Trekking Reports 〜山歩きの記録

2001.8.6(月) 富士山のフルコースを満喫【富士山】

日本最高峰、剣が峰から山頂火口を望む(クリックで拡大:103K)

この日は平日だが、会社の創立記念日とかでお休み。
せっかくの平日の休みなんだから、休日は混んでる山で、涼しくて、翌日が仕事だから
そんなに遠くない山ってないかなぁと考えていたら、なーんだ富士山に行けって言われてるような
もんじゃないかと気づき、それならばと今年の目標の富士登山を決行することにした。

一般的に富士登山は八合目ぐらいの山小屋に泊まって山頂でご来光というパターンだが、
そこは日帰り登山隊の私のこと、五合目で車中泊して日帰りで富士登山に挑むことにした。
で、日帰りとなるとあまり長いコースは難しいので、もっともスタート地点が高い、
富士宮口からの表口ルートを選択。富士宮口新五合目に前日の夕方に到着した。

起床は4時すぎ。まだ薄暗い中、車外に出ると周囲はガスで真っ白。
夜は小雨もぱらついたぐらいだから、降っていないだけ御の字とも言えるが、
せっかくの富士登山がガスの中となると、かなり悲しい。
でも、ここで止めるわけにもいかないので、さっそく支度にかかった。


スタートはガスの中

新五合目からちょっと登ったところに、富士宮口ご自慢のバイオトイレがある。
富士山のトイレの不潔さは噂で聞いていたので、ここのトイレの綺麗さはとてもありがたいが、
新五合目の駐車場からここまで5分程度の登りを強いられるので、どうも痛し痒し。
実際、夜中にトイレに行きたくなって、真っ暗な中ここまで登山するはめになった。
ま、山の中で環境に配慮したトイレがあるだけでもありがたいと思わなきゃいけないのだが。

ガスの中、それほどの登りもなく六合目の雲海荘前に到着。
ヒマそうにしていた小屋番のおばちゃんに、
「昨日は雲海だったらしいけど、今日はダメかもね」なんて脅かされたりしながら、
急にきつくなった坂を黙々と登り、なんとなく周囲が明るくなったような気がして、
ふと山頂方向を見上げると、真っ白だった空がうっすらと青みがかってきていた。
これはもしかしたら!とペースを上げ気味に登っていくと、七合目付近で突然周囲が明るくなった。
正面には山頂が青空をバックにそびえ、宝永山の向こうには太陽も姿を見せていた。
やったー!晴れたー!と、思わず周囲にいた人々と万歳三唱(嘘)。

新七合目の御来光山荘前で、ものすごい雲海にしばらくの間見とれた後、気合いを入れて出発。
上に見える小屋は八合目かと思い到着すると、そこはなんと『元祖七合目』...
これで一気に気合いが抜けた。お前は老舗の蕎麦屋か!(笑)


ご来光と富士山の雲海

富士宮コースは砂が多い他のコースと違って岩場が多くグリップが利くのでありがたいが、
急坂続きというデメリットもある。道ばたでひっくり返っている登山者を横目に、
ペースを上げてばてないようにゆっくり着実に八合目、九合目と登っていった。
そして登れば登るほどどんどん急になっていくのは、富士山の形を見れば自明の理で、
九合五勺からは胸突八丁とも呼ばれるすごい急登が待ちかまえている。
とりあえず、最後の小屋「胸突山荘」で息を整えてから、最後の登りに立ち向かった。

もう山頂はすぐそこに見えているのに、なかなか足が上がらず、ものすごく焦れったい。
そうこうしていると、山頂に白い鳥居がちらっと見えた。こうなったら勇気百倍。
最後の力を振り絞って一気に登り、ようやく富士山の鉢の縁に立った。


もう少しで山頂だ

やった〜!着いた〜!

