第150皿 CODのYODなのだ。田町駅前『わへい』

キホンテキに忙しいということになっている現代人は、ほぼ全員略語というヤツのお世話になるわけです。まずはせっかくくっつけた熟語をまた略す「快特」=快速特急、レンタンバイリツ=連単倍率(ああ、不得手な世界)みたいなヤツもあるけど、「キムタクって呼ぶやつはこっちの側じゃない」という発言にも象徴されるように、親しみをこめているようで、ちょっとバカにしてるようなものもある。一方でそれを知ってるのがちょっとツウ、とか仲間ヨ、的臭いを発するのがあるね。最たるモノが、MOF担かね。

アルファベットで略するのは、日本には生まれようがない文化(MMK=モテテモテテコマル、なんてしょうーもないこと言うヤツもいるけど)。CODをご存知か。Cash On Delivery。そのシステムの店って、立ち飲みの増加と相まって増えているような気がします。伝票なんかどっか行っちまうし、飲み逃げを避けるには一番だわな。

さて、その元祖のような店、芝浦が港湾労働者の町だったときからあるんじゃないかな、と思う駅前の「わへい」。港までの間に同名の系列店が何店か、規模から言ってここが本店のような存在ですね。長いL時のカウンターだけのそこでは、厳然たるルールが。まず、小銭や千円札を数枚カゴに入れて、備えられた名刺大の紙片に焼鳥やその他の注文を書いて渡す。ちなみに、本数の数字をマルで囲むのが「塩」の印。そうすると、ハッピ着たベテランのオッちゃんや、けっこうイケメンの若いおニイさんが、計算してカゴからお金を持っていくわけです。出てくるのは極めて早いし、間違いがない。長年の間に確立された「名刺カード」システムのためですねえ。いわば、YOD=Yakitori On Demand。ここでは電子マネーなんて別世界の出来事だし、考えて見るとこういう店が増えると、「オアイソ!」なんてのは死語辞典に入るかも。
略語で言えば、そうそう、ここでよく頼むのが、ブタチン。これこれ、よけいな想像をするでないぞ。豚のお耳の部分を茹でて凍らせ、細くスライスしたもの。「豚の珍味」です、あくまで。辛い味噌漬けて食べる。

さて、CODは欧米にも気楽なBARなんかでよくあるシステムのせいか、ここも外人客が多いのも特徴ですね。たいていは日本語ペラペラで、グループだったり、一人だったり。「アツカン」とか「ナマチューミッツ!」なんて言って頼んでる。(飲み物は口頭注文でいいのだ)。その中の古株Lさんは米国航空会社の東京支店に勤めるジョディ・フォスターみたいなキャリアウーマンですが、いつも店のスタッフにコーラとかジュースとかお土産持ってきて、客の帰ったカウンターは布巾で拭いたり、日本人以上に日本人らしい。たまに隣り合うと、流暢な日本語とブロークンな英語半々で話が弾む。今日も、最新鋭新幹線車両N700系の話で盛り上がりました。
ってことで、TGIF=Thank God It’s Friday.よい週末を!マル。

手前、つくね。奥、ねぎま。数字をマルで囲ったわけです。カゴの中味を忘れて帰らないように・・・。


●行き方:JR田町駅芝浦口降りてすぐ左側。
●電話:不明
●営業時間;17時にはもう飲める。22時30分ごろごろラストオーダーかな。
●予算:写真のカゴの中身で、大徳利と焼鳥5本、煮込みまでいけます。
●独断の星=存在自体に意味がある。★









第149皿 食べる五重の搭。京都烏丸『本家尾張屋本店』

週末、関西に行く所用が突然生じました。いつもの十三に顔を出したいのもやまやまだったのだが、今回はぐっとこらえて阪急京都線をそのまま終点まで乗って、河原町まで。台風に翻弄された祇園祭も終わって落ち着きを取り戻した京都の町を歩き、かねてから噂に聞いていた、京の名水泉のひとつ「桃の井」に程近い蕎麦屋『本家尾張屋本店』に行ってみました。

京都で蕎麦といえば「にしんそば」があまりに有名ですが、ここの名物は、その名もめでたい「宝来そば」。新幹線で大阪方面から行くと、京都につく寸前に見える東寺の五重搭よろしく、五重に重ねられた漆器に盛られた蕎麦に、写真右側のいろいろな具とか薬味を一種ずつ乗せ、上からツユをかけて食べるのです。何があるかというと、まずカラリと揚がったあられ海老天。錦糸玉子と煮椎茸、白胡麻とわさび、大根おろしときざみネギ。海苔。どんな順でいくかは自由。実はいま書いたのはミズラン主人が食べた順なのですが、逆にライトから行くのもあったかもね。蕎麦自体はハッキリ言ってどうということはなかったけど、煮椎茸や、大根おろしに山椒が強めの七味を加えて食べると、なるほど京都だな、と思わせるものがありました。

ところで、五重塔はなぜ五重なのだろう。実はタイムリーな話題でいうと五重にすることで耐震性が上がっている、そのせいで東寺はじめ五重の塔は千年以上の時を経て残っている、という説もあるようですが、それは結果としてそうだったということではないのかな…。そんな気がしなくもない。むしろ五重塔は、人生を象徴しているのではないか、などとふと考えてしまったのは、実は今回関西に行った用が、蕎麦のメニューとは似ても似つかない不祝儀だったからだと思います。五回戦としたらたぶん第三ラウンドの終盤から第四ラウンドの初頭あたりにいる我々も、できれば一重一重を充実させて過ごしたいものです。まあ、それにしても、京都の夏の暑さの中、ビールのおいしかったこと。

