ふーさんの観劇レポート part2
− 観劇記 1999〜2000 −


ふーさんのご自身のサイトでアップしてあった観劇レポートですが、サイト閉鎖 ということで、せっかく丁寧に書いてあるレポートが消えてしまう。。。と思い、 ふーさんの許可を頂いて、私のサイトに移行させて頂きました。



●00/07/09 (Sunday) エリザベート(東宝)

本日、昼の部を観て来ました! トートは山口祐一郎さん。宝塚版とは演出が 変わっていてまた面白かった。自分なりに一度完成させた解釈を新たにイメージし 直すって、結構たいへんなことなのではないかしら? この点、小池修一郎さん がんばられたのねーと思いました。

宝塚版と敢えて違いを出そうとしたのか、オープニングからして違うのね。 今までウィーンオリジナル版のCDを聴いていたけど、そっちは宝塚版と同じ だった気がするなー・・・風の音くらいしかないから気づいていなかっただけかしら? 最初の亡霊達が蘇るシーンのちびルドルフの頑張ってる歌声で、もう目頭がじわ じわ。(笑) でも、このシーンを始め、大勢がバラバラに動くシーンがなんだか、 わさわさしてスッキリしなかったのが残念だった。再演が重なると変わってくるかな。 でも全体が一緒に動くシーンは迫力があってかっこいい所が多かった。たとえば 「ミルク」のシーンは民衆の憤りが強く出ていますねー。振付次第で、民衆が どう感じていたか、ずいぶん解釈が変わってくるもんだと新鮮に感じました。

東宝版は美化されたエリザベートのイメージを壊すことに重きを置いている演出なのね。 ここが宝塚版との一番の違いかな。(いちいち比べることはないんだがー。笑) エリザベートに関して予習しまくって行ったので、実像に近い切り込みなのが うれしかった。そのうちの1つ、血縁者に精神異常の気が多く、自分もそうなるん じゃないかという心配が出ていたのがギリシャのコルフ島のシーン。同じ音楽でも アレンジでこんなに不気味に変わるのね〜。(私には何をどう変えたのかわかり ませんけど・笑。マイナーになっただけ?) 父親マックスとのあのハーモニーは 難しそう。

話題の黒天使は一貫して動きがおもしろかった! 振付は気持ち悪いんだけど、 なぜかまた見たくなっちゃうんだな〜。(笑) でも、最後のシーンの柱にくくり つけられた白天使(?)だけはいただけない(^^;)・・・どうしてこうなったのか わかる気もするんだけど、なんかもっと違う手があったんじゃないかー?(^^;) 高嶋政宏さんのルキーニはなかなかよかった。お歌の声もお腹から迫力が出て くるともっと味が出そうだなぁ。一路真輝さんは、やっぱりきれいな人だなぁ♪ 昨年12月に観た”王様と私”に比べてずいぶん高音が立派になっていてうれし かった。この公演に向けて気合い入れてコントロールなさったのだろうなぁ。 一路さんが歌うと低い音はそんなに低くなく、高い音はそんなに高くなく聞こえる のが不思議。

青年ルドルフの井上芳雄さんはこれから楽しみな人ですねー! これが初舞台 だそうですが、全然そんなふうに見えない。歌は芸大だから当然としても、 お芝居もダンスもうまかった! また別の役で拝見してみたいです。フランツ役の 鈴木綜馬さんは初めて舞台で拝見したのですが、うーん、やっぱり「四季にいた のねー」というのを感じたなぁ。(笑) 演出の指示なのか、体の動きは結構 エリザベートに対して冷めてる演技なのね。口では「愛してる」とか「君が 必要だ」とか言ってるのになー。(^^;)本を読んで、フランツのエリザベート への温かい愛情に感動していたので、ちょっと残念でした。

トートの山口祐一郎さんはたいへん立派な歌声でした。ちょっと気になる歌い 方もあったけど、オペラ座の怪人系(この役なさってたのよね?)で色っぽい。 もう少し演技が濃くなってくれると、観客としては更に満足度が上がるのです けど。「トートにぴったり♪」と思っていただけに、期待水準がすっかりあがっ ちゃっていました。(笑)

あと、リヒテンシュタイン役の伊東弘美さん、安定した歌と演技が素敵だった な。死刑囚の母役だった井上めぐみさんも迫力あった。シュヴァルツェンヴェルク 公爵の塚田三喜夫さんの低音も魅力的だったなー。エルマーの今拓哉さん、 またもや革命家なんだけど、アンジョルラスとは違った熱さでいいお味でした。 ・・全部書ききれないのでやめますが、一人ひとり光ってる感じがしたな。 みなさん、それだけ気合いの入った舞台なのでしょうね。

