2002.12.01 sun.
大学の後輩二人とお茶をする。一人はまだ現役の学生で、もう一人も今年の春に卒業したばかり。どちらも若くて元気がいいので、こちらはなんとなく年齢を感じたりするのである。おみやげにクロマツの盆栽の"缶詰"をもらったので、帰宅してから早速缶を開いて種まきをしてみる。発芽までに二ヶ月くらいかかるそうである。夜はポトフの残りを平らげる。

2002.12.02 mon.
大蟻食は大学へ。わたしは大蟻食の帰りを待つ間にアントニー・ビーヴァー「スターリングラード」(朝日新聞社)を読み始める。いわゆるスターリングラードの戦いを豊富な個人資料とインタビューから再構築した著作で、その労力だけでもものすごい。そして多面的な記述が実に魅力的である。

2002.12.04 wed.
雨。昼頃、麹町方面へ。続いて新宿方面へ。夕方に帰宅。いっぱい濡れた。寝る前にアントニー・ビーヴァー「スターリングラード」(朝日新聞社)を読み終える。まったく 涙も凍る寒さ なのであった。というわけで、眠りに落ちるまでかなり鬱々とした気分を味わうことになったけど、気分で済むからありがたい話だ。

2002.12.05 thu.
午前中にモンブランへ行ってケーキの買い出し。そうして待っていると沢村凛さんと銀林みのるさんがやってくる。昼食の支度は沢村さんがしてきてくれたし、お酒は銀林さんが持ってきてくれたので、大蟻食とわたしは並べるだけである。食事の後、お茶を飲んでケーキを食べて、喋っているうちになぜか 「サウスパーク」 の鑑賞会になってしまう。なんだかこちらの趣味を押し付けたようで申し訳ないような気がするのである。夕刻、お二人を駅まで見送る。夕食は簡単に済ませて、わたしは寝る前にJ.K.ローリング「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(静山社)を読み終える(ハリーはさっさとダドリー一家と決別すべきだと思うんだけど、しないね)。

2002.12.06 fri.
ちゃんと原作を読んで予習をしたので、大蟻食と一緒に 映画 の方を見物に行く。渋谷パンテオンの一回目で、4割程度の入り。こうした内容で2時間半はちょっと長い。見終わってから紅虎で昼食。赤い坦々麺と黒い坦々麺を取り分けて食べながら、大蟻食とわたしは今後、腰を据えてマルフォイ親子を応援するということで方針を定める。夜、床に入ってからトニーたけざき「SPACE PINCHY」(講談社)を読む。フルCGで描かれたフルカラーのスペース・オペラである。でも作者がトニーたけざきなので下世話で下品なのである。世にもくだらない内容と、そこにつぎ込まれている膨大な労力に、脇から覗き込んだ大蟻食が感心していた。

2002.12.07 sat.
雨。ゴンゾの家(わたしの実家)との間に電子メールが開通する。父がしばらく前にVAIO NOTEを購入したのである。大蟻食は学校へ。わたしは一人で12月の雨の日っぽいことをする。お昼にうどんを食べながら「宇宙船ビーグル号」を読んだのである。その後、「ラチェット&クランク」を買ってきて、早速やってみる。INSOMNIACの新作ゲームである。さぼっていて前作「ジャックXダクスター」をやっていないので、さらに遡って「スパイロ」との比較になるわけだけど、ステージのデザインもプレイの感触も実によく似ている。つまり動かしていると、それだけで楽しいと感じさせる。この製作会社のこういう生真面目さにはいつも感心するのである。違うのはこちらがPS2に対応していることで、だから背景などに投入されている情報量がものすごい。ただ、例によって中年男には難易度高めという感じなので、たぶん最後まではできないであろう、という予感がすでにしていたりする。7時半頃、大蟻食から間もなく到着するという連絡があったので、駅まで迎えに出る。寒い。おみやげにソバカツサンドというのをもらった。ふつうの三角サンドに焼きそばとハムカツがはさんであるという珍品である。早稲田大学構内の売店で売っているらしい。荷物を家に置いてから壁の穴へ行ってサラダとスパゲッティで夕食。お茶をして帰宅する。夜半過ぎ、小腹が空いてきたあたりでソバカツサンドというのを食べてみたけれど、焼きそばがハムカツに食われているような気がした。

2002.12.9 mon.
雪。お昼に降り止む。

2002.12.11 wed.
「ラチェット&クランク」を継続中。わたしの両親が三ケ日みかん他、大量の食品を持ち込んでくる。香琳(姪、1歳)は立ち上がって自己主張をして、おまけにゴンゾのひげを引っ張るようになったという。

