No.30

と言う訳で、さぼっているうちに1999年がやって参りました。皆様いかがお過ごしでございましょうか。もっとも、生まれてからこの方あらゆる天文イベントを外している大蟻食ですので(ジャコビニ流星雨――はずれ。ハレー彗星――はずれ。去年の何とか流星雨――はずれ)、今更アンゴルモワの大王なんざ怖くもございません。でもただの株の大暴落だったらすんごくがっかりするだろうな。

近況を報告いたしましょう。
  1. 機械を乗り換える。 PB150からPBG3-233/14に変えました。白いリンゴの模様の付いたゴージャスのりの機械。1930年代のブガティみたいなのを想像していたのですが、重量感から言えばブガティ・ロワイヤルくらいはあるな。それにしても、軽蔑してたけど、音が鳴って色が付くって凄いことなのね。ついシェアウェアの作曲ソフトを入れて遊んだり(写譜すると鳴るんですよ。対位法の勉強でもしようかしらん)しています。音楽CDをハードディスクにコピーして鳴らそうと思いましたが、こっちは挫折。四枚でハードディスクが一杯になったから(1枚260メガくらい)。8ギガ積んだら、或いは意味があるかも。
  2. バイオリンを始める。 ヤマハの電気バイオリンの姿に惚れて始めました。サイレントと銘打ってはありますが、共鳴する胴体がなくても十分外聞の悪い音量で鳴ります。目標はジプシー音楽なんですが、まだ音にもなりません。でも結構楽しい。
  3. 「メッテルニヒ氏の仕事」の進行状況。 マリー・ルイーズをナポレオンに押し付けたところまでですね。後はずんずん進んで、三月末にはウィーン会議の前まで行く筈。脱稿は年末か?
  4. 四月から何と早稲田で先生をやる。 早稲田で小説の書き方を教えることになりましたが――私の方が教わりたい。取り敢えず前期はデヴィッド・ロッジを使ってポリフォニーの技法でもやろうかと。
  5. 『鏡の影』絶版。 ついに入手不可能の小説が出ました。どこかでダウンロードできるようにしようと思っておりますが。
さて、溜まっていた分の続きでございます。

Date: Mon, 02 Nov 1998 16:58:17 +0900
From: isakok
Subject: 脅えながら質問させていただきます

初めまして。
臆病なもので少々脅えながら質問させていただきます。
とは言うものの、別段大したことではないのですが。
『英国的にチャーミングなるもの』の中で偽物とキッチュには寛大である、と書かれていましたが、ウォーの作品でも『ブライズヘッド再訪』は例外としても、『衰亡記』や『黒いいたずら』などは、かなりまがい物らしくて私には好ましく思われます。この二作についてはどう思われますか?
またあまり関係ないのですが、ゴア・ヴィダルについて是非お伺いしたいのです。
ヴィダルは日本ではどうやら色物と見られているせいか、とことん無視されており、小説家の方はもちろん、批評家すら殆ど彼に関して何も書いていません。
例外と言えば、川本三郎さんがその半生を随筆のなかで少々取り上げているくらいです。

わたくしはエンターテイメントとしても一流と思われる彼の作品が無視されていることに、憤りをおぼえています。
ヴィダルの歴史小説以外の小説『マイラ』や『カルキ』などは非常に胡散臭く
て、わたくし正直偏愛しているのですが、コメントいただけないでしょうか。
また、ヴィダルは政治的な発言をすることでも知られていますし、そこのところも出来ればお伺いしたいのです。
個人的趣味に基づいた質問で本当に申し訳ありません。

小西直也

*嬉しいですね、ウォーが好きな人がいるなんて。
『ブライズヘッド』も結構キッチュだとは思います。或いは、自分がキッチュであることに悩むキッチュ小説とでも言いますか。『衰亡記』(岩波文庫では『大転落』なるタイトルで出ているが、この訳はすごいぞ。もっとやらないかな、この訳者)の極悪非道さは、えー、丸谷才一氏でしたっけ、この世のどんなものでも笑いものにするのは中産階級の青年の特権である、とか言っていたと思いますが、言い得て妙ですね。『黒いいたずら』は前にどこかで批評したことがあったけど、実はちと物足りない。お勧めは『名誉の剣』三部作でしょうか。訳ないけど。

ちなみに、イギリスにオーベロン・ウォーという怪体な名前の保守の論客がおりますが、これ、ウォーの息子みたいです。たぶんチェスタトンの『ノッティングヒルのナポレオン』のオーベロン・クインから取ったんだな。でも何故?