そうそう、気合いだけでなく、これだけ帝劇に人がわんさと入っているのも 初めて見た気がします。(笑) 見事に満席! 立ち見席の階段もびっしりいた ようでした。7/8現在の空席状況が配られていましたが、8月末まででB席が残 っているのは8/29の昼の部のみ。あとは完売らしい・・・スゴイ。(^^;) あとは7月末の平日とお盆の時期くらいしか余裕のある欄はないなー。内野トートを 観てみたいが、果たして都合のつく日に席はあるのか??



●00/08/19 (Saturday) 星の王子さま
本日昼の部、赤坂ACTシアターにて。飛行機の故障で砂漠に不時着した飛行士が、 星から降りてきたという男の子に出会うお話。メッセージは深そうなんだけど、 つかみどころない感じで、鈍い私にはちょっと難しかったわ〜。くやしいので 今度原作を読んでみます。(笑)

でも何はさておき、舞台が絵になるのですよ〜! どのシーンも神秘的で色が とてもきれい♪ カラフルな衣装やセットに囲まれて、王子の白と飛行士の 茶色(カーキ?)がどのシーンでも映えます。砂漠のシーンでは、薄い布を 点で吊って砂漠の山になっているのですが、舞台裏に引っぱられてしゅるしゅると なくなっていったり、持ち上げられて出来た空間で人が踊っていたり、形や ライトの当て方も工夫されていておもしろかった。バラのシーンでは、真っ赤な バラとその下の青緑の半球のキラキラしてるのが忘れられない。地上のお花も パステルカラーで優雅に踊っててきれいだったなぁ。 あと、大きくなると 恐い木(←”アブダビ”じゃなくって何て名前だっけ?)がだんだん生長して 王子を持ち上げちゃうシーンも動きが不思議でおもしろかった。 動きといえば、 ヘビ役の方の踊りがもうもう素晴らしかった!! 日本人でもああいう動きの 出来る方がいるんですねぇ。

この舞台で一番印象的だった役はキツネさん。レ・ミゼでマリウス役の戸井勝海さんが 演じていらしたのですが、歌もすごーくお上手だったし、キツネっぽい動きと シャイなキャラクターがたいへん魅力的でした! マリウスとはすっかり別人で、 戸井さんのイメージが変わってしまった。(笑) もっといろんな役で拝見して みたいです。

星の王子さま役の重森あゆみさん、遠くからだとすっかり少年のように見えました。 女の子らしい方だからどうかなーと思っていたけど、口調や動きもナイーブな 男の子そのものって感じで、お話の世界に入り込んで楽しめました。かわいらしい 声ですね〜っ♪ 少年ぽいっ声のまま高音に行くのは難しそうだったけど健闘して いました。今度は普通の女性の声でお歌を聴いてみたい。 市村正親さんは珍しく(?)普通の飛行士の役だった。(笑) 普段アクの強い役で 拝見することが多いので意外でしたが、「市村さんっていい人なんだなー!」と 感じられて一層ファンになりました♪

夏休みのせいか題目のせいか観客の年齢層が広くて、客席も普段のミュージカルとは ちょっと違う雰囲気。でも、ほとんどの子供は静か〜に見入っていました。あの カラフルなシーンのひとつひとつが新鮮に印象に残ったことでしょう。 今は子供にこういう感動を味わわせるのに高いお金を払わなくちゃならないんですねー。 昔の西友ミュージカルみたいに無料で観せてくれる企業があるといいのにな。 ミュージカルって情操教育に打ってつけだと思うんだけど。小さい頃、わが家が 貧乏だったにもかかわらず毎夏ミュージカルを楽しませてもらえたのは西友の おかげでした!(西友がなかったら今の私はないと言っても過言ではない。笑) 私はあの時代に生まれてラッキーだったんだなぁ。



●00/09/02 (Saturday) ザ・キッチン

世田谷パブリックシアターにて。ロンドンの大衆レストランの調理場における 1日を描いたお話。いや〜、何とも言えない作品だとは聞いていましたが、本当に 何とも言えない作品でした。(笑) ステージから発信される情報量が多すぎて、 のろまの私には消化しきれなかった。(^^;)