結局、登り3時間25分。ほとんど休憩らしい休憩を取らず、一気に歩ききったおかげで、
なかなかのタイムが出たんじゃないだろうか。(^^)v
(五合目で山頂まで4〜6時間かかるとのアナウンスがあったので、
なんとしても4時間を切ってやろうとの意地もあったりして。)
この段階でかなり疲労していたが、時間はまだ8時すぎ。
このまま下山するにはあまりに早い時間なので、
やるかどうか迷っていたお鉢めぐりを決行することにした。

富士宮側の山頂は最高峰の剣ヶ峰まで近く、お鉢巡りはこの3776mへの急登から始まる。
そこは砂地ですごく滑りやすい急斜面で、気を抜くとズルズル下がっていってしまう。
道の脇の方がやや滑りにくいのを利用して、なんとか測候所の下までたどり着いたが、
ここでなけなしの体力を使い切ってしまい完全にダウン。
目の前の日本最高峰の石碑を眺めながら、測候所の壁にもたれてへたり込んでしまった。


富士山測候所とレーダードーム

それにしてもここから見る火口の展望は凄い。ある意味、日本を代表する地でありながら、
ここが日本であることを忘れてしまいそうだ。
そして反対側の河口湖口側の山頂がかなり遠くに見え、富士山の火口の大きさに驚かされる。
これからここを1周するのかと思うと、やる気が萎えてくるが、
先ほどの滑りやすい急斜面を下るのも嫌なので、渋々お鉢めぐりを続行することにして、
十分すぎる休憩を切り上げて、日本最高峰をあとにした。

富士山頂は荒涼とした岩と砂の世界。空は濃紺でその下には真っ白な雲海が広がり、
ギリギリで雲海上に頭を出す南アルプスや八ヶ岳がとても小さな存在に見える。
ここは本当に凄い世界だと実感した。
火口に目を転じると、万年雪の氷が強烈な日光を反射して輝き、
虎岩などのごつごつして赤茶けた火口壁は、底に降りられるのだろうかと興味を抱かせた。

お鉢めぐりをする人は意外と少ないようだが、
時折すれ違う人々の表情は、日本最高峰に立っているという感激からか、誇らしげだ。
そして、周囲に人が増えて賑やかになってくると、河口湖口側の山頂に到着した。
ここには多くの小屋が建ち並び、登山者とアルバイトの小屋番が入り乱れてごった返している。
そして下からは続々と登山者が到着していた。たぶん、富士山頂で最も賑やかな場所だろう。


多くの小屋が建ち並ぶ、河口湖口側の山頂

それでも今日は平日ということで、空いているベンチも結構あり、
そこに陣取って、雲海を眺めながらのランチタイムとした。
持ってきた水の残りが心許なかったので、自動販売機でペットボトルを購入。
低徘携帯伝言版にメッセージを投稿したりしながら、文字通り日本最高の展望レストランを堪能した。

食後十分に休息を取ったあと、ボチボチ行こうかね〜と、ザックを抱えて立ち上がると、
小屋の奥からものすごい音が聞こえてきて、小屋のアルバイト店員の動きが慌しくなってきた。
何事かと思ってみると、ブルドーザーが荷物を抱えて登ってきたのだ。
話には聞いていたが、実際にこんなところまで車が登ってくるのを見るとやはり驚きだ。

河口湖側から富士宮口側までのお鉢めぐり中にはいくつもの小ピークがあるが、
ピークを通るルートは所々が崩れて通行禁止になっているものが多く、
疲労もあってピークは踏まずにすべて巻き道を通って、富士宮口側へと歩いた。
そして谷をひとつ越えれば富士宮側山頂というところが御殿場口への登下山口である。
こちらにも鳥居と道標があるものの、富士宮口や河口湖口の登下山口に比べ、
あまりにひっそりしている。そして数少ない人々はお鉢めぐり中の登山者のみで、
ここから登ってくる人も下りようとする人も全く見当たらなかった。

御殿場口コースを下りはじめると、周囲にはゴツゴツした岩のオブジェが立ち並ぶ。
それらを下から見上げると、今にも崩れてきそうで、非常に不気味だ。
実際、富士山ではちょくちょく落石事故が発生しているのだから、不気味さも倍増である。
閑散とした小石のゴロつく斜面をロープや鉄製のパイプで仕切られたコースをジグザグに下っていく。
先の方には山小屋の屋根が見えているが、なかなか近づいてこない。
こういうときは見えている方が始末が悪いもので、かなり気が滅入ってくるが、
仕方なく黙々と歩き続けることで、ようやく山小屋に到着...
と、そこは山小屋ではなく、もう使われなくなった山小屋跡だった。
実際、これだけ歩いている人が少ないと、廃業する山小屋も多いんだろうなぁと思いながら、
さらに下に見えている山小屋に向かって歩き続け、何軒かの小屋の前を通過し、
足先に靴擦れの痛みを感じだした頃に、7合目の日ノ出館に到着。
ここでベンチをお借りして、足に靴擦れ防止のパットを貼り付けた。