ゴア・ヴィダルも実は好きです。もっとも読んだ数は少ないですけど。『アーロン・バーの英雄的生涯』(だったかな)とか、それからやっぱ『マイラ』ですかね。昔、『カリギュラ』という映画がございまして(アレクサンダー・マックウィーンが去年秋のコレクションでイメージをぱくっていた)、ヘレン・ミレンがカリギュラの女房のカエソニアをやる以外取り柄のない代物でしたが、企画段階では、台本がゴア・ヴィダル、監督はリリアナ・カヴァーニという、何考えてるのかよくわからない代物のはずでございました。惜しいなあ。

ところでヴィダルってアルバート・ゴアの親戚かしらん。おじいさんは民主党の偉いさんだったって、当人はマーティン・エイミスにインタヴューされた時言ってたよ。

X-Biglobe-Date: Sun, 6 Dec 1998 19:27:44 +0900
From: "Kaori Hattori"
Subject: 催促
Date: Fri, 4 Dec 1998 01:46:38 +0900

 佐藤亜紀様
 新作の小説はまだでしょうか?そろそろ出して下さい。待っています。
                          服部歌織

*ご免なさい。メッテルニヒの伝記を書き上げるまで小説はお休みです。少々欲求不満が溜まってきてますけど。

Date: Fri, 18 Dec 1998 19:42:57 +0900v From: Guest
Organization: Internet Cafe Web House
Subject: はじめまして

初めてメールを送らせてもらいます。
いきなり恐縮ですが、どうも気になったことがあるので、佐藤さんとしてはどうお考えになっているのかお聞きしたいのです。
それは最近の筒井康隆氏についてです。
筒井氏は「噂の真相」という雑誌で連載を再開されましたが、その内容に少し不満を持っています。
例えば柳美里さんが少年法とかの発言でいろいろ叩かれましたよね。
小林某の様なゴーマンマンガ家にあれこれ描かれて、しかも先の「噂真」にもバッシングされた。
筒井氏は柳さんと交流があって、作品の批評をしているはずなのになぜ彼女を弁護してやらないのか。
また、同じく灰谷健次郎氏が神戸の事件の報道をめぐって新潮社ともめたときも何一つコメントしなかった。
本多勝一氏が自分とその同僚に対する記事で、「噂真」とまでもめ、連載を打ちきられる事態に発展するまで「闘った」というのに。
自分の友人がバッシングされているのも関わらずほとんど発言しない筒井氏はある意味「卑怯」ではないでしょうか?
佐藤さんの意見もお願いします。

遠藤 晃司

Date: Mon, 21 Dec 1998 18:31:48 +0900
From: Post at InternetCafe WebHouse
Subject: はじめまして

  佐藤さんにひとつおたずねしたい事があります。
  それは最近の筒井康隆氏についてです。
  筒井氏は、同じく作家の灰谷健次郎氏と友人で、柳美里さんの
 好意的な批評を書いています。
  しかし、少年法の議論をめぐって柳さんがいろいろバッシング
 されたにも関わらず、筒井氏は何一つ彼女を弁護しようともしない。
  (氏が連載している「噂の真相」もその一つだというのに)
  灰谷氏もやはり新潮社ともめたというのに、全く発言しない。
 何故筒井氏は彼らに対し弁護をしないのでしょうか。
  ある意味「卑怯」だと思います。
  佐藤さんは、筒井氏の作品をいくつか批評されているので、
 こちらに送りました。
                     遠藤 晃司      

Date: Fri, 25 Dec 1998 19:58:42 +0900
From: Post at InternetCafe WebHouse
Subject: 佐藤さんへ

  以前、ご質問のメールをおくった者です。
 まだ、ご返事をもらっていないのですが、どうなったの
 でしょうか。質問の内容が悪かったのでしょうか。
  何か、ご返事下さい。
                   遠藤 晃司 