目の前で起きること1つひとつはどこにでもあるような出来事なんだけど、 全体を通して何を言いたいのか1回の観劇ではつかみきれませんでした。舞台前方で 誰かが語ってる場面でも、後ろや脇では絶えず調理人やウェイトレス達が仕事を していて、これまた演技が細かい。どこでどんなドラマが起きているのか小さい ことまでわかってきたら、おもしろいんだろうなぁ! これは、レ・ミゼに通ずる おもしろさですね。

それから、音楽も聴きやすく(決して”演奏しやすく”ではありません!笑) 舞台の進行に合ってよくできているのですが、音楽を十分に味わおうとすると 舞台で何が起きているのか見る余裕がなくなってしまいます。(^^;) きっと 音楽だけを2時間通して聴いても飽きないでしょうね。それくらいおもしろい曲。 変拍子が多いと聞いていたので「どんな変拍子になっているのか聴いてやろう」 などと恐れ多いことを考えていましたが、最初の方からからほとんど変拍子で、 法則らしきものも見いだせず、さっさと挫折しました。(笑) 変拍子の曲はある 意味落ち着いて聴いていられない感じを引き起こすので、この緊張感いっぱいの 調理場にはぴったりですよね。緊張感の多い現代に作られる曲は、やはり緊張感の ある拍子が使われるんだなぁと思いました。

お話の主筋となるのは、ドイツ人の調理人ピーター(畠中洋さん)と人妻ウェイ トレスのモニック(鈴木ほのかさん)の不倫と、人種差別(ドイツ人・キプロス人・ アイルランド人・ユダヤ人)、調理場のハードな労働条件。いろんな人間模様が 描かれているので、人によって感じることがいろいろだと思います。まとまりませんが、 私が感じたことをポツポツと書いてみます。

私が一番共感した人物は何を隠そうピーターでした。幕が上がって(実際の舞台には 幕がありませんけど・笑)、調理場で働く人々の様々なキャラクターを見ながら、 「あ、いたいたこんな子が・・・(笑)」と学校を思い出していました。最初は 「大丈夫かな、この子は。(^^;)」と教師的にハラハラしてピーターを見ていましたが、 なかなか自分だけを見てくれないモニックや忙しいだけの仕事への憤りで発狂して しまう辺りから「あぁ、君がどうしてそんなふうに苦しんじゃうのか、私にも わかるよ〜。」と舞台に出ていって抱きしめてあげたい気分でした。

] あくまでも私の今日の感じ方であって聞き落としている台詞等があるかもしれませんが、 ピーターは人生に対する理想が高すぎたんじゃないかしら。そのくせ実は不器用 なもんだから、気持ちばかりあせって空回りしちゃう。だから他人には「夢を 見ろよ!」みたいに言うくせに、自分で夢を語ろうとするとどんな立派な夢を 見ればいいのかわからなくなってしまうんじゃないかな。一本気で猪突猛進な タイプですよね、きっと。(はは、そのまま私に当てはまる?笑) ピーター流に いろんな人と仲良く接しようと思ってるんだけど、やっぱり不器用なのか、他人には うまくそれが伝わらないんだなぁ。最後に発狂しちゃうのも、不器用なくせに生きる ことに一生懸命すぎるからだと思う。そのエネルギーが不完全燃焼してああなっちゃったのだわねー。 その後に店主のマランゴが「俺は仕事も金も食べ物も与えているのに、お前らは一体何が 欲しいんだー!」って吠えるんですけど、私の頭の中では「それは適正な休息と 心の潤いよ〜♪」と福利厚生の大切さを訴えていました。(笑) 前々職では、 トイレに行く余裕もなく、土日もなく、毎日14〜15時間気を張り通しで 働いていたことを思い出してしまった。これも私の不器用さゆえなんですけどね。(笑) このマランゴも普段偉そうにふるまおうとがんばっているけど、実は自分に自信が なくて、いつも「これでいいのか?」って葛藤を抱えて苦しんでいる人なのだなー と思いました。

そうそう、「夢をみろよ」って言われて調理に関する夢を見ている人が少なかったのが 意外。調理関係の夢を持っていたのは、まだ希望に燃えてるマイケルと挫折しちゃった アルフレッドくらいか? もっと自分の仕事に対する夢や目標を持てば、「逃げら れない〜♪」みたいな苦しみは減ると思うんだけどな。いや、理想が高くなる 分かえって苦しむかしら?? なかなか自己実現につながる職に就くのが難しい という状況もあるのでしょうか。

