Trekking Reports 〜山歩きの記録

2003.6.6(金)〜7(土) ツクモグサを求めて八ヶ岳へ【横岳、赤岳 八ヶ岳】

横岳のツクモグサ

まだ夏山シーズン前、ちょうど梅雨時に盛りを迎えるというツクモグサが、
八ヶ岳の稜線で開花を始めたという話を聞き、いても立ってもおられず、
無理矢理(?)年休を取得して赤岳展望荘に宿泊予約。
あとは晴の天気予報が変わらないことを祈りながら平日を過ごし、
金曜日の早朝、赤岳登山口である美濃戸に向かって出発した。

約1年ぶりの美濃戸は昨年の小雨とは一転していい天気。
そして秋でトリカブトがちょうど盛りだった前回とは違って、
初夏の花であるシロバナノヘビイチゴが道端に咲き乱れていた。
八ヶ岳山荘の駐車場に車を停め、2日分の2000円を支払いに山荘へと向かうと、
小屋番のおばちゃんが「いい天気だし花も咲いているよ」と自分が登りたそうな顔。
まずは美濃戸山荘へと向かうと途中に展望荘泊まり客用の駐車場があった。
悔しくて値段は確認しなかったが、すっごく損なことをしたのかなぁ...

さすがに平日ということで閑散とした美濃戸山荘前を通り、南沢コース分岐を過ぎて北沢コースへと向かう。
今回最大の目的のツクモグサは横岳にあり、天気のいい内に向かいたかったので、
北沢コースから登り硫黄岳から横岳へと縦走し赤岳展望荘へと向かうことにしたのだ。


北沢の奥に横岳の岩峰群が現れる

北沢コースへはしばらく林道歩きが続く。舗装されていないので道端の花々を見ながら機嫌良く歩いていく。
見かける花はコキンバイにツバメオモトにミヤマスミレ、それにたくさんのコミヤマカタバミが咲いていたが、
まだ朝早かったせいか残念ながら花弁を閉じたものばかりだ。

スミレがミヤマスミレからキバナノコマノツメに変わってくると林道も終点間際。
4、5台の車が停まる堰堤広場で登山道へと入ると、何度も木橋で沢を渡りながらの登りとなる。
このあたりも無数のキバナノコマノツメが咲き、ほとんど雑草状態。
先日三ッ峠で感激して見たのはなんだったんだ?
ただこのキバナノコマノツメとコミヤマカタバミ以外にめぼしい花は無く、
もうちょっと期待していたんだけどなぁと思いながらも、
周囲をキョロキョロ見回し、タケシマランを発見してガッツポーズ。

そしてコースタイムよりやや早い時間に赤岳鉱泉に到着。
ここでお昼用の水を補給し、ズッシリ重くなったザックを担いで硫黄岳へ向けて本格的な登りを開始した。
うす暗い樹林帯の中のつづら折りの道は花も展望も皆無。
ときおり現れる残雪に足を取られるわ羽虫に追いかけられるわでなんとも嫌な登りも、
樹林帯を抜けたあたりから一変。林の縁でセリバオウレンを見つけたと思ったら、
完全に樹林帯を抜けたところからは無数のヒメイチゲが花を付けている。
そして背後には阿弥陀から赤岳、横岳へと連なる岩陵がそびえ、
沢筋にたたえた残雪がその迫力を倍加させていた。


赤岳と阿弥陀岳がその覇を競う

周囲がハイマツだらけになると、やがて赤岩の頭〜硫黄岳の鞍部に到着。
真っ白な残雪と火山特有の赤茶けた砂のコントラストがなんとも美しい。
そしてその先には硫黄岳がそびえるが、まだ結構あるなぁ...
オーレン小屋へと向かうルートとの分岐を過ぎ、
薄っぺらい岩屑が多い稜線を登っていくと、あたりには高山植物が現れはじめた。
高山植物なんて7、8月の物だと思っていたが、6月初旬でも咲いているものだなぁ。
見かけた花は、コメバツガザクラにミネズオウ、そしてこのあたりの名物であるキバナシャクナゲ。