2002.12.13 fri.
早朝、大蟻食は東京女子医大へ。最終的に診察が終わるのにお昼過ぎまでかかったという。夜、大蟻食と一緒に表参道へ。『佐藤嗣麻子さんと祝うゴシック・クリスマス』に参加する。真に受けていなかったけど、やっぱり服装コードがあったみたい。ゴシックな服装をしなければならなかったのである。いつもと同じ格好じゃないかと誰かから批判された。ちゃんとコードを守ってゴシックな格好をしてきた井上雅彦さんから現駕察 待請(みかみ まこ)さんという画家の方を紹介していただく。作品のコピーを何枚か頂戴したが、幻想的なモチーフが鉛筆で細密に描きこまれていて魅力的である。

2002.12.14 sat.
大蟻食は学校へ。わたしは「ラチェット&クランク」の最終ボス戦へ。非合法の9連装ミサイルを装備しているのでビッグ・ボスも怖くない。一人で昼食。午後は 「少林サッカー」 を見て、 「サウンド・オブ・サイレンス」 を見て、そうしていると夜になったので大蟻食を迎えに駅へ行く。お茶をして帰宅して、昨夜から仕込んでいた牛テールのポトフを食べながら 「スコーピオン」 を見る。劇場で見た予告編とはだいぶ違う。それからセバスチャン・ユンガー「パーフェクト・ストーム」(佐宗鈴夫訳、集英社文庫)を読み終える。 映画 のような創作は入っていないものの、モダン・ジャーナリズムの弊害なのか、ことさらに再現的な態度がいくらか気に障る。しかも文章は(これは訳者のせいではあるまい)歴史的現在のやってはいけない見本帳のような有様であった。それでもニューイングランドにおける漁業の歴史、暴風に遭遇した場合の小型船舶の対応や溺死に関する記述は興味深い。

2002.12.15 sun.
大蟻食と一緒にMacoe's Bagle Cafeで遅い朝食。それから二子玉川へ出て、まず来年用のカレンダーを購入する。それからガーデンアイランドへ。大蟻食のモミの木を探して、どれも成長しすぎている(適当な幼木はたぶんとっくの昔に売れてしまった)という理由から今年は買うのをあきらめて、代わりに白いミニローズを購入する。うろうろして疲れたので屋上のテラスでお茶(それとクリスマス仕様のチョココロネ)。
で、お茶をしているうちに大蟻食が気がついた。テラスには飼い主と一緒にお茶に来ている犬が六匹ほどいたけれど、どれもこれも服を着ていたのである。たとえば黒いテリアは黒いセーターを着ていたし、ポメラニアンは赤いチェックのシャツにジージャンを重ね着していたし、ダックスフントは青地に白い線の入ったセーターを着ていた。みんなとってもおしゃれでかわいかったけど、大蟻食もわたしもけものに服を着せる行為には何か自然に反するものを感じるのである。
シャトルバスに乗り込んで高島屋SCへ戻り、地下の食品売り場でベーコンのブロックを探す。ところがあるのは麗々しく真空包装された高価なブロックばかりで、ぞんざいに量り売りされているようなものが見つからない。安いベーコンのブロックがないと大蟻食が冬場の定番料理(うちでは百姓皿と呼んでいて、ザワークラウトとベーコンとソーセージの煮込み)を作れないのである。大蟻食もわたしもこれにサワークリームをぶち込んでビールで流し込むのが大好きなので、作れないのは大問題なのである。やはり諸悪の根源はこの夏にあった自由が丘ピーコックの改装であろう。前はここでベーコンのブロックが容易に手に入ったのに、大規模な店内改装の結果、いくらかの高級志向が取り込まれることになって(ポール・ボキューズのパン屋、というのはそういうことであろう)、量り売りのショルダーベーコンのような雑な食べ物は駆逐されてしまったのであった。引き続き探索を続けるということを夫婦で誓って、千疋屋の(最高の材料のみを使った究極の)モンブラン(1個800円!)を2つ買って帰宅する。早速お茶を入れて食べてみたけれど、威張るだけのことはあって実に風雅な味であった。洋菓子であってもコンセプトに和菓子があるのではないか、というのが大蟻食の感想である。たしかにおいしかったけれど、わたしとしてはモンブランのモンブランの方が好き。夕食は昨日のポトフのスープをベースにしてキャベツのリゾット。

2002.12.18 wed.
大蟻食は昼から学校へ。わたしは年末の買出しに取り掛かる。夜、大蟻食は学校からまっすぐに宴会へ。わたしは家でアーヴィングの「アルハンブラ物語」を読む。挿絵がきれい。叙情的な文章にはなじみがないので、書き手が現実に対して抱いている距離感が判断しづらい。読んでいて戸惑うことが多いようだ。夜半前、大蟻食から電話。編集の人と近所で飲んでいるから合流せよ、という。合流しておしゃべりをする。

