Trekking Reports 〜山歩きの記録

2002.1.13(日) 丹沢最後の秘境【大石山〜東沢 丹沢】

真っ直ぐ流れる東沢

注意:このルートは本当に危険です。
このレポートを頼りにこのルートに入らないでください。

丹沢最深部とも言うべき東沢は、武田信玄が発見したという金鉱山があり、
明治、大正の時代には抗夫や女郎など200人が住み着き、
賭場などもある、一種の町が形成されていた。
ただ、この頃はこの付近の一切の立ち入りを禁じていたため、
地元の人間も中の様子は出入りする人づてにしか分からなかったらしい。

そして、関東大震災。

丹沢を震源とする大地震は、あっというまに東沢を土石の下に埋めてしまい、
200人いたはずの金鉱山関係者が戻ってきたのを見た者はいないという、
いわく付きの場所である。

ユーシンロッジからすごく立派な橋でユーシン沢を渡って大石山登山口へ。
この橋はなんのためにあるのかと坂元さんに聞くと大石山に登るためとのこと。
国体のときに造ったとのことだが、
日に数人しか使われないことを考えると、なんとももったいない。

軽く準備体操をして、大石山への登りを開始。
いきなりの急登で、朝まだ薄暗く起き抜けのハードワークに息が上がる。
ユーシンロッジが満員の時にはここで寝る人もいるという東屋を通過し、
さらに急坂を黙々と登ると、山の名前の由来となった大石に到着。
さぁここからは富士山が見えると、その方面を眺めると、
すっかり雲に覆われ、富士山は全く見えない。
う〜ん、今日は快晴の予報だったのに...。
仕方なく大石を眺めていると、「この石は動いている」と坂元さん。
え〜っ、まっさか〜と思っていると、証拠があるからと岩の側面へ。
そこには岩に張り付いたブナの木があった。
確かに木が岩に奇妙な形で平たく張り付いており、
木の成長途中で岩に押されてこのような形になったとのことだ。
う〜む。この大石がもし落ちたら、急坂を一気に下まで落ちちゃうだろう。
と、思うとユーシンロッジは大丈夫かと、ちょっと心配になった。

大石山の大石(右は岩に張り付いた木)
大石から大石山の肩をアップダウンすると大石山山頂に到着。
山頂にはベンチと大きな岩があり、
坂元さん曰く、この岩の陰がビバークに最適とのこと。
そして、さらに耳寄り情報。
8月29日に丹沢湖岸で花火大会が開催され、ここから見ると...
ということで、今年の8月29日は大石山ビバークオフが開催されるかも。

また、山頂からはこの夏歩いた、檜洞沢、金山谷ノ頭、臼ヶ岳と日向尾根、
熊木沢が、まるで模型のように見え、夏の山行が懐かしく思い出された。
と、「富士山が見える!」との坂元さんの言葉で、慌てて岩の上に立つと、
まるで雲の見間違いじゃないかと思えるほど、雲の中にうっすらと稜線が見え、
周囲の山の背後に、まるで遠近法を無視したかのように大きくそびえていた。

で、つい嬉しくなって携帯伝言板へ書き込もうと、久々に携帯電話を手に取った。
といっても、ここは丹沢の奥地。たぶん圏外だろうと半ば諦めていたのだが、
なんとアンテナが4本も立っている。
ということは、ユーシンロッジに泊まっている時に携帯が使いたくなったら、
大石山に登ればいいってことか。<公衆電話を使えよ!

大石山を出発するといきなりの難所。
一枚岩のクサリ場で、滑り台状の先には目もくらむような深い谷。
この日は凍結していなかったので、慎重に下りればそれほど問題なかったが、
坂元さんは凍結したときに下ったことがあり、無茶苦茶怖かったとのこと。
そりゃそうだ!というかそんなときに下るなよ。(笑)

大石山からいきなりのクサリ場
そして軽いアップダウンのある稜線を歩き、
石小屋ノ頭への登りに取りつくと、同角沢へと下る分岐を探しながら歩く。
途中、それらしき踏み跡に危うく入り込みそうになったが、
間違いに気づきさらに進んだところで、正しい分岐に到着。
一般登山者が誤って入り込まないようにあえて薮を刈っていない入口は判りにくいが、
坂元さんが前回来た時は無かったという、神奈川県が設置した道標
(もちろん同角沢へ下るルートは示していない)が、格好の目印になるだろう。

