鉾田・大竹海岸激走300メートル!
のどかな田舎の砂浜に伝説の「うつろ舟」は実在した!!
(2009年1月7日更新)

その舟のかたち例えば香盒のごとくにしてまろく長サ三間あまり
上は硝子障子にして、チャンをもて塗りつめ
底は鉄の板かねを段々筋のごとくに張りたり
海厳にあたるとも打砕かれざる為なるべし
上より内の透徹りて隠れな記をみな立よりて見てけるに
そのかたち異様なるひとり能婦人ぞゐたりける
その図左の如し

(滝沢琴嶺『兎園小説』「うつろ舟の蛮女」)

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【1】
2009年元旦。
郷里に帰省中の私は、鉾田の大竹海岸へと赴いた。
そこの砂浜に、謎の物体があるという情報を得、
真偽を確かめるためであった。
【2】
鉾田の誇る鹿島灘臨海公園内、
美しい冬の海を横目に、展望デッキ方面へ向かう。
ボードウォークをひと足踏みしめるごとに、
言い知れぬ緊張が私を襲う。
【3】
と、その時、信じられない光景が目に飛び込んできた!
そこだけ防風林が途切れた砂浜に、
円盤状の謎の物体が、その身を横たえていたのである。



【4】
その姿は、まるで不時着したUFOそのもの。
船体の一部が地中にめり込んでいるようにも見える。
聞こえるのは打ち寄せる波の音のみ、
不気味なくらい静かだ。
【5】
もしこれが本当にエイリアン・クラフトならば、
慎重を期さねばならない。レーザーで迎撃されるかもしれない。
私は危機センサーを全開にし、
この謎の物体に接近することにした。
【6】
これもエイリアンのトラップか?
UFOに近づくには、
急な斜面をロープを使って下りねばならない。
病み上がりの私には危険な賭けだ。

【7】
決死の思いで斜面を下りる。
毎回、これで船体へ出入りをしているならば、
エイリアンの腕の筋力は相当発達しているに違いない。
もし肉弾戦になったら、かなわないかもしれない。
【8】
UFOを下から仰ぎ見る。なんと木製だ!
いやいや、宇宙にしかない特殊な木材かもしれない。
なんらかの理由で再び飛び立てなくなったものか?
あるいはメイツ星人の円盤かもしれない。
【9】
船体の上部には、半透明のカプセルがはめ込まれている。
照明かあるいは殺人光線を発射する装置か?

【10】
窓枠にも太いロープが網状に張られており、
傾いた甲板を歩く際、つかむと便利だ。
丸くくりぬかれた窓が見える。
私は、乗船を試みることにした。
【11】
エイリアンは親切だった。
乗船の際の注意事項を、日本語で書いてくれていたのだ。
幸いランドセルもカバンもない。ひも付き手袋もしていない。
上着の前も開けっぱなしじゃないぜ! レッツGO!
【12】
甲板に立つ。
傾斜は予想以上だ。
何かにつかまっていなくては転んでしまう。
これは、腕や足腰の鍛練にはもってこいのUFOだ。
【13】
タラップとおぼしき場所にも、人類に向けたメッセージが!
どうやら、UFOのカタパルト使用の際の注意事項らしい。
わざわざ図入りで解説してくれるなんて、
なんて優しいエイリアンだ!
【14】
しかし、そこはエイリアン。「〜すべりましう」といった誤記や、
「二ってすべってはいけません」「aてすへってはいけません」等、
所々、日本語ではない謎の「宇宙文字」も確認できる。
あと、濁音も苦手のようだ。
【15】
カタパルトに立つ。
目の前に広がるのは大海原と、その彼方の水平線。
そこが舟の離陸地点……。
宇宙(そら)か……イエレン、いきまーす!

……と、前置き(むしろ今までのがメインだったが)はさておき……。
これは、
茨城県鉾田市・鹿島灘臨海公園内にあるUFO型遊具です。
ありがちといえばそれまでですが、実はこの土地には、ある伝説が伝わっており、
それを現代的に解釈し、作ったのがこの遊具というわけです。

その伝説とは、いわゆる
「うつろ舟(うつほ舟)」伝説

江戸時代(享和3年)、常陸の国の海岸(現在の茨城県鹿島灘、一説に現在の鉾田の海岸)に、
不思議な形をした舟が漂着しました。

その舟の形状は、丸く、上部には硝子障子の窓で松やにが塗ってあったといいます。
下半分は鉄板で補強してあり、岩礁に当たっても砕けない仕様になっていました。
上部の透通った窓からは、船内が見通せたとのこと。