2002.12.21 sat.
雨。寒い。大蟻食はちょっと病気。わたしは午後からゴンゾの家へ。両親もゴンゾも元気にしていた。お茶を飲んでちょっとおしゃべりをして、ローストチキンやコロッケ、イチゴなどの食料をもらって帰還する。大蟻食が復活してきたのでローストチキンとコロッケとサラダと夕食。食べながら 「タイムマシン」 を見る。劇場で見なくて正解だったかもしれない。

2002.12.22 sun.
ふと思い立って 「快盗ブラック・タイガー」 を見る。

2002.12.23 mon.
おおむね晴れ。遅ればせながら「バガボンド」(井上雄彦、講談社)を3巻まで買ってきて読んでみる。たしかに面白い。4巻以降も買ってくるのか? あと、「ヘウレーカ」(岩明均、白泉社)も読んだけれど、これは今ひとつ。ボケのきたアルキメデスという設定は悪くないものの、題材の扱いが乱雑すぎるし、絵もきれいとは言いがたい。それと、「エヴァンゲリオン」の8巻(貞本義行、角川書店)、これは相変わらず。夜、大蟻食と一緒にまずゴンゾの家へ。ゴンゾに挨拶してから巽孝之氏・小谷真理氏のお宅へお邪魔する。クリスマス・パーティである。盛況であった。 小林エリカさん 手作りのティラミスが感動物。さんざん飲み食いをして、 巽ゼミ の機関誌"Panic Americana"7号をもらって(リバーシブルになった力作だ!)、夜半前に失礼する(巽先生、キューブリックの件で絡んでごめん)。

2002.12.24 tue.
曇り。朝、大蟻食はバイオリン教室へ。わたしは大蟻食を見送った後、モンブランで予約しておいたクリスマスケーキを受け取る(イチゴのショートケーキとシュトーレン、ちなみに越年用のフルーツケーキは23日に買っておいた)。午後から大蟻食は家で仕事。わたしは池袋の東武デパートへ。本館6階の美術サロンで小さな絵の展覧会を見物する。夜、大蟻食は聖歌隊のお勤めで教会へ。わたしは家に残って「バガボンド」の続き(結局、買ってきた)を読む。夜半前、大蟻食が帰ってきたのでお茶を入れて、まずショートケーキを食べる。それからいただきもののアイスワインを抜いて、シュトーレンを少しだけ食べる。しあわせ。

2002.12.25 wed.
「バガボンド」と原作との関係が気になったので、吉川英治の「宮本武蔵」を読んでみる。白状すると、吉川英治を読むのは後にも先にもこれが初めてなのである。この独特の講談調は視点が叙述や時間に吸着していかないので、慣れるまでは読むのに少々骨が折れた。で、ようやく慣れてきたところで眺めてみると、「バガボンド」は原作のプロットを尊重しながら現代的によく咀嚼し、剣豪=フリーターという図式を巧みに提示しているということになるのであろうか。だからこそ郷里の家、姫路城主池田輝政、幽閉などといった要素は邪魔になるので後景に放り込まれるか、省略されている。全体の距離感は圧縮されて、小さな世界が構築されている。実にうまく処理されていると思うのである。又八の裏切りの場面は原作よりも「バガボンド」の方が数段優れているのではあるまいか、などと考えているうちに気がついたら42歳になっていた。
夜は大蟻食と一緒に Le Bouillonへ。 クリスマス・メニューである。どの料理もおいしかったけど、前菜に登場したタラの白子のポワレとリンゴのピューレというのは味が想像できなかっただけに食べた時の驚きが大きかった。白子のポワレの深みのある味がリンゴのピューレの軽い酸味に包まれて、口いっぱいに広がっていくのである。魚料理はいとよりのポワレ、肉料理は蝦夷鹿の赤ワイン煮(にんじんのピューレとのコンビネーションがすごい)、チーズもいただいて、デザートはヌガーグラッセ、キャラメルのアイスクリームかな、と思っていたら本当にヌガーのグラッセだった。満腹して帰宅する。

