Trekking Reports 〜山歩きの記録

2003.6.28(土)〜29(日) 北八南端周回コース+遠大な寄り道【天狗岳 八ヶ岳】

硫黄岳から南八ヶ岳の峰々

このところ、すっかり八ヶ岳がお気に入りとなってしまい、この6月の初旬にツクモグサ狙いで、
横岳&赤岳に向かったのに続き、クロユリの開花情報に誘われて、天狗岳に向かった。
初日は根石山荘泊まりなので、のんびりモードで出発。登山口の稲子湯に9時半に到着した。
1日300円×2日分の駐車料を稲子湯の窓口で支払って、指定された場所に駐車。
あいにくの小雨模様に、渋々雨具を着込んで、稲子湯の庭先から道標に従って登山道へと入った。

うす暗い樹林帯の下にはベニバナイチヤクソウやゴゼンタチバナにクルマムグラなど初夏の花が盛りを迎えており、
花を見つけるたびに防水対策でビニールに入れたデジカメを取り出すものだから、時間がかかって仕方がない。
どうせ下山時にも通るルートだからということで、途中で撮影を諦めることにした。
やがて一般車通行止めのゲートのある広場に到着。雨模様だというのに広場は駐車車両でほぼ満車状態だ。
ここに停めれば駐車料はタダだし行程を短縮できるしで、良いことずくめなんだけど、
ま、これまでにもたくさんの花を見ることができたので良しとする。


稲子湯の庭の奥が登山口

ゲートの脇を抜け先に進んでいくと、すぐに林道とは離れて樹林帯の中へと入る。
その後、何度か林道と交わりながらなだらかに登っていき、屏風橋を渡ったところで林道とはお別れとなる。
その後も樹林帯の道が延々と続き、時折もう使われないトロッコのレールが現れる所を見ると、
昔の作業道だったようだが、いったいこのレールで何を運んだのだろう。

小雨とそれ以上の樹雨降る中、うす暗い樹林帯の道が延々と続くために、だんだん気が滅入ってくる。
それでも翌日の晴を信じ、黙々と登り続けるとキャンプ場に続いてしらびそ小屋に到着した。
当初は立ち寄る予定では無かったが、ちょうど12時だったので、ここで昼食を取ることにして、
同じく雨宿りを兼ねて昼食中のハイカーで賑わう小屋の中に入った。
そして注文したお蕎麦をすすりながら小屋番さんとお花情報を交換し、30分ほどの休憩ののち出発した。

ミドリ池を横目に再度樹林帯に入り、中山峠へと向かう分岐を本沢温泉方面へと向かう。
登山道はなだらかに登って、やや急に下ると本沢入口からのルートと合流、
その後平坦な道をちょっと進むと、日本第二の高所にあるという本沢温泉に到着する。
山小屋というより立派な温泉宿という風情の建物で、日本で最も高所の露天風呂があるとのこと。
こんなところでのんびり過ごすのも良いだろうなぁと思いながら本沢温泉を通過した。


日本第二の高所温泉「本沢温泉」

硫黄の臭いが強い白砂の谷を過ぎると、急坂をつづら折れに登っていくようになる。
そして一時間ほど登り続けて夏沢峠に到着すると、暴風で顔を叩きつける小雨が手荒い出迎えだ。
山彦荘とヒュッテ夏沢が並んで建つ夏沢峠は八ヶ岳を南北に分ける重要な峠。
今回はここから北へと向かうので、北八ヶ岳の南端を徘徊することになるわけだ。
夏沢峠から箕冠山までは幸いにも樹林帯が続くため、樹雨には悩まされるものの強風の影響を受けずにすんだ。
雨に打たれてうなだれたコイワカガミやミツバオウレンを愛でながらだらだらと続く坂道を登り、
オーレン小屋へと続くルートとの分岐にもなっている箕冠山山頂を越え、樹林帯を抜けると、
いきなりまっすぐに歩けないほどの強風にさらされるようになった。
ガスも濃く、小屋がどこにあるかサッパリ分からない状態で、半ばカンで稜線から西側外れる道を進むと、
うっすらと小屋らしき影があらわれホッとひと息。すると多少余裕が出てきて、
道端ロープの向こう側で強風に引きちぎられそうになってるコマクサやウルップソウが目に入った。
ま、カメラを取り出せる状況でもないし、無理に取り出しても激しく揺れる花がまともに撮れるわけもなく、
明日のお楽しみにすることにして、とりあえず小屋の中に飛び込んだ。