役者さん達は実際の調理場さながらに働いていて、大変! 1幕最後の昼食時の シーンなんて、あの混乱した状況を毎回決まった動きでやっているとしたらすごいよ、 これは〜! 見どころがありすぎてとても1人1人は見られませんでしたが、 それでもイメージの変わった役者さんが何人かいたので少し書いちゃおう。

畠中洋さん(ピーター)って写真でしか見たことなかったけど、こういう方だったのかー。 役柄のせいかも知れないけど、もっと優等生っぽいキャラを想像していました。] この方の声も結構好み♪ ジェスチャーが大きくてアメリカンっぽい感じ。 安崎求さん(マイケル)も落ち着いた役で拝見することが多かったので、 今回の”僕ちゃん”みたいな役は意外でした! 原作での設定が18歳だから だそうなんですけど。(笑)踊る森田浩貴さん(ニコラス)を初めて拝見しました! 楽しそうだった〜♪ やっぱりお声がよく通って聞こえました! ギリシャ人と いうことで(キプロスはギリシャ領?)お肌を日焼けで黒くなさっていましたが、 あのギリシャ神話の時代とは民族が変わっているのですね?? ギリシャ人というと 白人で鼻筋の通った彫刻みたいなイメージがあったのですが、昔栃木でナンパ してきたギリシャ人は確かに浅黒くて中東系みたいな感じでした。声が通る といえば、白木美貴子さん(ヘッティ)もお見事。聴いていて気持ちがよかった!

マギと浮浪者役の鈴木慎平さん、舞台で歌うのが初めてだという噂を聞きましたが 全然そんなふうには見えなかった! 浮浪者のいい味が出ていたなぁ。 音楽座の坊ちゃんで優しい清役をなさっていた大方斐紗子さん(バーサ)も イメージが・・・。(笑) 調理場にいる気のいい普通のおばちゃんになって いましたねー。可憐な女性役で拝見することが多かった鈴木ほのかさん(モニック) ですが、今回はちょっとずるい不倫の役でこれまた意外。でもやっぱりきれいな 人だなぁ♪ 私も女ながら、つい胸の谷間に視線がいってしまった。(笑)一番 大事な最後のシーンは、何を言いたいのか私にはよくわからなかった。白いライト があたって、みんなでまわりを見回しながら・・・う〜ん、何を見ているんだろう??? ・・・あぁ、やっぱり佐藤滋さんのティンパニはいい響きだわ♪、という感想で 幕が下りました。(笑) レ・ミゼのCDでこの方のタンバリンとティンパニの 音色に魅かれていたのですが、生で聴いてもやっぱりティンパニとタンバリンの音 が最高! シンバルの音もよかったなぁ。プロ奏者ってみなさんもちろん上手 だな〜と思うんですけど、この方の音は何かハッとさせられるものがあるんですよね。 淡泊な気もするけど、無駄な力が全くなくて楽器そのものの音だけが引き出されて いる感じ。パンフでプロフィールを見たら、マリンバを安倍圭子さん、ドラムを猪俣猛 さんに師事なさったのだそうな。無知な私でさえ知ってる方達なので(特に安倍圭子さんの マリンバは感動したっ!)、やっぱりいい先生につくと違うのかなー。私も歌の 先生はすごい方達なんですけどねー、本人の才能と努力も大きいのよねー。(^^;)

白石准さんのピアノ兼指揮も大変な役どころだ! いくらプロの人達とはいえ、 あの変拍子は神経使うだろうなぁ。舞台とのタイミングも難しそうでしたが、 音楽の波に飲まれてすっかり調理場に巻き込まれた気分でした。この舞台では 白石さんの音自体を楽しむ余裕がなかったので、いつかソロでどっぷり聴いて みたい方です。あ、あと舞台の役者さん達もパーカッションとして音楽に参加して いました。(笑) 「この拍の頭をとってる楽器はなんだろう?」と思って調理場の 上にいるバンドを見るとそんな音を出している人がいなくて、舞台をよく見たら ガストン(下馬二五七さん)が包丁で切るリズムでした。結構難しい裏拍をやって いたりして感動! 考えてみたら、吹奏楽でもキッチン何とかという題で調理道具を 使ってパーカッション中心に作られた曲があったっけ。パーカッションって基本は そういう身近なものから始まってるはずなんですよねー。やっぱりおもしろいなぁ♪ あと1回千秋楽に行く予定ですが、果たして次回で十分に消化できるのでしょうか。(^^;) 自分なりに納得いくにはあと10回くらい観なくちゃならない気がします。 北海道まで追っかけられないので、ぜひ再演していただきたいわ〜。9/9まで 毎日公演なさっているので、興味を持たれた方はぜひご覧になって、感想を語り合いましょう!



