2001.7.1 sun.

快晴。日中の気温が36度を越える。フェーン現象だったようだ。気圧の上がったり下がったりが身体に来たのか、ちょっとした頭痛を起こしてひっくり返る。ひっくり返ったついでに士郎正宗「攻殻機動隊2」(講談社)を読む。ビジュアル・イメージはすごいと思うし、CGも手が込んでいると思うのだが、頭痛を抱えた状態ではコマの中にこちゃこちゃと書き込まれた文字を読む気にならない。


2001.7.2 mon.

晴れ。ただし冷たい南西の風が吹いて過ごしやすい。頭痛と発熱の続き。ほとんど終日横たわっていた。横たわった状態で、内田義雄「聖地ソロフキの悲劇」(NHK出版)を読む。旧ソ連時代の、いわゆるラーゲリの草分け的存在であったソロフキ収容所に関するレポートである。貴重な写真や、断片的ではあるがKGBから提示された統計情報が含まれているあたりは興味深い。ただ、内容そのものに関して言えば今一つまとめきれていないという印象は否めない。それに「悲劇」とか「恐怖の」とか「凄惨な」とかいったような思考停止的な表現がやたらと目について少々、いや、かなりうんざりした。


2001.7.3 tue.

こいつはびっくり! いつの間にやら マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」がBBCでドラマ化されてるよ。全4話のミニシリーズだって。従僕フレイはクリストファー・リーだ。見たい見たい見たい見たい、早く見たいぞ。


2001.7.6 fri.

「サウスパーク」 劇場版のDVDを購入。で、帰宅してから早速見る。まず関西弁吹き替え版で見て、それから英語版で見る。WOWWOWの吹き替えについては事情はどうあれ色々と文句があるのだが、この関西弁吹き替え版は賞賛に値する。この仕事はかなり高度な言語的センスの持ち主によるものであろう。歌まで見事に吹き替えてあった。問題があったとすればそれは吹き替えそのものではなく、ダイアログに対して与えられているそもそものテンションの高さにある。聞き漏らすまいとして耳を傾けていると、画面を見ている暇がなくなるのである。というわけで関西弁吹き替え版は素晴らしい出来映えであったが、日本語字幕の英語版の方が見ていて楽だという話になる。見終わった後は夫婦で"BLAME CANADA"などと歌っておりました。
で、わたしはその状態で机に向かってトロツキー「裏切られた革命」(岩波文庫)を読み終える。大半はスターリンを首班とする当時のソビエト政権の誤りを指摘することに向けられているが、いろいろと参考になった。富農撲滅に対してトロツキーは一定の留保を持っているらしいこと、いわゆる産業党事件に代表されるような技術者サボタージュについても、まったくの捏造であるとは考えていないこと、大粛清の過程にあっては青年層に反対派的(スターリン政権に対する)分子が存在し、地下活動をおこなっていると確信していること、などである。最後の点についてはどのような根拠でそう言っているのかがわからなかった(とはいえ、根拠があっても書くことはできなかったと思うのだが)。しかしなんと言っても参考になったのは非難のレトリックであろう。つまりレーニンの「正統主義」から逸脱し、「官僚主義」を持ち込んで「革命を裏切った」「無教養な」「町人階級出身者ども」に対する非難、嫌味、あてこすり、揚げ足取り、などが豊富に盛り込まれていて、これはほんとうに参考になった。参考になったからと言って、使えるものでもないのだけれども。ちなみにトロツキーによればロシア革命後の失敗は、主としてロシアという国の貧困と無知にあったのだそうである。革命をする前からそれはわかっていたけれど、ロシアで革命が起これば西欧社会、特にドイツでも革命が起こり、世界革命へと発展していく筈だった(そしてスターリンですらそれは疑っていなかった)ので、ドイツ社会民主党がワイマール共和国に潜り込んでぬくぬくとしていたことには本当に裏切られたと感じたようなのである。そうなると信じていた根拠がいったいどこにあったのか、ちょっと興味がある。


2001.7.7 sat.

なんとなく終日朦朧と過ごし(最近はこれが多い)、夜になってから大蟻食はワインを抜いて、わたしはまだノン・アルコール・モードなのでペプシを抱えて、並んで 「処刑人」を見る。 大蟻食はたいそう喜んでいたけれど。


2001.7.8 sun.