2002.12.26 thu.
大蟻食と一緒に池袋へ行く。駅のはずれのメトロポリタン口とかいう場所付近にKIHACHIの揚げパン屋さんがあったので、すぐに誘惑に負けて引き寄せられてカレーパンとコーヒーを注文する。飲み食いをしていると沢村凛さんがやってきたので、そろってナムコ・ナンジャタウンへ。大蟻食とわたしは初めてである。狭くて薄暗くて入り組んでいて、方向感覚が掴めない、立っているうちに酔ったような気分になってくるひどく奇妙な場所であった。
とりあえず何かしよう、ということで「地獄旅館」というところへ入ってみる。いわゆるお化け屋敷である。入り口で心拍を計られて、出てきたところでもまた計測されて、その結果にしたがって弱虫鑑定書というのを受け取る仕組みになっている。大蟻食は「震える子犬の心臓」で、わたしは「ノミの心臓」で、もちろんわたしの方が弱虫という判定である。腹を立てる。
本来の目的地である餃子スタジアムで宇都宮の餃子3種と水餃子を食べて、次に「ディノスの審判」というのをやってみる。あなたの寿命を判定する、といったような占いゲームで、大蟻食がポジティブな判定をもらう一方、わたしは臆病、小心、だらしない、などといったネガティブな判定をもらう。腹を立てる。
さらに「ステラの手相の間」とかいうところへ入って大蟻食と並んで相性占いをやってみたら、大蟻食は博愛主義、わたしは意志が弱くて注意力に欠けているという判定で、なんだかもう、腹を立てる。
最後にファイヤーブルとかいうヴァーチャル・シューティング・ゲームをやって、ついでに水族館を見物して、お茶をして、ファイヤーブルでわたしがコントローラを連打する光景が面白かったと大蟻食に笑いものにされて、腹を立てる。
ナンジャタウンは元気なこどもたちでいっぱいであった。おおむね上機嫌で帰宅する。

2002.12.27 fri.
夜、大蟻食と一緒に「バンド・オブ・ブラザーズ」の残りを見る。
[Band of Brothers]
Part 7:The Breaking Point - 第七部はまだ真冬のベルギー。ドイツ軍が砲兵陣地を構えた小村に対して戦線を敷き、まず前半はドイツの猛烈な砲撃。タコツボ直撃場面は見ているこちらもかなり堪えた。勇敢なコンプトン中尉が戦闘神経症になるのも当然であろう。後半は村の攻略。E中隊の無能指揮官は更迭され、スピアーズ中尉が指揮官となる。そして激しい戦闘のさなかでスピアーズ中尉は自分の伝説に新しいエピソードを追加する(味方と打ち合わせるためにドイツ軍の弾幕の前を横切り、打ち合わせが終わると舞い戻ってくる)。
Part 8:The Last Patrol - E中隊はドイツ国境へ接近する。第一小隊は夜間にライン川を越えて敵陣に侵入し、捕虜を獲得して帰還する。擲弾筒や手榴弾を使ったら破裂するまで待っていないと本当に危ないという話であった。戦果に気をよくした連隊長は次の番にも偵察を命じるが、ウィンターズ大尉は状況を巧みに消化する。
Part 9:Why We Fight - E中隊はドイツへ侵攻し、ドイツ軍捕虜がぞろぞろと南下するアウトバーンを進んでいく。そして宿営地を決めて周辺の偵察をおこなった結果、森の奥で強制収容所を発見する。
Part 10:Points - E中隊はベルヒテスガーデンを占領し、ヒトラー関係の各種レア・アイテムを収穫する。ヨーロッパでの戦争は終わり、やがて太平洋での戦争も終わり、部隊は戦時編成を解かれていく。

番組の最初や最後に顔を出す生き残りのじいさんたちも立派だったし、地味になるのを厭わずにリアルな状況を淡々と映像化していった製作者たちの態度も立派であった(ただ、車両は変だったけど)。


2002.12.28 sat.
実はまだ吉川英治の「宮本武蔵」を読み続けている。「バガボンド」14巻で登場する佐々木小次郎の設定は完全にオリジナルだったわけだ、とやっと理解した。

2002.12.29 sun.
朝、大蟻食は教会へ。わたしは散歩をしに駒沢公園へ。夕方、一緒に渋谷へ出て 「マイノリティ・リポート」 を見物する。渋東シネタワーの最終回で約4割の入り。

2002.12.30 mon.
夜、大蟻食と一緒にゴンゾの家へ。夕食を食べて、お餅などをたくさんもらって帰宅する。

2002.12.31 tue.
朝、わたしはひとりでゴンゾの家へ。前夜、忘れ物をしたからである。昼前に帰宅して、大蟻食と一緒に買い出しへ。夕食用の材料のほかに、お雑煮用の材料などをいくらか仕入れて家に運び、夕食の仕込みを終えてから今度は渋谷へ。 「K-19」 を見物する。渋東シネタワーの最終回で約2割の入り。話を作りすぎていて素直に好感を持つのは難しかったけど、それなりによくできた映画だと思う。製作にナショナル・ジオグラフィックが入っているのはどういう意味だろう?
見終わって出てくると夜になったので、家に戻ってまずお風呂に入り、それから白菜と肉団子の煮込みで夕食。ワインを開けて、パンをかじっているうちに年が明ける。
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