Trekking Reports 〜山歩きの記録

2001.07.15(日) 日本第二の高峰に日帰りで挑む【北岳 南アルプス】

雪渓の二俣から北岳バットレスを見上げる。(111K)
同じ週の火曜日に開催された新橋での街オフの席で、
北岳の日帰り山行を泥助さんらに焚きつけられ、急遽決行することになった。
参考タイム10時間、標高差1600m。
果たして今の実力で達成できるかどうか甚だ怪しいが、
ま、なんとかなるだろうと気楽に考えるのは性格なのだろう。
早朝から歩き出すには前泊しかないので、
前日の土曜日に登山口の広河原に入り、車の中で一夜を過ごした。

車のシートでは寝心地が悪い上、神経が高ぶっているからか、
1時間おきに目が覚める始末。結局3時過ぎに起き出して、まだ暗い広河原を散歩。
もうこの時間にヘッドランプをつけて歩行を開始するグループもいて、
いやが上にも気持ちは盛り上がってきた。
そして4時半になって周囲がうっすらと明るくなってきたところで準備開始。
ヨシッ!と気合いを入れて5時ちょっと前にスタートした。

広河原ロッジの前を通り、大樺沢にかかる立派な吊り橋を渡ると雑木林の中に入る。
このあたりから北岳へ向かうハイカーを見かけるようになった。
今回は先が長いので、ゆっくりペースで登るつもりだったのだが、
なぜか次々と道を譲ってくれるので、知らず知らずにペースアップ。(+_+)
二俣へはなだらかなだらだら登りと聞いていたが、崖崩れ地点を避けて右岸に渡ると、
急坂を登って急坂を下る。それに、浅い沢の中を歩いたり雪渓があったりと、
変化に富んでいてけっこう大変。
さらに、二俣直前の雪渓歩きでは、アイゼンを取り出すのが嫌だったので、
周囲をキョロキョロ見回すと、左岸に巻き道発見。
こりゃラッキーと、そこを登るとアップダウンが激しい上、
あまり歩く人がいないのかかなり荒れていて、無駄に疲労してしまった。

そして二俣。正面には北岳バットレスがそびえ、空は雲ひとつない快晴。
それに大樺沢の真っ白な雪渓のコントラストが素晴らしく、思わず見とれてしまった。
ここには自動的に分解処理するというバイオトイレが設置されているが、
なぜか使用禁止。利用してみたかっただけに、ちょっと残念だ。

さて、二俣から小太郎尾根分岐までの急登が今回最大の難関。
ここを余裕を持ってクリアできるかどうかが、北岳登山のカギとなるのだが、
ここまでですでに余裕をなくしていた私は、
ともかくゆっくり時間をかけて登ろうと心に誓って一歩一歩確かめるようにして登っていった。

すでに周囲の景色などまったく目に入らない。
腕時計の簡易高度計を目安に、100m登っては休憩を繰り返し、
果てしなく続くように思える急登のつづら折りをゆっくりと登っていくと、
ず〜っと上の方に、ようやく稜線と道標が見えた。
こうなると元気百倍!残る体力を一気に使って小太郎尾根分岐にたどり着いた。
(こんなことをするから、すぐばてるんだけどね。)
そして、ここで精根尽き果て、ややガスがかかり始めた展望を眺めながら大休憩とした。

ザックを下ろすのもわずらわしく、地べたにへたり込んで何気なく正面を見ると、
ガスの隙間から、不自然に感じるほどの高さに富士山のシルエットが覗いた。
呆気にとられて、写真を撮るのも忘れてしまったのが残念だが、
ここまでよく頑張ったことに対するご褒美だったのだろうか。
そしてこの後、下山するまで富士山が見えることはなかった。

しばらくは先へと通り越していくハイカーをぼーっと見送っていたが、
いつまでもこうしているわけにはいかないので、
もうしばらく座っていたい気持ちを振り払って、再び歩き始めた。

北岳への稜線から仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳の展望(89K)
ここからの稜線歩きは快適の一言。
野呂川へと一気に下っていく西側の急斜面はまさにお花畑で、
ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ、ミヤマハナシノブの群落は感動的ですらある。
そしてさらに素晴らしいのが雄大なパノラマで、野呂川の向こうには仙丈ヶ岳が大きく、
小太郎尾根の先にはガスをまとった甲斐駒ヶ岳が白い岩肌を見せていた。
この稜線はただなだらかなだけではなく、岩場をよじ登ることもあるのだが、
今までの疲労はどこかへ吹き飛んでしまい、足取りも軽く展望に魅入られたように歩いていくと、
あっというまに肩ノ小屋に到着した。

小太郎尾根斜面のお花畑
肩ノ小屋の背後には岩肌の急坂が待ちかまえているのが見え、
今すぐそれに立ち向かう元気はなかったので、ベンチを借用して昼食をとることにした。
メニューはサッポロ一番みそラーメン。
インスタントラーメンを作るときはだいたいコレなのだが、
今回、なかなか煮上がらないラーメンを苦労して作って食べると...ん?まずい...(--;)
とりあえず食っとかなきゃ保たないのはわかりきっているので、
無理矢理詰め込んだが、あんなにまずいラーメンを食べたのは初めてだった。
このときは標高のせいかと思っていたが、どうやら問題は疲労困憊の体調にあったようだ。
(後日行かれたMartyさんは、肩ノ小屋前でとてもおいしいラーメンを食べられたそうです。)

