Trekking Reports 〜山歩きの記録

2004.9.11(土)〜12(日) なりゆきで日本三大急登筆頭コースへ【甲斐駒ヶ岳 南アルプス】

東峰から黒戸尾根を見下ろす

 もぐもぐさんのBlogに週末、北沢峠から甲斐駒と仙丈に行くとの書き込みを見つけ、茶々を入れていたら成り行きで一緒に黒戸尾根を挑戦することに。ならばと携帯伝言板に「黒戸行くよ〜」と書き込んだら、いつもの水谷さんと亜美さんが釣れた。ふっふっふ。道連れじゃ〜。(笑)

 で、前日仙流荘前の駐車場で車中泊し、水谷さんの車を残して私の車で黒戸尾根登山口の白州町へと向かう。途中で土砂降りとなり本当に決行できるか不安になりつつ杖突峠を越え、若干道に迷いつつも1時間半ほどで駒ヶ岳神社前の駐車場に到着。約束の7時ちょっと前に亜美さんが到着したので、準備を調えてまずは神社の方へと出発した。

 神社前の水場で水を補給。ずっしりと重くなったザックを背負って出発。吊り橋を渡ったところからジグザグの急坂登りが始まった。道端には時折カニコウモリやキッコウハグマなどの超地味な花たちが見られるが、基本的にはうす暗い樹林帯の中を登っていく。やがて若干のトラバースを経て尾根に出る。道は深く削られているところが多く、また丁石仏もたくさん残っており、南アルプススーパー林道ができるまでのメインルートだった頃の面影をしのばせる。先頭を水谷さんが進み、その直後に亜美さん。それから遅れがちに私ともぐさんが着いていくのだが、先頭の2人のペースが速い速い。あんなのに着いて行っちゃうと今回の長丁場は乗り切れるわけがないので、途中で待たせることを心苦しく思いつつも敢えて自分のペース(よりさらに落とし気味に)に徹して歩いてく。


刃渡り

 笹平を過ぎると八丁登りの急坂となり広かった尾根は徐々にヤセ尾根へと変わっていく。やがてひと息ついたところで名物の刃渡りに到着。足場はしっかりしているし、クサリも設置されているのでそれほど怖いとは思わなかったが、ガスが晴れて高度感が出てくるとちょっと印象が変わるかもしれない。そう。天気は心配していた雨は無かったが、基本的にずっとガスの中で展望(といってもほとんど樹林帯の中だが)はほとんど無かった。ま、この日は登れ登れコースなんであっついピーカンより、こっちの方が良かったかもしれない。

 刃渡りを過ぎると長めのハシゴを何度となくクリアすると石の祠の建つ刀利天狗に到着。祠の周囲の岩に腰掛けて小休止。と思ったが時間はお昼近かったので、ここで昼食とすることにした。ここまでで標高差では2/3ほど来ているはずなのだが、黒戸尾根の本番は実はこれからと言った方がいいのかもしれない。刀利天狗からは黒戸山を大きく巻くようにして越えると、今度は鞍部へ向かって一直線。せっかくここまで登ったのに〜と言っても仕方がないので大人しく下っていくと、ややくたびれた無人小屋のある五合目に到着。小屋裏の今にも涸れそうな水場で水を補給してしばしのコーヒータイム。そして鞍部からは黒戸尾根前半のハイライトとも言える、天狗岩、屏風岩の急登となる。ここには無数のハシゴやクサリ場が設置されており、それほど難儀するところはないが、うっかりペースを間違ってハシゴをトントンと登ってしまうと、途中で見事に息切れして足が止まってしまう。ここは一歩一歩確実にゆっくりと登るのが正解だろう。そしてこの急坂を登り切ると唐突に目の前に意外と綺麗な(失礼!)七丈小屋に到着した。


