誰(た)そ彼(かれ)に  何方(どなた)待つやら  夕化粧
オシロイバナ科オシロイバナ属オシロイバナ(白粉花)
別名・ユウゲショウ(夕化粧)

 中央公園の一角には、この花の大きな株があって、おそらくこぼれ種だろうポツリ、ポツリと周辺に拡がっている。
 公園とは別の散歩コースでは、首都高速の高架の下に、昔は資材置き場のようになっていた空き地があって、ここのものは僕の背丈を超える程で、かつては3畳ぐらいの面積を、この花達が覆っていた。
 僕等の世代には、サルビア、カンナ、ダリアと並んで、この花、オシロイバナ科オシロイバナ属オシロイバナは、身近な、何処か郷愁を誘う花になっている。
 実は、そろそろ公園に咲き始めたヨウシュヤマゴボウについて調べていたら、図鑑の近いページに写真が載っていて、おやおや、オシロイバナを「野草」として扱っている図鑑もあるのかと、偶然、気付かされたのである。
 野草とはいっても、marvel of Peru(ペルーの驚異)と呼ばれ、ペルー原産であるとか、いやいやメキシコ南部原産であるとか論議されていて、いずれにしろ日本から見れば外来種であることに違いはない。
『世界各地で広く栽培され、日本では江戸時代初期から記録がある』ので、栽培植物図鑑も見てみたが、以外や素っ気ない扱いで、そう言えば僕の記憶の中でも、わざわざ植えられている訳ではないのだけれど、生えてくれば雑草扱いにはされなかったぐらいの植物である。中央公園のものも、そこ一カ所だけで、いかにも不自然、もともと植えられたものではないのかもしれない。
 さて、図鑑に依れば、南国を代表する花、ブーゲンヴィレアもオシロイバナ科である。ところが、オシロイバナ科そのものが研究者から忘れられていたそうで、分類学的にも諸説が、そのまま放置されているらしい。まァ『呑気な花見人』には分類学はよしとして、それでも、改めて図鑑の解説を読むと、これが、なかなか「へぇ〜」なのだ。
 まず、この花は、普通に見れば合弁花である。花弁5裂、雄しべ5、雌しべ1。『呑気な花見人』には『朝顔』の花と構造が一緒に見える。ところが、オシロイバナは離弁花植物なのだ。しかも花弁に見えるのは萼片で、本来5枚なのだが合着して筒状になった。ではでは、花後、あの堅い種子を抱いているのは萼片じゃないのか? と、これは「苞」なのである。図鑑では『苞は萼状で、合生して杯状になり、5裂する』。
 変なヤツである。合弁花に化けた離弁花というか、本来の花弁を無くしてまで合弁花になりたかった離弁花というべきか。どうしてまた、そんな妙な憧れを持つに至ったのだろう。「踏み絵」や「ユダヤ狩り」でもあるまいし『離弁花排斥令』が出た訳でもなかろうに、不思議である。
 花後も可笑しい。前述のように、先が5裂する筒状に合着した萼片の下部にくびれがあって、くびれの上部は花後落ちるのだけれど、下部は中の子房を包むように合着して、あの堅くゴツゴツとした木質の種子の皮になるのである。なんて合着が好きなヤツなんだ。
 で、で、この堅い種子を割ると、胚乳が白い粉状態。こういう種子も珍しいが、これが『白粉(おしろい)花』の名前の由来となったのである。或る本には、実際『白粉の代用にされた』とある。思えば、この花が、どうしてオシロイバナと呼ばれるのか考えた事もなかった。赤や白、黄色、それがまた互いに組み合わさって、染め分けになったり、斑になったり、筋状になったり、絞りになったりする派手な花から白粉を想像するのは難しいが、なんと種子を割っての命名だったのだ。先人の好奇心の旺盛さ、観察力の鋭さ、発想の自由さ、脱帽である。
 この花の英名は、four-o'clock(午後4時)で、夕方から咲き始めることに因むが、そこで、日本でのまたの名は『夕化粧』。俳句の季語としては、こちらが好まれるが、これも白粉から続く連想だと思われる。『夕化粧』は「薄化粧」であってほしい。派手な花の印象からの命名とは考えにくい。ま、新宿という場所柄、一目でそれと分かる派手派手で、夕方ご出勤になる「厚化粧」の方もいないではないが・・。(2004/07/10)

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