第105皿 「でいいや」はやめてくれ。麻布十番『あべちゃん』



そのうち羽根が生えてくる、の焼鳥シリーズでありますが、前からすごーく気になっているセリフがあって、それをこの店で聞いてしまったので、そっちをタイトルに書いてしまいます。それは「・・でいいや」ってヤツ。とんかつ屋に行って「かつ定でいいや」。中華に行って「フカひれラーメンでいいや」・・。なんで、そういう言い方するの?それを食べたいなら「・・がいいや」でしょ。語弊を恐れずに言えばですね、仕事で疲れて帰ってきたオカミさんに作っていただくゴハンについて「お茶漬でいいや」なら話の筋は通る(オカミさんの反応は別にして)。でも、それが売物の店に行って、「・・でいいや」っていうと、店の人はがっかりしちゃうと思うんだよね。ガマンしてウチの名物食べてくれるんだったら、来てくれなくていいですよ、って言いたくなるでしょ。でもほんとに問題なのは、そういうガマンの気分なんか、客のほうには微塵もなくて、単に癖で言ってるだけなんだよね。いつもいい加減な選択しかしてないうちに癖になっちゃったんだ。さて、このあべちゃん、麻布十番の豪気な焼鳥としてツトに有名、炭火のそばに置かれたタレの壷が長年のタレエキス付着で凄い形に造形されているのを見ると、連れて行った外人なんか喜んじゃうんだけど・・・。いたのだよ、ここで、「焼鳥とつくねでいいや」って言ったヤツが。思わず「表へ出ろ」って言いたくなっちゃったんだけど、店のヒトは「ハイハイ」ってな感じでてきぱきこなすので、余人がどうこういうことではない。でもこのセリフって、相手に気を遣っているつもりでも全然そうじゃないことを知るべきなんだと思う。自分の選択に責任を持たないか自信がないか、というニオイがするのですよ。さて怒りはコレくらいにして、相変わらず、おいしかったです。鴨つくねと、皮とネギ間と、煮込み。ここの煮込みは、やや甘めで味としては大阪の土手焼きに近いですが、4点セットで大満足。きょうはここ一軒でいいや(これは許せる)。

B
煮込みですー。 こちら鴨つくね。
手前が皮(塩)、奥がネギ間(塩)

● 行き方:麻布十番商店街を一の橋方向から入って100メートル左側
● 営業時間:平日15:00〜22:00(LO)土・祝14:30〜20:00(LO)日休
● 電話03−3452−2766
● 予算:煮込みは500円。焼鳥は一本150円〜。つくねは2本420円。
● 独断の星:週に3回行ったことがかつてあります。★★
  近くにキレイ好きなヒトのために別館もオープン。













第104皿 食べるウォームビズ×2。芝浦『大元麺店』



二、三日暖かい日があったと思ったら、また寒波が戻ってきましたねえ。去年夏の「クールビズ」に比べてちょっと盛り上がりに欠ける感もある、「ウォームビズ」ですが(もともとやってたことだから?)こちらも、息を吹き返すかも。さて、下関だったか、山口だったかの市役所の食堂で「食べるウォームビズ」と題するけんちん汁ランチを出しているって話を新聞で読みました。あっちのほうなら、昼から「ふく雑炊」とか食べればいいのに・・。さて、芝浦河岸の、「食べるウォームビズ」といえば、大元麺店の「排骨麺」。パーコー食いに行こうぜ、というと、100%ここです。ほかの地区から打ち合わせに来た方にも、なかなかの人気。普段は、伝統的しょうゆ味のスープに、太麺と、香りのついた衣で挙げたパーコーがドカン、ワカメとインゲンがドバッと乗った普通バージョン(840円)を食するのですが、今日は「特製味噌排骨拉麺」(通称ミソパー、940円)にしてみました。何しろ、厳寒の札幌でミソラーメンが始まる元となったのが味噌汁ですからね、あったかさも2倍でしょう。ちょっとだけ、味がケンカしちゃうか、という心配があったのですが、それは杞憂で、GABANの缶からガンガン入れた黒胡椒ともバッチリ合って、かなりイケました。狙い通りポカポカと暖まったカラダでしたが、店から出たとたん、さーっと襲ってきた寒風が冷ましてしまい、会社に戻ったときには、元のクールビズ・マン(!)にもどっていました。やっぱり、ウォームビズは、社内食堂じゃなきゃダメ、と悟った次第。

B
黄色に黒が勇気の印(古!)なら、
黄色に赤は中華の印
スカパー!ならぬ、ミソパー!

●行き方:田町駅・芝浦口からラーメン街に見向きもせず、運河を渡って右へ。TCJと大きく書いたビルのある通りに突き当たる直前、左側。「中華大元」とお間違えなきよう。兄弟店ですが、あくまで、「麺店」。
●営業時間:フツーの昼と夜。土日祝休。
●電話:未確認です。
●予算:文中。他にワンタン麺、チャーシュー麺、ネギ拉麺、ギョーザなど。盛り合わせ麺(いわゆる全部のせ)で1,100円。
●独断の星:暖冬でないことを喜んでいるでしょうなあ。★












