オリジナルとは違うアレンジ


「本来の42ND.STREET」と「日本の42ND.STREET」
「42ND.STREET」は、典型的なアメリカンドリーム、サクセスストーリーの ミュージカルです。ストーリーは単純明快、どんな言語ででも理解できる基本的な作品 と思います。もう10年以上前になると思いますが、来日公演があり、またこれがNHK でオンエアされました。私は偶然にも、NHKホールで観劇もしましたし、そのオンエア されたものも録画して、当時数回見直しました。実を言うと、この作品自体は、私の中では 「トップ3」には入らない作品なのですが、何故か印象としてはかなりのものがあった みたいです。というのは、1997年12月に日本での公演を観た時、私の記憶の中にある 「42ND.STREET」がよみがえるのです。

「え?ジュリアン・マーシュ・ジュニアぁぁぁ???」
「くくくっ!この歌はこういう訳に、、、なるよね(爆)」
「ジュリアンがテナーパート歌ってる!?」
「あれ?こんな場面はなかったな」

などなど、初演に最初に観劇した時、物凄いスピードで、頭の中をよぎりました。そういう経験をふまえて、 今回は私の記憶の中にある「42ND.STREET」もあわせてレポートしたい と思います。

*ジュリアン・マーシュとジュリアン・マーシュ・ジュニア
これはいうまでもありませんね。みなさんもご存知の通りです。最初錦織さんが この作品に出演をするという話を聞いたとき、私は錦織さんは若き二枚目ビリー・ ローラー役だと思ったくらいです。錦織さんの年齢にあわせて、設定を変えてあります。
*「Anytime,Annie」と「いつでもアニー」
「Anytime」とはご存知の通り、「ありがとう」に対して「いつでもどーぞ」 という意味のものです。アン・ライリーは何を言われても「Anytime!」と 答えることからこのようなニックネームがついているわけです。これに関しては、 「言葉の違い」を感じました。日本語ではどうしてもサラッと流れてしまいますね。 クビになったペギーをみんなで駅に迎えに行った時、ペギーが「私、やります!」 ということになり、ジュリアンJr.が、アン・ライリーにむかって「君のおかげだよ」 という台詞がありますね。そしてそこで「いつでも!いつでも、Mr.マーシュ!」 ってジュリアンJr.の後を追います。ここは英語だと笑いをとる部分。最初、 感謝されてビックリして小さめの声で「Anytime」そして、大袈裟にポーズを作り、 満面の笑みをたたえ、自慢げに、「Anytime!!」
日本語だとサラッと流れてしまうどころか、よくわからなかったと思います。なんで こんなこと言っているのか。まだ「まかせてっ!」くらいにするか、もしくは もっと意訳するほうがいい場所だと思います。
*言葉の違いと大袈裟なポーズといえば
ジプシーティーケトルへ向かう時、ステップを知らないペギーに、アン・ライリーが ステップを教えます。最初に見本をみせた後、ペギーが自分より上手にステップを踏みます。 この時、日本ではサラッと「あなたうまいじゃない!」「ええ」と流れています。 ここではアン・ライリーは、顔一面が口になるくらい大口をあけて、驚き、観客から 笑いを誘います。そして、次のステップを教えた後、アン・ライリーが「You’re good!!」 というと、ペギーが「Iknow」とボソッと言いますが、ここは案外笑えるところした。 直接言葉が通じない日本公演なわけですから、大袈裟なリアクションは有効ですよね。
*言葉の違いといえば
ドロシーがシャドウワルツの途中、薄暗い中急にライトをあてられるシーンがありますが、 2つ目のライトをあびた時、日本公演では「わかったわ!」とドロシーが言いますよね。これって ジュリアンJr.の演出の意図がわかったという意味で使われています。。。 このやりとりは来日公演では「( I )”Got” you!」「And Igot ”You”!」 というものでしたが、私はずっと、ドロシーが眩しくて両手で目をふさいでいたのを パッと開いて「(ジュリアンを)見ぃ〜つけた!」とやってたのと思っていたのです。 本当はどうなのかな。多分演出上で変えたんだとは思いますが。