豪勢でしょ。最後に桜湯にして飲む蕎麦湯は、なかなか。


●行き方:京都市営地下鉄烏丸御池駅から御所方面へ2分ほど。
●営業時間:11:00〜19:00(LO18:30)元日以外営業
●電話:075−231−3446
●予算:宝来そばは二番目に高いメニューで1890円(税込)。普通のメニューは千円以下。
●独断の星:次は、にしんそばも食してみたい。★










第148皿 カラダの中に夏が来る。金沢八景『鰻松』

こうしたページを長いこと書いていると時にはいいことがあるもので、「ご主人、鰻は好きかね?」と聞いてくださった方がいる。もちろん、大好き。その御仁が言うには、実家の近くに明治時代からある名店があるので行ってみませんか、と。そりゃもう、ぜひ、と答えてから早数ヶ月、ようやくチャンスがあり、梅雨の晴れ間の一日、出かけてきました。

京急金沢八景駅を降りると、駅前は、昔の海水浴場の駅のような雰囲気ですな。ラーメン屋やら、「氷」の幟の出た喫茶店やらが続く。そして国道を海側に越えると、一転して□□丸、という釣り宿が並ぶ中しばらく行くと、目的の「鰻松(うなまつ)」はありました。けっして大きくはない店ですが、かつては伊藤博文公なども訪れたと言うから由緒は正しかろう、期待感が盛り上がります。まずはキリンラガーをグラスに注ぎ、お品書を眺める。中心のうな重はギリギリ千円台からありますが、遠くまで来たのだから、とここは鰻がたっぷりの特上を張り込むことに。すると、白焼も食べてみたいですね、ということになり、さらに、ひつまぶしもなにやらお品書にある指南が気になる。えーい、ここは思い切って全部行っちゃえ、と、鰻づくしになりました。土用の丑まではまだ一ヶ月あるのだけれど、何だかカラ梅雨のせいで早めに来てしまっている夏バテ解消のためにここまで来たんだもの!

ゆっくりと時間をかけて焼いている感じが伝わる間、ラガーは燗酒に変わり、この金沢八景の地名の由来など、お聞きする。江戸時代より、このあたりは風光明媚な避暑地として知られ、特にここ洲崎町は「洲崎晴嵐」(嵐のあと晴れた清清しい風景)ということで、東海道五十三次と同じく歌川広重の画にも描かれていて、その額が店の壁にも架けられております。

まず運ばれてきたのは、白焼。酒のつまみにという配慮は当然でしょうね。身には、しっかりと脂が乗り、香ばしさと相まって、思わずどんどん箸が進んでしまいます。これでいくと、うな重はボリューム過多かもしれん、と思いきや、いざ次に運ばれてくると、タレがたっぷり掛かっていても、これはこれでパクパクいけちゃう。圧巻です。ちなみに鰻は大井川でとれたものだけを使っているとのこと。ひと箸ごとに、もうカラダの中から、エネルギーが燃え上がってきて、夏本番という感じです。

そして、ひつまぶし。これは、鰻の縦横に切り目を入れただけの、一見うな丼に近い感じで出てくるのですが、指南書に「一、まずそのまま食べる 二、次に薬味を入れ混ぜ合わせて食べる 三、最後にだしを注ぎお茶漬けのようにして食べる」とある。「二」が普通のお店で出てくる状態に近いですね。発見は「三」で、お茶でもただのお湯でもなく、だしでというところが味がうまく溶け合ってヨイなと感じました。

さて、ちょっと欲張りすぎた鰻づくし、さすがに、「もう一軒近くに名店があるんですが、はしごしますか?」と言う地元の御仁の言葉には、苦笑しつつ首を横に振るしかなかったけれど、おそらくこの地に鰻屋が軒をそろえるにはそれなりの理由もあるのでしょう、そちらはそちらでまたトライしてみたいと思わせるには十分な一日でありました。

海風に暖簾もはためく

まずは白焼。これだけでゴハンほしいかも。

たれ焼き鰻がぎっしり載ったうな重。満足度も特上クラス。

茶碗に移して自ら完成していくひつまぶし。これは「二」の状態。


●行き方:金沢八景駅から徒歩7分、とあるが、のんびり歩くと10分はかかるかな。
住所は金沢区洲崎町15−26 ビールが必需品でない方はカーナビで行くとよいかも。
●営業時間:11:00〜15:00 16:00〜20:00 水曜休み
●電話:045−701−9129
●予算: 特上うな重 2835円 うなぎ白焼 2100円 ひつまぶし 2520円(税込)安くはない。たびたびいけるなら、ライトなオーダーでもいいのだが。
●独断の星:しばらく、そんじょそこらの鰻は食べられない。★★










第146・147皿 「悲しき鉄道員」の嘘。渋谷『二葉』・長津田『しぶそば』

ね、ショッキング・ブルー、覚えてますよね。EmとAというコードネームを知らなくても、ここ2つとここ3つを押さえるの、と教えられればジャジャジャ、ジャッジャジャジャと弾くことができたけた『ヴィーナス』。でもいちばん耳に残っている曲は『悲しき鉄道員』だな。♪Never marry a railroad man〜 えーなんで鉄道員と結婚しちゃいけないの!生活が悲惨とか、給料が、とかそんなことが歌詞に出てくるのかと思いきや、実は鉄道員は仕事熱心で1日中、365日鉄道のことしか考えてないからアンタかまってもらえないよ、というむしろ鉄道労働者賛歌(たぶん)なのだが、だとしたらこのタイトル付けは、鉄道員のシャレじゃない人権侵害だよね。このタイトルがあるがゆえに恋が実らなくて文字通り「悲しき」になっちゃった鉄道員がいっぱいいるんじゃないか?余計なお世話か。