第103皿 “フェンスの向こうのアメリカ”はいま・・。本牧『どん亭・横浜本牧店』



本牧へ会食に行ってきました。メンバーの志向で、低価格路線。バスをマイカル本牧の前で降り、周囲のさびれ方に愕然としながら、本牧山を上ります。で、眼下には港の起重機群、遠くには房総半島までうっすら見える眺望を楽しんだ後は、初詣でにぎわう本牧神社の脇を降りてくると、そこには、急に美しい家並が。ここ、昔は米軍のベース、柳ジョージの歌に出てくる『フェンスの向こうのアメリカ』だったところなのですね。それがたしか1982年、もとの地主に返還されたもの。ああよかったと、家を建てて住む人あり、ほかに家があって返還地を売っちゃった人あり、らしいのですが、大きな敷地をもつ、ちょっとバブリーな香りの残る豪邸群と、住宅展示場のようなソコソコの家とが混在しています。また、「ハロー坂」なんて名前も残っている歴史的背景がそうさせるのが、外国人の居住者も多いようで、東京の在日大使館や、横浜の領事館に勤める人が結構住んでいるのだそうな。確かに、ブループレートのクルマが目立ちます。その家並みを抜けると、おお、そこに文字通り、どん、とあるのが、『どん亭』。この店、最近『フォルクス』をダイエーから買収したステーキ店チェーンの『どん』がやっているしゃぶしゃぶの業態です。都内にはあまりなく埼玉・千葉に集中出店、と思っていたら、あれ、店名リストには、石神井台・江古田・三鷹、となんか、ウチラのほう多いじゃん?さて、しゃぶしゃぶで、低価格路線、というのは意外かもしれませんが、これがまったくそう。ランチタイムは牛のしゃぶしゃぶセットが980円、という安さで、まあこの値段なら、というレベルはしっかり超えていると思います。そして、量が多い!だから、本来はファミリーレストランだけれど、おっさんが結構昼から宴会やってる。それも、地の利から?日本人だけじゃなくて、英語やパキ語?が飛び交っている。そのあたり、店もちゃんと心得ていて、箸袋のウラにはHow to Use Chopsticks なんて図入りで書いてありますが、どうしてどうしてみんな上手に使っていますよ。日本滞在が長いのでしょう。隣のテーブルのいかにもアメリカ野郎田舎のジョージ・ルーカスみたいなおっちゃんは、何枚も肉をお代わりしていましたが、なるほど、食べ放題コースでも2680円なのね。さらに飲み放題にしても3720円だー。ちなみに肉は豪州産だそうで、和牛になる「特選コース」だと数百円アップします。それでも、ねえ。フェンスは消えてもやっぱり、ここアメリカかも。

B
これまた、どん、と、肉。一皿が一人前。
野菜、マロニー、ほうとうのような平太のうどん
がセットに。ごはんはお代わり自由だと。


● 行き方:本牧通り沿い ベイサイド本牧I。ちょうど三渓園の下あたり
● 営業時間:11:00〜24:00(ランチは15:00まで)無休
● 電話:045−629−6351
● 予算:文中 ビール520円
● 独断の星=今度は特選をトライ。★













第102皿 新春似顔絵天、ときました。吉祥寺『天ぷら・万平』



あけましておめでとうございます。昨年中、とくに100皿達成のときは、温かい叱咤激励をありがとうございました。いいじゃん、もっとやんなよ、という本当に温かいものから、止めたら殺す、まで、ありがたさに涙が出る思いで年末年始を過ごしておりました。
さて、年が明けて同級生の多くが50歳を迎える年。孔子の言葉だと「知命」、つまり天命を知る年だそうで、そんなこと言われても、40歳の「不惑」ですら未達成、いまだに惑ってばかりなのに・・。さて年齢のことを書いたのは、ふと立ち寄ったこの店で、なんとも懐かしい名前を見てしまったからです。ご主人の調理師・栄養士の2枚の免状が壁に飾ってあるのですが、それを授与している都知事名が「美濃部亮吉」なのですね。たしか昭和40年代のもの。いまの石原知事が見たら、そんなもの無効だ!とか言いかねません。われわれが吉祥寺を根城に遊んでいた頃から、この店の歴史は始まっているのでしょう。メニューはとてもリーズナブル。この値段でも、眼の前で揚げたての天ぷらを出してくれるのが、実にうれしい。頼んだ「天ぷら定食」は、海老、キス、春菊、大振りなさつまいもにやわらかいイカなど7点もの天ぷらがついて、600円。「天丼」ならなんと550円。ほかのお客が途絶えた間をいいことに、なぜ久しぶりに吉祥寺にきたか、という話で、盛り上がってしまいました。もっと店の歴史とか聞くべきだったんだけど。気がつくと、ご主人なにやら細工していたものを、当方の目の前にかざす。ん、なんだ?話の間ずっと離れたところで、後ろを向いて何かしていた奥様が、すぐに「似顔ですよ。天ぷらで作ったの」と言ったのには驚きました。夫婦の呼吸ってこういうものかねえ。そして40年もやってるとこういう芸も身につく、と。いい記念になりました。結局、その訪れた用件の結果の報告に近々行かねばならなくなりました。そのときは、大海老の入った1200円の超豪華高級定食、食べますからね。

B
天ぷら定食 ビール飲んだので、
ご飯は少なめにしてもらっています。
食べるのが惜しい!
ちゃんとメガネ、ヒゲまであるのだよ

● 行き方:JR吉祥寺駅北口を出て西荻窪方向に線路沿いに100メートルほど戻った右側(つまり高架下)黄色い看板が目印。
● 営業時間11:30〜15;30 17:00〜21:00 水曜休
● 電話:すみません、聞き忘れました
● 予算:文中。蜆の味噌汁と、ご飯が、天ぷらに負けず美味でした。おしんこは別注文で100円、きんぴら150円
● 独断の星=こういう店がいちばんミズラン向きかも。★★