やっとのことで肩の小屋に到着
肩ノ小屋から最初の急登をよじ登ると、大岩がゴロゴロした尾根道が続き、
ところどころに付けられたペンキの印を頼りに歩いていく。
途中で何度か偽ピークに騙されながらも、少しずつ進んでいくと、
周囲が徐々にガスで覆われてきた。そして、そのガスの向こうに大勢の人の気配を感じると、
ようやく日本で2番目に高い所、北岳山頂に到着した。

やったーというより、やれやれといったのが正直なところ。
とにかく座りたくて、10人程度の先客の中でスペースを探してキョロキョロ。
とはいええり好みしている余裕はなかったので、適当なところに腰掛けて休憩した。
そしてあらためて周囲を見渡すと、一面まっしろ。
二俣から見上げたときの雲ひとつない青空をバックにそびえる北岳はどこへ行っちゃったんだ!
とりあえず、30分ほど待ってみたが、まったく晴れる気配なし。
まだまだ帰路には多くの道のりが残っているので、のんびり天気待ちしている余裕はない。
私が山を続ける限り、これからもここには何度もくることになるだろう。
再訪を心に誓って、後ろ髪を引かれる思いを残しつつ下山することにした。

ガスの中の北岳山頂
下山はまず八本歯ノコルへ向かう。足下は肩ノ小屋からと同様岩場&ガレ場。
しかも、肩ノ小屋からよりも難路が続き、うっすらとかかるガスが目印を見えにくくして、
難易度をさらに高める。
途中、道を外してガレた斜面を下りてしまい、これは降りられても登られないだろうと気づいて、
足下がガラガラと崩れる中、かろうじてガレた斜面から脱出するというアクシデントを体験しながら、
なんとか北岳山荘へと向かうルートとの分岐を越えて、八本歯ノコルにたどり着いた。

八本歯ノコルからは延々と木のハシゴが続く。
こんなにたくさんのハシゴを下りたのは初めてだなぁと思いながら、
下から登ってくる人々には同情を禁じ得ない。

そして、ようやくハシゴが終わると雪渓の上端に到着した。
かなりの急斜面に怯みながらも、ザックの底にあるアイゼンを取り出すのが面倒で、
そのまま雪面上に足を踏み出したが、二度転んだところで断念。
なんとか左岸の雪のないところまでたどり着いて、おとなしくアイゼンを装着することにした。

アイゼンをつけるとあれだけ歩きにくかった雪面が天国に大変身。
ザクザク歩いていくと、どんどん高度が下がっていく。
それならば二俣まであっというまかと思いきや、ずっと見えている二俣はなかなか近づいてこない。
そのうち速すぎるペースに足が悲鳴を上げ、ときどき立ち止まる羽目になった。
しかし、雪渓に吹く風はまさに天然のクーラーとなり、火照った体には最高の贈り物。
とりあえず二俣までガンバレ!と、自分を励ましながら無心に下っていった。

雪渓の大樺沢を下る
二俣に到着して適当な岩を探して腰掛けると、
ストックを器用に使って靴スキーで下っていく若者グループや、
アイゼン無しでへろへろになりながら二俣にたどり着く中年男性、
黙々と雪の急斜面を八本歯ノコルへと登っていく外国人男性など、
これから登る人と下る人で大にぎわい。
北岳バットレスは完全にガスに覆われてしまったが、雪渓を雪煙を上げて吹く風は壮観で、
今が夏まっただ中であることが信じられない気分になる。

二俣からは来た道を下るのだが、疲労のせいか来たとき以上に長く感じた。
二俣までより傾斜がなだらかになるために、腕時計の高度計の数値がいっこうに減らず、
期待を込めて高度計をのぞくたびに、失望感に襲われた。
それでも少しずつ駐車地の広河原に近づいていることには間違いない。
意識的に腕時計を見ないようにして、のんびり本日最後の南アルプスを楽しもうと、
自分に言い聞かせながら、焦る気持ちを落ち着かせながら歩いていった。

そして、朝薄暗いときに渡った吊り橋が見えたとき、
本当に北岳日帰りを達成したんだという感動がこみ上げてきた。
そして、広河原ロッジ前の自動販売機でよく冷えた缶ジュースを一気にあおり、
駐車場にたどり着くと、それを待っていたかのように小雨がぱらついてきた。

4月に夜叉神峠から見上げた南アルプスに強烈に惹かれるものを感じながらも、
日帰り派の私には無理だろうと半ばあきらめていたのだが、
その中でも最高峰の北岳に日帰り派を返上することなく登頂できたことは、
今後の山行におおいなる自信となるだろう。
日帰りイコールお手軽から、日帰りという制約の中でどこまで行くことができるか
という挑戦的な日帰り登山に目覚めた山行でもあり、ひとつの転機になったように思う。


【コースタイム】
広河原 4:50…二俣 6:50-7:05…小太郎山分岐 9:25-9:40…肩ノ小屋 10:10-11:10…
北岳山頂 11:35-12:05…八本歯ノコル 13:00…二俣 14:30…広河原 16:20
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