No.40


あっと言う間に第四十回でございます。
『鏡の影』の方、ビレッジセンターから六月に復刊されることになりました。状況はぐっと建設的な方向へむかっております。

Date: Mon, 10 Apr 2000 14:09:06 +0900
From: Seiichiro Yoshii
Subject: 文句第33回の

kenji_umetsu氏とのやりとりを拝読。まあ、内容はともかく、ものを考えようとはしているようでその点は喜ばしいことだと思います。また、大蟻食さんは国語力の低下を憂えていますが、一読した感じではこのお方、結構トシ食っているんじゃないかという気もします。オジサンどもによく見られる、独特のねっちりとした押しつけがましさが感じられるので。まあ、それだけトシ食ってこの体たらくか、という意味では解らなくもありませんが。

それにしても最後の方にある

>それにしても、第30回の様子などを見ていると、一応、投稿者は自分なりに
>言動は発しているものの、自信がないのか、他力本願なのか、運命共同体と思
>っているのか、よくわかりませんが、著者の意見をかなり重要視している節が
>見受けられます。もしかしたら、中には、著者の意見によって自分の行動を決
>めようとしている方もおられるのではないかと思われるほどです。
(一部改行位置変更)

というのはさすがに「こいつ、本気で馬鹿じゃないのか?」と思わざるを得ませんでしたね。確かに、大蟻食さんの意見を参考にすることぐらいはときたまありますが、それは自分のものの見方を検証するためとか、自分の不得意な分野(それはすなわち大蟻食さんの専門分野なのですが)について知りたいと思うときであって、自分の「行動」を決めるのに使うなどといった馬鹿な真似はさすがにしませんよ。・・・そもそも、いったいどのように「行動」に使おうというのでしょう。三笠書房やPHPの本でもあるまいし。

だいたい、ものすごく基本的なことを言えば、自分の意見が大蟻食さんの意見と大きく食い違うようなら最初からファンになどならないし、ましてご本人のWEBサイトにまで押しかけたりはしません。書かれたものを読み「これは面白い」とか「あ、自分と考え方がどこか似ているような気がする」とか「真っ向唐竹割な文体が気持ちいいじゃん」などと感じたから、ここにこうしているわけです。だから、大蟻食さんの意見を重要視するのは当たり前の話。仲良しグループで何が悪いのか。それを自信がないとか他力本願とか何とか言うのは「自分の意見=異議を唱えること」としか捉えられない、硬直化した無邪気な幻想に過ぎません。別に脅迫されたり石を抱かされたりして賛成することを強制されたわけでもなく、あくまで自らの意思で選び取ったことなのですから。・・・実はこの点も、このお方がかなりトシ食った人なんじゃないかと思っている要因のひとつなんですが。「異議アリ!」などというフレーズ、昔ありましたよね。他に「異議ナシ!」というのもありましたが、これはまた別な意味でいかにも、というフレーズではありました。いずれにせよ、リアリスティックにものを考えた結果の台詞ではありませんね。

話は変わり私事ですが、結局GWにNYおよびフロリダを襲撃するという計画は潰れました。もしかしたら夏には行けるかなあ、という感触ですが、でも夏はNYもフロリダも文字通り死ぬほど暑いんだよな。行きたいような行きたくないような。ううむ。

それではまた。

考えようとしてるのかなあ。ああいう人は考えない方がいいんじゃないのかなあ。だって量子力学のソフィちゃんごなしでっせ。読むといちいち真に受けちゃうんだろうな、あの人自身。