ここから同角沢へ向かう
ここから同角沢へは、沢登りをする人々が利用するルートなので、
踏み跡もしっかりしており、懸念していたテープ(最近、目印のテープをはがして歩いている
グループがいるらしい)も残っていたので、特に問題なく進むことができる。
ただし、一カ所だけ危険な分岐がある。ここは右折しなきゃいけないのだが、
もし直進すると30分で崖に突き当たり、この崖は上から見ると降りられそうに
見えてしまうので、途中まで崖を下って、そこで進退窮まってしまうらしい。
実際、それで亡くなった方もいるとのこと。
この分岐はぼんやり歩いていると間違いなく直進してしまうので要注意だ。
(もし右折側にだけついているテープが外されると非常にヤバイかも)

この分岐を真っ直ぐ進まないように
そして同角沢に到着。
エアリアマップの黒波線では滝(ユイゴンダナ)の上を通って下りるように
なっているが、黒波線ルートは崖崩れで使用できなくなっているとのことで、
実際は東沢乗越よりちょっと上流部に下る。

ここで坂元さんが目印のテープをつけていたので、そこにちょこっと落書き。
都合で同行できなかったが、以前から東沢を歩きたいと言われていた、
まきたさんへのメッセージ?として、「To Makita」と書き込んでおいた。
(でも、ボールペンなので一雨で消えちゃうだろうなぁ。)

東沢乗越へは同角沢の右岸斜面をトラバースするように進む。
このルートは足場がほとんど無い上、かなりザレているので、
ちょっと気を許すと、同角沢へ滑り落ちてしまう。
周囲の枯れ木やササを掴み、(これもちぎれやすくて結構怖い)
一歩一歩足場を確かめながら恐る恐る進む。

そして東沢乗越に到着。二人が並ぶとそれでいっぱいという、ものすごく狭い峠で、
大石山と小川谷の方向を示す道標と、小川谷方面は荒れていて通行困難なので
大石山方面へ向かうようにとの松田警察によって警告が書かれた注意書き。
とりあえず、ここが今回ルートの最深部なので記念写真を撮った。

東沢乗越からは東沢の右岸斜面にへばりつきながら高巻きに進む。
足場は相変わらずのザレで、歩くたびにザラザラと小石が東沢へと落ちていく。
そして、手がかりになるような木も少なく、
一か八かの思い切りが要求されるところも少なくない。
もう泣きそうになりながらも、軽快に先を行く坂元さんになんとかついていき、
ようやく、東沢に降り立つことができた。

ザレた急斜面を高巻きに進む
降り立ったところから少し進んだところ、小さな涸れ沢との出合で休憩。
ここには斜面の岩の間から水がわき出しており、それまで涸れ沢だった東沢は、
ここから水流のある沢へと変化している。
そして、この湧き水は、坂元さんの知り合いで、利き酒を生業とされる方が大絶賛したという水。
飲んでみるとユーシンロッジの水(これもすっごく美味しいです)とは違い、
すっごく柔らかい感じがした。どちらが美味しいというわけではないが、
性質の違いにはかなり驚かされた。
で、せっかくだからこの幻の名水でラーメンを作ったが、
さすがに味の違いは感じなかった。<当たり前

ラーメンを食べていると、ときおり周囲から小石がパラパラ落ちてきて、
上の方のヤブでガサガサと音がする。
な〜んか、回りに何かがいるような気配で、つい周囲をキョロキョロ見回していると、
「ここは丹沢で一番熊が多いところで、東沢は別名『クマ沢』と呼ばれている」
と、坂元さんがボソッと漏らした。
「でも、今の時期なら熊は冬眠だよ」「でも最近冬眠しない熊がいるらしいよ」
なんて話しながらも、つい背後が気になって何度も振り返った。