●00/09/09 (Saturday) ザ・キッチン (東京公演千秋楽)

2回目の観劇。1回目は窓ガラス越しにキッチンをのぞいていたような感じだったけど、 2回目は自分もキッチンの中に入って見ている気分になりました。今回はおもしろい ところは心から笑えたし、共感するところは鼻をすすりながら泣きまくり! 私にとってはレ・ミゼラブルとまた違った意味で貴重な作品になりました。 人によって解釈が違うのもこの作品のおもしろさなのですが、前回の感想で うまく伝わらない面もあったようなので少しこだわって書いてみます。 (今度はうまく伝わるかな?(^^;))

今回は前回以上にピーターが昔の自分に重なってしまい、1幕からもううる うるきてしまいました。2幕ではピーピー、ずるずる。(^^;) 1回目の ときは「なんだ、ハンカチ要らないな〜」とか思っていたのにねぇ。この作品は 1回観たのと2回観たのでは感動度がだいぶ違ってくるらしいです。それでは私の 感情移入状況をお読みください。↓

夕方再びキッチンが忙しくなり始める頃、ピーターの精神はお店のペースに 合わせて働けないくらい摩耗された状態になってしまってたんですね〜。心が 疲れすぎちゃうと、思うように作業できなくなっちゃうんですよね。サボりたい わけでもないし、反抗しているわけでもないんだけど。「ここは俺の場所だ!」 という言葉に「自分の役割をきちんと果たす気はあるんだから、俺のペースで やらせてくれよ!」という気持ちが表れています。でも、組織の中で働くには、 自分のペースを守りたくてもそれだけじゃ通らないのよねー。それがヴァイオレット とのトラブルになって爆発しちゃう。

転職を経験した今の私としては「”キッチン”だけが生きる場所じゃないよ」と 思いますが、転職の決心をしない限り、「逃げられない〜」という感覚は多くの 人に共通するのかも知れません。一度出勤してしまえば、1日が終わるまで職場の 歯車としてまわらざるを得ないわけですからねー。マイケルのようにその歯車自体に 明るい夢を持てない以上は、最大のストレスとなりうるのでしょう。入りたての ケヴィンが言う「今すぐやめるんだ! 自分自身を大切にしろ!」という言葉は 私にも浮かんだ言葉だったので笑ってしまいました。やっぱり労働基準法は大切 です!(笑) 適用されない職業も結構あるんですけどね。会場で一緒に笑ってる 人が多かったけど、どんな気持ちで笑ってたのかな? 転職の決意が固まらず、 あきらめもつかず、疑問を持ち続けている間はピーターみたいに苦しみ続けるの かも知れません。

そういう意味では、マランゴもやっぱり苦しんでますよね。従業員より早く来て 最後に帰るなんて、勤務態様としては管理職の鏡みたいだけど、従業員が仕事で 十分にアイディアと実力を発揮するには仕事・金・食事だけじゃ足りないことに 気づけないのが彼の悲劇だと思います。彼も一生懸命すぎるんだろうなぁ。人間は やっぱり心があるから人間なんですよ。心が元気でないと持ってる力は発揮できない。 それで心の栄養として”夢”がテーマになっているのかも知れないなー。仕事が 忙しすぎると夢を持つ余裕もなくなってしまうということなのかな。心が元気で いるためには、適当な休息や余暇が必要なんですよね。今の時代だから福利厚生が 叫ばれていますが、1950年代ではマランゴのような発想の経営者が多かった のかも知れません。その頃の日本もちょうど高度成長期だったのがまたおもしろい 点ですね。でも今でも信じられない勤務状態のサラリーマンって結構いるんだろ うなー。余談になりますが、マランゴもこれだけの仕事まっしぐら人間だから、 彼に家庭があるとすると子供のこととかまた問題をいっぱい抱えていたことでしょう。(^^;) 家庭のためにも仕事のしすぎはよくありませんね〜。

