かすみさんの観劇記
− アイ・ラブ・坊ちゃん −



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感劇記

音楽座が現在の形で上演をするようになってから、四作目が、この「アイ・ラブ・坊 ちゃん2000」の公演です。音楽座の公演は、基本的に「再演」という形ではなく、 上演の度に新しい作品として取り組むことになっているということで、前回上演と、 所々変更があり、改良を加えられた場面もありました。

ストーリーは、夏目漱石の私生活を軸に、創作中の「坊ちゃん」が絡むので、かなり 幻想的な場面が出てきますが、「山嵐」(坊ちゃんの中の数学教師・堀田)が「正岡 子規」として「坊ちゃん」の世界と「漱石」の世界をつないでいました。

笑わせる場面はとことん笑わせて、感動させてくれる場面はとことん感動させてくれ ました。自分が注目していたこともありますが、赤シャツの策略にはまって許婚者を 奪われた上に、左遷されていく「うらなり」がとってもかわいそうでした。 あとは、坊ちゃんを本当に愛している清というばあやの歌にも泣かされました。

キャストは以下のとおりです。
浜畑 賢吉(夏目漱石)・今津 朋子(夏目鏡子)・中村 繁之(坊ちゃん)・ 大方斐紗子(清)・佐藤 信行(山嵐  正岡子規)・渋谷 玲子(マドンナ  雪江)・ 園岡新太郎(赤シャツ)・ 三谷 六九(野だいこ)・伊藤 弘美(女中  荻野夫人)・ 治田 敦(校長  父)・藤咲みどり(猫  小鈴)・五十嵐進(高浜虚子  漢学)・ 浜崎 真美(登世)・高野 絹也(うらなり)

阿部義嗣・小笠原家光・折井洋人・小関明久・砂山康之・萩原弘雄・森山大輔・ 今泉鮎香・岩佐麻里子・江部珠世・大熊亜里紗・白勢恵・須崎美穂・橋本久美・ 吉次美紀子

初観劇ではちょっとぼーっとしてしまい、(見所がいっぱいあったので)舞台全体を 把握し切れなかったのですが、「又見たい!」と思わせてくれるエネルギーがありま した。1月23日までの期間限定上演です。「坊ちゃん」の元気と、正義感とさわやかな風、 そして、漱石・鏡子夫妻の夫婦の機微・・・見所はたくさんありますので、お時間と お財布に余裕がある方は是非お運びください。あと、○回(・・・言ったら笑われそう) 通いますので、またレポート入れます。

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ところで、16日はマチネ・ソワレと「坊っちゃん」のハシゴをしてしまいました。 前回は作品全体を観てだいたいの構成とか流れを理解することにつとめたのですが、 今回は今一番贔屓の役者さんである高野絹也さんの「うらなり」その他アンサンブルの ひとつひとつの検証に力を注ぎました。

赤シャツの謀略にはまって、許婚者を奪われた上に、左遷されていく、気弱な古賀先生 (うらなり)としての役作り・演技プランの細かさに改めて脱帽!レミのクールフェラック とは正反対のおとなしい役柄でしたが、涙を誘うお芝居でした。ソロがなくて、 キレイなお歌はあまり聴けなかったのですが、コーラスの部分では男声に厚みを 加えていたのでは・・・と思います。

高野さん以外で特筆すべきは、園岡さん・・・・。キザで嫌味な策略家、赤シャツを 怪演されています。赤シャツのソロナンバーは「タンゴ調」で、踊りもあります。 久しぶりにダンスをされるのを拝見して、嬉しいな、と思っている古い四季ファン なのでした。

泣いても笑ってもあと1週間です。まだ観ていない方は、是非ごらんください。 ちょっと気持ちが疲れ気味のあなたに、爽やかな感動をお与えすることを保証いたします。

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16日(日)に再び「アイ・ラブ・坊っちゃん2000」を観て参りました。掲示板 ではあまり長く書けなかったので、改めてレポート書きました。

先週は、「初見」と言うこともあり、全体的に舞台を把握しようと努めたので、多少 見逃したり、もう少し確認したいと思ったりする点があったので、それを補う形での 観劇となりました。ほとんど、「アイラブうらなりさん」と化してますが、細かい レポートを入れさせていただきます。