硫黄岳山頂は平たい岩屑がいちめんにばらまかれただだっ広い所で、
夏沢峠へと向かうコースとの分岐となっている。
正確には爆裂火口沿いに北東へと進んだところに三角点のある山頂があるようだが、
ロープが張られているようだし、山名標識もここにあるからここが山頂で良いかな。
適当な岩屑片を椅子代わりにして昼食の支度にかかり、カップラーメンを食べながら、
八ヶ岳の真ん中に位置する360度遮る物のない展望を堪能した。


硫黄岳の爆裂火口と北八方面の展望

硫黄岳を出発すると、再度岩屑で歩きづらい広々とした稜線を硫黄岳山荘に向けて下る。
途中に道標を兼ねたケルンがいくつも設置されており、ガスなどで視界が利かない時には重宝するのだろう。
硫黄岳山荘前には開花前のウルップソウがいくつも生えており、
その中にほんのちょっとだけ花を付けた物を発見。季節はずれの思わぬ贈り物だ。
また、所々では鮮やかな紫色のオヤマノエンドウと黄色のミヤマキンバイ、
そしてなんでこんな小さな株にと思えるほどの大きな花を付けたキバナシャクナゲ。
まだまだお花畑にはほど遠いものの、まだ6月に入ったばかりなのに、
こんなに花が咲いているものかと感動しながら、カメラ片手に歩いていった。
その後もハクサンイチゲやミヤマタネツケバナ、チシマアマナなどは見つかるものの、
肝心のツクモグサがなかなか現れない。
まさか咲いていないのでは?とは思わなかったが、待ち遠しくてちょっとペースアップ。
そして横岳が近くなり登山道が険しくなり始めたあたりで満を持してツクモグサ登場。
ただ晴れているとは言え雲の多いこの日の天気では日照不足なのか、
遠慮がちに花弁を開いた物ばかりで、黄金色の雄しべをハッキリと見せてくれない。

そしてこの稜線の核心部である横岳の岩峰群へと突入。
基本的にはクサリの設置された巻き道なのだが、足場は狭くその先は見事に切れ落ちているものだから、
ちょこっと下を覗くと足がすくみそうになる。しかし岩場はグリップが利くし、
クサリもしっかりしているので、高度感になれてくるとそれほど恐怖感を感じるというほどではない。


カニの横ばいを進む登山者

やがて横岳山頂に到着。岩峰が並びどれが山頂なんだかといった横岳であるが、
奥の院という小同心の先にあるピークを一般的に山頂とされているようだ。
ただここに設置された山名標識に書かれた2829mという標高は、
この先の大権現ピークの標高のはずなんだけどなぁ。

奥の院を過ぎると、しばらくは広々とした稜線となり緊張感がちょっとほぐれる。
しかしそれも海ノ口自然郷へと下るルートとの分岐である三叉峰を過ぎて石尊峰まで。
そこからは東側の斜面をへつったかと思うと階段で稜線へと上がり、
反対側へとクサリを頼りに下っては絶壁の狭い足場をへつるといった繰り返し。
こちらもグリップの利く岩としっかりしたクサリのおかげで危険という程ではないが、
高所恐怖症の方は遠慮したほうがいいかも。いや、私もちょっと怖かったっす。(^^ゞ

鉾岳と日ノ出岳の鞍部に到着すると、斜面にはツクモグサが咲いていた。
ここにたくさんのツクモグサがあることは山頂で出会ったご夫婦から聞いていたので、
驚くということは無かったが、ここでようやくちゃんと花弁を開いた株に出会え、
ザックを降ろしてしばらく撮影タイムとした。


八ヶ岳最高峰、赤岳

二十三夜峰と呼ばれる直立した岩峰の脇を抜けると横岳アスレチックはようやく終了。
昨年、小雨と強風の中登ってきた地蔵尾根分岐を通過すると、
まもなくこの日の宿である赤岳展望荘に到着した。
昨年は布団一枚に二人という窮屈な目にあったが、この日の利用者は30人ほど。
ただ寝具が布団から寝袋に変わっていたので、大の字になって寝るというわけにはいかなかった。
ま、どんなに混んでも一枚が保証されるから、こっちのほうがいいのかもね。