第101皿 お馬さんとの忘年会。横浜野毛『ささ川』



五木寛之の小説で『冬のひまわり』というのがあって、一年に一度、鈴鹿の8耐レースの場でだけ会う男女の話。灼熱地獄の8耐なのに、なぜ『冬の』なのか、という興味は本編にお譲りするとして、ミズラン主人にもあるのだ、年一回だけ訪れるところが。それは、いまはウインズなんて洒落た名前になってるけど、いわゆる「場外」。そう馬券売場です。競馬なんかやるように見えない、とか言われますが、結構一時ハマったことがあって。ま、今は、宝くじ買わないかわりに年一の『有馬記念』勝負だけは自らに許してる、いや、むしろ、自分に課している、といったところでしょうか。さて、今年もやってきました、その日が。世の中は、無敗での4冠を狙うディープインパクトの本命視一色ですが、一時鉄板レースといわれた『有馬』も実は荒れるほうが多い。で、今回は「ディープは2着」と決めて、一着を予想しての馬単3点買い、という「逆流し」に出てみたのです。さて、馬券買いの楽しみといったら、地元飲み屋でのテレビ観戦ですな。今回もポン友(といっても最近有馬でしか会わない)と示し合わせて、いつもの野毛小路、『ささ川』に集合。馬なのにササガワさんとはこれ如何になどと駄弁を弄しながら、イッパイやりつつスタートを待つ。アテはといえば、通常はふぐが名物のこの店ですが、せっかくのオウマさんとのデートですから、やっぱり馬刺でしょう。やわらかさが身上、これは牝馬かしらん。ニンニクの香りが、内なる闘争心を掻き立て・・なんていって、今年の冒険的な買い方を正当化しようとしています。あれれ、隣のテーブルでやっぱり馬刺を注文した人が、仲間に「馬刺食べると外すんだぞ」などと言われている。そんなジンクスあったの?早く言ってくれー。で、結果は・・・。メールで報告した某氏に言われました。野毛はヤケに通ずると。あーあ。今年も暮れるぜ。

B
ふくらはぎ?いや、ふぐ・うなぎです 無造作にドン、の馬刺。

● 行き方:JR京浜東北・根岸線 横浜市営地下鉄 桜木町駅下車。野毛小路の中ほど。(駅から行った事ないんだよな。馬券売り場からしか)
● 営業時間:14:00〜23:00(平日・祝)11:30〜23:00(土・日) 
       土日のほうが早くからっていうのがそれっぽいでしょ。
● 電話:045−242−8320
● 予算:千円札2枚くらいで、じゅうぶん観戦できます。馬刺は、650円。
● 独断の星:来年ももちろん。★










第100皿 甘美なる熱帯。神楽坂『アジアンパーム』



とてもアジアンな入口。
中には彫像系もたくさん
先日某国大使館のクリスマスレセプションというのに行ったのですが、そこでかの国の大使館員(イタリア系)が言ったひと言が印象に残りました。曰く、日本ほど世界の料理が、それも高いレベルで食べられる国はない。イタリア料理なんかは本国よりおいしいくらいだ。でも中華だけはやっぱり中国のほうがいいね、と。なるほど、そんな気はします。そうした世界の料理・百花繚乱の中で、ここ20年くらいで急速に充実してきたのはアジアンだと思う。やはり、人の行き来の多さがそうさせるのでしょうね。さて、今回の皿『アジアン・パーム』は、はるか前に登場していても全く不思議ではなかったお店。スパイシーって、そう、ただホットなのじゃなく読んで字の如く「香りと辛さ」なんだよな、と気づかせてくれる料理を数限りなく揃えています。同窓生にファンも多い。今回は実は、このミズラン・ジャポンの忘年会、ということで、特別注文、タイ風鍋を用意してもらいました。コクのあるスープはそれだけで飲んでもおいしいのだけれど、そこに野菜や白身魚、茸の類をドーンと入れてグツグツ・・。アチチ、と言いながら香菜をたっぷり入れたつけ汁に浸すと、動物性のダシと植物性の香りが見事に調和して、あー、幸せ、って言いたくなってしまうくらいの美味。師走の寒風の中を歩いてきたことをすっかり忘れて、体はとろけそうにポカポカと温まり、ベトナム焼酎の酔いも手伝って、熱帯夜のような甘美な悦びに浸ってしまいました。さて、温かといえば、この『ミズラン・ジャポン』も、皆さんの温かい励ましに支えられて、ついに100皿。まだまだ書きたい店はあったのですが、まずは、当初目標とした皿の数到達。世界一ウマイものが揃う国に生まれた幸せを皆さんと共有して、ひと区切りにしたいと思います。ありがとうございました。

B
パパイヤのサラダとトリ皮から揚げが
アピタイザー
本日のメインイベント、鍋だ!
締めにマトンカレー。ナンの大きさに注目。

● 行き方:都営大江戸線・牛込神楽坂駅A1出口を出て、左へ50mほど。
● 営業時間:ランチ 11:30〜15:00(LO14:30)
          ディナー 17:30〜1:00(LO24:30) 無休
● 電話:03−5225−2070
● 予算:この日は飲んで食って、大満足で、一人5000円強。
● 独断の星:また行くために、何か会を企画しよう。★★