<パレード>
  パレードの登場人物たち・・・三毛猫 シルクハットに黒マント、燕尾服にステッキを 持った男 位牌を持った未亡人と棺を担ぐ男性の列、嫁入り道中の行列 貴婦人、 ドンキホーテとパンチョ・・・・・・この人たちはいったいなんなんだろうという 根本的な疑問が湧いてしまいました。漱石のイメージの中に浮かんだ人々なのだとは 思うのですが。

<アイ・アム・ア・坊ちゃん>
表情が生き生きとしていて、とっても良かったと思います。これから始まる「坊ちゃん」 という小説の紹介をする一曲・・・って感じですかね。前回マイクが外れてしまって かわいそうだな・・・と思った中村さんも今回はマイクが外れることなく元気一杯の 「坊ちゃん」になってました。前回公演のビデオ(OAされたもの)では、畠中さんが ソロで歌われていたのですが、今回はかなり早い段階で皆さんのコーラスが入ります。 ミュージカルナンバーとして厚みがあっていいとは思うのですが・・・。坊ちゃんの 自己紹介としては、一人で歌った方がいいのかな?と思います。

<子どもの頃から>
お父さん(狸役の治田さん)と優秀な兄(赤シャツ役の園岡さん)のこれでもかの 坊っちゃんいじめ・・・・・。マジ切れしている坊っちゃんとのやりとりが迫力 ありました。園岡さんのお兄さんは憎たらしかったし、治田さんのお父さんも厳格で 長男贔屓が激しいという明確なキャラでした。お二人とも芸達者なかたなので、 憎たらしさ倍増。坊ちゃんに感情移入していると、二人がとっても嫌いになりそう です。最後に、「えい!」って坊ちゃんをたたいて上手にはけていく園岡さんが おかしかったです。

<しあわせの日々>
必死にお父さんをとりなして、坊っちゃんに助け舟を出すやさしいばあやが清です。 大方さんの清・・・あったかくって、かわいらしいおばあさんでした。めっちゃ くっちゃ、泣きました。坊ちゃんを心から愛していて、それをまじめにストレートに 表現する清と、どうして自分をこんなに愛してくれるのか判らなくて照れくさそうな 坊ちゃんのやりとりがほほえましく、またうらやましいな・・・って思います。

松山に旅立つ坊っちゃんを見送る時に、「もうあえないかも知れません。ずいぶん ごきげんよう・・・」と言う清にも涙が・・・・。そして、汽車が見えなくなるまで、 ホームで見送る姿・・・。あの時代、「箱根よりずっと先の西の方」に行くという ことは、今生の別れになるのでしょうか・・・。

<真の教師>
うらなりさんも含めて、先生方の踊りと歌、最高でした!!とっても気弱で、周りと 一生懸命あわせようとしているうらなりさんが良く出ていました。登場の場面で 辞書を片手にスペルチェックしているところの表情と、指でスペルを確認して うなずいている姿、無言でも「私はうらなり」と主張してるみたいで、とても 良かったです。何の単語をチェックしてられたのか気になるところではあります。 歌いながら教師の集団の中にあっても、ちょっと控えめに、周りに遠慮しつつ、あわせて 一生懸命に踊る・・・っていううらなりさん、かわいかったし、かわいそうだったし、 周りの先生方もそれぞれの役作りをしっかりされていて、おもしろかったです。 建前を述べつつも本音では「教師も人間」と言ってのける狸校長以下、とんでもない 先生方に囲まれつつも、細々とがんばっているうらなりさんを感じることが出来て 嬉しい思いをいたしました。

<TAKE IT EASY>
高野さんは、お遍路の親子、温泉あがりの夕涼みしている客でした。ダンスナンバー なので、もう少し踊られる場面があるのかと思っていましたが、この二つだけでも 充分楽しめました。(おいおいって・・・)お遍路で下手から出てこられて上手側の 御茶屋の前のベンチに座ってしまわれると、前でわーっと踊っている人たちの影に 隠れてしまって見えなくなってしまうので、残念なのですが。風呂上りの浴衣姿の お客さんとして出てこられるときに、園岡さんと伊東さんとご一緒で。敵なのに ・・・・・・なんて思っちゃいけませんかね。(笑)この場面も、前回のOAの時と だいぶ変わっています。躍動感があって、温泉町の活気が伝わってくる場面だと 思います。振り付けは、確か劇団四季ご出身の鎌田真由美さん、わたしこの方 CATSでのディミータの演技がとっても印象に残っています。そういえば、ネコ の振り付けとかしぐさがどことなくCATSチックだったような気もするけど ・・・・・(^^;さすが、ジャニーズ出身・・・シゲちゃんのバック転・・・すごいです。