ところで、最近地元の東急線に急激に増えたのが女性の駅員。なぜか小柄なメガネかけた人が多いんだけど、超ラッシュの田園都市線で、乗客整理とかご苦労さんです(もちろん、女性車掌も激増している)。で、男女を問わず、東急の駅員ってけっこう混雑時をはずして駅ソバを食べに来るんです。同じ東急系の経営と言うこともあるのでしょうが、少なくともマズくて高かったら来ないだろうから、ひとつの指標にはなるかもしれない。
実は、最近ハマっているのが、渋谷駅の東横側からJR・銀座線に上がる階段の脇にあるそば処『二葉』。双葉、と書かないところが通っぽいのか?朝の開店と同時に40人ほど入れる店内がほぼ満席(半分は立ち席)。食券を買って、座って待っていると、店員が目ざとく注文者を見つけて持ってきてくれるという独特のシステムです。NO.1人気メニューは、『明日葉せいろ』(480円)。葉を切っても翌朝にはまた生えているというくらい生命力が強い明日葉(あしたば)をカラリと揚げた天ぷらを載せたもり蕎麦です。その生命力をいただこうと狙うヒトが多いのね。天ぷらも、蕎麦も、なかなかいけます。

もう一軒、これは我が家の駅を通り越して、JR横浜線との乗換駅長津田。以前は、上と同じ「二葉」の名で営業してたんだけど、小奇麗にリニューアルして(二葉も決して汚かないよ)、店員もみんな明るい女性(年齢層は幅広いが)。『しぶそば』です。もともと渋谷の蕎麦屋、なんだろうね。渋谷の別の場所にもあるみたいだから。ここは、とにかく天ぷらが大きくて柔らかいのが特色。早く起きた休日の朝なんか、無性に食べたくなってクルマで食べにいくことも。

ま、こんな蕎麦屋が勤務地内にあるなら、鉄道員は、全然悲しくないぞ。最近女性客も多いし、女性駅員も来るし、出会いだってあるかも。またまた、余計なお世話か。



<二葉>明日葉せいろ
これは実は「大盛り」で、600円。朝からビール飲んでるヒトもいる。

<しぶそば>天ぷらそば
どっぷりつからなくても天ぷらは柔らかい、の証明かな。
実はこのとき初めてツユ系のあったかい蕎麦を食べました。
悪くない。

<しぶそば>天ぷらそば(冷やし)
冷たいそばの場合は、天ぷらをふたつに切るという心遣いも。
ちなみに天ぷらは季節に応じて月替わりで、今月(6月)は、
「枝豆とひじき」

『渋谷・二葉』

● 行き方:文中。同じ渋谷駅構内にある「ぶや」の冷やしたぬきも捨てがたいが。
● 営業時間:7:00〜23:00 土・日・祝は21:00まで。

『長津田・しぶそば』
● 行き方:JRと東急乗り換えコンコースの最も東急より。
● 営業時間:7:00〜22:00 日・祝は20:00まで。渋谷より早く終わるって、ま、仕方ないか。
(共通で)
● 電話はあるけど、かけていくようなとこじゃないよね。
● 独断の星:どちらも仲良く★★で。










第145皿 See you again, SUZUKA.『JA御殿場そば処』

初夏の一日、富士の東麓にある、父の眠る墓所に行ってきました。風に乗って聞こえてくるのは、鳥の声より、ゴルフ場を挟んで隣接する富士スピードウェイからの爆音とスタート回りのアナウンス。いやあ、血が騒ぎますねえ。静かな霊園を求めてという向きには悪いけど、クルマ好きだったオヤジが、それが聞こえてくるのも気に入って申し込んだような墓所だから、本人も土の下でワクワクしているかもしれない。9月の30年ぶりF1開催に向けて、富士は否が応にも盛り上がろうというもの。で、霊園を出てサーキットに向かい、雰囲気だけチラリと味わったものの、今回の御殿場行きにはもうひとつ目的があり、それを果たさねばならぬ。かつて足柄SAの「御厨そば」がおいしかったという話をしましたが、今回はその「本家本元」を訪ねてようという目論見。

向かった先は、地元のJA、つまり農協直営の「そば処」。JAの婦人部が、地元で採れたそば粉で打って、茹でて、盛り付けまですべてやっているというので、これ以上の本家はないはず。売店を拡張したようなそっけない建物の中に「そば処」はありました。特徴は、足柄SAと同様、自然薯をそば粉に多量に混ぜて打っているそば。主人は天ざる大盛、連れは「淡雪そば」を所望し、待っていると、いかにも手打ちな不規則な太さのそばが、ピンクのエプロン下げた「婦人部」によって運ばれてきた。実際食べて見ると、足柄のよりさらに、モッチリ感が際立っている。それでいてくっきりとしたコシもある。これは只者ではないと感じました。さてさて、リニューアルなった富士スピードウェイでのレースは、上海以上に初体験に満ちているはず。なかなかポイントが取れない日本系チームに提言しようかな。この蕎麦でも食って「粘り」を身に着けてくれ、と。 とにかく楽しみな、富士でのF1、フゥウォーーーン!!という耳をつんざく爆音の「目の前ドップラー効果」で自身の運転観をすっかり変えてくれたSUZUKAには残念だけど、「アデュー!また会う日まで」。SUZUKAといえば、最寄り駅、白子駅前の焼肉屋で、業務用冷蔵庫にある肉をスタッフで食い尽くしてオバチャンを卒倒寸前にさせた記憶が懐かしいぜ・・・。


