Trekking Reports 〜山歩きの記録

2001.05.26(土) 丹沢最高峰に立つ 【蛭ヶ岳 丹沢】

柳沢ノ頭から丹沢の標高上位3山(蛭ヶ岳、檜洞丸、大室山)勢揃いの展望(88K)
朝7時、狭い舗装路を進み塩水橋に到着すると、狭い駐車場所はすでに車でいっぱい。
しかたなく車を先へと走らせ、トンネルをくぐりカーブミラーのある
やや広い道脇に車を停め、ここから歩くことにした。
10分ほど歩くと、塩水林道への分岐の分岐へと到着。
ここには大きなゲートが設置されており、車はおろかバイクの進入も遮っている。
ゲートの右脇の鉄柵の隙間をくぐり、やや登りとなる舗装路を歩いていく。
通行止めの林道とはいえ、綺麗に舗装され、ガードレールや標識も設置されているので、
なんとも勿体ないなぁと思いながら、さらに先へと歩き、
途中堂平へと向かう分岐を通り過ぎて、本谷川の沢音を聞きながら歩いていると、
前の方から声が聞こえてきた。どうやら、中高年の団体さんのようだ。
話しかけると、やはり同じように天王寺尾根経由で丹沢山、
そして余裕があれば蛭ヶ岳を目指すということで、私と同じルートのよう。
ただ、リーダーと思われる方と話すと、このペースだと丹沢山までが精一杯だろうとのことで、
蛭ヶ岳はすでに諦められているようだ。
そして、天王寺尾根への取り付きが判りにくいと聞いたが、知っているかと聞かれたが、
当然私も初めてのコースなので、知っているわけはない。
団体さんには山頂でまたお会いしましょうと挨拶し、
周囲を注意深く観察しながら、先へと進むことにした。

やがて、ガードレールが途切れ橋が現れた。本谷橋は本谷川を渡る橋だとばかり思っていたのだが、
この橋は本谷川へ流れ込む支流に架かる小さな橋。ただ、この橋の手前には道標が設置され、
山へ向けて丸太の橋が架けられていたので、どうやらここが天王寺尾根への取り付きに間違いない。
やや後ろを歩く団体さんに声をかけておいて、やや暗い沢沿いの道へと入っていった。

沢沿いの道は長く続かず、すぐに杉林の急斜面をつづら折りに登っていく。
途中、なんどか鉄条網の獣除けを丸太の橋で乗り越え、高度を稼いでいくと、
やがて尾根上に到着。周囲は雑木が生い茂り、展望はほとんど期待できないが、
それでも時折木々の間から大山の形の良い山容がかすかに覗いていた。

尾根道は杉林のつづら折りに比べれば多少はましではあるが、
直登になる分、斜度はさらに上がったように感じられ、しんどさはあまり変わらない。
さらに単調な登りが延々と続くので、だんだんと嫌気が差してくる。
と、脇の木がガサガサと音を立てたので振り返ると、木の下で鳩(?)が走っている。
「なぜ翼を使わないんだ..」(x_x)☆\バキッ!!

やがて、分岐が現れた。
一方は尾根上を忠実に登っていくが、もう一方は巻き道のように見えた。
やや疲労感があったので、巻き道の方にかなり惹かれたが、なんとなく嫌な予感がして、
尾根上を行く急登を選択した。その後いくらたっても巻き道からの合流点はなかったので、
どうやら先ほど巻き道に見えたのは、キュウハ沢出合へと下る道だったようだ。
そして、この急登を登り詰めると、ブナ林の中のなだらかな道となった。
自然の庭園といった様相で、とても静かで雰囲気がすばらしい。
そして堂平へのルートとの分岐を通り過ぎると、やや盛りを過ぎて葉の目立つシロヤシオが
現れ始めた。ちょっと遅かったかと残念に思ったが、山頂まではまだ標高差がある。
そのうち満開のシロヤシオに出会えるだろうと気を取り直して、先へと進む。

そしてしばらく進むと急に林が途切れた。正面は露岩の急斜面で、右斜面は崩壊した崖だ。
露岩にはクサリが設置されているが、かなり錆びているので、それを掴む気にはならない。
つかまなきゃ登れないほど急なわけではないが、かなりガレているので、
浮き石に足を取られないように注意しながら慎重に登っていく。
そして露岩の上から振り返ると、大山がそびえ、その周囲は雲海状になっていた。
遠望は望むべくもないが、これはこれでなかなか幻想的ですばらしい。