<通じない心>
OAのときのと歌詞がだいぶ違っています。言っていることは同じなのですが順番が 変わっていて心が通じ合えない夫婦のイライラがぶつかり合う様子が良く出ていたと 思います。天ぷらそばを持ってきた鏡子と漱石のやり取り、一生懸命夫を理解しようと する鏡子のいじらしさと、イライラを募らせていく漱石のちぐはぐさが良く出ていたと 思います。

<てんぷら先生>
前回とは振り付けが変わっていますね。あと台詞割とかも・・・躍動感とか学生の 悪がきぶりがよく出ていたと思います。関係ないかもしれないけれど、私もたった 二週間だけですが教育実習で「先生」と呼ばれた経験があるのですが、話を聞いて くれない生徒ってとってもイライラするものなのです。担当教官に言われたのは、 「生徒がいたずらしたり、ちょっかいを出したりするのは、あなたに興味があって、 あなたにも自分に興味を持って欲しいからなので、怒ったり無視したりしないで、 遊んだり答えたりしてあげられる時には精一杯の笑顔で接してあげてくださいね」 といわれたことを思い出しました。坊ちゃんみたいに怒ると余計収拾つかなくなるの だとも・・・(^^;)

シゲちゃんは、先週よりも「べらんめぇ」口調が板についてきたのではと思います。 「イナゴ事件」・・・・・現実の漱石の家庭で起きた事件と「坊ちゃん」の中でのエ ピソードがシンクロして見応えのある場面ですね。浜畑さんの名演・・・素晴らしい と思います。

<水の中>
高野さんが、「貴様、兵役逃れのために下手な小細工をしおって。隠してもいずれわ かることだ。」という憲兵(軍人?)で上手側に登場して、ゆっくり下手側に歩いて いくのを発見しました。表情怖いです・・・。照明も怖いし、ドライアイスの海もか なり幻想的ですし。心の病を抱えて、苦悩する漱石の心理状態が生み出した幻なので しょうか?あとに続く<負けない心>の歌詞・・・とてもいいと思います。生きてい くのには「負けない心」が大切ですものね。ここでも涙がじわっとにじんでしまい ました。

<何があっても>
今津さん、とってもかわいらしい健気な奥様だと思います。 心に爆弾を抱えた旦那さんを必死に支えていこうとする明治の女って感じで。土居さ んの芸風に似ているようで、今津さんのオリジナルの鏡子になっていたと思います。 これからの音楽座のためにもがんばって欲しいですね。

<忠告>
ナンバーごと、新しくなったようですね。あと、「ターナーの松」のセットが登場し てわかりやすかったのではと思います。(きょー!さんご推薦の・・・) 足できこきこと船が海をすべるように動かすというのがとってもおもしろい発想ですね。 タンゴ調の曲調と、園岡さんと三谷さんの怪演で大爆笑の場面です。しっかし、嫌味 なコンビですね。演じているお二方はかなり以前からチェックしていた役者さんなの ですが、役柄としてはだいっ嫌いな人種です。

職員会議の場面・・・・・・再び、うらなりさんワールド・・・「全員いらっしゃる ように見えますが」という赤シャツ、本当に嫌な奴です。遅刻して、背中丸めて、 汗をふきふき入ってくるお姿、怒鳴られてぴゅーっと走って着席するお姿、本当は 笑い所なのでしょうが、私は感動しておりました。

執筆している漱石の筆が止まるたびにストップモーションになる「だるまさんがころ んだ」状態の先生方に、(古典的なやり方だけどそこがおかしい)大笑いさせていただきました。

考えてみたら高野さんが台詞を喋られるのを拝見するのは、レミの中のアドリブ を除いたら初めて。うらなりとしては多少高い声で発言されていますよ。表情とか動きとか とあわせて、本当に気が弱くって、ハンカチで汗をふきふき、おろおろとするうらなりさんの 様子か伝わって来ました。

赤シャツの発言で生徒を処罰しない方向に流れていくのを納得できないのだけど、 何も発言できない歯がゆさとか伝わって来ました。漱石の「黙れ!」から先、ますます 「ダルマさんが転んだ」がエスカレートしていくところも古典的なネタなのですが、 大笑いでした。アドリブありましたよね?(野だいこの「伸ばして」とか)原稿用紙を丸めてく しゃくしゃされて、痛がっている「登場人物」・・・ひっくり返って手足をばたばた させているうらなりさんに目はくぎ付けでした。