暖簾 「地産地消」つまり、そこで取れたものはそこで食うってことね。コメの休耕田で、転作物といえて使われているんだそうな。(横に立て看板に書いてあります。ピンボケてすみません。)

淡雪そば。蕎麦に練りこむだけじゃなく、さらに蕎麦に載せ、富士山の雪に見立てる。

キスやら、エビやらてんぷらがどっさり盛られて、これで980円(普通盛)は安い。
 

● 行き方:東名御殿場インターから5分。
● 営業時間:11:00〜16:00 無休。健全です。
● 電話:0550−81−5615
● 予算:どのメニューも千円以内。ボリュームはたっぷり。
● 独断の星:セナに食べさせたかった。★










第144皿 一粒の麦から生まれる味。赤坂『揖保の糸・庵』

最近再読した三浦綾子の小説の冒頭に、「一粒の麦地に落ちて死なずば・・」という一文が引かれていました。これ、麦は地に落ちて死ななければそのままの麦に過ぎないけれど、死ぬことで多くの果実を結ぶのだ、という「自己犠牲」の精神の象徴として有名な新約聖書の一節ですが、真面目に比喩の先へ思いを馳せなくても、そりゃそうだ、と納得できる。地に落ちて種子となりやがてたわわに穂を実らせるからこそ、我々が無くては一日も生きていけない(?)ビールだって、大好きな素麺だってできるのだものね。

さて、今回は以前からとても行きたかった、播州揖保の糸(いぼのいと)の製造元がやっているという店。なぜ行きたかったかというと、実はそのお膝元の兵庫県揖保郡揖保川町というのは、私の生まれ故郷で、子供のころからお昼はもちろん、おやつにも味噌汁代わりにも食べて育ったから。その文字通り日常茶飯事のただの素麺が、デパートのお中元の定番ブランド(それも三輪そうめんとならんでちょいと高級な)になるなんて夢にも思わなかった。どこかからか持ってきた小麦粉を、赤穂の塩と練り合わせ、揖保川の清流でさらしたというのが、「揖保の糸」の起源ということなのですよ。この店、昼は素麺+αが中心のメニューのようですが、夜はしっかりとした料理屋さんでした。もちろん、締めには、「黒帯」という最高級の素麺を絶妙の茹で加減&冷やし方で食べられるわけですが、いろいろある一品メニューの中で、ひときわ魅かれたのが「麦豚の串焼き」。ここにも出てきた、麦。聞けば雑穀の飼料ではなく麦だけを食べさせて育てた豚、とのこと。食してみると、ほんとうに臭みがなく、とても上品な味でした。七輪で焼く豚バラのギトっとしたのも捨て難いが、これはこれで大満足。ということは、麦を食べて育った舌の肥えたトンちゃんも、一匹の豚もし死なずば、ということである訳で、それを食べて、ウメーとか言っている人間も食物連鎖の一段階に過ぎぬということを思ったら、今宵もしっかりお役に立たなきゃね。

ところで、(その1)揖保の糸のCMに長年出ているスーちゃん(田中好子さん)、我々と同学年ですが。なんか、どんどんキレイになっていくような気がする。それも一粒の麦、のおかげ?(その2)昔大量に田舎から送られてきた揖保の糸は、夏ちょっと日数を置くと黴が生えていました。いまはどんなに置いておいても黴なんか出やしない。それはちょっと怖いかも。


突き出しの鴨スモーク

ココロして食えよ。さもないと、ぶーイングだぞ。

シンプルだからこそ、プロの茹で加減が光る?
 

●行き方:東京メトロ赤坂見附駅上 ベルビー赤坂7F
●営業時間:11:00〜23:00 年中無休とあるがランチは要確認。
●電話:03−3588−5076
●予算:夜は4〜5千円。昼は千円以内。
●独断の星=スーちゃんに会えないかな。★★









第143皿 じゃ、軽くトンカツでも。和光市『とん兵衛』

とある昼下がり、遅めのランチをどこにしようか、と駅前を見回したのですが、なぜか付きものののラーメン屋も、大戸屋のような定食屋も見つからない。じゃ、軽くトンカツでも(!)食うか、とニヤリと笑いつつ、黄色い看板が目についた店に入りました。店の奥から聞こえる、ぽん、ぽん、という景気のいい音。それが何かはあとで分かったのですが、メニューを見ると、定食が1300円〜1500円とけっこういいお値段。一方、ほかの客のテーブルに運ばれてきている皿を見ると、その大きさにびっくり。なるほどね、メニューをもう一度見ると、ロースかつと海老フライ、といったように二品盛りになっているのでまあ、納得だけど、誰だよ、軽く、などと言ったのは!でも、あった、あった、ランチ819円。日替わりは限定10食、とありましたが、我々の分はまだあると、エースコックのキャラみたいなお姉さんが言う。そこで、メンチと鯵フライの日替わりランチを注文しました。さて、これが、なかなか出て来ない。キッチンを覗くと、なんと、メンチの中味を、ハンバーグのように、ひとつひとつ手でこね、まな板にぶつけて丸めていたのでありました。