小屋の中には小屋番を入れて先客3名。その後5名が到着し、この日の客は私を含めて8人のみ。
これでもこの天気を考えると、思ったより多かったとのこと。
根石山荘名物のお風呂で汗を流し、夕食後この人数で薪ストーブを囲んで宴会に突入。
泡盛に日本酒にワインにサクランボにとご相伴に与りながら歓談していると、あっというまに10時過ぎ。
こりゃいかんと慌ててお開きにして布団にもぐり込んだが、翌朝のご来光には誰も起きられなかった。(笑)


ひと晩お世話になった根石山荘

翌日、予定では天狗岳を越え、ニュウを越えて稲子湯へと下る予定だったが、
同宿した以前、根石山荘の小屋番をしていたという男性から耳寄りな情報を得ており、急遽コース変更。
その情報はオーレン小屋から赤岩の頭へと登るルート上にクロユリが咲いており、
黒百合平よりこちらのほうが絶対にお薦めだというのだ。
予定とは正反対の方向なのでかなり迷ったが、目的はクロユリなのだから行かなきゃ嘘だろうと決心し、
オーレン小屋〜赤岩の頭〜硫黄岳〜夏沢峠〜根石山荘という3時間の盛大な寄り道を敢行することにした。

小屋を出ると、眩いばかりの青空!それも梅雨時とは思えないほど空気は澄んでおり、
多少雲に遮られるものの、南アルプスはもちろん北アルプスも中央アルプスもクッキリと見えていた。
風は多少残っているが、それも前日の強風と比べたらそよ風にもならない程度。
やはり無理して雨の中を登ってきた甲斐があったというものだ。
そして、前日風の中を歩いてきたルートを引き返し、まずは箕冠山へ向けて登り始めた。

箕冠山からは下る下る。このあと登らなきゃいけない硫黄岳が目の前でどんどん高くなっていくのを、
呆然と見ながらも、なかなかたどり着かないオーレン小屋に向かって下っていく。
道端にはミツバオウレンが多く、オーレン小屋の名前はこの花から取ったのかなぁと思いながら下っていくと、
いきなり茶色い屋根の大きくて綺麗な小屋が木々の間から見えた。
もの凄い高さになった正面の硫黄岳を見てため息ひとつ。ま、これ以上下がることはないから良しとするか。


赤岩の頭分岐から硫黄岳を望む

オーレン小屋前のベンチを拝借して小休止。水を補給し気合いを入れて出発。樹林帯の登山道へと入った。
しばらくはオサバグサとミツバオウレンの多い樹林帯の中をなだらかに登っていくが、
やがて樹林帯を抜け、ハイマツに囲まれるようになると徐々に傾斜は急になる。
いつクロユリが現れるか分からないので気を抜かずに周囲をチェックしながら登っていくがなかなか見つからない。
この時はクロユリ情報を全く疑っていなかったので、まだかなまだかなとワクワクしながら登っていくと、
赤岩の頭の鞍部に...え〜っ!着いちゃった!!クロユリ見てないよぉ!!!
私が見逃したのか情報が古かったのか、鞍部の周辺をウロウロして探し回ったが、結局クロユリは見つからず。
うっそ〜っ!この壮大な寄り道はいったい何だったんだ!!(;>_<;)ビェェン