山嵐の発言に「言いたいこと言ってくれた!」という感じで表情が明るくなって 思わず立ち上がって拍手ぅ!・・・あ、でも周りが怖いぃ・・といううらなりさんの 心の葛藤も良く伝わって参りました。そして、「マドンナに会うのも精神的娯楽 ですか?」という坊ちゃんの発言にびっくりして立ち上がって気絶するうらなりさん ・・・・・・もう何も言うことありません。とっても良かったです。

<二幕の幕開き>
マドンナの後から気弱に追いかけてきて、でも声は掛けられない内気なうらなりさん。 坊っちゃんに声を掛けられても、「今忙しいから」の一言が言えない・・・言って しまったマドンナに後ろ髪引かれつつも坊っちゃんのお願いを断りきれない人の良さ・・・。 本当にいい人ですよね。うらなりさんというお人。

<マドンナ事情>
伊東さん・・・ファンティーヌでの印象があったのですが、それを払拭して余りある 「怪演」ですね。双眼鏡でメイクを見てしまったのですがすごいですわ。メイクといえば、 高野さんの眉毛も・・・。(^^;あれ、ご自分で描いていらっしゃるのでしょうか? 話が横にそれましたね。この歌も曲が変わったのですね。荻野夫人の歌に合わせて 登場人物が舞台に登場するという趣向、おもしろかったです。うらなりさんの演技も とってもよいです。ちょこちょこかにさん歩きで出てきてくしゃみ!・・・笑えました。 お父さんが亡くなって・・・とお位牌を出したり、暮らしが傾いて、とか結婚が のびのびになって・・・という動きもおもしろかったです。で、赤シャツが許婚者を かっさらっていくのに抗議も出来ず、指をくわえて(ないけど)引き下がるしか なかった無念なうらなりさん・・・周囲は大笑いしていたのですが、私はとっても 悲しかった。うらなりさんの気持ちがわかるような気がします。でも、私は女だけど、 付き合っている人の家柄とかその人がお金持ちかどうかなんて気にはならないの だけどな・・・・。明治時代だから、やっぱり「お嬢様」は「お金も地位もある 人に嫁ぐ」ということなのかな?うらなりさんみたいなやさしい人のそばの方が幸せに なれるのに。赤シャツみたいなひとは、恋の駆け引きを楽しんだ後では手に入れた 魚には餌を与えないというか、すぐに浮気に走りそうな気がして私はいやです。

<坊っちゃんへの手紙>
もう、この場面は私の号泣ポイントのひとつです。清というばあやがいるからこそ、 「親譲りで無鉄砲」な坊っちゃんも何とかやっていけるのではないでしょうか。東京 と松山に離れていてもこの二人の間に流れる「愛」の深さはそれを超える・・・とい う感じがして、大方さんの演技で涙があふれてきました。 亡くなる前に、自分のおばあちゃんにももっとおばあちゃん孝行しておけばよかったです。

<マドンナの反応三態>
ぞなもし言葉、外人かぶれ、大げさな新劇口調・・・・・・大笑いです。 まじめに一生懸命「うらなりくんが、いかにまじめでよい人で、いい旦那様になりそ うな人か」を熱心に説いている坊っちゃんに思わず声援!したくなります。でもうら なりさんには「古賀先生」と言う列記とした本名があるのだから、マドンナに通じな いのは当たり前・・・。本当に坊っちゃんは慌て者です。

<風を夢見て>
シゲちゃんと浜畑さんのデュエット・・・良かったです。マドンナと赤シャツのラブ シーン(?)・・・・歯が浮きそうです。「あなたのために詩を書きました」・・・ ・・・・うううううう。鳥肌立ちそうです。 続いて、雪江とバイオリンの先生との不倫一歩手前。先生の下心見え見えの誘いと、 純真な雪江の間柄が見て取れました。やっぱり私としては、歯が浮きそうな誘い文句 を言う男は信用できません。ドンキホーテが登場して、「ああ、浜畑さんはラマン チャに御出演されていたよね」などと冷静に思ってしまった私は・・・失格でしょうか?