のぞきこむと、そこには人間がいました。
中から出てきたのは美しい、しかし異様な風体をした女性。
小脇に抱えた箱は決して人には見せようとしません。

思うに、これは不貞をはたらいた異国の王女で、殺すには忍びなく、海へ流されてきたものであろうとのこと。
お上に知らせるといろいろと煩雑になるので、このまま海へ押し戻してしまおうと、
漁民たちはこのうつろ舟を、中に女性を乗せたまま、再び沖まで引いていって流してしまった、

……というお話です。

似たような伝説は各地にありますが、この常陸の国のケースは、
複数の文献に詳細に記録されている上、その奇妙な「うつろ舟」と女性のイラストが今に伝わっているという点で、
非常に珍しく、これまで様々な人々の注意を引いてきました。

柳田国男もこの伝説に言及していますし、
澁澤龍彦もこれに材を取って小説を書いていますから、お読みになった方も多いでしょう。


しかし、この伝説が現代で脚光を浴びたのは、その文献に添付されたイラストが、
あまりにも、世界各地でリアルタイムに目撃されるUFOのデザインに、「酷似していた」という点につきるでしょう。

UFOに限らず、UMAでもそうなんですが、何かひとつの怪現象が発見されると、
過去の文献資料をひも解き、そこに同じような記録を求める作業がおこなわれるものです。

この「うつろ舟」の伝説も、イラスト付きで引用され、
UFOブームのさなか、
「江戸時代のUFO遭遇譚」として様々なメディアで紹介され、メジャーになっていきました。
かく言うボクが「うつろ舟」を知ったのも、そのような文脈においてでした。


このように、しっかりと歴史的文献に記録として残され、現代的なミステリー趣味にも通じ、
しかもほかならぬ地元・鉾田の海岸を舞台にした伝説の存在は、
観光資源が決して豊かとは言えないこの鉾田町にとっては、これから観光客を誘致していく上で、
まさに、
「渡りに(うつろ)舟」だったのかもしれませんね。


この施設自体は数年前からあったようですが、
最近、ボクは帰省してもわざわざ砂浜に下りることは稀だったので、この元旦までずっと気づかずにおりました……。
市役所の友人によれば、どうやらこれは県の肝煎りで作られたもののようです。

UFO型遊具のわきには、その由来(?)を説明する看板が。
同伝説には数種類のテキスト&イラストが存在するが、
この看板の文章とイラストを見る限り、
滝沢琴嶺『兎園小説』「うつろ舟の蛮女」からの引用か。
伝説を簡単に紹介する文章。
末尾には「今日のUFOか潜水艦の類と考えられます。
SF的には、未来人の乗ったタイムマシンや
別の次元の人かもしれません」などとサラッと書いてある。
謎の宇宙文字は(?)、現在でも判読不能。
意外と、この公園の滑り台の注意書き(上述)同様、
元の字が風雨に晒され。削れて消えたりして、一見、
奇妙な文字に見えているだけという可能性もあるかもね。
オススメ商品
鹿島灘海浜公園のイラストマップには、
「うつぼ船」の表記。
不統一だし、展望台との位置関係も実際とは違う。
企画段階で作成した地図かもしれない。
意外と人気のスポットで、親子連れのみならず、
カップルもはしゃいですべっていた。
さあ、君もお友だちを誘って、今すぐ鉾田へGOだ!
 タイムリーにも今月(2009年1月)、加門正一氏の『江戸「うつろ舟」ミステリー』(楽工社)が出版された。10年以上にわたって集めた膨大な資料とフィールドワークから、伝説の真相に迫っている好著で、これは必読だ。
 加門氏は以前にも
『新・トンデモ超常現象60の真相』(楽工社、2007)でうつろ船伝説を取り上げている。こちらも合わせて読みたい。
 ちなみに「うつろ船の蛮女」は、フィギュアにもなってるみたい。今の時代、何でも商品化され、収集の対象となるんだなぁ。
さあ、ここまで読んで現地で実物に触れてみたくなったUFOマニアの君、
「うつろ船」の伝説に興味をもった貴方、
美しい海と公園に心引かれた貴女、
どうぞ、
いつでも鉾田の大竹海岸へお越しください

UFO遊具アスレチックで、いい汗流しましょう。
冬は、公園でピクニックしながら静かな海を眺めて、贅沢な時間を過ごしましょう。
夏は、広くて綺麗なビーチで、思う存分海水浴をお楽しみください。

そして、お帰りの際には、どうぞ
鉾田の商店街でお買い物を!


茨城県営都市公園オフィシャルウェブサイト
鹿島灘海浜公園紹介サイト
・大洗鹿島線 新鉾田駅→車で約10分
・東関東自動車道 潮来ICから約40分
・常磐自動車道 千代田石岡ICから約60分
・北関東自動車道経由東水戸道路 水戸大洗ICから約30分


鉾田市公式ウェブサイト(観光案内もあるよ!)
(ただいま、鉾田のゆるキャラマスコットの愛称募集中!)


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