第99皿 もうそこにはいない。でも生きている。赤坂『グリニッチ』



BARに関する名言、といえば映画『リバティ・バランスを撃った男』の「もう勇気は品切れだ。バーで仕入れるとしよう」にトドメをさすのだろうなあ。さて、20代のころ通っていたBARが、転勤から帰ってきたら閉店してしまっていた。そのときはとても残念だったが、いつの間にか忘れていた。ところが、先日忘年会帰りにふと前を通ってみたら、ガラス戸の向こうからぼんやりと明かりが見える。「お!再開したんだ」と、うれしくなり、なつかしさに、ドアを押してみると・・。カウンターの向こうには、真っ白なシャツに黒い蝶タイをしたマスター。古い木のカウンターに、スッと出される、チーズを塗った薄いトースト。タイムマシンで25年前に戻ったがごとく、マスターが年数相応に老けた以外は、昔のまま。・・と言いたいのですが、決定的な違いがありました。マスターのそばでニコニコ笑っていた、いつも着物のちょっとふくよかなママがいない。もしや、と思い聞くと「一昨年亡くなりました」。それで、しばらく店も閉めていたらしいのだが、塞ぎこんでいてもしょうがない、お客さんの声もあるので、ということで、体が動くうちは店を開くことにしたのだそうです。たしかに大きなものが失われた気がしますが、何よりも再開する決断に敬意を表したい。そこに、店の「命」はしっかりと生きていた。店名のグリニッチだって、天文台はもう廃止されて10年近くになるけど、経度0度の子午線、世界標準時のありかという意味は永遠に残る。そんなことを考えながら、バーボンの一番好きな飲み方、「ロックグラスでちょいソーダ」(最近ハーフロックって言うんだってね)のグラスを傾けているうちに、いつの間にか結構混んできていた。「じゃ、また」と言って外に出ると、師走の冷気がさっきよりさらに濃密になっていたけれど、そのとき抱えていた困難な問題に対して、ま、やるだけやってみるか、と考えられるだけの小さな勇気の灯が点っていました。

B
端正な外観 いかにも、BAR。
大阪のデュワーズハウスというBARでは、
逆にマスターが亡くなったあと、ママが酒棚
の写真を撮ったところ、そこにマスターの霊
が写っていた。

●行き方:赤坂一ツ木通りを246からTBS方向に向かい、蕎麦屋『松月庵』の角を左折した路地の左側
●営業時間:そう遅くまではやっていないらしいけど。
●電話:03−3586−9226
●予算:この日は、ドライマティニー1杯と、ジャックダニエル2杯で、3,000円でした。
●独断の星:初めに連れて行ってくれた先輩(いま高松勤務)に、「ママ亡くなったんだって」と言ったら50過ぎのいい男が、Tの字で涙ビャーの顔文字メールをよこしやがった。一人だから、★。







第98皿 僕、極小デス。芝浦『食堂・松月』



港区にも、こんな店あるんだぞー
前皿に引き続き、(会社の)地元ネタですみません。74皿で、いずれ書く、と言ったままにしていた「ハ(!)ンバーグ」の店です。一膳飯屋というか定食屋というか、短冊に書いて貼られた中からいろいろ選んで注文するタイプ。ここも昼メシのレギュラーのひとつで、『♪立て万国の労働者〜』なんて口ずさみながら行くワケだ。歌といえば、昔NHKの「みんなのうた」で♪コンピューターおばあちゃん〜という歌がありましたが、この店のオバちゃんは頭に8GBくらいのハードディスクが入っていると言われていて、例えば4人で行ったとすると「鳥カラ、ポテサラ、小」「さば味噌、ヒジキ、極小」「ハンバーグ、マカロニサラダ、中」「生姜焼、キャベツ多目で、大」とかテンデに言われても、それを、ダーッとキッチンに発注し、基本1分以内に、自らお盆にアソートして持ってきてくれる、というビジネスモデル。ちなみに、上記各オーダーの最後についているのは、ご飯のサイズ。壁の短冊には、ご飯は大・中・小しか書いてないのですが、実はこれは世間の標準からいうとかなり多い。普通、のつもりで、「中」というと、丼に大盛り、血気盛んな若い人が「大」なんて言おうものなら「これでどうだ!」とでも言いたげな、大き目の丼の上に富士山のごとく聳え立つごはんがやってくる。残したら「もったいないオバケ」が出ますからね、意地でも平らげざるを得ない。「フーッ」とか言っている人いっぱいいます。で、常連だけが知っているウラ技というのがあって、それが「極小」。小と同じ値段250円(味噌汁・小鉢つき)で、ご飯を少なめにする分、さらに小鉢をひとつつけてくれる、というもの。まあ、僕らの世代になると、ほとんど極小で十分。それでも、普通のお茶碗に大盛りでありますからね。「極小!」っていうと、「なんだそれ?」って、ほかのお客さんからの視線を浴びたりしますけど。もうひとつウラ技は、味噌汁お替り無料、かな。これは、もう一杯飲みたくて、「お替り、できますか。テキトーに値段つけてくれていいけど」と言ったらくだんのオバちゃんに「いーえ、どーぞどーぞ」みたいにドーンと持ってきて、タダなんだ!と発見したもの。その後、行くたびに「お味噌汁、お替りは?」といわれるのには苦笑しますが・・。さてこんな『松月』、タクシーの運転手さんのファンも高いのですが、ちょっと悲しいことに、最近オバちゃんのハードディスクが疲労してきたのか、間違いが出てきました。ときどき、組み合わせが違ってたり、3つ目の注文を忘れちゃったり、「小」が「中」になってたり。でも、ハードディスクが回る限り、頑張りつづけてほしい、愛すべき店なのです。

B
これは「王道」さば味噌煮にひじき、極小。
750円
これは豚の生姜焼、極小。
奥のヒジキ小鉢がサービス分。計800円。

● 行き方:田町駅いつもの芝浦口に降りて、東工大付属高校の角を右折、グランパークタワーの前を過ぎて、太洋日産本社前。春は見事な桜並木です。
● 電話:03−3455−0764
● 営業時間:朝6:30(!)〜15:00頃。夜やってないのは難点だけど、どーしても、という向きには昼からビールも飲めるようで。
● 予算:名物ハンバーグは、400円。鳥カラ500円。サイドメニューは、ひじき、奴、きんぴらなどが150円〜300円。
● 独断の星=いつか、全メニュー制覇したい。★