*いえ、そうじゃないんです。さぼってただけなんです。

えー、柳美里氏と筒井康隆氏の件ですが、私がぐずぐずしているうちに某文芸誌に『ゴールドラッシュ』をめぐるお二方の対談が掲載されました。そちらを読めば、筒井氏の沈黙に格別の意図はなかったことはお分かりになるかと思います。そこで取り敢ず、一般論だけ。

1.例の『ゴー宣』に触りたがる作家はごく少数だと言っていいと思います。内容以前に、何と言っても下品だ。ばっちい。この間、某比較的ガテン系なオピニオン誌の編集者に「読んでますか」と言われたので、「ばっちいので指で摘んで読んで、指で摘んで捨てて、後で手を洗ってます」と答えたら大受けでしたが、つまりはそういう類のものです。まあ、あのお美しい柳さんをあんなにも醜く描いたというだけで、わたしゃ許さんがね。

2.作品と当人の社会的発言はまるで別物であり、それと友人であることもまた別なことです。どんなに素晴らしい作品を書く作家でも、社会的発言をさせるとまるで駄目という場合もあり(柳氏に関して言うなら、極めてロジカルで凄みがありましたが)、作品を支持するから発言まで支持する、と言う訳には行きません。たぶん、佐藤亜紀の小説は面白かったが社会的にはとんでもないファシストだ(或いはアナキストだ)と言う方も多い筈。また友人が政治的に正しいかどうかも、いつだって怪しいものであり、無条件な支持は不可能でしょう。

故に、仮に沈黙していたとしても――極端な場合、けちょんけちょんに腐したとしても、全然卑怯ということにはなりません。まあ、それで友情がもつかどうかは疑問だけど、意見の相違くらいで一々絶交する訳にはいきますまい。

Date: Mon, 04 Jan 1999 21:17:41 +0900
From: Seiichiro Yoshii
Subject: あけましておめでとうございます。

何やら昨年の11月には、渋谷のミニFM局でワインのボトルを空けつつ大いに盛り上ったとか。知っていたら行ったのになあ。残念。ともあれ、今年もよい小説を書いてください。本年もよろしくお願い申し上げます。


「ナイスバディ」ぶる

*えー、何で第29回を十月にUPしようと思ったかというと、その件をお披露目しようと思ったからなんですが、ぐずぐずしている間に当日が来てしまい、ページ更新もここまで遅れちゃった訳です。ご免なさい。

また次があれば、必ず派手に告知いたします。

それにしても最近は、酒を飲み始めると這って帰ることになるまでやめられない。危ないったらないな。

Date: Wed, 10 Feb 1999 18:23:32 +0900
From: Seiichiro Yoshii
Subject: ご無沙汰しております。

昨年末は突然妙なお誘いを送り付け失礼しました。最近消息が殆ど入ってこないのでちと寂しいです(あ。でもついこの間某雑誌で対談をしてましたね)。

ところで現在、巷では今回芥川賞を取った『日蝕』という作品がえらい話題となり、大書店の週間ベストセラーランキングでトップを取ったりしておりますが、大蟻食様はあの作品をどうお思いになりますか。いや、少なくとも表面的にはあの作品、大蟻食様の好きそうな世界に近いような気がしたものですから。
ちなみに僕の私見では「J-POPを席捲しているヴィジュアル系の世界をブンガクに取り入れて、わずかにエーコ的な味付けををするとこうなるのかな」という感じがしました。もっとも、立ち読みでぱらぱらと読んだ程度なのでもしかしたら何か読み落としているかも知れませんが。いくら芥川賞といったって、いちいち全部買ってたら部屋の床が抜けてしまいます。・・・まあ床うんぬんはともかく、なんとなく釈然としないあたくしなのでした。

それではまた。

ぶる

*今更こんなことまじでやられてもなあ、というのが、去年読んだ時の感想でした。小難しい文章まで含めて、いかにも大学生の小説。もっとも、冬になってから発表された第二作から言えば、文句なしに実力のある人ではあります。つぶれずに頑張って欲しい。結構かわいいしね。

ようやく追いついたぞ。
以後は速やかに更新いたしますので、文句とご意見のある方は文句ボタンをお押しいただくか、tamanoir@dccinet.co.jp までメイルにてお願いいたします。

それではまた。


1998.2.10
大蟻食