手作りで、実に柔らかいメンチかつ、ちょっと小骨が多いけど、ドーンとした鯵フライ。味噌汁もけんちん汁風、ご飯とキャベツはお替り自由。それでこのコストパフォーマンスは抜群。ついつい食べすぎと知りつつも、完食してしまいました。ひとりだけ日替わりでなくチキンカツを頼んだとっても小柄なスタッフの女子も、小鉢の奴も含め完食。キレイに平らげた鉢やお椀をきっちり重ねてみせたりして、あ、一緒にご飯食べると違う面が見えるもんだな、と気づいたランチでもありました。

アツアツはやはりおいしい。
こんどは、ちゃんとトンカツを食べよっと。


●行き方:東武東上線和光市駅を交番側に出て、右の通り沿い。
●営業時間:11:00〜23:00 年中無休。勤勉だなあ。
●電話:048−463−2055 弁当の予約も承ります、と。
●予算:文中
●独断の星:ここでの仕事は、おなか減らして行こうっと。★









第142皿 アメリカ史を頬張ってみよう。『ネイサンズ・汐留店』

最近もらった資料?で面白かったのが、『リンカーンとケネディ:偶然の一致』というものです。アメリカの歴代大統領の中で、共に市民権の拡大に力を入れ、人気もおそらくトップ2であろう二人の100年を挟んだ共通点、というヤツ。人によっては「有名だよ」とも言うのですが、主人は初めてでありましたので、その一端を披露します。

■ リンカーンは1860年に大統領に当選、ケネディは1960年に当選。
■ リンカーンは1846年に下院議員に初当選、ケネディは1946年に初当選。
■ 二人の跡を継いだ大統領は、どちらもジョンソン。
■ リンカーンを暗殺したブースは1839年生まれ、ケネディを暗殺した(と言われる)オズワルドも1939年生まれ。どちらも裁判開始以前に殺害された。
■ リンカーンの秘書の名はケネディ、ケネディの秘書の名はリンカーン。
■ リンカーンが撃たれたのはフォード劇場、ケネディが撃たれたのは、フォード社製のリンカーン・リムジンの車上。
後のほうになってくると何か苦笑を禁じえない感もあるのですが、いちばん傑作なのがこれ(サイトの品位のため、英語での表記をお許しあれ)。
■ A week before he was shot, Lincoln was in Monroe,Maryland. A week before he was shot, Kennedy was in Marilyn Monroe..

さて、アメリカ史の不思議な一端をカジった気になったら、次は歴史を頬張ろう。ここNathan’s(ネイサンズ)は、ケネディが生まれた前年の1916年にニューヨークで創業という老舗。ホットドッグの始祖とも言われ、その大食い較べのイベントも行われる店。日本に進出したのは最近のことですが、ここ、汐留に移転した日テレタワーの下のテラスにも出店。なので、ここでは番組がらみでやはり大食い選手権をやったりしてます。
きょう選んだのは、チリドッグ。200円ちょっとプラスすると、ドリンクとポテトがついて、りっぱなニューヨーク風ランチ。ザウアークラフトなどとともにフリーのトッピングで用意されているオニオンソテーをたっぷり載せ、ケチャップとマスタードもたっぷりと。しっかりおいしく、急いで食べるのはもったいない。
余談ですが、今を去ること30年前、NYで初めてこの綴りを見たとき、「ナータン」と読んでしまったのは、一応当時はドイツ語を勉強していたからなんだな。『賢者ナータン』は、20世紀初頭において、三宗教の聖地イェルサレムを舞台に、宗教と人種をテーマに書かれた戯曲。映画化もされている。作者レッシングが、100年後のNYかワシントンD.C.に生きていたら、どういう作品を書いたのでしょうかね。


本家本元ホットドッグ。チーズ入りもあり。


●行き方:JR・東京メトロなどの新橋駅か、都営大江戸線などの汐留駅より徒歩。日テレタワー地下2F(という表示ですが、感覚は地上)
●営業時間:(すみません、未確認です。)
●電話:03−3574−9981
●予算:4種類のセットはどれでも、7〜800円。
●独断の星:大食いに使うのはもったいない。★








第141皿 聖地か、戦場か。西早稲田『玉丹』

学生時代にはあまり縁がなかったこの街なのですが、仕事についてから、それがらみの会議や学会が早稲田大学のりっぱな国際会議場で行われることがままあり、年に1、2度出かけます。そうすると昼や終了後のちょっと一杯、というのが楽しみになるわけで、今回も午前の部から解放されるや否や議場抜け出し、早稲田通りへ。で、飛び込んだのは、来るときから看板が気になっていたこの店、『玉丹』。何しろ、担々麺だけで、赤・黒・白など、10種類くらいあるというのだから・・・。

メニューとにらめっこした上で注文したのは、白ゴマ担々麺。ま、辛さはいちばんマイルドというところで、普段はしない選択なのだけれど、これから長丁場の会議が続く身としては、汗びっしょりになるとミットモないしなー、という心理が働いたかも。麺は太・中・細から、中を選びました。出て来て見ると、なるほど、一面に白ゴマがびっしり浮いて、これはこれで新鮮な驚きの味。でも、これが担々麺?という感じもして、合格発表を見に来たらしい3人の女子学生が、赤・黒・白の3種類をたのんで、食べ比べしているのが、ちょっとうらやましかったな。蛇足ですが、楽しそうに喋っていた彼女たち、全員サクラサクのようで、祐ちゃん、愛ちゃんの同期になるわけだ。おめでとう。
さて、いまや高田馬場・早稲田間といえば、ラーメンの聖地とも呼ばれているのだそうな。

