Trekking Reports 〜山歩きの記録

2002.5.2(木) 暴風雨を押して山頂へ【剣山 四国】

暴風雨の中の剣山山頂

今年のGWの目玉として四国の剣山を考えており、予定では1日としていたのだが、
予報によると天気が良くないとのことだったので1日延期し、この日に出発した。
明石大橋と鳴門大橋を通って淡路島経由で四国に入り、狭くて見通しの悪い山道を延々と走る。
そして日浦から林道に入り、渓流釣りの面々を眺めながら槍戸川の上流へと向かっていくと、
いきなり土砂崩れが道を完全にふさいでいた。案内板などが全く出ていなかったところを見ると、
崩れたのはかなり最近なのだろう。
仕方がないので、引き返して遠回りでなんとか剣山トンネル手前、山の家・奥槍戸前に到着した。
来る途中では晴れ間が見えたところもあったが、登山口はすっかりガスの中で小雨までぱらつく始末。
しかし登れば雲の上に出るかもしれないという淡い期待を抱きつつカッパを着込んで出発した。

まずは急坂の雑木林を大きく蛇行して登っていく。
道端にはミヤマカタバミやハコベが咲いているものの期待したほどではなく、
雨の滴ですっかり下を向いてしまっている。
徐々に高度を上げると明るくなってきたような気がして、
雲の上に出るんじゃないかという期待がかなり高まっていく。
そして周囲にササが増えてくるとやがて尾根上にたどり着いた。

尾根から次郎笈方面を見上げる(うっすら見えているのは偽ピーク)

尾根に上がると今度は急坂の直登となる。高度はどんどん上がるもののガスが晴れる気配はない。
高度計で現在の高度を確認しながら、残りの標高差が少なくなっていくことに焦りさえ感じる。
普通は標高差が減ることが嬉しいのだが、標高差が減って欲しくないと感じたのは初めての体験だ。
そして周囲に岩が増えてくると前方にピークらしき所が見えてくる。
あれ高度差はまだあるのに?高度計が狂っているのか?と思いながら進むと案の定偽ピーク。
ガスのせいで遠くまで見渡せないため、この偽ピークに何度か騙されたが、
このときも普通はピークじゃなくて悔しいところが、ピークじゃなくて安堵していた。
しかし結局ガスは晴れるどころか風雨がどんどん強くなる状態でついに次郎笈山頂に到着した。

岩がゴツゴツしたササと低木の山頂は森林限界を超えた高山の様相。
さぞかし展望も良いんだろうと思うと今日の天候が本当に恨めしい。
ともかく何も遮るもののない山頂はまさしく台風状態なので、ここでのんびりする気にはなれない。
ほとんど立ち止まることもなく次郎笈を後に剣山へ続く稜線を歩きはじめた。

この稜線はまさに風の通り道。時々吹き付ける強風に体力よりも気力を奪われ続け、
天気が良ければなんてことのない稜線歩きもものすごく遠く感じる。
こんな暴風の中、道端で健気に咲くショウジョウバカマがせめてもの救いだ。
ちょっとした岩場もこんな日は滑り台状態で難所に変身。手をつきながら恐る恐る足を進めた。
鞍部をすぎて登り返している最中に4、5人のグループがやはり暴風と格闘しながら登っていた。
ザックが大きいところを見ると三嶺からの縦走中なのかもしれない。
ただ「こんにちは」といって追い抜いたが、
お互い物好きだなぁと苦笑しているように見えたのは考えすぎだろうか。

暴風雨の中で健気に咲くショウジョウバカマ

やがて大きな岩のシルエットがガスの向こうに見えてきて、
風音の中にかすかな話し声が聞こえ始めるとようやく剣山の山頂に到着した。
山頂には丸いテーブル状に石を集められており、その中心に一等三角点が収められていた。
こんな天気にもかかわらず数人のハイカーが記念写真を撮ったりしながらたむろしており、
このへんはさすが百名山というところだろうか。
ロープウェイ利用で登るなら行程も短く危険箇所もないので、雨中登山向きといえるかも。

さて山頂に立ったし証拠写真も撮った。このまま下山してもいいのだが、
さすがにお腹がすいたので、食事が出来るところを探して、山頂周辺を散策することにした。
剣山山頂はかなり広々としており、植生保護のための木道が通っている。
濡れた木道って滑りやすいんだよなぁと毒づきながらもその木道を歩いていく。
途中の広場には同定板が設置されており、こんな天気にはなんとも嫌みだ。
そして木道の終点まで歩くと小屋が見えてきた。青い屋根のこの小屋は雲海荘で残念ながら休業中。
しかし隣の剣山頂上の宿は営業していたので、これ幸いと利用させて貰うことにした。

剣山山頂の木道

冷え切った身体には温かいものをと、うどんとおでんを注文し無心ですすってようやくひとごこち。
小屋番の話では朝8時頃までは素晴らしい快晴で雲海の向こうには大山も見えたとの話。
8時ならロープウェイ側から登れば不可能ではなかっただけにかなり悔しかったが、
こればっかりは仕方がない。とりあえず登頂記念のバッジだけ購入して再度暴風雨の外に出た。

予報では天気は崩れる方向。雨や霧は相変わらずだが、風はさらに強くなっており、
次郎笈への稜線では風に耐えるために何度か立ち止まらなければならなかった。
だがここまで雨の中にいるとさすがに慣れたのか、あとは下るだけと考えると意外に気楽なものだ。
次郎笈への登りの岩場ではやはり苦労したものの、
次郎笈を越えて樹林帯の中に入ると周囲の雑木林を楽しむ余裕も出てきた。
登る時には写真を撮る気にもなれなかったミヤマカタバミなどにカメラを向けながらのんびりと歩き、
ガスが朝より明らかに濃くなっていた、誰もいない登山口に到着した。

道端のミヤマカタバミ

始めからカッパを着込んで山歩きするという体験はあまりないですが、(たぶん赤坂山以来2度目)
悪天候の中で登頂したという達成感があるのみで、花も展望もなくのんびり休憩するところさえ
山小屋以外には皆無というのはあまりにも虚しい体験でした。
でもなかなか忘れられない山行になったという意味では価値があったのかなぁ。


【コースタイム】
剣山トンネル前 10:35…次郎笈 11:40…剣山 12:20-13:10…次郎笈 13:45…剣山トンネル前 14:35
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