著 者  宮下充正 (東京大学名誉教授)
発行日  2014年6月15日
ISBN  978-4-901933-27-8
体 裁  A5判
ページ数  230ページ
価 格  定価 1,760円(税込)

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[概要]

 わが国は高齢化がさらに進み,全人口に対して高齢者の占める割合が増える。その結果,医療費・介護費の高負担という問題が深刻化したのはだれでも知っている事実である。国民総医療費は1990 年度の20 兆6,000 億円,2000 年度の30 兆1,400 億円から,2010 年度には37 兆4,200 億円へと急上昇している。さらに,人口1 人当たり医療費は,2010 年度65歳未満の16 万9,400 円が,65 歳以上では70 万2,700 円,さらに75 歳以上では87 万8,500 円と,高齢者は多額の医療費を費やしているのである。
 他方で,2000 年に発足した介護費は,初年度3 兆6,000 億円であったものが,10 年間で7 兆9,000 億円と2 倍以上となっている。これらの医療費・介護費の財源をどこに求めるのか,現在政治家の議論の的になっている。しかし,財源をどこに求めるではなく,医療費・介護費をあまり必要としない高齢者の割合を増やす施策が,まず立てられるべきであると主張したい。
 医療費・介護費の軽減という問題はさておき,認知症にならず他人の手助けを必要としないで自立した生活をいつまでも保持できることこそが,中年齢者が希望する未来であり,すでに高齢になった人たちの素朴な生きがいではないだろうか。その生きがいを保持するには,意識して運動を習慣的に実践するしか他に方法はない。
「子どものときの運動が一生の身体をつくる」(明和出版 2010)という本の中で,30 年に及ぶ追跡調査を紹介したが,成長期に運動習慣があったかなかったかは,成人してからの健康に大きく影響を及ぼすことは確かである。しかし,現在の中高年齢者にとっては,いまさら取り返しのつかないことである。これからの人生,運動を実践し,筋肉をきたえることこそが最重要事である。
 ところで,2000 年代に入って,遺伝子にかかわる分子生物学が急速に進歩した。犯罪捜査でDNA鑑定が行われることは今や常識であるし,病気に遺伝子が深くかかわっていることも広く知れわたってきた。運動を直接発現させる筋肉についても,遺伝子のはたらきが明らかにされつつある。そこで,本書では分子生物学といった基礎科学の研究成果と疫学的調査結果とをまとめ,やや理解しづらい前半の理論部分を構成した。そして,筆者自身が体験したことに基づいて,中高年齢者が実施したほうがよいと思われる具体的方法を後半の実践部分にわかりやすくまとめた。
 前半部分は飛ばして,後半部分から実践してもよいだろう。とにかく,多くの中高年齢者が,運動する必要性を認識し,実践するための参考になればと願う次第である。
 2014 年4 月                   宮下 充正




[目次]

第1章 動かなければ動けなくなる
 ・なぜ運動しなければならないのかは答えにくい
 ・医療費・介護費削減という経済的理由づけ
 ・死を選ぶことはできない
 ・自分から動かなければ動けなくなる
 ・からだを動かすとからだのタンパク質が若返る
第2章 からだを動かすこと
 1 からだを構成する階層
 2 からだを動かすのは筋肉
 3 筋肉をはたらかせる脳と神経系
第3章 筋肉をはたらかせると脳は活性化する
 1 運動すると脳の血流量が増える
 2 1 週間の運動量が少なければ“うつ症状”になる確率は高くなる
 3 脳の萎縮の進行を遅くする運動習慣
第4章 老化とともに衰える筋肉
 1 高齢者の筋肉は細くなり筋力は低下する
 2 サルコぺニアとは?
 3 いつも運動している人でも運動能力の低下は避けられない
第5章 筋肉を回復させた実験報告
 1 きたえなければ筋力は低下する
 2 筋肉をきたえるとどうなるか
 3 ねばり強さも回復させよう
第6章 運動すれば確かに効果を生む
 1 活動させた筋肉が回復
 2 すばやさの低下を防ぐ
 3 年をとれば遺伝の影響は少ない
第7章 タンパク質を摂らなければ筋肉のはたらきは回復しない
 1 筋力維持に欠かせないタンパク質の補給
 2 栄養摂取の有効な方法
第8章 筋肉の活動と運動不足病群
 1 これまで説明されてきた神経系と骨格筋
 2 身体的非活動(運動不足)がもたらす疾病群
 3 運動不足と腹部の脂肪量
 4 運動不足と認知機能の低下
 5 マイオカインとは?
 6 運動はインターロイキンの生成を促進させる
 7 サーカディアンリズムとは?
第9章 中高年齢者に求められる運動能力
 1 元気な高齢者とは
 2 自分でできる運動能力テスト
 3 歩きながらバランス能力の低下を防ぐ
第10 章 ストレッチング・エクササイズの方法
 1からだを目覚めさせる
 2運動による障害を予防する
 3運動後の疲労を取り除く
 4血行をよくする
 5関節の動きの幅(可動域)を広げる
第11 章 力強く,そしてすばやく動くようになる方法
 1 短縮性と伸張性のレジスタンス・エクササイズ
 2 自分に必要と思われる筋肉をきたえる
 3 “のびのび君”をできるだけ速く伸ばす
 4 傾いたほうへすばやく足を出す
第12 章 ねばり強さをきたえる方法
 1 ウォーキング
 2 歩行困難者のウォーキング
終章 しのびよる老化
  ・しわが目立つ
 ・身長が急に短くなる
 ・薬の服用は効く
 ・運動実践は医療費・介護費の抑制につながるのか

                     


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 ―筋肉をきたえて健やかに生きる―