確かに十軒や二十軒じゃきかない数の個性的なラーメン屋さんが、学生のすきっ腹を巡って争奪戦を繰り広げている。三宗教の聖地として争いの元となっているイェルサレムの如く、大激戦地でもあるわけですね。聞くとこれでは、この店も大手のKコーポレーションの新業態のようですが、もちろん麻布の店のような敷居の高さはなく、学生証提示で大盛タダ、みたいな店。担々麺の食べ比べもさることながら、点心や、2〜300円の値段で並ぶ小菜で麦酒グイッと言うのもしてみたいですなあ。


最近多い、北京の裏町あたりにありそうな風情の外観

芸術品の磁器の如く表面を覆う白ゴマ

メニュー。つい読み込んでしまいます。


●行き方:高田馬場から大隈公に思いを馳せつつ腹ごなしがてら20分歩き、西早稲田交差点手前右側
●営業時間:11:30〜02:00(月〜土)日祝は22:00LO
●電話:03−3202−3200
●予算:3種の担々麺は基本880円。ランチは小ライスサービスだが、この街では決して安いとはいえないだろう。トッピングのネギモヤシ100円、キクラゲキャベツ150円など
●独断の星=今度は夜に。★









第140皿 -erの問題。お台場『シズラー・アクアシティ店』

お台場の局に行った帰り、遅めのランチをどこでとろうか、と向かいのアクアシティに入りました。「ラーメン国技館」?うーん、ちょっと重いなあ。と、目に入ったのがステーキやグリルで有名な『シズラー』。以前地元の青葉台にもあって、まさにそのシズル感あふれるネーミングに魅かれておったのですが、いつの間にか閉店してしまっていて。ここで会ったが百年目、イソイソと入ってみました。頼んだのはハンバーグ。隣のテーブルのが見えておいしそうだったから。エプロンをかけて待っていると、写真のような紙の覆い付きでジュージュー言うのが、来た、来た。を持ってくる。これがSizzlerの店名の所以ね。私、シズる人。あなた、味わう人。ちょいメイドさん風ウェイトレスさんがノタマうには「ほぼレアな状態でお持ちしていますので、お召し上がりになるのは、3分ほどお待ちください」とな。なるほど、じゃ、業界一を誇る“cook-do”のCMに匹敵するシズル感を楽しみながら、ちょいと気になった-erの付く単語の考察でもしながら待ちますか。「〜する人、モノ」、という意味は当たり前、driverとかwriterとかair conditionerとかね。ジュー、ジュー。だけど、引き出しって意味のdrawerは明らかに「〜する人」じゃないよな。むしろ、引っ張られるヤツ。じゃ、カクテルの名としてのwine coolerはどうなんだ?やっぱり冷やされたワインをベースにということなのか?それとも道具としてのwine coolerになぞらえているだけなのか?ジュー、ジュー、ジュー。nikeのairwalkerはどうなんだろう。歩くのはあくまで人間だしなあ。ますます気になりだして、たまたま持ってた電子辞書を開いてみた。この「〜する人、〜される人」問題には明確な答えはないね。その動作に関係するモノ、「〜する人」を助けるモノには付けちゃえって、拡大解釈なのかな。と、言っているうちに食べごろに。覆いをとって、いただきマンモス!(古い!)そうそう、タレを熱い肉にかけると飛び散るので必ず肉のほうを漬けてくださいね、と言われてた。肉自体はもちろん柔らかく、180gなんてペロッと行っちゃう(ラーメンが重いなんて言ってたのは誰だ)。starterにしたオニオンスープ(スープ&ドリンクバーで取り放題)はベリグー、appetizerは残念ながら省略、digesterにはカプチーノを所望。穏やかな春の東京湾を眺めながらこの問題、ダイジだったらどう答えてくれるかな、ユリちゃん(覚えてる?ともに英語の先生よ)だったら・・・などと思いを巡らした午後でした。

これでもか、これでもか、というくらい、シズります。

●行き方:ゆりかもめ「台場」駅正面アクアシティお台場5F
●営業時間:11:00〜23:00(LO22:00)無休
●電話:03−3599−4534
●予算:ちょっと高めのファミレス、ということで。
 ちなみに、頼んだオリジナルハンバーグランチはスープ&ドリンクバー付きで1130円。パスタなどもあって豪華大充実のサラダバーを付けると600円くらいUP。
この値段が、各店舗によって微妙に違う(たとえば新宿三井ビル店は微妙に高い)と言うのもシズル感ありますね。
●独断の星=★ 今度はいろいろシェアして食べてみたい。