ご来光目当てでまだうす暗い中小屋の外へ出ると、気になる天気はなかなか良さそう。
たださすがは標高2700mの高地、風はそよ風程度にも関わらず真冬並の寒さだ。
なかなか上がってこない太陽にしびれを切らしながらも待っていると、
15分ほど待ってようやく朝日が昇ってきた。このときご来光を眺めていたのは私を含めて二人だけ。
ま、ご来光が見たいって人は山頂にある赤岳山頂小屋に泊まっているんだろうなぁ。
小屋に戻って朝食までの時間に前もって出発の準備を済ませ、
夕食と同じバイキングの朝食を大急ぎで食べて6時前に赤岳展望荘を出発した。


赤岳展望荘と横岳

朝日に照らされた赤岳を見上げながら、岩屑の斜面をジグザグに登っていくと、クサリ場が登場。
昨年も同じ所を登っているはずなのだが、そのときはガスの中だったので、
どうも印象が違うような違わないような。前回はガスで全く見えなかった頂上小屋が
すぐそこに見えているのになかなか近づかないというところが大きな違いのようだ。
背後でどんどん小さくなる展望荘となかなか近づかない頂上小屋を見ながら、
急坂を登っていき、肩を過ぎて、もうひと頑張りで頂上小屋前に到着した。
昨夜の利用者はすでに出発した後だったのだろうひっそりした小屋前を過ぎ、
平均台のような尾根を渡ると、赤岳神社の祠が目立つ赤岳山頂に到着した。

きっとたくさんの人で賑わっているだろうと思っていた赤岳山頂には誰もおらず、
この広大な八ヶ岳の最高峰を一瞬でも独り占めできるということ幸運に感激。
祠の裏、阿弥陀岳を真正面に見る特等席のテラスに陣取って感動を噛み締めていた。

お茶を飲んだり携帯電話から掲示板に書き込んだりして時間を過ごしていると、
やがて背後から話し声が聞こえてきた。1人は私と同じ展望荘泊まりで、もう一人の話を聞いてびっくり。
なんと今朝美濃戸を出発して上がってきたと言うのだ。
コースタイムで4時間弱のところを2時間半...お疲れさまでした。(^^;
天気はまずまず良いもののやはり時期的なものか霞がひどく富士山はまったく見えない。
ただ微かにではあるものの甲斐駒ヶ岳が見えており、3人並んで目を凝らした。


赤岳山頂

山頂で食事を取るわけでもないのに30分もの時間をのんびり過ごし、
阿弥陀の方へ下りる方向が判らないという男性がいたので、案内を兼ねて先行して下山を開始した。
ハシゴやクサリ場が連続する岩場の斜面は相変わらず険しいが、昨年の時ほど怖さを感じないのは、
晴れてるからか前日ここより険しい横岳を越えてきたからか。
途中でっかいザックを担いだ高校生の団体とすれ違い、
ガレて滑りやすいつづら折りの斜面を慎重に下っていくと広々とした鞍部に下り立った。
そう言えば昨年はトウヤクリンドウが咲いていたなぁと思いながら見渡すと、
今回はキバナシャクナゲがちょうど見頃。
また中岳の登り口で感激の対面を果たしたコマクサは当然ながら影も形もなかった。

中岳山頂は正面には阿弥陀、振り返ると赤岳というなんとも贅沢な展望台だ。
とくに赤岳は前日飽きるほど見た横岳からの鋭鋒といった女性的な印象とは異なり、
鋸の歯のようにギザギザでいかにも岩の山といった男性的な印象を受ける。
中岳からはハイマツの回廊をアップダウンし最後にちょっと下ると中岳のコルに着く。
前回はパスしたが天気も良いことだし、今回は阿弥陀ピストンにチャレンジだ。
ザックを降ろして貴重品をウエストバックに突っ込んで準備完了。落石を警戒して、
少し前に登っていった2人組の男性がある程度まで先行するのを待って出発した。


阿弥陀岳山頂から赤岳と横岳

最初は多少急かなという程度のガレた斜面だが、すぐに両手を駆使した岩登りとなる。
背後を振り返ると、中岳のコルが真下に見え、なかなかの高度感。
こりゃ登るのは良いけど下れるのか?とかなり不安になってくる。
なかなか終わりの見えない岩登りも時間にして20分ほど。
先に着いていた2人の男性と「険しかったねー」なんて健闘をたたえ合った。

