は止まらない。そしてトートはどうしたか。 手のひらをくるっと回し握って、拍手をぱしっと止めました。まるで「笑って いいとも」顔負け。感動しつつ、ふふっと心のなかで笑ってしまったのは私だけ だったでしょうか。

その流れで第11場の「私だけに」は、一路エリザベートも私も涙涙の心締め 付けられる「私だけに」になりました。

ちょっとした小ばなしとしては、「ウィーンのカフェ」でエルマーら革命家達が トートと握手する場面。いつもは握手の4人目の野沢ジュラは案内のために手を 差し伸べるだけで握手はしないのですが、この日に限ってトートとしっかり握手。 これも山口楽ならではだったのでしょうか。

とうとう来ました。私にとってメイン(?)の場面、第2幕「闇が広がる」と マイヤーリンク
♪闇が広がる・・・は私が見た中で、いちばんルドルフの切なさが伝わってきて、 オペラグラスが曇るほど涙してしまいました。(しばらくこの井上くんの歌声が 聞けない!っていう寂しさも込みだったかもしれませんが)何よりこれまでで いちばん「トートしか頼れない。あなたについていきます、いやそれしかない・・・」 というルドルフの気持ちが伝わってきて、もうこちらが切なくて切なくて。 もちろんここで一度ショーストップ。次の場面に移って革命家達が出てきても、 拍手が止まらず井上くん含めたみんな(山口トート除く)が目に見えて戸惑う 様子が見えました。

エリザベートとの再会のシーンも哀しみがいっぱいだったのは言うまでもあり ません。そして、井上ルドルフはいつも以上に汗だく。

そしてもう、今回びっくりだったマイヤーリンクの場面。 ご存知の通りトートとルドルフのキスシーンがありますが、いつもならキスの 前の見つめあいは、ほんの少しの間。しかし、今回は長い間見つめあう。思わず 「えっ、長い!」と感じただけなのか、ほんとに長かったのか。とにかく2人の 間の空気が止まって、そこだけ世界が出来上がっていたのです。 そして、トートのキス。これも長い。思わず叫びそうになるくらい切なくて長い。 そしてなんと、キスの途中でだらんといつもは下がったままの井上ルドルフの右手が そっと山口トートのおなかに添えられた!!!まるで普通の映画の長いキスシーンで、 恋人同士が思わず相手の体に手を当ててしまうのと同じように・・・。 あのシーンは今でも目に焼き付いて離れません。ああ、ルドルフはトートに 魅せられて死んだのだなぁ・・・と。

余談ですが、最後の場面一路エリザベートが山口トートについていくところ。 山口トートのあまりに無邪気なうれしそうな笑顔が、前日にみた「百年の物語」 で松嶋菜々子が「いっしょに満州に行きます」と言ったときの平吉と同じ笑顔(笑)。

とうとう最後のカーテンコール。もちろんスタンディング・オベイションの嵐で 誰も帰ろうとしません。そして印象的だったのが鈴木綜馬さんの涙。四季退団後 初のミュージカルかつ山口さんとの共演ということで感無量だったのでしょうか。

そして一路さんと山口さんが出てきて挨拶。一路さんは「山口さんだけ先に 千秋楽を迎えてしまうことが寂しい」と涙ながらに語っていました。その横で、 山口さんはにこにこ。「本日は東宝ミュ〜ジカル、エッリーザベートにお越しく ださいましてまっことにありがとうございます。わたくしの千秋楽ということで・・・ (中略)では、黄泉の世界の皇后エリザベートに盛大な拍手を〜〜〜〜〜っ!」 と大きな手振りで話を一路さんに戻す。もう、一路さんは泣いて笑って大変な状況に なっていたのですが、あまりに鳴り止まない拍手に、最後は「もう・・・終わって いいですか・・・?(笑)」と思わずひとこと。

そして、袖に控えていたほかのキャストがみんな出てきたのですが、ここでまた おかしかったのが鈴木さん。あの晩年のフランツの格好で、山口さんのお隣に ぴょんぴょん横跳ねで登場(笑)。そのミスマッチがまたかわいいのなんの・・・。 これで観客が帰るわけもなく、誰もいない幕が再び最後にあがります。あれっと 思うと、下手から一路さんの手を無理やりひいた山口さんが手をふりながら上手へと 舞台を横切ります。終わりかな・・・とおもいきや、こんどは上手から一路さんの手を 無理やりひきながら山口さんが舞台を横断。なんとも山口さんらしいお茶目な 終わり方(笑)。

千秋楽の異様な熱気って、なんだか楽しいものですね。もう10日以上たって いますが私の頭のなかでは、たまにエリザベートの台詞が頭をよぎります。 「嫁と姑」と耳にするだけで、♪よめと〜しゅうとめ、大戦争〜!・・・てな具合に。 これじゃ橋田ドラマなんて見た日にゃ、もう頭の中がエリザベートにトリップ してしまいそう。

来年、井上くんがどんなに成長してるかも含め、とにかく再演が楽しみでなりません。