*若き二枚目はテノール歌手
若き二枚目ビリー・ローラーは実はテノール歌手です。
(1)ジプシーティーケトルへ向かう途中に、ビリーがペギーを食事に誘うシーンが ありますが、ビリーが去った後の女の子達の会話で「どうして二枚目は新しもん 好きなのかしら!」みたいな台詞があったと思います。私の記憶の中にある本来の 作品の方では、「どうしてテナーって、、、」という風に「テナー」という部分を 強調した台詞でした。加えて「なんであんな高い声なのか」という女の子の台詞に 対して、マギーが「それは、きつい下着をつけているからよ」という会話がされます。 記憶の中に、「・・・Tenors such rude!」とか「・・・Underwear they wear」とか ところどころが10年以上たっているのに、日本初演を観た時、日本語を聞きながら 英語が頭をよぎったりしました。
(2)クビになったペギーをジュリアンJr.はじめみんなが迎えにいくシーンで、 「ブロードウェイの子守唄」を歌いますね。そこで、男性陣が「おやーすみー、べィビー・・・」 とハモルところ、ジュリアンJr.が高音部を歌っていますが、本来のほうは勿論テナーである ビリーが高音部を歌います。
(3)そして極めつけ、ジュリアンJr.が「おつかーれーさぁーまー」とソロになる部分 があると思いますが、本来の作品でいうと、ジュリアンが(日本語の歌でいうと) 「おつかーれーさぁー」まで歌って、喉を抑えて「うーん!」と喉をならした後、 ビリーを指差し、そしてテナーのビリーが「まー」の部分を歌うのです。
(4)舞台「プリティレディ」が成功し、ビリーとキッズパーティに行く時、ジュリアンが現れて、 「ビリー、チョット待ってて」というシーン。ビリーが「1分だけだよ。若き二枚目は気が 短いからね!」という感じの台詞があったと思いますが、ここでも「テナーは気が短いからね!」 と去っていくのです。
*第一幕おわり
ドロシー・ブロックが骨折し、演出家であるジュリアンJr.が幕の前に立ち、客席に向かって 説明をした後、チャラーン!と音楽が入っているかと思いますが、本来の作品では、 ジュリアンが観客に向かって説明をした後、スポットライトがオフになっておわり だったと思います。
*第二幕あたま
ジュリアンJr.をはじめスタッフと一緒にお医者さんが出てきて、ドロシーの容体に 関するシーンがありますが、あれは本来は無かったような、、、いきなりキッズ達が 「Sing,トゥアラーララララ、ラーラー〜」って歌ってました。
*演出の違いといえば
ジュリアンとペギー、そしてアンディ。ペギーが採用されるシーンで違いを感じました。 ジプシーティーケトルで踊り出すところで、今の舞台では、ペギーのダンスの才能に目を つけた上で、アンディが踊りに参加、そしてその様子をジュリアンJr.もみている。 ジュリアンJr.は「お金を払って観てもらう踊りを、こんなところで」と言いながらも、 嬉しそうだし、その後アンディもジュリアンJr.もペギーを雇おうということを 目配せしながら、面白ろおかしく演技していますね。私の記憶の中のこのシーンは、 偶然通りかかったアンディもつられて踊り出す→ジュリアン叱る(これは結構まじ) →ジュリアン「困ったことだ」アンディ「すみません、ボス」→ジュリアン「困ったのは、 あそこにいるシャイなお嬢さんだよ」→アンディ「だってボス、24人って言ったじゃない ですか」、、、、、そしてここで、ジュリアンの目配せがあり、アンディにジュリアンの 意志が伝わる、、、という感じでした。
*楽屋シーンで 本番前でナーバスなペギーを訪問するドロシー。そのシーンが終わる時、ドロシーは ドアから出ていきますが、本来のでは、パットが車椅子を後ろにひっぱり、ドロシーは ペギーに、ペギーはドロシーに向かって両手を差し伸べます。そういえば日本の初演では、 そのようにしてましたね。歌を教えるシーンも、初演では来日公演の振り付けと同じ でしたが、今回は違っていました。