御殿場口コース7合目付近から山頂を振り返る

ここからは登山道と下山道が別れ、下山道へと進むと砂地の斜面を一直線に下るようになる。
いわゆる、砂走りの始まりだ。
最初は足を突っ張っりながらおっかなびっくりで歩いていたが、
慣れてくると、すいすいと走ることができるようになり、こうなると快適なことこの上ない。
で、だーーーーっと下っていくと、あっという間に標高差200mを下りきり、
宝永山へと向かう分岐に着いてしまった。
ここには小さな道標があるだけなので、砂走りに夢中になっていると通り過ぎかねない。
このまま砂走りで一気に御殿場へ下りたい衝動を抑えながら、渋々トラバース道へと入った。

トラバース道を進んでいくと、右手にものすごく大きな宝永火口が見え始める。
遠くから見る優美な富士山とはあまりにも異なる猛々しい景観にしばし呆然。
そして宝永火口の右側のフチを進んでいくと宝永山に到着した。
このあたりがちょうど雲海の高さらしく、ガスったり晴れたりを繰り返している。
宝永火口越しの富士山頂を見たかったので、先客の男性と話しながらガスが晴れるのを待った。


宝永山から望む、宝永火口と富士山

宝永山を後にすると、富士宮口へのコースは宝永火口の底へと向かう。
ザレた急斜面はなかなかブレーキがかからず、先ほどの砂走りとよく似ているが、
砂の下には岩が隠れているので、調子に乗ってペースを上げると、
岩を蹴飛ばして痛い目を見ることになる。ほとんど砂を蹴落としながらの下りに、
ここを登るのは大変だろうなぁと思っていると、下から5、6人のグループがやってきた。
宝永火口の斜面を通るルートは私が通ってきたショートカットコースだけじゃなくて、
なだらかに登る遠回りのルートもあったので、
私が下ってきたルートへと進もうとしていたグループに、遠回りのルートを薦めた。

そして宝永火口の底に到着。大きな擦鉢の底からの景色はなんとも雄大で、
思わず周囲を見回してはため息をついてしまう。
なだらかな曲線を描く斜面には鮮やかなグリーンのオンタデがモノトーンの世界で唯一の色彩を放ち、
青空とガスのコントラストとも相まって、なんとも異色で美しい景観を作り出していた。
こうして徐々に緑が増えていき、長い年月をかけて荒涼とした死の山を覆っていくのだろうか。


宝永火口の底から山頂を見上げる

宝永火口の底からは当然登り返しが待っているわけだが、思ったよりも大したことのない坂を登ると、
ベンチなどが設置された広場に出た。
第一火口の火口丘と呼ばれるところで、ここから宝永遊歩道が御殿場口まで続いている。
その御殿場口へと向かうルートと分かれて、富士宮コースの新六合目へと示す道標に従って、
トラバース道を歩いていくと、いきなり子供たちの団体が道を占領していた。
引率者の「道を空けなさーい!」という言葉で現れた細い隙間をすり抜けながら進んでいると、
朝に通過し、おばちゃんに「今日は山頂はガスかもよ」と脅された雲海荘に再度到着。
おばちゃんに、山頂は素晴らしい天気だったと報告したかったが、
あいにく誰もいなかったので、そのまま通過。
これから登ろうという人と下ってきた人でごった返す中を富士宮五合目へと下っていった。

かなりのロングコースだったが、雲海に剣が峰にお鉢巡りに砂走りに宝永山に宝永火口と、
まさに富士山のフルコース。富士山は登る山じゃなくて見る山だなんて聞いていたが、
見所満載の富士山を満喫できた。このコースは本当にお薦めです。


【コースタイム】
富士宮口五合目 4:45…新七合目 5:40…八合目 6:40…九合五勺 7:30-7:40…富士宮側山頂 8:10…
剣が峰 8:30-8:50…河口湖口側山頂 9:20-10:00…御殿場登下山口 10:25…七合目日ノ出館 11:50…
宝永山 12:05-12:15…富士宮口五合目 13:10
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