<アイラブ坊っちゃん>
このタイトルがついているから、このミュージカルのテーマ曲なのですよね。すごく 幻想的ですてきなナンバーだと思います。この場面では、シルクハットとタキシード ・マントの男で登場されていましたよね。

<ラッキー&アンラッキー>
赤シャツと荻野夫人のそれぞれのナンバーが新しくなったことで、この場面がとって も引き締まったと思います。 それにしても赤シャツと野だいこのような人が教頭とその腰ぎんちゃくでいるような 学校ではもし私が生徒だったら習いに通いたくないし、私も教師として勤めたくはないでしょう。 現代の女の子の用語で言えば、「超、むかつくぅ!って感じィ?」・・・・。

<野球部の生徒くんとのひと時>
漱石と鏡子さんのやりとり、夫婦漫才みたいで、ほほえましいですよね。 私の父は昭和一桁生まれで、ちょっとだけ裕福な田舎の家庭で育った人なので、 「家」の意識がすごく残っていた厳格な「家長」でした。私はどちらかというとそう いう面倒臭いものが大嫌いで、私は私、子どもにも人格があるってかなり反抗的な態 度を取っていつも父とは衝突していました。亡くなるまで・・・・ 間に立った母は父にも私にも苦労させられたのだろうなって思いますが、父のことを 一番良く理解していたのじゃないかなって今になって思います。私も30代半ばに なってやりたい放題やってきた自分をちょっぴり反省もしています。母にはもう、父 とのこういうほほえましい時を過ごさせてあげることが出来ないので、はたきとひ しゃくでチャンバラに興じる二人を見ていて涙が出てきました。

「ああいう子に読んでほしいですよね、坊っちゃん!」という鏡子さんの一言がとっ ても良かったです。今の教育現場には、坊っちゃんのような先生も、作品に登場する ような悪ガキもいないですからね。 先生は官僚的だし、生徒は陰湿になっているし・・・・。でも「古きよき時代の日 本」というだけで片付けられない何かがあると思います。時には坊っちゃん的な先 生、悪ガキ的な生徒が現れてもいいのになって。ううん、話が横にそれてしまいましたね。

<送別会>
うらなりさん・・・・・かわいそう過ぎ。校長はすべて知っていて、事なかれ主義で うらなりさんを日向に転勤させるような「狸」の本領発揮、赤シャツは自分がウラで 手を引いてやったことをおくびにも出さずに、厄介払いできたって言う嫌味な発言・ ・・。かしこまって聴きながらも、赤シャツの発言に対して何か言いたそうに口をパ クパクさせているうらなりさんに既に涙。山嵐が、実名こそは出さないけれど「全部 知っているのだよ、でもこんなところでがんばるより新天地でがんばってそれで、マ ドンナみたいな尻軽女は見返すのだぞ」って言ってくれて多少は救われたって表情に なり、すっと立ち上がって何か言おうとしたのに、言葉につまり、勇気を振り絞っ て、「実はこのたびの件、私、本当は・・・」と言い始めたのに、野だいこの横やり で発言の機会を逸してしまって余計に落ち込んでしまううらなりさん・・・・・・そ して、主賓であるはずのうらなりさんそっちのけで芸者遊びに興じる同僚たち・・・ ・・・・・もう私は号泣していました・・・。かわいそう過ぎます。高野さんの演技 の端々から「かわいそう光線」が出ていたのです。野だいこに引きずり出されて踊ら されてしまう姿にも余計に涙・・・・・。居たたまれなくなった坊っちゃんに「帰ろ う」と助け船を出されても「今日は自分の送別会だから」と耐え忍ぼうとする健気な 姿。えええん!かわいそう過ぎます。周囲をはばからずずるずると鼻をすすってしま うほど涙が出ました。高野さんの演技がとっても説得力あるのですよね。で、観てい る私も納得できるし、感情移入できるのだと思います。素敵な俳優さんだと思いま す。いったん下手に引っ込んで、スーツケースをもって背中を丸めて坊っちゃんと山 嵐に深深と一礼して上手方向へとぼとぼと歩いていくうらなりさん・・・あなたの未 来に幸多かれ!と祈るしかありませんでした。

<しあわせの時>
漱石と鏡子がはじめて心を通わせる場面。その前から号泣している私はこの場面にも 大感動の余波が続きます。「ありがとう」と初めて言えて漱石と、そのひとことで今 までの苦労が報われた鏡子さん・・・・ 良かったなと思います。日曜日の今津さん、この場面で本当に泣かれていましたね。 それを発見して、わたしの涙の量も倍増しました。