ハシゴやクサリ場の連続する屏風岩付近

 小屋についたら荷物の整理もそこそこにビールを購入してカンパーイ!それぞれ持ち寄ったつまみとしんどかったここまでの登りを肴に宴会となった。そこへ後続のグループもたどり着き宴会の輪は広がり....その中でとんでもなくラッキーなことがあったのだが、ここではナイショ。どうしても知りたい方はメールでどうぞ。またガスっていた周囲は徐々に晴れ始め、その内目の前には鳳凰三山や甲斐駒(の手前ピーク)が姿を現したものだからさらに大騒ぎ。それぞれ記念写真を撮りつつ日は暮れていった。
 夕食は5時から。たぶん南アルプスの小屋の中で一番豪勢じゃないかという料理に舌鼓を打ちつつ、わいわい食事をしていたら、亜美さんが明日のご来光を山頂で見たい!と言い始めた。でも朝食は5時頃からだから無理だよ(3時には小屋を出ないと山頂のご来光には間に合わない)と言うと、ならばと小屋番と交渉を始め、お弁当は作れないけどこれならいいよ。と、夕食の残り(といってもまっさらなおひつ一杯分)のご飯を調達。さらには塩と梅干しまで貰ってきて、おにぎりを作り始めることに。う〜む、見事な交渉能力。で、仕方がないので我々も早起きに付き合うことになったのでした。


小屋で宴会中、ついにガスが晴れた(鳳凰山地蔵岳)

 朝、結局3時前には起きられず、山頂でのご来光は諦めて御来迎場でのご来光を目指して4時まえに小屋を出発。まだ暗い中のハシゴ登りには難儀しつつも、なんとか道を外さないように登っていくと、森林限界を超えたあたりで空は徐々に白んできた。そして数年前に倒れたという石鳥居がそのままになっている御来迎場に到着。その石鳥居をベンチがわりにして(バチあたりな奴)昨晩、亜美さんが握ってくれたおにぎりを食べつつ朝日が昇るのを待った。展望は見渡す限りの雲海。そして雲海に浮かぶ島のように真正面に八ヶ岳の山々が聳え、その奥には噴煙を上げる浅間山。右へ視線を転じると奥秩父の山々を挟んで鳳凰三山が近く早川尾根が甲斐駒へと続き、その奥には北岳はひときわ高く聳える。そしてなにより目を引くのはやはり富士山。鳳凰三山の向こうに秀麗な姿を大きく見せていた。


朝日に照らされた甲斐駒ヶ岳

 奥秩父の山々の右手から登ってきた朝日に歓声を上げ、朝日に照らされ赤く染まった甲斐駒をバックに集合写真を撮ってから、長く滞在した御来迎場を出発。甲斐駒へ向けて最後の登りにかかった。
 御来迎場からは岩場の難所が連続。それほど難易度は高くはないが、クサリやハシゴを頼りに急坂を一気に登っていくので、2500mを越えた高地では息が切れてなかなかペースが上がらない。それに振り返ると富士山や鳳凰山、八ヶ岳の大パノラマにも気を取られ、ついつい似たような構図の写真を大量生産してしまう。
 岩場を過ぎ、ガレて崩壊寸前の急斜面を落石に注意しながら登っていくと祠やたくさんの石碑が並ぶピークに到着。駒ヶ岳神社奥社のある東峰である。もう山頂は目と鼻の先だが、これまで登ってきた黒戸尾根はここからの方がよく見えるので休憩ついでにしばらく撮影タイム。そして、ザックを担ぎなおして出発。北沢峠からのコースと合流し最後の岩をよいしょと登ると、1年ぶりの甲斐駒山頂に到着した。お〜っ、本当に黒戸尾根を登り切っちゃったよ。う〜ん、充実感!


甲斐駒山頂からの展望

 山頂ではカメラ片手に360度の展望を楽しんだのち、お昼ご飯の準備にかかる。献立は山菜うどん。とっても美味しそうにできたらみずさんや亜美さんにたかられちゃった。(笑) その内、同宿のグループも到着し、さらにワイワイと賑やかに山頂でのひとときを楽しんだ。そして最後に山頂での集合写真を撮り、下山にかかることになった。