そして、最後の急登を登りきると広々とした丹沢山山頂に到着した。
まだ10時だというのに、すでに10人近い先客がおり、しばらく休憩している間にも、
塔ノ岳方面からどんどんとハイカーが登ってきた。
展望はまるで駄目だが、山頂の広場は公園状になっているので、
家族連れがお弁当を広げるにはちょうどよさそうな雰囲気。
ただ、蛭ヶ岳ほどではないにしても、ここもかなり山深いので
かなり健脚の家族じゃないとたどり着けないだろうが。

けっこう疲労を感じていたので、ここで引き返したいという気持ちを無理矢理振り切って、
蛭ヶ岳へ向けて出発。すると、いきなり急降下となり、早々に挫けそうになる。
標高差100mほど下るとようやく鞍部に到着。と思ったらすぐに急坂の登り返し。
明るいササの尾根というのが救いだが、相変わらずのもやで展望はぼちぼち。
と思っていると、このあたりから満開の花をつけたシロヤシオが現れた。
よく見ると丹沢山の斜面に真っ白になった木が所々に見えていた。
今日の2つの目的のうちの一つ、当たり年と言われる丹沢のシロヤシオを楽しめて、
疲労も少し解消した気がする。
そして、もうひとつの目的である「丹沢最高峰」に向けて、歩き始めた。

満開のシロヤシオ
ササ原のピークを越え、東屋脇を通って林の中を登りきると不動ノ峰に到着。
さらに下って登り返すとユーシンロッジからのルートの分岐がある棚沢ノ頭。
ここを過ぎたところで、南面に傷のような崩壊地が所々にある特徴的な蛭ヶ岳が姿を現した。
そして、ここからは丹沢第2の高峰である檜洞丸と第3の大室山が一望でき、
すばらしいビューポイントになっていた。

しばらく圧倒されそうな蛭ヶ岳に目を奪われたあと、あと少しと疲労が溜まった身体にむち打って
次のピーク、鬼ヶ岩ノ頭へ向かう。
鬼ヶ岩ノ頭の西斜面は鬼ヶ岩と呼ばれる大きな岩場となっており、所々にクサリが設置されている。
ここからは蛭ヶ岳は手が届きそうなほど近く、焦る気持ちを落ち着かせつつ慎重に岩場を下りる。

そして、最後の急登を登ると正面に大きな山小屋が見えてきた。
山頂にはすでに多くの人がくつろいでおり、話を横から聞くともなしに聞いていると、
大倉尾根から往復するという人もおり、ここまで登ってくる人のレベルの高さに唖然とした。

蛭ヶ岳山荘脇の自動販売機の前に腰掛けて、コンビニの鳥そぼろ弁当をパクついていると、
目の前に人なつっこい犬が私をじっと見つめていた。
無視してさらに弁当を食べていると、犬がどんどん私の方ににじり寄ってくる。
ごはんなんて食べないだろうと思っていたので、やるものはないよと言って、
さらに無視していると、どんどん犬は近づいてきて、今にもお弁当に首を突っ込みそうになった。
すると脇から男性が、こいつはなんでも食べるよと教えてくれたので、
試しにご飯を手にとって犬に差し出すと、一気に平らげてしまった。
結局、少ない弁当を犬と競争しながら平らげると、犬は礼も言わず(当たり前)
別のターゲットを探して、立ち去ってしまった。
この犬は蛭ヶ岳山荘のオーナーの飼い犬ということで、名前をパルという。
かなり有名な犬らしく、再会をよろこぶハイカーなどの声も聞こえてきた。

なんかあまり食べた気がしなかったが、かなりの疲労で食欲もそれほどなかったので、
まぁいいかと立ち上がり、広い山頂をカメラを持ってうろつくことにした。
山小屋の南側はベンチや案内板などが設置され、ここも10人弱のハイカーで賑わっていた。
展望のほうは相変わらずのもやで、丹沢の山々を眺めるのが精一杯。
今回は山頂に立てたことで大満足なので、それほどガッカリはしなかったが、
今度来るときは(来るのか?)大展望を楽しみたいものである。

