マナティさんのBW観劇レポ
− Jane Eyre −
平成12年11月18日&22日 ブルックス・アトキンス劇場in BW


元々観劇する予定は全く無く、たまたま自分がTKTSに並べなかったので義兄に 購入をお願いしたら希望順位第4位(つまり最悪これでいい、ってレベル:次の 観劇時間の関係で観る作品が限られていた)のこれしかなかった。

原作はS・ブロンテの同名小説。有名らしいがもちろん読んだことはない。 内容を全く知らない上に事前に情報が入ってなかったので正直期待はして いなかった。しかし結果的には一番はまった作品になってしまったのだから どこでどうなるか不思議なものだ。なにせ2回も観たのだから(しかも一週間 滞在の最終観劇作品に選択したくらい)。

一回目の観劇は土曜日のソワレであった。実はこの前に観たのが「ロッキー ホラーショー」(笑)、実に対称的な作品を同じ日に観るのもなんだかなぁ。 RHSが終わった後、ストンプのチケット購入に行ったのだが結局10分くらい 遅れてしまった。

さて「ジェイン・エア」のポスターは美しい油絵のような、非常に上品なもので あった。それは内容の上品さをそのまま表現していた。実に良質の作品だと思う。

19世紀初頭のイギリス。孤児となったジェイン・エアは血の繋がらない狭量な 伯母に引き取られるがいじめられ、挙句孤児の学校ローウッドに入れられる。 うそつきは地獄に落ち、業火に焼かれると教え込まれた少女はかなり頑固者に なっていた。しかし寄宿舎で優しい教師テンプル先生や理解者ヘレンたちに 出会い、一番重要なことは「forgiveness」なんだよと教えられ頑なさもほぐれ ていく。やがて成人した彼女は貴族ロチェスター家の家庭教師となる。やがて ジェイン・エアと卿は惹かれあっていく。卿は婚約していたがそれを解消し、 ジェインに結婚を申し込む。結婚式の当日、ロチェスター卿が発狂した先妻を 屋根裏部屋に監禁している事実を知る。絶望のうちにさすらいの旅に出る ジェイン。

実はこの作品、キャメロン・マッキントッシュが絶対ミュージカル化しない作品に 挙げていたそうだ。確かに内容は地味だが、その地味さをジョン・ケアードの 演出が何とかカヴァーしている。

   まずいいところから
@ 曲がいい。
   CDが発売されていたのでずっと聴いている。派手さはない けれどじんわりと来る曲が多い。
   オープニングの「The Orphan」3曲目 「Forgiveness」一幕の終曲「Seirens」が気に入っている。

A 演出・照明がいい。
   ケアード・ネピアのレミゼコンビである。全体的に場が暗い がその分、窓から差し込む光の表現などが凄く効果的に演出されている。レミ以来 の回り舞台の活用もあり、なんとなくレミ的な雰囲気がぷんぷんする。

B 主人公がいい。
   「アニーよ銃を取れ」「シカゴ」「ビクター・ビクトリア」 「クレイジー・フォー・ユー」等の明るくてジョークを飛ばすちょっと品がない 田舎娘という、いかにもBW受けするヒロイン像があったりするが、まさにその 対極にいるのがジェイン・エアである。芯がしっかりしていて頑固で精神的に 強い。一番似たヒロインは「王様と私」のアンナだろうか。ある意味「アイーダ」 の主役アイーダも似た傾向だ。

タイタニックシンドロームと義兄は評していたが最近は芯の強い自立した女性を 大衆は求める傾向にあるらしい(この話の舞台はまだまだ封建的な時代である。 そういう意味ではブロンデ女史は凄い)。

C やっぱりハッピーエンドでなくっちゃ。
   どうもローマ帝国の昔から世の東西を問わず、戯曲で受け るのは悲劇と相場が決まってるようだ。だけどやっぱり主人公には幸せになって 欲しいなぁ。レミも殆ど死んじゃうけどちゃんと救いがあるし、でもライオン キングみたいに勧善懲悪ってのもなぁ(結構図々しい?)。ジェイン・エアも 色々あるけど最終的にはハッピーエンドで終わるから嬉しい。

D テーマが見える、突き抜けるテーマがある。
   「forgiveness」「Liberty」。曲の中でたびたび歌われる この言葉、具体的にどうこう言えないのがもどかしいが「ジェイン・エア」を 解くキィワードであるのは間違いない。

「うそつきはだめだ:嘘をつくとどうなる:地獄に落ちる:地獄に落ちると どうなる:業火で焼かれる」子供の頃のジェーンが思い込んでいたことだが、 実はそれは後の伏線にもなっている。

E ジェインはもとより、子役もうまい。
   ジェイン・エアの独白から物語は始まり、回想という形で 前半が進む。子供の頃のジェインを大人のジェインが見つめている。あの頃は こうだった、という形で。なるほどこういう演出もあるなと感心させられると ともにジェイン子役の上手さが光った。もちろんタイトルロールのマーラ・ シャフルは上手い。日本でこの芝居をかけるとなった時にさて、誰にさせるか となると全然思い付かない。すっぴんのマーラは可愛かった。まだ20代じゃな いのかな、舞台では大きく見えるけど小柄だった。

次いで悪いところ
@ 派手な曲が少ない。
   曲はもちろん内容にリンクするのでどうしても内容が地味 なだけに明るい曲、叫ぶ曲、派手な曲が少ない。美しい曲は多いが。例えは悪 いかもしれないが「闘う者の歌が聞こえるか?」「レッド&ブラック」「一日 の終わり」「宿屋の主人」などガーッと行く曲が無く、「オン・マイ・オウン」 「夢やぶれて」「ブリング・ヒム・ホーム」みたいな曲が全体を占めているレミ? そんな感じ。

A 地味で暗い!
   この前に「アニーよ、銃を取れ」を観たのだがアメリカ西部の 良き時代を舞台にした明るい舞台との差が激しかった。しかもまだ「レント」 や「ジキルとハイド」のほうが全体的に照明は明るかった気がする。まぁ、 それが美しさを演出しているのだが。

基本的に一人の女性の人生に焦点をあてた話であるので、もちろんバリケード もヘリコプターもプライドロックも黄泉の帝王も出てこない。あんまり派手な 舞台転換は無かったと思う。プレビュー中だった事もあり後半に出てくる大樹 がなかなか出てこなかった。カーテンコールの後、ロチェスター卿が蹴っ飛ば して、終わるとすぐスタッフが直しにきたものなぁ。

B 主人公が固い
   自立した女性ジェイン・エア、その分面白みがない。 テナルディエやガブローシュ、エンジニアやティモンのようなムードメーカー がいればいいのだがいまいち弱い。元々真面目な話しなのでそういう意味では 面白みに欠ける。

書評はおおむね好評なので今後の期待が持てるようだ。久しぶりに文学的な 良質なミュージカルを観て凄い満足だった。本当に日本でやる場合にジェイン の役が思いつかない。某Aさんが上演したがっているという話を聞くが……、 その時は浜松町通いが増えるか?

全体の雰囲気としてはレミゼとウーマン・イン・ブラックを足して2で割った ような感じ(どんなんだ!?)。しっかりしたストーリー仕立ての作品である。 全編が曲で構成されるレミタイプの作品ではなく基本的に芝居で進んでいき都度 都度曲が入るBW的な作品である。以下もう少し細かい感想を書く。