 直登コースは下山には不向きなので、まずは巻き道コースを下り始める。奇岩が並ぶザレた白砂の急斜面をスリップに注意しながら下っていると、真正面に見える摩利支天がすっごく気になってくる。で、先頭を行くみずさんに「摩利支天に寄りましょう」と叫び、ちょっと寄り道することになった。分岐から摩利支天へのルートはあまり踏まれていない様子でザレ場のトラバース道はうっかりすると道が崩れて谷へと落ちそうだ。そしてトラバースを過ぎると鞍部までの登り返し、さらに山頂までの急登と、意外と手強かったが、誰もいない山頂からは至近の甲斐駒が大迫力で、真横から黒戸尾根を見てその斜度にあらためて驚いた。また北岳や鳳凰山も心持ち近づいたようだ。このピークに立ち寄る人は10人に1人もいないようだが(このときは我々以外には誰とも会わず)、体力に余裕があれば絶対にお薦めです。


山頂直下の白砂のザレ場を下る

 摩利支天をあとにしてトラバース道に引き返し、稜線に戻ると岩場の難所となる。と言っても黒戸尾根を登ってきた身には大したことは無い。昨年、北沢峠から登った時はここの険しさに驚いたものだったけどなぁと思いつつ、背後に大きい甲斐駒を振り返ったりしながら進んでいくと、やがてここも展望が素晴らしい駒津峰に到着。ここからコースは双児山経由で北沢峠へと尾根筋を真っ直ぐ下るルートと仙水峠経由で沢沿いを下るルートに分かれるが、今回は仙水小屋前の美味しい水場に立ち寄りたいというみずさんのひと言で仙水峠経由に決定。まずは仙水峠までの長くて急な坂を下ることになった。
 昨年はここを登ったのだが、こんなに長かったっけと言うほど延々と下りは続き、樹林に遮られて目指す仙水峠は一向に見えてこない。また、この時間でもここを登ってくる登山者が多く「駒津峰はまだですか?」との問いに、同情の念を込めて「まだまだです」と答えた。<オニだ〜(笑)


六万石と駒津峰

 永久に続くかと思われた標高差500mの一気下りも峠が見えないまま下っていると唐突に峠が現れて終了。ここから見た摩利支天の迫力に昨年は感激したのだが、今回はガスに包まれてイマイチ。ちょっと粘ってみたが晴れそうもなかったので仕方なく次の目的地、仙水小屋の水場に向けて出発した。
 大岩がゴロゴロした歩きにくいガレ場を過ぎ、樹林帯の中に入ってなだらかにしばらく下ると、やがて仙水小屋に到着。さっそくコンコンと流れる水場に手を差し出すと、うーっ!つめてーっ!!長く手を浸けていられないほどの冷たさに感激し、喉を潤してさらに感激。うっめーっ!!
 仙水小屋からは沢沿いの遊歩道(といっても小さなクサリ場が1ヶ所あるが)を下っていき、いくつもの堰堤を越え、何度となく沢を渡ると、やがて最後の橋を越えて北沢長衛小屋に到着。意外とたくさんのテントが設営されたテン場を眺めながらさらに下り、舗装林道に出てから軽い登り返しを経て、ついに北沢峠に到着した。やったーっ!
 で、バスの待ち時間を利用して仙水小屋で汲んだ水を沸かしてコーヒータイム。すると定刻より早くバスがやってきたので、大慌てで片付けてバスに乗り込み仙流荘へ。そしてデポしていたみずさんの車に乗り込んで白州町へと向かい、駒ヶ岳神社前の駐車場で解散した。

 2年前、早川尾根を歩いた時、あまりに急な尾根を見て「黒戸尾根は登るまい」と誓ったものでしたが、なりゆきとはいえ、思わず登っちゃいました。ま、途中の七丈小屋で泊まるなら白峰三山の縦走とさほど変わらないわけで、振り返ると思ったより楽だったなぁという印象。ま、道中は死にそうになってましたけどね。(笑)
 でもとりあえず黒戸尾根を登り切ったことで、ここが登れればこれ以外の急登コースもなんとかなるだろうという自信になったことは確か。1週前の剱岳に続いてのチャレンジ登山に成功したことで、今年の夏山はさらに充実したものになったのでした。


【コースタイム】
竹宇駒ヶ岳神社 7:05…笹ノ平 9:30…刀利天狗 11:25-11:45…五合目小屋 12:40-13:00…七丈小屋 14:00-(泊)-3:45…御来迎場 4:45-5:40…甲斐駒ヶ岳 7:05-8:05…摩利支天 8:35-8:55…駒津峰 9:45…仙水峠 11:00…北沢峠 12:10

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