蛭ヶ岳山頂から丹沢主脈を望む(71K)
さて、下山である。往路を辿るので、距離はたっぷり。
しかも、半分近くは縦走路なので下りだから楽ができるというわけではない。
やや挫けながらも、あせらずゆっくりを心がけながら、
できるだけ先のことを考えないように、展望や花を楽しみながら歩く。

携行していた水量が、ちょっと心許なくなっていたので、
不動ノ峰から下ったところにある東屋に水場を示す道標に従って、
南の急斜面に下りてみることにした。

水場はほとんど崩壊した崖を流れている沢で、
飲めるのかどうか怪しかったが、背に腹は代えられぬとペットボトルに水を汲み、
しばらく置いた後、うわかさを別のペットボトルに移し替えて、それを持っていくことにした。
ま、水は澄んでいて不純物もほとんどないので、そこまで慎重にすることも無いだろうが、
とりあえず念のためということで。
そして、冷たい水を頭からかぶったり、タオルを絞ったりして、
多少生き返った心地がしたが、水場から東屋への登り返しでひと汗かくはめになるので、
あまり意味がなかったかも。

気を取り直して、丹沢山への最後の急登に挑む。
中途半端な上、崩れかけて障害物と成り下がっている階段を黙々と登り、
ようやく本日2度目の丹沢山山頂に立つと、前回よりかなり人が増えていた。
とりあえずここで今日の登りはすべて終わり。後はすべて下りと思うとかなり気が楽になるが、
疲労の極地の状態でさらに2時間以上の下りとなると、あまり気休めにはならない。

しばらく歩きたくな〜い状態で、にぎやかな丹沢山でボーっとしていたが、
今日中に下りなきゃいけないのは日帰り派の宿命。<大袈裟な(^^ゞ
気を取り直して、長くて急な天王寺尾根に向けて出発した。

当初は余裕があれば堂平へ廻ろうかなんて甘いことを考えていたが、
そんな余裕は全くなし。当然のごとく来た道を忠実に下っていく。
時間は14時を過ぎていたので、当然登ってくる人はなく、誰と会うこともない。
暗い林の中で唯一人で歩くのは寂しい気もするが、静かな林の中で黙々と歩いていると、
自然の中にとけ込んでいくような錯覚が心地よく、この瞬間こそが単独行の醍醐味でもある。

例によって、膝と足の裏が痛くなりながらも急坂を下りていき、
堂平への分岐やキュウハ沢への分岐を過ぎると、ようやく尾根の先端に到着。
ここからは暗い植林の中を谷へ向かってつづら折りに下って行き、
ようやく本谷橋が見えたときは、正直ホッとした。

しかし、ここからは嫌いな舗装林道の下り。
しかも比較的急なので、足への負担が大きく、一歩一歩がかなり辛い。
耐えられず途中でへたり込んだりしながらも、なんとか歩き続け、
周囲に釣り人を見かけるようになると、やがて堂平への分岐を経て通行止めのゲートに辿り着いた。

さすがに駐車車両は減っていたが、それでも多くの車が停まっており、
泊まりの人もいるのだろうが、それにしても多くの人が遅くまで山に入っているものだと、
感心しながら歩いていると、帰り支度をしている男性が2匹の蛭に食いつかれたと大騒ぎしている。
それを聞いて、なんとなく自分の足もむず痒い気がしてきたので、
ちょっと急ぎ足で車まで歩き慌てて調べたが、幸いにも被害はなかったようだ。


関東に来てから、丹沢のエアリアマップを開くたびに、
なんとか日帰りで蛭ヶ岳まで行けないかと、参考タイムの足し算を繰り返していたのだが、
ようやくその目標が達成できた。
私の実力からはかなりオーバー気味の山行となってしまったが、ま、無理は承知の上。
大きな達成感を味わうことができた上、当たり年のシロヤシオまで堪能でき、
非常に満足のいく山行となった。


【コースタイム】
塩水橋(車止めゲート) 7:20…本谷橋 7:40…堂平分岐 9:30…丹沢山 10:05-10:25…
不動ノ峰 11:05…鬼ヶ岩 11:30…蛭ヶ岳 11:50-12:25…不動ノ峰付近の水場 13:15-13:30…
丹沢山 13:50-14:10…堂平分岐 14:25…本谷橋 15:55…塩水橋(車止めゲート) 16:20
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