第97皿 春夏冬、二升五合。芝浦『ふじ鮨』



あ、それなら知ってるよ、と言われてしまうかもしれませんが、このタイトルの文字、店で見たことありませんか。これ、「アキナイマスマスハンジョウ」と読むのね。どうしてそう読むかは、まあ、考えてください。さて、今回の皿は、ほんとに春夏秋冬いつ行っても混んでる、会社のそばのすし屋。夜はほとんど行ったことないんだけどね。というのは、昼があまりにリーズナブルだから、夜は高くしてモトを取ってるんじゃないか?と疑っている、というのはウソで、それでも、昼に比べるとさすがにコストパフォーマンスは悪いだろうから、それが悔しいのだよ。この店に春夏秋、二升五合、と書いてあるわけではないのだが、なぜかここに来ると思い出してしまうのです。昼のメニューは、普通のにぎり、ちらしのほかに、「さけいくら丼」、「ヅケ山かけ丼」、「ネギトロ丼」、それからそれぞれの丼がちょっと小ぶりになっている替わりに握りがちょっとつく「セット」。これが人気なのだ。小ぶりといっても、「さけいくら丼」のイクラなんて、札幌出張を終えて帰ってきたときですら感激した盛りの良さだったもんなー。きょうは、たまには違うものを、と思い、ネギトロ丼のセットを頼んでみました。いわゆる大将という感じじゃなくて、小劇場系の劇団にいるような感じのアンちゃんが二人で整えてくれるセットは、小鉢と味噌汁がついてどれも1050円。また行きたくなってきてしまった。唯一の問題点は、昼時は当社率90%ってことですね。

B
トロと刻みネギと海苔が全面を覆う
「ネギトロ丼セット」
イクラが全面を覆う
「さけいくら丼セット」

●行き方:田町駅芝浦側、第74皿の「シャンクレール」のるビルの地下。(「ふじビル」というくらいだからこっちが大家なんだな、失礼)
●電話:03−5232−1600
●営業時間:11:30〜14:00(ランチ)、17:00〜23:00 日・祭休
●予算:文中。にぎり1.5人前は1570円。
●独断の星=意外とこういう店が貴重なんだよなー。★










第96皿 これを称して居酒屋という。自由が丘『金田』



ここだけ見るとなんか高級風?
いつの頃からか居酒屋というと、笑笑とか白木屋とか、大チェーンで安いところをさすことが多くなってしまったような気がするのですが、ほんとうの居酒屋はオヤジが会社帰りに連れ立って上司の悪口やらヨメさんの愚痴やらでオダを上げるような、小さな店のはず。
・・・と思っていたら、これがとんでもない勘違い。居酒屋の語源は、「居る」酒屋。つまり、造り酒屋が「一緒に飲む相手がいない輩のために、店先で簡単なつまみとともに酒を飲ませる一人客相手の店」なんだそうな。だから池波正太郎や藤沢周平の世界に出てくるような、酒樽に座って飲ませるようなところがほんとの居酒屋なんだね。かすりの着物にタスキをかけた、おこうなんてネーサンが「おひとつどうぞ」なんて最初だけは注いでくれて、小鉢をひとつ二つ・・帰りにはダラ銭をばらばらっと置き、つりはいらねえよ、って感じ。そんな本来の定義にも合う「名門」の居酒屋が、ここ『金田』。2人で来ているお客もいますが、圧倒的に多いのは、ひとりの客。文庫本を読みながら、静かに飲んでいるサラリーマンもいます。
でも江戸時代の居酒屋が、ちょっと淋しい場所だったのにくらべ、ここがまったく暗くないのは「客同士が和やかに話している(でもむやみに話しかけたりはしない)」「オヤジさんの人懐こい笑顔」そして何より「肴の豊富さと旨さ」でしょうね。今回頼んだ「牡蠣の山椒煮」「水菜のおひたし」「白子焼き」といったメニューが400円〜700円くらい。あれこれ頼まなくても満足できるせいか、何回行っても3000円台を超えたことがありません。ちょっと寄りたくなってという風情の客で満員のこの店、特長は早始まりの早上がり。9時半ラストオーダー、10時閉店は厳守。昔は店ってそうだったのかも。そうそう、さすがに江戸時代からとは言わないけれど、来年はなんと創業70周年なんだそうですよ。

B
牡蠣の山椒煮。イタイところをついてきます。 白子焼。男子の本懐じゃ。

● 行き方:東急東横線・大井町線自由が丘駅正面(ロータリー)口を出て右へ、ガードをくぐり最初の角をを左に折れて左側。駅から1分。
● 営業時間:17:00〜22:00 土曜は21:30まで。日祝休
早く行かないと、メニューがどんどん品切れに・・。
● 電話:03−3717−7352
● 予算:隣のひとのがうらやましかった穴子白焼きが、ドーンで950円。酒は菊正420円。エビス小瓶530円。
● 独断の星=料理は文句なし。酒の種類がもう少しあれば3つ行きたいのだが、の★★。