第139皿 ラーメン食う仲なればこそ。藤が丘『長浜ラーメン・もえぎ野』

食い歩き番組の常連である彦麻呂が、「取材で出てきたものがおいしくなかったとき、マズイとは言えないでしょう?なんて言うんですか?」と聞かれて「そういうときは客観的なコメントにするんですよ。『好きな人にはコタエられませんね!』とか・・・」と言っていたのには思わず笑ってしまった。それ、あ、マズイと思うって言ってるの思い切りバレてるじゃん。さて、この店、以前は『御天』という名で営業していた、けっこう有名な、とんこつラーメン店なのです。藤が丘からも青葉台からも10分は歩く住宅街の中にあるのだけれど、開店時刻の11:30になると、どこからともなく老若男女のラーメン好きが沸いてくる。あっという間に店内の座席は埋まり、店の前にも行列ができてしまうのです。そうそう、老若男女と書きましたが、この店の特徴は、なぜかカップルが多いことでしょうかね。ほら、昔、言わなかった?一緒にラーメン屋に来た男女はデキてるって。焼肉屋でも同じことが言われてたけど、それは髪に臭いが付いちゃうからで、ラーメン屋は別の理由。たぶん、見栄を張らなくてもよくて、ほんとに食べたいときに食べたいものを食べる仲、ってことなんでしょう。じゃあ、ここにくる男女はデキてるのかって言うと、想像するまでもなく、夫婦って感じが多い。で、子供は多くない。ちょっと離れたところにある駐車場にレガシィワゴンを止めて、今日はダンナが出身地の博多の、とんこつラーメン食べたいって言うから付き合ってやったのよ、えー、オマエも最近けっこう気に入ってるじゃんか、的世界。最近ラーメン番組でよく紹介される、隣県の店なんかは、テレビに出てたラーメン、を餌にデートに誘ったりするんだろうけどね。ここはもっと落ち着いてる。さ、こちらクルマじゃないので、まずビールを頼み、久しぶりのメニューを眺める。そうねえ、チャーシューはちょっと重いから、キクラゲトッピングで行きますか。ハリガネ、とか業界用語が飛び交う中、あっと言う間に出てくるのが、博多ラーメンの特徴でもあるね。スープを一口、あれ?ちょっと味が足りないかな?でも、ゴマや紅ショウガを足しつつ、お作法に従って一玉目を食べ終わる一分前に「替え玉」を注文し、としている間に、スープのコクもしっかり出てきて、おいしくいただきました。長浜ラーメンといえば、ウン十年前に、琵琶湖のほとりのJR長浜駅で、「長浜ラーメン」ってどのヘンにあるんですか?と聞いて、連れの前で赤っ恥をかいたことがあったな。知ったかぶりはするもんじゃないです。ラーメン食う仲ならばこそ、よけいにね。

ほうら、出て来ましたよ。

「替え玉」含め、完食。奥サマ方も、当然のように「替え玉」あり。

のどかな佇まいです。


●行き方:東急田園都市線藤が丘駅から国道246号線方向に向かい、ガソリンスタンドを左折、もえぎ野公園沿いに2、3分。
●営業時間:11:30〜14:00、17:00〜25:00(日祝は23:00まで)月曜定休
●電話:045−971−3032
●予算:ベーシックなとんこつラーメンは700円、だったかな。替え玉はたしか130円。
●独断の星:好きな人にはコタエられない。あ、僕は好きだから、これは本心よ。★









第138皿 「命の水」をもう一杯。練馬『BAR Ryu marusen’s』

eau de vie ――「命の水」。ブランデーなど酒の美称ですね。クルマにガソリンスタンドが必要なように、人生にはバーが必要だ、という筆者の信念を一言で凝縮すると、その語になる。その名を冠したバーも日本中にあるようですな。さて、暖冬とは言え夜になって急に冷え始めた風は駅に直行することを両脚に許さず、気がついたらこの店への階段を駆け上っていました。

Ryu marusen’s という店の名の由来は今回も聞き忘れてしまったのですが、小さいけれどなかなかにゆったりとした気分で飲めるバーです。かの地の人々には申し訳ないが、「練馬に置いとくのはもったいない!」と思う。しっとりとしたジャズの流れる中、まずは、冷えた身体を蘇らせるべく、ホットウイスキーを一杯。「ちょっと甘くしましょうか」「お願いします」「じゃ、どうせならお酒で」ということで、ドランブイエをたっぷりたらしてくれました。舌から食道、そして胃袋へと「命の水」、じゃなかった「命のお湯」が通っていく。ああ、生き返るぜ。じゃ、改めて生ビールからスタートします(笑)。その間、髭のマスターが作ってくれていたのが、ツマミのオードブル。丸いのは、チェリーのコワントロー漬、甘いものは不得手な筆者もペロッといってしまう香りのよさ。そして、圧巻は、深いオレンジ色のチーズ、ミモレット。「前の首相のときにね、解散を思いとどまるように説得に行った森・元総理が『こんな干からびたチーズと缶ビールなんか出しやがった』と記者相手にクサイ芝居を打ったのが、この、ミモレットなんですよ」なるほど。そうでしたか。でも、森氏は本当に干からびたチーズと思っていたのかも知れないよ。その話が伝わって、ミモレットは一時大ブームになったとか。そして、定番の枝付レーズンも。
どこにでもいま住んでいいって言うことになったら、なんて話をしながら、さらに、国産のウイスキーではいちばん好きな「山崎」をオン・ザ・ロックで二杯ほど。ちなみに、マスターも自分も、答えは以前勤めていたことのある北海道の街でした。
きょうは、前回来たときにいた常連風の綺麗な女性の姿が見えなかったのだけが、ちょっと残念。それとも時間が早かったせいなのかな?