とまぁ、これが私の記憶の中にある違いです。舞台やビデオ自体、10数年前にみたものなので、 私の思い込みの部分もあるかもしれませんが、その場合はお許しください。でも、 かなり前に観たわりには、ところどころですが台詞とかクリアに頭をよぎるような、 印象深い作品でした。

☆4月11日(日)12:00の部
上記のように、昔に観た本来の作品がつい頭をよぎるのですが、でも実は私は、日本の 「42ND.STREET」のほうが好きです。ペギーを採用するシーンなど、 日本のほうがはるかに面白いです。
今回初参加の寿さんのドロシーはとにかく素敵です。第一声を聴いたとたん、 夢中になって聴いてしまいました。前回の上月さん、勿論素敵でした。ハマリ役でした。 お二人とも歌がとてもお上手ですよね。でも印象はかなり違うものです。どこが 違うのだろう、と一生懸命考えた末、多分、上月さんはシャンソン風味、寿さんは 正統派、、、的な歌唱なのではないか、という自分なりの結論に達しました。 寿ドロシーは若いです、凄く。声にもハリがあり、つやがありました。でもチョット ドロシー役をやるには寿さん自身が若すぎるかもしれない。

涼風さんのペギーですが、歌に迫力が増したような気がします。ただの一観客として こんな発言、おこがましいですが、タップの音とかテンポが、初演よりはるかに良いと思います。 ジプシーティーケトルへ向かう時に、ステップを習う場面というのは、アン・ライリー 自体が凄くタップが上手で、早いステップを踏んでみせるのですが、日本初演の時 感じたのは、涼風ペギーのステップをひきたてる為に、春風ライリーが、ゆっくりと テンポを落としてステップを踏んだように感じていました。でも今回は、かなり テンポも音も良くきこえました。ただ、私の記憶にある来日公演のこのシーンの ステップは、物凄く早くて、軽い音でした。これは日本の場合、仕方がないことなの かな。。。日本は人気のある主役キャストが決まって、そこから物事が始まるから もともとのその役を目指してオーディションして合格したアメリカのキャストとは 違いが出てしまうのでしょう。でも、涼風さんのほうが比べ物にならないくらいに 華はありますよ。(ただしペギーの場合、どこの国でも新人さんが演じるそうです)

しかし、寿さんと涼風さんって声が非常に似てると思いました。楽屋でドロシーが ペギーに歌を教える場面で、丁度2人の位置から真ん中の延長に座っていた私には 2人の声がぶつかって、そして客席に広がっていったように感じました。これは 席によって、聴こえ方が違うかもしれませんね。

錦織さんは、まだ声が復活していませんでした。つか蒲田は、錦織さんにとって、 とてもプラスになる経験だったと思いますが、次の舞台にひびいてしまったことは とても残念です。錦織さんの声といえば、澄んでいて、高音部が伸びてとても素敵 なのに、終始声がかすれぎみだし、ソロ曲も「いつもだったら高音が奇麗なのに」 「いつもだったら、もう少し高い声で歌っていると思うのに」と、なんか、音下げて ないかなと思わせるような印象を持ってしまいました。私達ファンは、錦織さんが 器用に色々とこなせる「天才肌な人材」だってことも知ってるし(^^)声が素敵と いうことも知ってるし、歌も歌えるってことも知ってるし、前の舞台の影響で声が かすれている事も知っています。でも残念なことに、それを知らない人達にはわから なかったってことです。ある男性の人達の話が聞こえてきたのですが、「涼風さんと 寿さんの歌が素晴らしかったな!でも男性の主役が歌えてなかったなぁ」と言って いました。ミュージカルを観に来て、この一回しか観劇しない人達だったみたいです。 でもそれは仕方ないことですよね。BWだったらアンダースタディが待ってました とばかりに出てくるでしょうね。

舞台俳優さんというのは、大変な職業ですね。日々が勝負。調子の悪い日もあるだろうし、 疲れがたまってくる時もあるだろうし、、、でも観客は自分が観劇した日の俳優さんの 印象がすべてになったりもする。。。錦織さんの声の調子は段々と良くなっているので しょうか。錦織さんは日本のミュージカルを背負う人だと思うので、とにかく早く声の調子が 戻りますようにお祈りしています。ですから、錦織さんも喉に良い事(やってるでしょうが)、 かたっぱしからやって、喉に悪いことはひかえて、一日でもはやい復活を期待しています。



上記は1999年4月12日の「42ND.STREET」日本公演再演(日生劇場)を観た 時に書いたものです。そしてそれにある掲示板で発言した時のことを追加しておきました。 初演の前後も舞台をまず楽しもうと思い、昔のビデオを観ず、そしてこのレポートを書いた時も、 ビデオを観ていない状態でのものす。

後日、奥に仕舞い込まれたそのビデオを観てみました。 そしたら凄いものですね。若い時に、「聴いた」ことって、本当に凄い良く覚えて いるものだなぁ、と自分でもビックリしました。1998年12月の初演の時に、 色々な曲の歌詞とか台詞とかが、日本語のをみながらでも、当時みた英語の、しかも その役者さんたちの声・音のままよぎったものは、ほとんど正しかったもので。

ただ、やっぱり記憶が間違っているところもありました。上記でいうと、第2幕の始まり の記憶がどうやら、私の場合、TVでオンエアされたものを覚えていた様子です。 第2幕第1場は、やっぱり医者とかが出てきて、ドロシーの容体を説明している のがあったみたい。私が記憶していたのはビデオで観たほうだったようです。 あとビリーのテナーの件で、駅で歌う時に、ジュリアンが「おつかーれーさー」 まで歌って、最後を連携でビリーというのは、来日公演用の演出みたいです。 後にオリジナルブロードウェイキャストのCDを購入しましたが、日本公演の 「おつかーれーさーまー」にあたる部分はテナーのビリーが全部歌っていました。 でも来日公演の演出としては、そういうリアクションが面白いほうが観客サイド としてもわかりやすいから、来日公演用の演出はよかったと思います。

でもね、この作品に関しては来日公演より日本公演のほうが面白いと思いますよ。 というのは、コメディですから、観客が面白がることをやる場合、やっぱり日本の 観客がどうやれば楽しいというのは、日本スタッフや日本キャストのほうがわかる だろうし、あとやっぱり日本語でやってる、ってのもおおきいいかな。この作品は もとの歌自体、ちょっとかわっているから、日本語訳の歌もかわったものになる のでそういった意味で私の中で作品的にトップ3には入らないのですが、でも この日本公演を観て、とにかく劇場に通うのが楽しかったので、大好きな作品 のひとつになりました。