おそらく彼の年齢は私と同じくらいです。つまり、オウム世代ですね。困ったもんだ。

ところで。
私はタヒチに行きたくなってるんですけど、夏ってのは確かにいやですね。暑いところから暑いところへ行くってのは何ですよ、やっぱ。

From: "omega7"
Subject: では、文句など一席
Date: Tue, 11 Apr 2000 04:27:30 +0900

 再び送信いたします。オメガ7であります。周囲の方々と比べると、その内容の無さがこっぱずかしい限りなのですが、それでもコメントを戴けるのは大変嬉しいモノですね。ハンドルネームの「オメガ7」については、全くご指摘通りの「アレ」です。但し、私は借金嫌いで「現金な現金主義者(家もバイクも)」で徹してますが。かの小林源文先生については、某模型雑誌の連載(20年程前)から掲載紙の追っかけをやってまして、斯様な所で同好の志を見出すとは慶賀の至りです(意味不明)。因みに「KpZbv」なんてハンドルも使ってます(少佐が宜しいね)。しかし、周囲の人々には訳分らん文章だなこれは(爆)。
 それと、どうやらこのHPは何がしか「文句」を垂れねばならない様なので今日気になった事を書かせて頂きます。 毎度お騒がせの石原慎太郎都知事が、陸自第1師団の記念行事で、「東京では不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害が起きた時には、騒じょう事件すら想定される」なんてトンチキな発言をしたらしい。おっさん、それはまずいでしょ(汗)。以前そうなった時(関東大震災の事)にその「三国人」を「井戸に毒を投げ込んだ」なんてしょうも無いデマで「民族浄化」して回ったのは、我々のほうでしょ(その上、デマを煽ったのは軍部だしぃ)。都知事が斯様な見識では、いざ「有事」となればまた「先制攻撃」を加えかねないね。しかし、「支那人」発言の時もそうだったが、「三国人」つうのもまた、古風な…。このおっさんは執政官としてはソコソコ使える御道具なんだが、如何せん駆動音が耳障りに過ぎる嫌いがありますな。こうゆうのは、やっぱり地方政治家どまりにしておくのが一番でしょう。大体、国政を握ったらチョットヤバイよ、この手合は。これに付随して思うのがユーゴ内戦での民族浄化ですね。地球の裏側での事のように感じる人も多いのだろうけど、約100年ほど前にこの国で似たような事が発生していたことは、記憶しておいてもいいと思うな(学校じゃこの辺とばすがね)。政治ネタがヤバイ様ならバッサリやってくれても構いませんが、他に投げる宛も無い礫な物で、ご容赦下さいませ(弱気)。
 ところで、「ペニンシュラ戦争全史」とはいい所を突いて来ましたね。ナポレオニックは、派手な大会戦ばかりに光が当るので是非とも期待したい所です。あと、戦記物のネタとしては、19世紀の南米なんかは如何でしょうか(パラグアイ戦争とか近代戦艦の海賊とか)。 では、長々と文を連ねてしまいましたが、ここらで、筆を置きたいと思います。佐藤亜紀先生も御自愛のほどを。ではまた、いずれ。

 オメガ7 こと 高橋誠一

ああ、やっぱり。じゃあ『平成維新』なんかは全部雑誌で読んでおいででしょうね。私は昨日、単行本で読みましたが、あのリズム感は何とも言えません。

で、その『平成維新』の後書きにちょっと面白いことが書いてありました。問題の師団には、どうも対都市ゲリラ部隊があるらしい。まあ石原先生は、その辺をご存知だったんでしょう。

ところで閲兵というのは、ちょっといいものではあります。私だって一回くらいはやってみたい。クチュールのスーツ来て(色はオフホワイトか何か、ともかく場違いな色が宜しい)、パンプス履いて、小振りな婦人帽被って、雛壇で各部隊の敬礼を受けるのは、そりゃもうご機嫌に違いない(実際、観艦式にそういう格好で乗り込もうとして亭主に止められたことがある。ものすごくふくれたけど、行ってみて亭主の判断が正しいことが判った)。石原先生もそうなんでしょう。首都駐屯師団の英姿に舞い上がっちゃったんでしょう。で、ほら、ぽろっとね。

だから例の談話で一番泣けたのは、私の場合、実は「三国人」じゃありません。「九月に行われる陸海空三軍共同の大演習」です。何か嬉しそうだけど、要はただの防災訓練じゃん。

困るのはここです。いやしくも石原慎太郎ほどの政治家が(能力の問題じゃなくて、もしかすると内閣入りできたかもしれない――それとも一回くらいはしたっけ――クラスの、という意味です)、軍隊みただけで舞い上がっちゃってどうすんのよ。何か心配になってきたな。

ついでに申し上げるなら、やっぱ首都駐屯師団のお仕事というのは、政府の防衛でしょう。暴徒鎮圧というのは基本業務だと思いますが、鎮圧される中には当然日本人も含まれる筈です。でなけりゃ軍隊じゃねえや、とは思いませんか。