第95皿 十年の後。山梨・長坂『翁』


「十年の後」、というのは、懐かしい柴田翔の小説のタイトルです。たしか『されどわれが日々』か『贈る言葉』とカップリングされて文庫に入っていたと記憶します。大学を出て10年後のクラス会がハネて・・といったところから始まっていて、学生時代の男女や男同士の付き合いの追想とそれが10年たってどう変わったか、ということがモチーフになっていたと思う。なんとなくほかの有名になった小説の習作のような扱いをされている気もするのですが、当時、個人的にはこれが一番シンパシーを覚えたように思います。さて、今回、訪れた『翁』は、10年以上前に一度仕事で、対談の取材・撮影で行ったことのある店。対談の一方の方の希望だったのですが、中央高速を小淵沢近くまで乗っていくなら、よほどの名店に違いない、と思いつつ行った覚えがあります。いってみると、インターからも狭い道を登り、林の中に無愛想といってもいい、質素な佇まいで建っており、ふうんココがねえ、と、訝りつつ取材のあとお相伴に預かってみると、おおこれが、パチパチもの。とくに田舎そばのほうが、ああ、蕎麦ってこうあるべきだよなあ、と対談者の慧眼にナットクさせられるものでした。それから10余年。当時蕎麦を打っていた高橋邦弘氏は、蕎麦打ちブームの中で大有名人になり、NHKの教室なんかにも出ている。いまは後継者が打っているわけですが、ひさびさにその方面を通ることになったので、ぜひ寄ってみたいと思ったわけです。どう変わっているか?変わっていないか?変わっているとしたら、それは失望をもたらすものではないか、と恐れつつ、かすかに記憶のあるような細い道をたどると(実際は、前回はロケバスできてビールや酒飲んで、今回は自分の運転なので記憶があると思うのは根拠薄弱ですが)、見えてきました。林の中にやはり質素な建物。前回と違うのは、駐車場に東京や神奈川ナンバーのクルマがぎっしり並んでいること。2時ちょうどくらいの到着、昼間3時までの営業時間にはたっぷり余裕があるけれど、早足で玄関を入ると、案の定ズラッと客が並んでいました。

B
ひっそりと、でも中はにぎやかな佇まい。
今度は平日にいきたいなあ・・。
「田舎そば」にもありつけるだろうし。
薬味もタレも全部手作りなのがうれしい。
これは「ざるそば」。

さて結果は、満足50%、がっかり50%というところ。
そのココロはというと、二つしかないメニューの「ざるそば」と「田舎そば」のうち、「田舎そば」が、われわれの前のお客で、売り切れてしまった、というのがひとつ。同行者と2種類とってワケワケしよう、と楽しみにしていたのですが、閉店に1時間を残して売り切れ。見事に裏切られました。もうひとつのガッカリは、ファミリーレストランのように小さな子供を連れている客が多く、しかもその子たちがキャーキャー座敷を飛び回ってうるさいこと。別に蕎麦屋が粋で洒脱でなければ・・などというつもりはありませんが、ゆっくり蕎麦を味わいたいという気分はぶち壊しでした。店も注意できなんだよね、最近は。とはいえ、白いほうの「ざるそば」は、求めてきた価値があったことには間違いなく、同行者も「ずっと行きたがっていたわけがわかった」と肯いてくれました。十年の後、まずは○というところです。

● 行き方:中央高速長坂インターから10分。詳しい地図はネットで検索を。
(住所:山梨県北杜市長坂町中丸2205)
● 電話:0551−32−5405
● 営業時間:11:00〜15:00 月曜定休・火曜不定休(問い合わせを)
● 予算:メニューは 酒とツマミの焼き味噌などを除くと、「ざるそば」と蕎麦の実の多くの部分を一緒に製粉した「田舎そば」の2種のみ。どちらも840円。量はいわゆる「上品」ではない。
● 独断の星=味に限って言えば★★です。








第94皿 ヌーボーのみが新酒にあらず。諏訪『ヴァルトハウス』

ヴァルトハウス全景
シックな外観 森だからヴァルト(あ、でもドイツ語だな・・)

ついに先週木曜日から、ボジョレー・ヌーボーが解禁となり、ことしは数十年に一度の出来のよさという前評判も手伝って、あちこちで盛り上がっていましたねー。出来がいいなら2005年がヴィンテージとして評価されるまで置いておいたほうがもっといいのに、ヌーボーといえば昔はワイン工場で働くヒトのための「まかない」の類に属するもので商品価値はなかったはずなのに、などと生半可なウンチクをつぶやいてみたところで、この勢いには抗えない。何しろ、さらに聞いたところでは、ボジョレー産ワインの3分の2が「ヌーボー」の時期に消費されてしまう、しかもその最大のマーケットが日付変更線の関係で世界で最初に解禁される日本、となればボジョレー = ボジョレーヌーボー、そして節分の恵方巻一気食いと同類の日本の歳時記だあ。ならばガタガタいわず楽しもうっと、でもどうせならほとんど話題に上らない他の地域の新酒もいっしょに飲めたら・・などと思っていたら、格好のイベントを発見しました。信州諏訪は原村のペンション、『ヴァルトハウス』の11月19日(土)一夜限り限定10名の新酒飲み放題。ここ、『ヴァルトハウス』は、オーナーシェフの手になるイタリア料理のフルコースが名物の宿。しかも、ボジョレーだけでなく、この夜は料理に合わせてイタリアワインの新酒“ノヴェッロ”もたんまり飲めるとあれば行かないテはない。で、中央高速を下ること2時間、冷気の満ちる諏訪大社上社に一足早い初詣?を済ませてから、宿に入りました。ワインに関しては、ボジョレー・ヌーボーは当然、いつも好んでいるドスッと重いボルドー系よりは軽く、若く、青い感じもするのですが、やはり「出来のよさ」はここからも伺える感じ。2〜3年後が楽しみです。そして初体験ノヴェッロは、やはりイタリアらしい舌の奥で味わうスド味に若さが重なって、はじめは、どうかな?という感じだったのですが、メインの肉にはまさにピタリと合い、これは毎年飲んでみたいなあ、と思わせるものでした。