<THE けんか>
学生同士の大喧嘩という華々しいダンスナンバーなのですが、初めに出てきてすぐ下 手に消えていくはっぴ姿の熊ごろうさんと、最後の最後に、現場を押さえに出てくる 警官さんに私の視線がくぎ付けです。付け髭が、「いかにも」なんだもん。いえ、決 しておかしいとか似合ってないというわけではないのですよ。ただ「おかしい」だけ で。その直前までおいおいと泣かされていた芝居をしていた同一人物が演じる人と は思えないので。高野さんの演技の引出しの多さと深さには感動しています。 治田さんの校長の「困った」、赤シャツの「困った」、野だいこの「困った」それぞ れのニュアンスの違いが趣深かったですね。治田さんのメイク・・・・美女と野獣の ル・フゥに近いものがあって懐かしかったのですが・・・。

<坊っちゃん先生>
この歌も私の号泣ポイント。あれだけの悪ガキどもが、坊っちゃんを慕って辞めない で欲しいと泣いて訴えるその姿・・・とってもすてきなのですよ。この後結局先生を 辞めて鉄道技師になる坊っちゃんの最初で最後の生徒になるわけだから。

<風を見て2>
この場面の山嵐の台詞って、「子規」として話している台詞ですかね? それとも山嵐のキャラクター設定がそういうのなんですかね? 坊っちゃんを読み返してみようと思いますが、山嵐が政治家を目指していたり、俳句 に手をだしたり、従軍記者をしたり・・・といった記憶がなかったので・・・・・・。 でも、この場面の山嵐の台詞には考えさせられるものがありました。

<正義の使者>
はあ、すっきりした!って感じですね。ざまぁみろい!べらんめぇ!!って。 この期に及んでまだ言い訳する赤シャツと野だいこに哀れみの気持ちさえ持ちました よ。ああ、でもやっぱり園岡さんのキザ男、はまりすぎ。

<あなたは誰>
うらなりさんで登場されますよね。でもびくびくしているわけじゃないし、むしろ無 表情でこの歌を歌われていますよね。この場面はどういう場面なのか・・・実はまだ つかめないでいます。 漱石が、子規の奔放さ、磊落さに嫉妬していたと告白していますけど、・・・卒論で 漱石を取り上げた割にはこのエピソードは初耳だったので、ちょっぴり戸惑っています。 山嵐(子規)は旅立ち、坊っちゃんは清の元に去っていき、「自分はどこへ帰ればい いのか?」という漱石の問いに対する答えが、「坊っちゃん」という小説の完成であ り、「何故生きるのかということではなく、以下に生きるかということ」という命題 と、障子越しにユリの花をいけている女性の姿(初めは登世の幻だったけど、現実の 世界に戻った漱石が見たのは鏡子の姿だった)ということなのでしょうか? 「だから、清の墓は小日向の養源寺にある」で坊っちゃんを完成させた漱石の表情に は幕開けの時の険しい神経質そうな表情はありませんでした。坊っちゃんを書くこと で漱石の心の病が解消されつつあるという(もしかしたら、完成によって解消され きったということでしょうか)ことなのでしょうか?

実は二幕の後半に関しては余りよく理解できなかった部分があるので、(高野さんの 芝居に関してではなく、この作品として何を描きたかったかがつかみきれなかったと いうことです。)このあたりは22日の夜の部と、23日の千秋楽で解明したいと 思っています。

しかし、こういう見方をするのはやっぱり邪道なのでしょうかね。 前回の初見で色々と疑問に感じていた点を中心にして、高野さんを中心に昼公演を観 て、それを踏まえて夜公演で復習するという、見方をしてしまいました。昼で上手が わで見て、背中越しで表情が見えなかったところを夜に下手がわで確認とったり、昼 に表情を確認できたところを、夜に反対側から見たり・・・というところで、貴重な 発見があったり、自分が感じた感じ方が合うかどうか確認取ったり・・・。これって 「一期一会」の原則に反していますよね。でも、やっぱり私はひとつの作品にはまっ てとことん・・・という癖がついてしまっているようです。

昼公演では、とっても感動したので、カーテンコールの最後の最後にスタンディング ・オベイションをさせていただきました。目だってしまったかもしれないですが、自 分の感じ方、理解の仕方で、「今日の公演はとっても良かったから、その感動を表現 したい」=立ちたい!と思える公演でした。

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