しかし「近代戦艦の海賊」ってのは、ちょっと気になりますね。

Date: Wed, 12 Apr 2000 15:45:34 +0900
From: 竹内 一郎
Subject: 拝啓

今日は。ここは佐藤亜紀様のメールアドレスでよろしいのかな?間違ってたらごめんなさい。
私、以前お会いしたことあるのですが、もう覚えていらしゃられないでしょう。竹内一郎と言います。ええと、早稲田のミステリクラブにいました。成城では木川、林と仲良かったんですが・・・。
何かいろいろ大変なことがあったそうですね(伝聞)。でも世間にはバカ野郎が数知れずいるので、「どうってことねえよ」という気持ちで行くのがよろしいですね。僕も今学校の教師してますが、そういう輩を毎日毎年見てきました。まあ、頑張って良い作品をいっぱい世に送り出してください。期待してます。では、また。

                             竹内一郎

おお竹内君だ竹内君だ。木川君がカツか何かを合宿の差し入れに持ってきたことがあったと思うけど、あれは竹内君ちのカツじゃなかったかしらん。美味しうございました。ごちそうさま。

Subject: e-NOVELS
Date: Wed, 12 Apr 2000 17:55:33 +0900
From: tucasa

佐藤亜紀さま

先日は「文句のある奴は前へ出ろ」のコーナーで取り上げてくださってありがとうございます。

さて、標記の件ですが、二階堂黎人氏のオフィシャルサイトから、というサイトへのリンクを発見しました。プロの作家による産直ネットだそうです。オンデマンドよりも先に見つけていればよかったな…。どう考えても e-NOVELSの方が先を行っている…。

http://www.e-novels.net/

残念ながら仕事中のため、用件のみにて失礼いたします。
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Tucasa[Tsukasa Murakami]
村上 工

そうですね。産直ネットというのは悪くないと思うんですよ。今、書籍売上のうち作家の取り分は10%ですけど、産直にしたら80か90%くらいにできるんじゃないでしょうか。ということは、単純に計算しても、現在の一割強の部数で同じだけの印税が手に入ることになります。これは結構大きいかもしれない。