B
前菜盛り合わせ。ブロッコリーなどの濃厚な
味の野菜、レバーペースト、ムール貝の香草
焼でもうワインが2,3杯飲めちゃう。

B
パスタ。ほうれん草と松の実が、オリーブ
オイルによく合って・・。
メインディッシュの牛ほほ肉のワイン煮。
もう、こちらの頬もユルミっぱなし
デザートは信州りんごのタルト。りんごを
一切いただいて(これとて異例)あとは
同行者にお願い。


さて、料理。もともと野菜がおいしい原村なのですが、ちょうど冬を控えたこの時期は、野菜も養分を自分の中に貯め込むので味が濃くなるのだそうな。ほんとうに、野菜そのものの味がして、そして料理の中でもうまくそれが生かされている料理の腕に、思わず“ボーノ、ボーノ!”と叫んでしまいました。ということで、今回は文章で紹介するより、写真テンコ盛り。おいしそうだな、と思ったらクリスマスにでもいかがですか(まだ多少空きあるようです。ただしその時期はもう四駆かな)。笑顔の素敵なシェフの奥様、来年また行きますからね!

今度は夏に菜園そばのテラスで味わってみたい朝食

● 行き方:中央高速諏訪南インターから10分。
長野県諏訪郡原村原山17217−684
● 営業時間:チェックイン15:00〜 ディナーは18:30、手作り野菜が気持ちよく目を覚まさせてくれる朝食は8:00
※ 冬季2ヶ月(06年は1月10日から2月末)は週末のみの営業だそう
● 電話:0266−75−3435
  URL: http://www.wald-house.com/
● 予算:上記のイベントは一泊2食付、11,000円(税込)とオトク。通常大人一泊2食 9,660円
● 独断の星;次回は夏野菜をぜひ食べてみたい。★★
(ちなみに文中のオーナーシェフとは、西27期の同級生森英明君です)








第93皿 残念会は辛口で。大阪北新地『餃々(チャオチャオ)』


こちら、ピリ辛。
10皿くらい食べられそうね
こちら代表作、パリパリ餃子
実はこの番は土佐料理になるはずだったのですが、高知のテレビ局への出張が当日高知龍馬空港が暴風雨&濃霧で着陸できず、代替着陸地、大阪伊丹空港へ。なんてこった、ここから高知に向かっても、もう到底間に合わず、で泣く泣く高知行きを中止。折しもその日は、御堂筋の阪神優勝パレードの日、その映像を伊丹空港のモニターで見つつ、当然パレードに出かけているはずの友達を呼び出しました。日本シリーズ4連敗で、パレードも「出直しや!」あるいは「来年こそしっかりせい!」的辛口モードだったらしい。ということでイマイチ熱狂的盛り上がりに欠けるミナミをあえて避け、帰路にも出やすい梅田へ。ちょうどハラも減ったので、近年たこ焼きにかわり大阪の代表的「食」文化になりつつある、ひとくち餃子の店『餃々』に入りました。ひとくち餃子といえば「点天」が有名だったけど、最近東京でも食べられるようになっちゃったので、あえて避けてこちらへ。日曜の昼でガランとしたキタの新地の一角、ここだけ煌々と明かりがついていて、大声の関西弁が聞こえて来まんな。まずはオススメのピリ辛餃子を。小ぶりの中にギュッとつまった肉が文字通り泣かせる味(辛かった)で、当日の「ふたつの残念」会気分にははまっていたな。このあとに頼んだ代表作、パリパリ餃子と比べると、このピリ辛のほうが、印象に残りました。他に野菜たっぷり餃子、チャーシュー、キューリ浅漬けなど、つまみには事欠かず、周りから聞こえる岡田監督評や、来期オーダー構想(勝手にやるんだよね)を耳にしつつ旧交を温めていたら、いつの間にか3時間もたっていました。次は、冬に久々にてっちりでも食おう、と約し別れた大阪の夜でした。

● 行き方:JR大阪駅から梅田新道(しんみち)へ。ラーメン葉が並ぶ一角に。
● 営業時間:休日は昼から、平日は夕方から24:00過ぎまで、とのこと。
● 電話:06−6342−8800
● 予算:餃子一人前は280円〜
● 独断の星=安易なチェーン展開に溺れず、味を守っていってほしい。★








