Trekking Reports 〜山歩きの記録

2002.4.14(日) 西上州のテーブルマウンテン【荒船山 西上州】

テーブルマウンテンを彷彿させる荒船山の威容

西上州は妙義山が有名だが、それ以外にもこのあたりの山は険しい岩山ばかりだ。
上信越自動車道を下仁田ICで下りて国道を走るとそんな険しい山がいたるところに目に付く。
ややもすると日本の山とは思えないような奇岩、絶壁のオンパレードだ。
やがて目的の荒船山が見えてくると、それらの山々を霞ませてしまう程の大迫力に圧倒される。
南米ギアナにあるテーブルマウンテンにそっくりなその山は、
知らずに見上げると、登攀技術なしで登れるとは容易に信じられない。

登山口の内山峠に着くと、すでに6台ほどの車が停まっていた。
7時半でこの状態だから、ちょっと遅く来ると30台程度のキャパシティでは満車の可能性が高い。
実際、準備をしている最中にも2台の車が到着した。

登山口が峠なので、登山道はアップダウンの繰り返しとなる。
雑木越しの展望と花の少ないコースで、あまり面白味はないが、
正面に絶壁の荒船山が徐々に近づいてくる様は、何とも言えずワクワクしてくる。
日当たりの良い斜面にちょこっと咲いているタチツボスミレやエイザンスミレを
写真に収めながらのんびりペースで歩いていった。

ときおりあらわれる絶壁からは西上州の山々を展望したり、
木橋を渡ったりして相変わらずのアップダウンを歩いていくと、ちょっとした広場が現れた。
すでに5、6人のパーティが占領していたので、そのまま行き過ぎたが、
あとで調べると、ここが狭岩修験道場跡というこころのようだ。
ここからは開けたところが現れ、そこから荒船山の大岩壁が間近に見える。
これからあそこの上に立つかと思うと、身震いするほどの大迫力だ。
また、峰々の向こうには真っ白な浅間山も見えてくる。

一杯水

やがて、一杯水と書かれた案内板が現れた。その向こうには黒っぽい岩壁。
水はちょろちょろと流れていて、口をつけようか迷ったが、
お手軽ルートのおかげで全く喉が渇いてなかったので、そのまま通過した。
このときは下りもここを通るからと思っていたのだが、
結局別ルートで下ったので、話の種に飲んでおけば良かったとちょっと後悔。

一杯水からルートは途端に険しさを増す。ハシゴや岩場はけっこう高度感があって、
高所恐怖症ぎみの人にとっては、かなりの難所となるかもしれない。
また、ときおり現れる木橋が程良く腐っていて、
踏み抜く可能性が人より高い私にとっては、なかなかの恐怖ポイントだ。
(実際に何カ所か底が抜けているところあり)

岩場を過ぎると徐々に高度を上げ、周囲が一面に笹の生えた広場となると、
荒船山のテーブルの一角にたどり着いたことになる。
雑木林はまだ芽吹きにはさすがに早かったようで、ただの冬枯れ状態だが、
おかげで日を遮ることなく、明るく気持ちのいい平原となっていた。
事前に新緑と紅葉が素晴らしいと聞かされていたが、
確かにもう一度来る価値があるなぁと、その時を想像しながらルートに沿って歩いていった。

艫岩からの展望(クリックで拡大:75K)

正面にかなり古い東屋が現れると、艫岩(ともいわ)に到着。
ここだけは雑木のない露岩でまるで削ったかのような平らな広場。
崖は完璧に切れ落ちており、高さ150mの断崖絶壁である。
とくに柵などが設けられているわけでもないので、高度感満点だ。
真正面には浅間山の雄姿が浮かび、妙義や榛名などが一望できる。
でもそれより足下の国道を真上からのぞき込むような展望が印象的だ。
ここでお弁当を広げるグループも多いが、まだ時間は早いので最高峰の行塚山に向かうことにした。