たぶんもう二度と来ることはないだろう阿弥陀山頂を杭の無いようウロウロつき、
先に出発した二人組がある程度下るのを待って、気合いを入れてから下山を開始した。
どうなることやらと不安いっぱいで下山を始めたが、下りの方が足場が見やすく
グリップの利く岩もあって、落石だけはしないように慎重に下ると、
意外とあっけなく下山できた。でも、やっぱりこの山はもういいかな。(^^ゞ

しばらく中岳のコルで休憩し、さあ下山するかなと立ち上がると、
「あれはカモシカじゃないか」と単独の男性が声をかけてきた。
その指さす方向を見ると、確かに中岳沢あたりにカモシカらしき獣が動いている。
慌ててテレコンバータをデジカメに取りつけて合計300mm望遠で被写体を追ったが、
写った写真は手ぶれだらけで見れた物ではなかった。(;_;)


中岳のコルで見たカモシカ(かなり修正してます。(^^ゞ)

中岳のコルから行者小屋へと下るコースは何度か残雪の雪渓を渡るが、
最初のトラバース以外はそれほど問題になるところはなし。
思ったより花が少ないなぁなんて考えながら、
それでもセリバオウレンなどを見ながら下ると、ハイカーで賑わう行者小屋に到着。
空いていたテーブルについてコーヒーを注文し、行動食として持っていたドーナツをかじりながらまったり。
すると美濃戸から上がってくるハイカーと下山してきたハイカーで、
どんどん賑やかになってきたので、そろそろ下山しようとベンチを立った。

行者小屋から美濃戸へと下る南沢コースは伏流のガレた広い沢道から始める。
林の脇に咲くウスバスミレにカメラを向けたり、この花の名前が判るかと問われて、
「コメバツガザクラですよ。葉が米粒みたいでしょ」と答えたりしながら下っていくと、
やがてうす暗い樹林帯が始まる。ときおり残雪のあるジメジメした道には花もなく、
なんとも嫌な感じだが、こういうところにはランがあったりするんだよなぁと、
周囲をきょろきょろ見回しながらゆっくりと下っていく。
しかしなかなか見つからず半分諦めかけた時、2人の男性が道端で立ち話をしていた。
どうしたんですか?と問いかけると、カメラを持った男性が「イチヨウランが..」
「え〜っ!どこどこ!!」男性に最後までしゃべらせずにいきなり語りかけ、
面食らった様子の男性の指さす方向を見ると確かにイチヨウランが...
あれだけ探して見つからなかったのに、まだまだ探し方が甘いということなのかなぁ。
その後、しばしその男性と花談義し、(もう一人の男性は花には興味がなかったようで、
とっとと先に行ってしまった)ツクモグサが目的だったんだけど、
この天気じゃ無理かなという男性に、上は晴れてましたよと話すと、
ちょっと迷ったようだが結局登ることにしたようで、お気を付けてと最後に声をかけて別れた。


行者小屋と背後にそびえる横岳

南沢コースはうす暗い樹林帯と渡渉を繰り返す河原歩きが交互に現れ、
ある程度標高を下げたあたりでは多くの花が見られるようになった。
見かけた花はこれまで見かけたキバナノコマノツメやコミヤマカタバミなど。
ただ量は北沢コースよりこちらのほうが多いようだ。
そしてこれまで見られなかった花をつけたイワカガミがようやく現れた。
さらに下っていくと、今度はたくさんのコキンバイに交じってミツバオウレン発見。
最後に2つの堰堤を越えると、いきなり美濃戸山荘の前にポンと飛び出した。

目的のツクモグサはもちろん、思いがけず数々の高山植物、最後にはイチヨウランにも出会うことができ、
花旅として大変充実したものになりました。やっぱり八ヶ岳はいい。今度は梅雨明けにまた行こうかな。

この日出会った花たち
クリックでこの日出会った花たちの写真がご覧になれます。

【コースタイム】
美濃戸 7:35…堰堤広場 8:30…赤岳鉱泉 9:20-9:30…硫黄岳 11:20-12:00…横岳(奥の院) 13:20-13:45…
赤岳展望荘 14:55-(泊)-5:55…赤岳 6:35-7:05…中岳 7:45…中岳のコル 7:55-8:05…
阿弥陀岳 8:25-8:40…中岳のコル 9:10-9:15…行者小屋 9:55-10:15…美濃戸 12:20

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