「プライドはある!」と言いつつも逃げにまわらざるを得ない(?)浮浪者の 哀しさ。うーん、でもまだ彼については消化しきれないなー。彼にカツを与える ピーターの心はどう動いたんだろう? 共通点を感じたからなんだろうなぁ。 それに対してマランゴが「俺に対するサボタージュだ」と非難したり「俺が間違って いるんだよな」と開き直ったりする辺り、あ〜、またもや過去が甦る!(^^;) ピーターの発狂について。彼は発狂して暴れたけど、精神病院に収容されるような 意味での発狂ではなかったと思います。マランゴに「ふんっ」って言ってるときの 冷静さがその証拠。あんなふうに暴れないと心のバランスを保てないまでに心が 疲労してしまったんだねー。(一般的にはそういうのを狂ったというのか?) あんなピーターを演じられる畠中洋さんってどういう人なんでしょう? ピーターの ナイーブさがストレートに伝わってきました。 アルフレッドかポールがピーターに「何がそんなに苦しいんだ?」ってピーターの ことを揺さぶるシーンがありました。自分が勝手に苦しんじゃってるときでも、 周りには必ず助けようとしてくれる人がいるものなんですよねー。これも昔の 想い出に重なった場面の1つでした。(^^;)

ひとつ理解できないのは、ピーターはなぜ夢を持てないのかという点。彼は夢の 大切さをすごくわかってる人なのにね。過去に何かきっかけとなる経験があった に違いない。どういう生育歴を持っていたのかしら? ・・・と思ったけど、 ちびくろさんと話していて次のような解釈が出ました。ピーターが見たい夢は きっとモニックが自分のことだけ見てくれて幸せになる夢なんだろうけど、 そうはならないと感じてるからそれを認めるのがこわくて夢自体を見られないのでは ないか?という解釈。なるほど、これは納得がいきます。音楽的にもそういう からみがあるようですが、私はそこまで聴き取れなかったので早くTV放送で チェックしてみたい!

モニックの血の夢。これは他の方の感想を聞いたおかげで、堕ろした子供に対する 罪悪感なんだと感じられました。”とさつ”に例えられているのですが、食べる ために動物を殺すことを「生きていくためには仕方がない。」と捉えているので、 彼女にとっては社会的に生きていくためにはピーターより結婚相手の方が必要 だったなのだなと思いました。「だんなとは別れるから〜♪」とモニックは言って いますが、ピーターは敏感に感じとってるのでしょうね。

人種差別の話。マックスは心の中では差別心を持っているけど、仕事場では仕事が うまくいけばよいのだから、人種が違うのは違うとして必要以上に関わらなければ お互い幸せでいいじゃないか・・・という考え方。それに対してポールはもっと 純粋なのか、ユダヤ人として差別されてきたこだわりがあるからか、「心では 平等に思っていないならそう言えよ!」と納得がいかずにこだわり続けます。 ポールの夢が人が苦しんでる悪夢なのも、アウシュビッツ等の経過と関連して いるのかな。キプロスのことに関してもそうだけど、もっと人種差別のバック グラウンドが説明されているとわかりやすいんだけど。

重い重〜いテーマの中、救われるのはかわゆいウェイトレス達の姿♪ 彼女たちの 笑顔と軽やかなスピンが若々しくてエネルギーをもらえた感じがします。あと アニーのところでコーヒーをすすってるバーサの後ろ姿も忘れられない! ”労働者の休息”とかって題で絵になりそう。 ヴァイオレットの石富由美子さんも 美しくて見とれてしまった。またキャラがよかった! こんなふうにツンツン してるおばちゃん、その辺にいそうですよね〜。(笑)

それから「ひとさじの絶望」という台詞。テーマの希望との対比なんですね。 「ひとさじ」だから完璧に希望を否定しているわけじゃないんだな。哀しい台詞 なんだけど、ここに少しホッとしたりして。

今回は登場人物の個性が生き生きと感じられて、1人1人に「こんなバック グラウンドがあるのかなぁ」といろいろイメージが浮かんできました。みんな ストレスを持ちながらも、一生懸命に調理に励む姿が感動的。結局みんな一生 懸命に生きてる人達のお話なんだよねー。再演があったら、もっとじっくり 1人1人のことを掘り下げて観たいです。それにしてもつくづく贅沢なキャスト でした〜。語弊があるかも知れませんが、日本のミュージカルでこれだけパフォーマンスの 質に満足できることって少ないような気がします。海外の舞台を観て「うまい人 ばかり!」と感じてしまう裏には、日本のミュージカル界もまだまだこれからと いう現実があるのでしょう。ミュージカル専門の学校や講座が増えてきてるみたいだし、 21世紀に期待!ですね。