行塚山までは山頂広場の散策ルート。笹と雑木の一本道はアップダウンもなく公園のようだ。
途中、なんで山頂に水場があるんだろうと不思議に思いながら小川を渡り、
荒船神社の小さな祠を過ぎると、やや登りとなって星尾峠との分岐に到着する。
そしてここから行塚山までは荒れた山道の急登となる。

行塚山山頂は雑木に囲まれあまり展望はない。ただ木々の間から白い峰々がうっすらと見え、
山頂で出会った夫婦と地図を片手に同定したところ、どうやら八ヶ岳ということが判明。
春霞で遠望の利かないこの日にしてはなかなかの収穫だった。

行塚山山頂の山名表示と祠

さてこれからどうしようと地図を眺め、同じ道を戻るのもつまらないので、
反対の東側へと下って、巻き道を星尾峠に向かうのはどうかと話していると、
そこから登ってきたという別の夫婦から、
笹ヤブがきつく、巻き道は2カ所崩壊しているとの情報を得られた。
どうしようかと躊躇していると、我々でも通れたんだから問題ないでしょうと、
励ましの言葉をいただいてしまい、尻込みし難くなったので仕方なく、(笑)
東へと下るルートを取ることにした。

山頂からしばらくは笹ヤブが続く。
でも笹ヤブと言っても歩きに支障が出るほどではないので、
しばらくは順調に進んだが、どんどん不安な気持ちが生まれてきた。
つまり巻き道への分岐を通り過ぎていないだろうなぁという不安である。
笹ヤブエリアを過ぎ、ガレ場の急坂を下るようになるとさらに不安になり、
先ほどの笹ヤブの中に分岐があったら気づかなくても不思議がないよなぁと、
半ば登り返すことを覚悟しながらどんどんと下って行く。
巻き道があるはずの右手は崖となっていて、ルートがあるように見えないのも不安を助長させた。

そして分岐らしきポイントに到着。道標は無いがかなり明朗な踏み跡と、
崩壊を防止するための板が設置されているので、まず間違うことはないだろう。
とりあえず胸をなで下ろしながら、巻き道へと入った。
山頂での情報通り2カ所の崩壊箇所があるが、幾つかの踏み跡がついているので、
最近崩壊したというわけでもなさそう。
ただザレているので、慎重に歩かないと谷底に滑り落ちるはめになるだろう。
でも苦労した甲斐はあって、花をつけたハシリドコロに出会うことができた。

崩れた登山道

行塚山へ向かうルートと星尾峠へ向かうルートとの分岐を過ぎると、ネコノメソウの斜面が現れた。
スミレやヤマエンゴサクなどもあって、ちょっとしたお花畑の様相だ。
大人しく帰るなら、この分岐から行塚山方面に向かわなければいけないのだが、
このお花畑に誘われて星尾峠へと向かうことにした。

花が少なかったこの日としては貴重なお花畑ルートを堪能しながら星尾峠に到着。
ここで引き返すという手もあったが、せっかく星尾峠まで来たんだから、
余裕があったら行ってみようと思っていた兜岩へと向かうことにし、
ちょうど夫婦2人連れが兜岩方面へと向かうのを見送ってからその後を追った。

地図ではお手軽な稜線歩きを想像していたのだが、
御岳までの稜線は小さなアップダウンが連続して意外と手強い。
途中で先発した夫婦を追い抜き、なんどもピークに騙されながら進むと、
ようやくそれらしき大きなピークが見えてきた。
そして稜線から離れ、つり尾根を渡って岩場の急坂を登ると御岳に到着。
雑木に囲まれ展望はないが、立派な石像と御岳の言われが書かれた案内板。
そして壊れかけた木のベンチが二つの狭い山頂だった。
この段階でかなり疲労を感じていたので、とりあえず食事をしながらこの先を
考えることにして、誰もいない静かな山頂でお弁当を広げた。

