るなさんのレポート
エリザベート大阪公演 内野聖陽トート大楽
2001年8月28日(火)大阪・梅田コマ劇場


ダブルキャストの山口祐一郎さんが、東京で「風と共に去りぬ」に26日まで 出演していたことで、内野聖陽さんが28日までトート閣下を演じていました。 今年の東京公演の途中から、内野さんの歌唱に変化がみられ、日に日に熱狂的? な書き込みが掲示板では繰り広げられるようになり、この作品が初ミュージカル という内野さんに「色々なミュージカルに出るようになって欲しい」という声が あがるようになりましたね。その内野さんの大阪公演の千秋楽を観た、るなさん からのレポートです。



梅田コマでの公演は、初日よりこの日まで、トート役を総て内野氏が演じており、聞こえてくる評判も非常に高かった為、大変期待して観に行ったが、内野氏を始め、全カンパニーが期待を上回る出来だった気がする。 主にこのレポは、東京、名古屋の公演とは違う印象を持った部分だけを拾い上げてみた。 もちろん、これは私の独断と内野ファンと言う偏見を持って書いているので、ご不快な点はご容赦下さい。

まず、トート閣下である内野氏についてであるが、以前より芝居の表現力に、定評があったが、今回の公演では歌にも余裕が出てきた為か、芝居もより細かい演技になっている気がした。 歌は、一部の高音部(「愛と死のロンド」とか)は苦しそうな感じがしたが、以前よりも声が太くなり声量があった。私個人として気に入ったのは、エリザの寝室でのシーンで、「え~リ~ざべ~~と・・」の歌いだしの部分がささやくような何ともいえぬ声で、色っぽいと言う内野氏の印象に、歌が追いついてきたという感じ。「最後のダンス」「闇は広がる」ではそう高い音がない為か、余裕すら感じられた。特に、「闇は広がる」では井上ルドルフとの声の相性がよいのか(これは前からそう思っていたが)、非常に迫力のあるデュエットだった。それにしても、短期間でその上忙しいスケジュールの中、これだけ目に見えて上手くなると言うのは、並々ならぬ努力としか言いようがない気がする。 動きに関しては、細かいところはかなり変わったが、あまりに多いので、書ききれない。相変わらず、背中迄演技している(笑)。

芝居に関しては、細かいところで名古屋迄とは違いがあり、その為全体的にトートの人間達へのスタンスが随分違って感じられた。 違った所は主に後半で

1、 チビルドのところに現れる時、最後に薄笑いを浮かべるようになった。
2、 革命家達の中に入る時、トート自身が革命を煽動しているような感じが強くなった。
3、 ルドルフが死んだ時、彼を物体のように投げ捨てるようになった。

もちろんその他にも、色々変更点はあったが、全体にエリザに対してはより熱く、他の人間に対してはより冷たい感じがする。これらで感じるのは、前半部で自分の思うようにエリザがなびいてこなかった事に対し、トートが自らルドルフや革命家達を使って、エリザが死を選ぶように仕向けたって言う印象がより鮮明になったと言う事であった。彼はルドルフに会って、エリザを獲得する為に利用する事を思いついたので、笑ったのではないか?名古屋迄だと、ハプスブルグは何もしなくても崩壊していき、トートはそれを眺めながら傍観しているような印象だったが、ルドルフ等を煽動することで、それをより加速させたのは、トートだと言うことになる。同時に、トートにとって、エリザ以外の人間は、彼の目的であるエリザを獲得する為の道具に過ぎないと言う印象も強くなる。

内野氏自身がどのような解釈をしているのかはわからない。私としては黄泉の帝王であるトートが、人間に対しては本来何の感情も持っておらず、傍観者であるはずなのに、愛してしまったが為に人間の中で唯一自分の思い通りにならないエリザを獲得する為に、自ら人間達を動かしたと言う解釈のような気がする。彼の「愛」の為に、総ての人間達が動かされたと言う事である。人間達への冷たさが、内野氏のクールな雰囲気に合っているし、そこまで一途にエリザを愛していたということも伝わってくるので、私としては前回より良くなっている気がする。 今回、ラストシーンも変わっていて、エリザは自らトートにキスをし、自分自身で歩きながらもトートを振り返る。名古屋のときのように、ただ自由=死を選んで一人で進むのではなく、トートを選んだと言うことなのだろうと思うが、その方が死の「愛」と言う表現が生きてくる気がして、私は好きである。

こう言う書き方をすると、何かトートの一人舞台みたいな印象だが、実際はエリザを始め、出演者全員がパワーアップし、一人ひとりの役の気持ちがより伝わってくるようになった気がする。 エリザの一路さんも、随分変わっている。バートイシュルの場面では、動きが少し変わり(ケーキのイチゴをとって食べたり、椅子に肘をついて地面に座ってみたり・・)好奇心旺盛な若いプリンセスの感じが自然に出るようになった。でも特に良かったのは後半で、精神病院の場面(私はここが大好きなのだが)、「夢とうつつの狭間に」は両方とも追い詰められた感情が歌ににじみ出て涙が出た。「夢と・・」では最後に感情を抑えられないかのように、舞台前方に走り出るような動きになったが、これがすごく自然に気持ちを伝えている気がする。 フランツも演技がとても細かくなった。綜馬さんも一路さんも歌はうまいのだけれど、芝居の中で歌っていると言う印象が薄かったが(失礼!)、大阪からは役としての感情がとても伝わってくるようになった。エリザの血筋の事をゾフィーから言われる場面では、ゾフィーが後ず去るほどに怒りをぶつけて来るし、オペラの場面でもトートとエリザを奪いあう掛け合いの迫力がすごい。特に、「夜のボート」は穏やかな始まりから、最後に2人の感情が高揚し、気持ちがすれ違って行くことが歌からひしひしと伝わってくる。ここで、実はよく寝てしまっていた私だったが、今回は前に乗り出したくなる位だった。

その他の出演者の方達も、今迄以上に演技に力を入れている印象があった。精神病院やカフェの場面では、毎回お互いの動きを見て、違う演技になっている。全員がその場で役にふさわしい動きをしようと言う意気込みが感じられた。ミュージカルの場合、振りが決まっているシーンも多いので、何となく同じ段取りを踏んでいると言う感じがして、ひとつの役に芝居を通しての統一感がないことが多いが、今回は上質なストレートプレイを観るような、緊張感があった。これが外の世界から来た内野さんの影響かどうかはわからないが、ミュージカルも芝居である事に変わりはないと思うので、ただ歌がうまければいいというのではない傾向が今後も続いていって欲しいと思う。

さて、肝心の「ご挨拶」に関しては、恥ずかしながら、こちらがあまりに興奮していた為、記憶が定かでない。 憶えている事と言えば、内野氏が今日の舞台で自分も共演者も裏方さんもお客様もみんなテンションが上がっている感じがして、一体感があったと言っていたこと、興奮してオケボックスの直前まで出てきて話してた内野氏が、途中で「あ、こんなに前でしゃべってしまった」といって後ずさりしたのが何ともおかしかったことくらい。彼は、カーテンコールになると、笑っちゃうくらいフツーの人になっちゃうのが却ってホッとします。綜馬さん始め、共演者の皆さんも、彼に盛んな拍手を送っていました。 ラストの一路さんと2人のカーテンコールは、しっかりキスマークをつけられてました。多分、わざとつく口紅にしてきたんでしょう。幕が開いたのは5回位。終始、にこにこと嬉しそうな内野氏でした。