第92皿 明日も金太郎だ!足柄SA『御殿場御厨そば』


これを食べればエンゼルちゃんも
金太郎だ!
駅の立ち食いそばの鉄則。それは麺をやわらかめにゆでることと、ツユはすこしぬるめにすることだ、というのを聞いたことがあります。というのは、急いでいるヒトがさっさと食べられるように、ということ。そりゃそうだ、フーフー言いながらソバのコシがいいねえ、なんていっている余裕は、まあないわな。だったら、外のしっかりした蕎麦屋にいく。いましっかりした、と書きましたが、誤解なきよう。最近こうしたファストフード系?蕎麦屋でもおいしいところはけっこうあるんですよ。さて、駅ではないのですが、高速道路のサービスエリアで、前から気に入っていたのが、東名足柄SA(下り線)の、「足柄そば」でした。かつおだしのきいたツユに、そばは鉄則のやわらかめ、そして大きなかき揚げが乗っていて580円だったかな。東京をわざと食事をとらないで出て、ここまでガマンする、なんてことをしていたのですが、先日、たまたま逆方向で足柄SAに入ったのですね。すっかり同じ店に行けるつもりで。ところが、考えてみたら当たり前だけど、反対車線のSAはほとんど、分かれている。ここもそうでした。入ってみて、シマッタ、と思いましたが、下り線のいつもの混雑に比べて、ガラガラ。でも、頭の中はもうそばになってるんで、いまさら高速に戻れるか。で、食券自動販売機へ。ン?「御厨そば」ってなんだろう?ミクリヤさんっていう雅た苗字のヒトは何人か知っているけど。玉虫厨子の聖徳太子ゆかりのものか?などと思いつつ、販売機にお金をいれそのボタンを押すと、合成音声で、「注文は自動的に入りますので、食券はそのままお持ちください」みたいなことを言う。ふうん、カウンターに並ばなくてもいいのね。とはいえ、そんな進んだシステムの必要がはっきり言ってない空き方。誰もいないテーブルに座って自分の食券の番号がアナウンスされるまで、約10分。これ、ファストフード系としては、驚異的な遅さですよ。駅だったら怒って出てっちゃうよね。ところが、首を伸ばしてオープンキッチンを覗いてみると、そばをひとつひとつゆで、かき揚げもひとつだけ揚げてる、と来た。で、出てきたのが、写真の一品。これが、もう、なんというか、期待をはるかに上回るウマさでした。これから、遠回りして、わざと上り線に入るか?っていうくらい。ただし、上記のひとつずつ手間をかけた作り方の伝で、ツユはしっかり熱い。つまり、ファストフードじゃない、本格なんだ、と主張しているわけですね。考えてみたら、東名という環境を考えたら、あと1時間もすれば都内に帰れる足柄SA上り線で食事をしようという向きはあまりないよね。本格、と空き方。どちらが先かの鶏卵論かもしれませんが、一種の高速上の奇跡ではありました。ところで、「御厨そば」の語源は、御殿場近辺のことを昔御厨地方といったそうで(山に囲まれた盆地だからかな)、そこで作られてきた自然薯をつなぎに使ったそばをそういうのだそうな。ならば、これは意外なスタミナ源かも。やった、明日もホームラン王だ!じゃなくって金太郎だ!

● 行き方:文中
● 営業時間:未確認です、スミマセン。
● 電話:同上
● 予算:これまた、そばの値段不覚にも忘れました。でも下りの580円より安かったような記憶が・・。
● 独断の星:生き残ってほしい。★











第91皿 納豆づくしで納得だ。水戸『炉端焼・満月城』


新さんまときつね納豆
我こそはメヒカリじゃー!!
こちら納豆つつみ揚げ。
前々皿『金の猿』で、「勝負師」の店とか、「達人系」とか、いろいろレスをいただきましたので、今皿は完全オヤジ系。つくばエキスプレスの開通で、またちょっと地盤沈下?の水戸に所用で初めて泊まってみました。当然、晩飯は現地で、ということに相談相成り、いざ出撃。とはいえ、着いたのがもう夜の10時近くだから、ホテルのそばの駅前繁華街くらいしか行けません。駅前繁華街と言っても小さなもので、もっと小規模の街に行けば、却ってリトルフィリピンとかリトルコロンビアとかありそうだけど、何しろホテルの近くでコンビニ探そうにも苦労するのがここの街並み。さてその中で、何軒か入口越しに様子を伺った挙句、ここだ!と決めたのが、「炉端焼居酒屋・満月城」。たまたまその日が満月だったということもあるのですがね。入ると、ドーンと大きな炉端の向こうに、ヒトのよさそうなオヤジ。でも、「10時45分ラストオーダーなんですけど・・」と、おネエさんの商売っ気なさそうな、それでも多少は申し訳なさそうな声が響く。いやいや明日早いですからね、深酒は無用と、ムリヤリ自分たちに言い聞かせ、バーっと、目に付いたものを頼む。魚は新さんま(9月下旬でした)に、名物といわれたメヒカリのから揚げ。それに、お、さすがは水戸だ、納豆のメニューが充実。その中から、きつね納豆と納豆つつみ揚げをセレクト。もしかして「つつみ挙げ」ってアブラ揚で包んであるとしたら、それときつね納豆は、ニアリーイコールなではあるまいか、などとも思いつつともかくオーダー。そのほかには、ヤキトリ系を二つ三つ頼み、生で乾杯の後は、地酒の「一品」を差しつ差されつ。店内は当然演歌の有線、すっかり水戸の正しいオヤジになって、夜はそれなりに更ける。新さんまはよく脂がのっていて、期待通り。メヒカリってのは、やはり目が光ってんですかね、なんて言いながら大将にネタを見せてもらうと、目が頭から飛び出るくらいデカいんだ、これが。から揚げになってないと、ちょっとコワい。で、きつね納豆もつつみ揚げも、予想通りアブラ揚とのカップリングでした。でも味は、同じ大豆だから当たり前なのか、水戸ならではの納豆がいいのか二者の相性がとてもよく、ほっとするおいしさでした。40分1本勝負、ナットウなのに粘れない、でもまずはナットクの夜であったことだなあ!

● 行き方:JR水戸駅北口の壮大なペダストリアンデッキを降りたところ。狸が目印。
● 電話:029−221−2051
● 営業時間:17:00〜23:00 ラストーダー22:45は厳格です。
● 予算:文中の納豆関係400円均一、新さんまは440円ときわめてリーズナブル。
● 独断の星=そりゃ、白木屋とか行くよりは、はるかにいい。ほかの納豆料理も試してみたい。でも水戸にまた行くかなあ?★