御岳山頂

御岳から兜岩を見ると、かなり遠くに見える。それに御岳は荒船と兜岩の中間点に当たるので、
当然荒船も同じぐらい遠くに見える。その段階でかなり気持ちは挫け気味だったのだが、
ともかく稜線まで戻ると分岐で星尾峠で会った夫婦が休憩していた。
話を聞くと、兜岩までのルートに凍結箇所があったので引き返してきたという男性がいたので、
どうしようか迷っていたとのことだった。
内心、引き返す言い訳ができたと喜んだのだが、口をついて出た言葉は「とりあえず行ってみます」。
う〜ん、多重人格の気でもあるのだろうか...(^^ゞ
とりあえず口に出したからには「やっぱ止めます」じゃ、格好がつかない。
しぶしぶ急坂を下って兜岩へと向かった。

御岳からは意外とアップダウンも少なく、
どこが凍結しているんだろうと恐る恐るではあったものの快調に距離を稼ぎ、
ほどなく、ろうそく岩直下に到着した。
ルートはろうそく岩の北側斜面を巻いているので、
凍結しているならたぶんここだろうとあたりをつけていたが、
案の定、沢を渡るところでかなりの残雪で凍結した路面が現れた。
1日中日が当たらない上、落ち葉が断熱材の役割を果たしたので、今まで残っていたのだろう。
下は断崖というわけではないが、かなりの急斜面で落石は途中で止まらないほど。
足を滑らせればただじゃ済まないことは想像に難くない。
う〜ん、どうしたものかと2度ほど躊躇したのち、
雪面がシャーベット状になっていてステップを掘れることが確認できたので、
恐る恐る雪の上に足をのせ、岩壁をつかみながら雪を蹴飛ばしてステップを作り、
なんとか雪のないところまでたどり着くことができた。
でも帰りも通らなきゃいけないかと思うと、ちょっと気が重い...

残雪の登山道

帰りの心配を振り払いながら先へと進むと、再度凍結箇所が現れた。
残雪の量はこちらの方が多いが、傾斜はこちらのほうがなだらか。
ここでも雪を蹴飛ばしてステップを刻みながら、なんとかクリアした。

こうして難所のろうそく岩トラバース道をなんとかクリア。
ろうそく岩の向こう側に出てほっとひと安心と思ったら、このルートはそんなに甘くない。
今度は50cmほどの幅の岩の平均台が現れた。
長さは4mほどと短いものの、左手は完全な断崖絶壁。
右手は雑木は茂っているもののこちらも相当な急斜面で、落ちればただで済みそうもない。
よっぽど引き返したい衝動にかられたが、
引き返せばまたあの凍結路を通らなきゃいけないと思うと、それも気が進まない。
気を落ち着かせて、なるべく断崖を見ないようにし、エイヤッで岩の平均台を通過した。

この後はそれほどの難所もなく田口峠との分岐に到着。
兜岩へのルートを取ると、途中で単独の男性が休憩していたので、
ああ、あのルートを通ってきたのは私だけじゃないんだと、
何故か安心しながら兜岩へ向かって歩いていると、
先ほどの男性が休憩を切り上げて後ろから着いてきた。
道を譲ろうかと迷いながら歩いていると、男性が後ろから話しかけてきた。
それによると、この男性は田口峠から歩いてきたとのことだった。
な〜んだ。あの難所をクリアしたわけじゃないんだ。
でも田口峠からなら車で送ってもらえれば、あの難所を再度通らなくてもすむかななんて
都合のいいことを考えたりしながら、一緒に兜岩に到着した。

とはいえ、送って下さいなんて言えるはずもなく、
なんだかんだと話している内、とりあえず御岳まで行ってみると言って、先に出発していかれた。
あ〜あ、やっぱりまたあそこを通らなきゃいけないんだぁ。ガッカリ。

兜岩から荒船山を望む

兜岩山頂は御岳や行塚山と同様、雑木に囲まれて展望は木々の枝越しのみ。
荒船山がクリアに見えるビューポイントがあるんじゃないかとの期待して、
命がけで(大げさ)ここまできたのだが、これじゃああんまりだ〜っ!
と、諦めきれずに木々の薄いところを探して山頂をウロウロ。
心持ち展望のいいところはあったが、結局満足いく荒船山の写真は撮れなかった。