東沢の幻の名水
結局、クマに合うことはなく、食後東沢沿いに歩きはじめた。
最初、東沢は溝状に流れており、水に入るわけにはいかないので、
やはり沢の斜面にへばりつきながらの歩きを強いられる。
この溝は奇妙なほど真っ直ぐ続いており、本当に人工の溝のように見える。
崩れやすい斜面に悩まされながら進むと、凍結箇所まで現れはじめ、難易度さらにアップ。
また、ときおり渡渉すると川底の石が非常に滑りやすく、
これまた気を使うため疲労度がどんどん増していく。
と、坂元さんが指さす先を見ると、トロッコの車輪が沢に浸かっていた。
金鉱山時代の名残だろうか?それにしては新しいとか話していると、
今度はもっと錆びて朽ちている車輪の軸が岩の間に突き立っており、
やはりここには金鉱山があったんだということが実感された。

そして3つの滝が合流する出合に到着。
その内の一つのナメ滝は完全に凍りついており、氷の滑り台となっている。
ここからは凍結箇所がさらに多くなり、滑らないように気を使う必要があるが、
沢幅が広がったおかげで、斜面にへばりつくことが少なくなり、多少歩きやすくなった。
このあたりになると、ちょっとした平地がいくつかあり、
この辺に小屋があったのかなぁとか言いながら進んでいくと、
沢から3mほど高いところに台地状の広場があるところに来た。
ここは5、6年前に坂元さんがひとりで来た時に、これはいい場所だと、
喜んでテントを貼って一泊したら、周囲から大勢の視線と気配を感じて
一睡もできないという恐怖体験をした、いわくつきの場所である。
丹沢に詳しいユーシンロッジ小屋番のおじさんの話では、
ここに金を精錬するための工場があったとのことである。

凍りついた滝
そして、最後に滝の脇を下ると小川谷との出合に到着。
ここは平らな雑木林が広く、特に沢登りの方々のテン場に利用されているらしい。
ここからはエアリアマップでいうところの赤波線ルート。
もうそれほど険しいところはないだろうと、
ホッとしていると坂元さんが何やら思惑ありげにニヤッと笑った。

そして、西丹沢県民の森に向かって歩きはじめた。
谷から山道へザレた急斜面の登りを強いられたが、そこからはものすごく快適な山道。
お〜ラッキーと思いながらズンズン進んでいくと、いきなり行き止まり。
高巻きに進む登山道が崖崩れで見事に切れている。
たぶん沢登りの誰かが付けたのだろうロープが渡してあるが、
斜面はザレというよりほとんど砂。踏み跡を辿るんじゃなくて、
砂を踏みつけて足場を作りながら、ロープを頼りに進んでいく。
と、片足の足場がいきなり無くなり、あわてて斜面にへばりつく。
坂元さんも急いでとって返しサポートをしてくれたおかげで、
斜面を転がり落ちることはなんとか回避できたが、これはかなり怖かった。

小川谷からのコースも相変わらず高巻きつづき
この後も、崖崩れで寸断された登山道が続き、
危険箇所を通過するたびにビクビクしながらもなんとか坂元さんにいていき、
やっとのことで林道に到着した。
そして、西丹沢県民の森を右手に見ながら舗装の林道を下り、小川谷を左手に、
夏に予定している小川谷遡行の話をしながら歩くこと1時間15分。
玄倉バス停前に到着すると、幸運にも5分ほどの待ち時間でバスがやってきた。

一般ハイカーはもちろん熟練者でも単独で入るのは避けたほうがいいような
ものすごいルートでしたが、前述の歴史的な背景もあって、秘境の雰囲気満点。
特に丹沢を歩き尽くしたようなベテランには是非歩いて貰いたいルートです。
(関東にきてまだ1年の私には早すぎ?)


【コースタイム】
ユーシンロッジ 7:05…大石 7:50-8:00…大石山山頂 8:20-8:45…同角沢分岐 9:20…
東沢乗越 10:25…小川谷出合 12:25…西丹沢県民の森 13:40…玄倉バス停 14:50
Top Page
-----------
Features
-----------
Back Numbers
-----------
Trekking Reports
DateArea
-----------
BBS
-----------
Profile
-----------
Links
-----------







このホームページはInternet Explore5.Xで最適化しています

ご意見、ご感想をお待ちしております。
dame-chan@mail.goo.ne.jp