命のお湯。五臓六腑に染み渡るぜ。

かわいいツマミ。他に、ハモンイベリコなど、おいしそうなフードメニューも。

●行き方:西武池袋線・練馬駅北口から北東で一分、商店街の角、カメラ屋のあるビルの2階
●営業時間18:00〜1:00 不定休。ちなみに、今月は、バレンタインデーの14日がお休みとか、何ででしょうねー。
●電話:03−5999−5248
●予算:普通のバーです。都心よりは安い。
●独断の星=また練馬方面に行ったら、必ず。★★










第137皿 シンクロニシティ。銀座『とん喜』

ひょんなことで、オイシイよと勧められた店に行って、数日後その話をしていたら、なんとまさにいまテレビでそこをやっているではないか!というお話。それが、いま流行の超行列ラーメンならばありそうなことですが、そうでもない、旧くからある銀座のとんかつ屋さん。そこは、和幸、まい泉、さぼてん、といった有名チェーンではないけれど、ファンは多いようで、TBS『チューボーですよ!』のカツ丼特集で、銀座の巨匠の店として登場していました。心理学では、シンクロニシティ(同時性)、っていうんだよね(ちょっと違うか)。カツ丼の場合、普通のカツ定食より肉は薄めにして、揚げ方も、あとで煮ることを計算に入れて七分くらいにしておく、といったノウハウが登場3店それぞれ違って面白かった。この間、メンチとロースカツを酒のサカナで食らったばかりと言うのに、見ていたらまた食べたくなってしまいました。カツは、この値段で銀座でやっていけるの?と思うほどのリーズナブルな価格ですが、味は申し分なかった。飾り気のない店の中で、番組では「未来の巨匠」として出ていた現・巨匠の子息は、山ほどのキャベツをひたすら千切りにしてましたね。趣味はゴルフというから、きっと刻むのが得意なんでしょうね。ちなみにそのキャベツお替りすると100円、のようですから、それが積もり積もってゴルフ代になるのかな、などと邪推する。そんなこともあり、これからご同伴、という感じのオネエさんと、中年紳士が両方ともキャベツを手付かずで残してたのが、気になっちゃった。余計なお世話か。
それにしても、この店の名前の「喜」ですが、ほんとは「七が三つ」のほうなんですが、Wordでは出て来ないみたい。手書きでもダメのようで・・・トホホ。「喜寿」の語源が分からなくなるじゃん。


ロースはたっぷり幸せ、メンチはジューシーでほっぺた落下予防装置が必要。皿もテーブルも一切の飾り気なし。


●行き方:銀座6丁目の能楽堂ビルの裏手地下。
●営業時間:平日 11:30〜15:30 17:00〜22:00
       土日祝 11:30〜15:00 無休
●電話:03−7572−0702
●予算:ランチは1000円以下。夜や「特製」にしても1300円くらいで。
●独断の星:漬物もうまかった。★









第136皿 「風味絶佳」に彼を想う。ロサンゼルス『鼎泰豊』

どこかで見た店の名前ですって?台北で行ったよ、と言う方は別格として、そう、日本でも赤坂通りのほか、各地の高島屋に入っている、鼎泰豊(ディン・タイフォン)です。鼎泰豊といえば小籠包、というくらい有名ですが、その日朝食をホテルのビュッフェ(アメリカ人はバッフェと発音する人が多いね)でしっかり取ったので、昼食は軽くしよう、ということで入ったのがこの店、鼎泰豊LA店というわけです。もともと点心は、修行中に空腹をちょっと満たす、という意味だそうで、その日の動機は、本来の語源から言えば全く逆でした。明るい店内に入ると、とにかくたくさんの中国系の人々、家族連れやビジネスマンと思しき人々が丸テーブルを囲んでいました。聞けば中国系、その中でも日本以上に格差社会の米国で、比較的豊かな層が住んでいる地区らしい。

まずは名物小籠包を注文し、中のスープがシュワッと出てくるのを、こぼれないようにレンゲで受けつつ食べる。ほかに蝦仁焼売(えびシューマイ)、菜肉蒸餃(野菜ギョーザ)などオーダーして突っつきましたが、味はまったく日本と同じ。いや失礼、台湾と同じはず、と言うべきなのでしょうね。安心でした。お値段も、ほぼ日本と同じで、とても安心。
ところで、この店の名を見ると、どうしても連想してしまうのが、中日で長年活躍し、わが阪神にも3年在籍して貢献してくれた大豊泰昭選手なのですね。台湾出身ということもあるし、何しろ字面が似ている。知らない人に、これ大豊の店なんだよ、なんて言ったら信じてしまうかも。もともと、本名は、陳大豊で、外人枠からはずすために、その名前のほうを名字にして「日本人」にした。確かパ・リーグにいた弟も同じ手段を使っていたな。ゴツイ体で、およそ、阪神のチームカラーにそぐわないマジメで練習熱心な4番打者だったイメージがあります。現在の4番、アニキ金本にちょっとイメージ似ているね。

名物小籠包。量は日本の2倍、値段は1.5倍、というところでしょうか。

蝦仁焼売。プリプリの海老はカリフォルニアロールと同根か?

菜肉蒸餃。お腹空いてなくてもどんどん入っちゃう感じ。


さて、店内に貼ってあった「風味絶佳」とある額が気になってしかたありませんでした。意味は、森永ミルクキャラメルの箱に「滋養豊富・風味絶佳」と並べて書いてあったように、とにかくオイシイってことなんでしょうけど、誰か有名な書家の筆になるものなのでしょうか。(山田詠美の同名の小説も最近映画化されていたような。)そういえば、かの大豊選手、引退後は、復帰した中日の本拠地、名古屋でその名も「大豊飯店」なる中華料理店を経営しているとか。こちらも彼の人柄を反映して「風味絶佳」な店なのでしょう。機会があったら行ってみたいものです。

なんとなく、武者小路実篤『仲良きことは美しき哉』の風情もあるが。


●行き方:住所は、1108 South Baldwin Ave. Arcadia, California USA アルカディアって凄い町名ですね。日本なら、理想が丘、みたいなこと?
●営業時間:聞き忘れました。
●電話:626-574-7068
●予算:一品ひとケタドルで、2人前くらい。
●独断の星:やっぱり台北本店も行ってみたいね。★