そして下山。御岳へ向かって、再度難所に挑む。
しかし、恐怖心が麻痺してしまったのか、心づもりができていたからなのか、
意外とあっさり難所をクリアし、御岳との分岐までたどり着いた。
ここまで歩きながら、来た道をそのまま戻るのはつまらないから、
荒船不動へ下って車道歩きで内山峠へと戻るのはどうだろうと考えていたので、
休憩ついでに地図を広げて参考タイムの集計を始めた。

分岐には先ほどとは別の単独の男性が休憩中。
その男性が話しかけてきたので、荒船不動に下りて内山峠まで歩こうかと考えていると話すと、
なら車で送ってあげるとの、なんともありがたい申し出を頂いた。
でも口から出たのは「まだ日が高いですから歩きますよ」との言葉。
う〜ん。今日は私の中にあまのじゃくでも住み着いているんだろうか。

ともかくルートは決まったので、まだ休憩している男性を残して先に出発した。
荒船不動へは星尾峠からではなくて、御岳直下のコルからのコースを辿る。
これは単にアップダウンの多い星尾峠への稜線をパスしたかったからなのだが、
落葉松林と沢沿いの道はスミレも多くなかなか良いコースだった。
ただ何度か沢を渡るので、道を外さないように注意する必要がある。
そして何の指導標もない分岐に到着。
どっちへ行くか迷ったが、比較的しっかりしている方の踏み跡を選ぶと、
ちょっとした登りをへて荒船不動に到着した。
どうやら逆を選択していれば、もう少し下の林道に出ることができたようだ。
ちょっと無駄足となったが、荒船不動を見ることができたので、
とりあえず良しとして、延々と続く車道を歩きをスタートした。

林道から兜岩と御岳を見上げる

舗装路の下りは疲労した足には相当堪えるが、道端には多くのスミレが咲き、
頭上にはついさっきまで立っていた兜岩が大迫力でそびえており、
それなりに楽しみながら下っていく。
やがて民家とおぼしき建物が何軒も見え始める。
ただの家ではなくて焼物の工房ということらしい。庭先には花が咲き乱れていて、
特に大きなイワカガミ(オオイワカガミ?)が、印象的だ。

やがて下りも終わり目の前に内山大橋が見えてくると、
分岐を右手にとり、内山大橋が出来るまではメインの橋だったと思われる、古めの小さな橋を渡る。
そしてやや急な登り道を進むと、内山大橋の袂、ドライブインのあるところで国道と合流した。
ここから内山峠まではずっと登りなので、ひとまずここで長めの休憩を取ることにした。
缶ジュースを購入し、ドライブインのベンチにへたり込んで、兜岩を眺めること10分弱。
目の前ではためいていた「神津牧場のソフトクリーム」ののぼりが目に入った。
エアリアにも「ソフトクリームがうまい」との記述があり、こうなると俄然食べたくなってきた。
ただ、こういった牧場は4時で閉めてしまうことが多いので、
時間を確認すると急げばなんとか間に合いそう。
こりゃのんびりバテてる場合じゃないと、リュックを抱え押っ取り刀でドライブインを後にした。

内山峠までは単調な登りが延々と続くのでかなり辛い。
しかし目的ができた私にはものの数ではない!<本当か?
荒船不動を出発する時は、内山峠には4時頃到着かと思っていたが、
結局3時15分には到着し、慌てて着替えて神津牧場に向けて車をとばした。

春霞のせいで浅間山や榛名山がかろうじて見える程度の展望だったが、
見所満載のコースはさすがに人気の山だけのことはある。
それに兜岩まで足を延ばしたことで、全行程7時間の充実した山行きとなった。
でもこんどはお手軽コースで紅葉や新緑を楽しみたいかな。
この日出会った花たち
クリックでこの日出会った花たちの写真がご覧になれます。

【コースタイム】
内山峠 7:50…一杯水 8:40…艫岩 9:00-9:20…行塚山 10:00-10:10…
星尾峠 10:45…御岳 11:10-11:30…兜岩 12:15-12:45…御岳分岐 13:30…
荒船不動 14:05…内山大橋(ドライブイン) 14:40-14:50…内山峠 15:15
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