ここで急遽対策を検討。とりあえずクロユリを見ずに下山するわけにはいかないので、
しんどけりゃ日和って夏沢峠から前日登ってきた道を下っちゃえというコースは却下。
また黒百合平まで行くなら、硫黄岳山荘のお花畑を見物している時間が勿体ないのでこれも却下。
また予定通りニュウまで行くのは時間的にまず無理なので、硫黄岳を越えて黒百合平へ向かい、
中山峠からしらびそ小屋経由で稲子湯へと下ることにした。


硫黄岳山頂(奥が天狗岳)

クロユリは非常に残念だったが、硫黄岳まで来たのが全くの無駄足だったかと言えばそうでもなく、
この空気が澄んだ中で南八ヶ岳の主峰、横岳〜赤岳〜阿弥陀岳の大迫力の展望が非常に素晴らしく、
これだけの展望にはそうそう出会えるものではないだろう。
それに硫黄岳の岩場にはイワヒゲ、イワウメなどがへばりつくように咲き、
鮮やかなムラサキのタカネシオガマとこれまた鮮やかな黄色のミヤマダイコンソウが華を添える。
前回ここを歩いた時にはキバナシャクナゲが咲き始めだったのだが、
たった3週間でこうも変わるのかと思うほど、主役はすっかり交代してしまっていた。

岩屑に覆われた硫黄岳山頂を通って、夏沢峠へと続くコースを下る。ここも花は多く、
ツガザクラやハクサンイチゲなどを見つけては写真に収めながら下っていくと、やがて夏沢峠に到着。
前日通ったばかりなのだが、天気が変わればこうも変わるものなのだろうか、
非常に明るく気持ちよさげな峠は休憩中の大勢のハイカーで賑わっていた。
前日、だらだら登りで辟易した箕冠山への登りも天気のおかげかあっさりとクリア。
やがて懐かし?の根石山荘に戻ってきた。水を補給するためにいったん小屋へと立ち寄り、
寝具などの片付けで忙しそうにしている小屋番にはあえて声をかけずに再度根石山荘を出発した。


天狗岳

根石岳への登りはガレた岩場の道で、一応北八ヶ岳とは言え、このあたりは南八ヶ岳の雰囲気に近い。
徐々に小さくなる根石山荘を眺めながら高度を上げていくと、やがて根石岳山頂に到着。
すると硫黄岳からはかなり遠くに見えていた天狗岳の2つのピークが目の前にドーンと現れた。
ここも澄んだ空気のおかげで鮮明な展望が楽しめ、疲れも忘れさせてくれる心地よさだ。
根石岳からちょこっと下り、本沢温泉へ下るルートとの分岐のある白い砂が印象的な鞍部を過ぎると、
岩場の急登となる。結構疲れてはいるのだが、大きな登りはこれで終わりと思うと精神的にかなり楽。
これまで見られなかったイワベンケイやイワツメクサなどを写真に収めながらガンガン登っていくと、
意外とあっさり、大勢のハイカーで大混雑の天狗岳東峰山頂に到着した。

ちょっと昼食には早かったが、せっかくの素晴らしい展望台なのでコーヒーを煎れてドーナツをかじる。
う〜ん、至福のひとときだなぁ。ただちょっと虫の多いのが難だが..(^^;
さてこれで体力は完全復活。弱気の虫が吹き飛んだおかげで天狗岳西峰をピストンする気力が出た。
そこでザックをデポして、天狗岳のもう一つの山頂を目指して出発した。
見た目には相当下って登り返しもきつそうに見えるが、いざ行ってみると意外とあっさり西峰に到着。
ただ道中には意外なほど花が少なく、当然と言えば当然だが展望も変わらない。
それに東峰のほうが高くて天狗岳山頂の標識もこちらには無いとなると、
なにしにピストンしたんだか分からないが、ま、せっかくのピークだからとりあえず踏んどくということで。