From: 月森聖巳
Subject: とりあえず、終わりにします。
Date: Thu, 13 Apr 2000 11:35:02 +0900

3通目のメールになります。で、とりあえずは、これで終わりにしようと思います。佐藤さんも他人のメールにばかりかかずらってもいられないでしょうし、私も新作の執筆に本腰を入れなければならなくなってきましたので。新人ホラー作家などという、いささか場違いな人間が乱入してきて、さぞかし戸惑われたことと思います。実は、私が佐藤さんと新潮社のいきさつを知って、黙っていられなくなってしまったのには、個人的な理由があったのです。かつて、私には別のペンネームで、ヤングアダルト小説を書いていた時期がありました。本当は、このことをあまり公にしてはまずいのですが、この際ですから、全部書いてしまうことにします。
そのヤングアダルト作家だったほとんど全期間にわたって、私は無理解な/見識のない/無責任な出版社や編集者に悩まされ続けたのです。もちろん、中には、作家のことを理解してくれるように見える編集者もいました。ただし、結局は、それもダブルスタンダードのようなものでした。ヤングアダルトの分野にも、〈数字はとれないけど、いい作品を書く作家〉というのが、何人かは存在します。いささかおこがましいかもしれませんが、私自身も、そのひとりだったはず、と今でも信じています。そうした作家に発表の場を与えることは、商業主義に凝り固まった会社の現状に疑問を覚えている良心的な編集者にとっては、ある種の免罪符のような役割を果たしていたのでしょう。
ところが、これには会社の業績が好調なうちは、という限定条件が付くのです。本の売り上げが落ち始めると、真っ先に切り捨てられるのは、そういう数字のとれない作家です。何度も煮え湯を飲まされたあげく、私は悟らざるをえませんでした。どんなに誠実で良心的に見えようと、所詮、編集者とは商売人であり、作家と本当の友達づきあいなどできるはずがないのです。
ヤングアダルト作家としては、私は不器用にすぎ、正直すぎました。数字のとれる作品が書けず、「わかる読者にだけわかればいい」という姿勢を取り続けた結果、仕事を失い、経済的に困窮し、自分の過去を〈リセット〉するはめに陥りました。内心、忸怩たる思いはありますが、今更、どうにもならないことと諦めています。しかし、私の経験はマイナー作家ゆえの宿命なのだとばかり思っていました。ちゃんとした賞を取って、ちゃんとした大手出版社からデビューできるような作家なら、決してこんな思いはしないはず、と。
そこへ、佐藤さんと新潮社のトラブルです。天下の大出版社ともあろうものが、こんなあこぎな真似をすると知って、呆れもし、驚きもしました。大手も弱小も関係なく、今の出版界というのは、そこまで駄目になっていたのですね。こうなったら、本気でネットを使った情報革命を起こす必要があるのかもしれません。5万10万といった大部数を売らなくても、ネット経由で数千部をダウンロードすれば、作家の生活が成り立っていくような状況を作り出すことはできないものでしょうか。
一見、夢物語のようですが、例えば、プレステ2の普及率が、現在のビデオデッキ並みになったとすれば、必ずしも不可能ではないという気がするのです。プレステ2というのは、本当にすごい機械だと思います。それ一台で、ゲームができて、DVDが見られて、音楽が聴けて、インターネットまでできるんですから。しかも、操作はビデオデッキや電子レンジと同じくらい簡単です。残念ながら、現在のパソコンの操作というのは、必ずしも易しいものではありません。老若男女を問わず、誰でも気軽に扱えるというところまではいっていません。ネットには興味があるけど、パソコンが使えないから――という人は、決して少なくないはずです。もし、プレステ2を使って、簡単にアクセスできるなら、近い将来、ネット人口は現在の何倍にもなるでしょう。そうなれば、多くの人たちが、本屋へ行くのと同じ感覚で、ネット上の小説作品を手にすることができるのです。出版社や書店といったものの仲介なしに作品を流通できれば、作家は自分の作品の値段を自由に設定できるようになります。売れる作家は薄利多売でいけばいいし、売れない作家はそれなりに価格を上乗せし、本当に自分を理解してくれる読者を相手にすればいい――。そんな夢が現実になる日を信じて、何とか書き続けていきたいと思っています。それまでは、否応なしに編集者という商売人と付き合わざるをえません。だから、私はキワモノ作家を標榜することにしたのです。たとえ、ポーズであっても、数字を取る、部数を稼ぐ、という姿勢を示しておかなければ、何の付加価値もない私ごときは、あっさりと切り捨てられてしまうでしょう。ただ、キワモノ小説を極めたいというのは、現在の本音でもあります。ジャンル小説を書くのが一番楽だ、と佐藤さんはおっしゃいますが、例えば、山田風太郎に匹敵するキワモノ小説を書くのは、芥川賞を取るより、はるかに難しいのではないかと思うのです。
暴論を承知でいってしまえば、芥川賞を取るなんて、ある種の人たちにとっては意外に簡単なのではないでしょうか。純文学といえども、所詮は商業ベースですから、平野氏のケースがそうだったように、スター性のありそうな若い作家志望者で、そこそこには下手くそではない文章が書ければ、うまく画策して天才や神童に祭りあげることも可能でしょう。
それに対して、山田風太郎のような作品を書くには、本物の才能と独創的なアイデアが必要とされます。しかも、そのために費やされた才能や知性に比べて、それに対する評価は極端に低いのが普通です。
そのすべてを承知の上で、私はキワモノ作家をめざしたいと思っているのです。お互い、方向性はまったく違いますが、あと何年かしたら、かつての苦境を笑って語り合える、というようなことになればいいなと願っています。それでは、またいつか。

月森聖巳

つらいですね、お互いに。

私もむげにジャンル小説を否定する訳ではありません。作家たちについて言うならなおさらです。しばらくヤングアダルト系の単行本を貰っていた時期がありましたが、ジャンルをはずして自由に書かせたらどんなに凄い作品を仕上げるだろう、と思える書き手がたくさん発見できたのは収穫でした。同時に、ジャンルを極めてジャンルを突き抜けることも可能だと思います。山田風太郎は確かにそういう例でしょうし、たとえば百年後に残るのは所謂純文作家ではなく山風だった、ということだってあるでしょう。

ともかく、頑張って生き残りましょう。そのうちにはお天気の日だって来るでしょう。



2000.04.18
大蟻食