しげちゃんの観劇レポート
tpt 蜘蛛女のキス


こちらのサイトによく顔を出してくださっているソプラノ歌手のしげちゃんの 21世紀最初の観劇のレポートです。ミュージカルの蜘蛛女ではなく、ストレート プレイの「蜘蛛女のキス」を観劇し、早速ご報告いただきました。



私の21世紀初芝居、tpt「蜘蛛女のキス」です。ストレートプレイで、しかも 「あの」ベニサンピットで7000円とは最初少し躊躇したのですが、年末病気に なるまで頑張ったし、自分へのお年玉、とおもって、ええい、と前日に電話して チケット取ったのですが、損しませんでした。

ミュージカルと映画は私観ていません。映画はこんどビデオを借りてみようかな、 と思っています。ミュージカルは・・・去年のじゅにさんとがぶさんのライブ と、CDのみ。

えー、芝居ですが。思想犯のヴァレンティンとオカマのモリーナとじゃ、 まるで正反対の人間のような気がするけれど、現実がイヤで現実を変えようと してもがくヴァレンティンと、現実がイヤで現実から逃れようとして映画の 世界に浸り込むモリーナは、表裏一体で、1人の人間の裏と表を形作っている のが見えました。

最初は反発しあって、「なんでこんな奴と」って考えがお互いにびしばし伝わって くるんだけれど、結局お互いに影響しあってモリーナはヴァレンティンの為、 現実社会を変えようとする行動の中で死んで、ヴァレンティンは拷問を受けた 傷から敗血症になって、医者が可哀相に思ってくれたモルヒネの作り出す幸せ な恋人との幻想の中で死んでゆく。

モリーナが監獄から出てゆこうとするシーンで2人が抱き合ってキスして、 一瞬カットアウトになって2人に真っ白のサスがあたって、お互いの死に様を お互いの口から語り合う。その後に抱き合うのですが、あの瞬間に、今まで バラバラの肉体だった2人が死の世界で本当の意味で1つになった、って 思いました。この最後5分がすごかったです!!! 自然に涙がこぼれてきました。

ヴァレンティンの高橋和也さん(元ジャニーズの男闘呼組)は乱暴なのは乱暴 だけれど、26歳の乱暴さよりもっと幼稚だったけれど、後半、モリーナに心 を開いてからのナイーヴさはよかったなあ、おもいました。モリーナの山本亨 さん(あきらって読むんですね。とおるさんかと・・・)、最初から気持ち 悪さを感じさせない、「アタシは生まれたときからこうなのよ」って感じで オカマ言葉も動作も染みついていました。妖しかったし、かわいかったですよ!!! 地毛を伸ばして、金髪に染めて。ヴァレンティンの作ったハムサンドを食べる シーンなんか、とっても愛おしかった。

映画の内容を語るシーンでは最初の方は何となく台詞回しに不自然なところも あるのですが(文節が切れ切れすぎだったんです)、最後はそんなの感じさせ なかったし、大きな肉体を(高橋さんより一回り大きかった)そんなに大きい、 と感じさせない、女性的しなやかさを感じました。私、負け?って思ってしまった(笑)。 元・JACなのですね・・・この方。

開演前、アルゼンチンタンゴの歌の流れる中、壁におそらく最初の「キャット・ ピープル」と思われる映画がずーっと投影されていました。それがフラット なところじゃなくて、上手側のコンクリート打ちっ放しで、しかも段々がついて いるところに映し出されていました。はっきり見えないところがまた・・・ うん、なのです。

原作でも、ミュージカルでもモリーナの語る映画は複数になっていましたが、 芝居では「キャット・ピープル」一本に絞られ、「蜘蛛女」は終盤近くの台詞 「お前はさしずめ蜘蛛女だな。男を絡めて締め付ける」「蜘蛛女・・・あたし、 それ気に入ったわ」にしか出てきません。それでも、大変印象的な台詞でした。

この作品は原作のプイグ自身の手による戯曲なのですが、私が知っているミュー ジカルの印象・・・つまり、がぶさん&じゅにさんのライブと、CDから受けた 印象は、この戯曲よりメッセージ性に薄れているのでは?という気がしてしまい ました。あのお二人のライブにも涙したのですが、種類の違う涙だったように 思います。ミュージカルに映画をちゃんと観ていないから何とも言えないの ですが。どうなのかをちゃんと確認するためにも、どなたか日本でのミュージ カル上演権を買って、また日本で上演してくれないかな、と切に切に願って います。