天狗岳山頂から南八ヶ岳の展望

再度東峰に登り返してザックを回収し、今度は黒百合平へ向けて下り始めた。
この天狗岳の下りはクサリ場もある険しい岩場をペンキのマークを頼りに進む。
それもなんとか下り終えてホッとひと息ついたが、本番はこの先にあった。
天狗の奥庭と名付けられた平原は一面大きな岩がゴロゴロした岩場で、コースは岩の上を飛び石伝いに進む。
以前、麦草峠から蓼科山へ縦走した時に難所として印象に残っている三岳とそっくりな難所で、
傾斜はほとんど無いのにかなり疲労する。
ただ三岳より岩にグリップ感があるので大胆にジャンプできる分、多少はマシか。

スリバチ池が見えてくると、黒百合平はもうすぐ。
岩場の台地から下り立つと、かなりのハイカーで賑わう黒百合ヒュッテ前に到着した。
ちょっとトイレをお借りしてから、待望のクロユリを見に行く。
人だかりのできているあたりに近づくと、お〜っ、咲いてる咲いてる。
たった3輪だが柵の近くで咲いていたので、かなりアップで写真が撮れ、まずまず満足。
ただあとで写真を確認すると、花にはたくさんの虫が付いていて、写真的に美しくな〜い。(;_;)
う〜ん、写している時には全く気づかなかったんだけどなぁ。

目的のクロユリも見られたことだし、あとは下山するのみ。
木道のあるなだらかなルートを歩いていくと、あっさりと中山峠に到着。しかしその先がちょっと大変。
いきなりクサリ場でスタートすると相当の急坂をガンガン下っていく。
一体何メートル下るんだと思うほど延々と続く急坂を下りきると、今度はダラダラの緩斜面の下りとなる。
峠からここまで花らしい花はほとんどなし。なんとも嫌なコースだなぁと思いながらも淡々と歩いていくと、
前日通った分岐に到着。そこからトロッコレールの残る道をしばらく歩くとしらびそ小屋に到着した。


ミドリ池と天狗岳

しらびそ小屋前にあるミドリ池を見ると、前日は雨でよく分からなかったが、本当に緑色をしていた。
そしてその先にはちょうど木々の間に天狗岳が覗き、なんとも素晴らしい景観を作り出している。
時間的にはあまり余裕がなかったが、休憩がてらちょっとこの光景を楽しむことにした。

しらびそ小屋からは前日通った樹林帯の道を、雨のためにあまり撮影できなかった花などを写しながら下る。
雨の登りではジメジメしてうす暗い嫌な道だなぁと思っていたが、
天気が良くなると静かな森の中の道でなんともいい感じ。
マイヅルソウやクルマムグラ、ベニバナイチヤクソウなどを撮影しながらのんびりと歩き、
まだ何台か駐車車両の残る車止めのゲートを過ぎ、車道と交錯しながら下っていくと、
やがて稲子湯の庭にポンと飛び出した。

赤岩の頭のクロユリが見つからなかったのは残念だったが、おかげで南八ヶ岳の大パノラマが楽しめ、
ほんの数週間前とはガラッと変わった花々を楽しむことができたので、結果的に無駄にはならなかった。
また、目的のクロユリもちゃんと見ることができたし、なんと言っても根石山荘での宴会が楽しかったので、
とても楽しい2日間となりました。雨でも無理して登って良かったぁ。(^-^)v

この日出会った花たち
クリックでこの日出会った花たちの写真がご覧になれます。

【コースタイム】
稲子湯 9:45…しらびそ小屋 11:50-12:20…本沢温泉 13:30…夏沢峠 14:40…根石山荘 15:25-(泊)-7:00…
オーレン小屋 7:40…赤岩の頭 8:45…硫黄岳 9:15…夏沢峠 9:50…根石山荘 10:20-10:30…
東天狗 11:15-11:35…西天狗 11:50…西天狗 12:05…黒百合平 13:15…しらびそ小屋 14:35…稲子湯 16:10

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