−Sunset Blvd.−

★STORY7★


Eternal youth パラマウントへ行った日以来、ノーマの屋敷は美容師の集団に占領された。 過酷な美顔術を施し、ボディーマッサージをし、運動をし、そして夜9時には寝た。 永遠にまわることのないカメラの前に立つ準備をしていた。

就寝前にノーマはジョーの部屋に来る。顔には美顔用のシートを貼ってあり、 首はしわを伸ばすものを装着している。いまの自分の姿を見せたくないノーマは ジョーに振り返らないようにさて、その日に自分がどれだけ減量できたとか、 報告をする。ノーマには気になっていることがあった。夜、うなされてジョーを 呼んだ時、ジョーがいなかった。問い詰められたジョーは散歩してたと言い訳したが ノーマは車がなかったことも知っている。その場はなんとか切り抜けたジョー だが、そのジョーに一言ノーマは言った。「裏切ったら許さないから!」

確かにジョーは毎晩外出していた。その日もノーマの寝室の部屋のあかりが消えると 出かけていった。ジョーは映画の脚本を書いていた。ベティが発掘してくれた 例の話だ。夜、皆が帰った後の静かな撮影所で2人で脚本に取り組んでいるのだ。 ベティの案にジョーがアイディアを加えていく。

「ノーマ、って誰?」いきなりベティが聞いた。見るつもりはなかったが、ジョーの 煙草ケースに書かれているノーマの「あなたに夢中よ」というメッセージを読んでしまったのだ。 ジョーはベティには「気前のいい中年のご婦人から感謝の印として貰ったんだよ」と 説明をした。ベティはその煙草ケースが純金でできていることから、「よくある話ね! 道で助けた人が実は億万長者で、その遺産を受け取る、、、」などと、持ち前の 推理を言い出すので、ジョーは「閲覧係というのは本当に筋にうるさいな」と 一笑する。

考えにつまると時々2人は気分転換のため、撮影所の中をブラブラと歩きまわった。 ベティの鼻の話がでたのもそんな時だった。この撮影所のセットで子供の頃よく 遊んだという。子役とかでなく、父がパラマウントの技術係で、母は今でも衣装部で 働いている為、この近所に住んでいたのだ。祖母もテスト女優だった。映画一家だ。 ベティは家族の星として、10歳の頃から演技やダンスを習ってオーディションを 受けたりしていた。でもベティはオーディションで「鼻が曲がっている」と指摘 されたのだ。それで鼻の整形をして再挑戦すると、今度は「演技がなっていない」 と言われたというのだ。ジョーは「ヒドイ話だ」とベティをいたわったが、ベティ 自身は郵便係から閲覧係に出世したから、と前向きだ。スターに慣れなくて悔しかった かというジョーの問いかけにも、「裏方のほうが面白い」とあっさり答えた。

そんなベティに「万歳三唱だな」と言い、ジョーはベティの鼻にキスをした。 良い匂いがした。「新しいシャンプーのせいかしら?」というベティにジョーには その香りは、さわやかで洗いたてのハンカチのように、もしくは新車のように思えた。 そういえば、会えば言い合いのような出会いを繰り返していたジョーは、あまり ベティのことを知らなかった。ベティの年齢をたずねた。ベティは22歳だ。 一番輝いている年頃だ、とジョーは思った。「仕事が終わったら僕を近づけない ことだ。近づき過ぎたら、靴を脱いで僕の頭をたたいていいよ。。。さぁ、じゃぁ まがい物のこの街を通って、タイプライターの前に戻ろうか」

I was the first husband その日の仕事が終わって屋敷に戻ると、ガレージの中でマックスがジョーを 待ち受けていた。帰る時はノーマがみているかもしれないので気をつけろ、と 忠告するだけのために待っていたのだ。

マックス「私は責めているのではありません」
ジョー   「脚本を書いているだけだ。もうすぐ完成する」
マックス「私は奥様が心配なだけです」
ジョー   「心配しても救えない。映画に出ると信じ込んでいる。 本当のことに気付いたら
            どうするんだ?」
マックス「気付かれません。それが私の仕事です。今までもずっとそうしてきました」


マックス「私が見つけた時、彼女は16歳でした。スターに育てたが、救ってはやれなかった」
ジョー   「君が彼女をスターにした?」
マックス「そうだ。私は彼女のデビュー作を監督した。私も有望な若手監督の一人でね。 T.W.グリフィスや
セシル・B・デミルと並んで、この私も将来を期待されていた 一人だった」
ジョー   「それなのに彼女は君を執事にしたのか?」
マックス「いや、私が自分から頼んだのだ。監督の仕事は捨てた。彼女無しでは 絶えられなかったんだ」

「私が彼女の最初の夫だったんだよ」





次頁に続く