ギャラリーフェイク

漫画:細野不二彦  小学館  既刊22巻

これは有名漫画。稀代の秀才、細野不二彦が描く美術界版「ブラックジャック」だ。手塚治虫の「ブラックジャック」は、誰でも知っているであろう。気に入った客しか相手にせず、しかも法外な手術料を要求する天才的無免許医師ブラックジャックとその助手ピノコの、反骨気風あふれるオムニバスドラマだ。これをそのまま美術界に置き換えて、蘇らせたのがこの漫画。

毎回、非常にマニアックな美術ネタで読者を驚かし、その知識量に圧倒されるが、細野漫画の素晴らしいところは、そういうことではない。実を言えば、ネタは多分に編集部や外部からの仕入れに頼っているのだろう。素晴らしいのは、そのネタを漫画内で見事にドラマ化することなのだ。ネタを集めるのは簡単ではないが、努力で何とかなる。それを構成し面白くすることこそ才能の賜物で、本当に至難なのだ。細野は、それに成功している。

「ブラックジャック」を評して、水準以下の話が一本もないオムニバスと言った評者がいたが、この評が、そのまま「ギャラリーフェイク」にも当てはまる。
細野は本当にいろんな漫画を描く。それこそギャグからSF、社会派ドラマからラブコメまで、描いた事がないのは少女漫画くらいだろう。そして、そのほとんどの作品に外れがない。

不遜にも、現存する漫画家に「手塚治虫から連なる漫画家ランク」をつけるとするならば、上位3人は浦沢直樹、細野不二彦、ゆうきまさみの3人になる(繰り返しだがあくまで私的意見)。

ここでいう漫画家とは、手塚治虫の作り出したエンターテインメントなストーリー漫画の漫画家だ。その中でも細野は、一番手塚を意識した漫画家だと思う。手塚漫画の正統血統がここに結実している。

合 計 画 力 物 語 完成度 パワー 主 観
80 13 16 18 18 15

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