体調が回復して来たようなので、お昼にベトナム料理を食べてから少し散歩する。散歩をしている間にペンギン型の大型魔法瓶、大蟻食のチェスの駒を入れる籠、わたしの手帳などを購入し、BODY SHOPで石鹸を買い求めてから今年最初のかき氷を食べる。暑かったので、夜はテンプラと冷やしうどん。食べながら「鉄腕ダッシュ」を見て(田植えだけで1時間番組を仕上げるんだからたいしたもんだ)、続いて毎度のことながら「リサーチ200X」を見る。今回は5分でできるダイエットの話である。大蟻食もわたしもテレビでやっていることにすぐ影響されるので、並んで見ながら早速体操をしていた。番組の後半はビールのおいしい飲み方である。新潟大学の歯学部ではそういう研究をしているのだそうである(なんで歯学部なんだろう?)。で、大蟻食もわたしもテレビでやっていることにすぐ影響されるので、番組が終わった時にはビールを飲む相談をしていた。というわけで大蟻食はピルスナー、わたしはハイネケンを飲みながら、ビデオで 「インナー・サークル」 を見る。傑作であった。かなり前にビデオ・リリースされていながら、さぼって見ていなかったのだが、地元のビデオ屋さんに頼んでおいたらすぐに探し出してくれたのである。ありがたいことだ。ちなみにスターリン、ベリア時代のロシアを扱った映画にはほかに 「クレムリンの赤いバラ」 という怪作があって、実を言うとまた見たくなっているのだけれど、これは自分で探さないとだめだろうね。


2001.7.13 fri.

なんだかすごい暑さなのである。夜になってから会社の宴会。気候のせいなのか、まだ復調していないせいなのか、ビールをちょっと飲んだだけでひどくまわった。


2001.7.14 sat.

かわらずに暑いのである。前夜のアルコールがきれいに抜けてくれない。大蟻食と一緒にお昼を食べながら「富嶽が飛んだ」「尾島町RC航空ページェント」のビデオを見る。前者は「富嶽を飛ばそう会」のラジコン富嶽製作記録、後者は群馬放送の番組録画で、その富嶽が一般にお披露目された様子が収録されている。さすがに6発ともなると、ラジコンでもいい音がするねえ。
ちなみに「富嶽を飛ばそう会」のホームページは群馬県太田市のホームページの中にあって、URLは
http://www.sss.ne.jp/otakanko/d060-kanko/fugaku/h_fugaku.htm


2001.7.15 sun.

とにかく暑いのでごろごろしている。大蟻食がお昼にガスパチョとスペイン風オムレツを作ったので、それを食べながら 「スミス都へ行く」 を見る。大蟻食が借りてきたのである。実はフランク・キャプラとビリー・ワイルダーは老後の楽しみにとってあって、どちらもあまり見ていない。見終わった後、ベッドに横たわってアレッサンドロ・ボッファ「おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ」(河出書房新社)を読み終える。期待していたほどのひねりはなかったものの(警察犬の話は悪ごりであろう)、カッコウの話とカイメンの話は気に入った。


2001.7.16 mon.

夜、大蟻食と待ち合わせをして、ようやく 「A.I.」 を見る。渋谷パンテオンの最終回で、5割の入りといったところか。


2001.7.17 tue.

アルフレッド・ランシング「エンデュアランス号漂流」(新潮文庫)を読み終える。面白かった。第一次大戦勃発直後に南極大陸横断に出発した連中が、船ごと流氷原に閉じ込められて1年以上も漂流する話である。流氷に囲まれて越冬し、船を失ってからは徒歩と犬橇で氷上を移動し、氷が割れてきてからはボートで進んでウェッデル海の島に到達し、代表6名が荒れ狂う南氷洋をボートで突破して捕鯨基地に救援を求め、遂に最後には全員が生還する。この全員生還というところがすごいと思う。しかも島で待っていた連中は都合2回、それもろくな装備もなしに越冬しているわけである。流氷に挟み込まれたエンデュアランス号が次第に崩壊していくあたりの描写も迫力があったが、白眉は後半、ちっぽけな捕鯨用ボートでの南氷洋横断であろう。ほとんど 「パーフェクト・ストーム」 みたいな状況を、みんなで水をかい出しながら突破していくのである。この生存への意欲と、とにかく前進を続けようとする楽観主義は真似できるものではない。
夜はまた大蟻食がアイロンをかけ始めたので、そばに腰掛けて「収容所群島」を朗読する。すでに第1部は読み終えていて、第2部「第1章 群島の船」「第2章 群島の港」も終わり、「第3章 奴隷キャラバン」に進んでいる。


2001.7.18 wed.

今日は珍しく雲がかかっている。夕方から南風が吹き始めて、たぶんそれが東京湾上の臭気を運んできたのであろう。かなり臭う。夜、大蟻食と待ち合わせをして 「パール・ハーバー」 を見る。渋谷東急の最終回で3割の入りというところであろうか。
ところで先週末、ラジコン富嶽のビデオを見た後になるが、そういえばそんな物もあったっけ、ということで棚の奥から引っ張り出してきて「R/C WARS」というビデオを見た。アメリカのラジコン雑誌が出しているビデオで、内容はというとラジコンで太平洋戦争を再現したようなことになっている。もちろん特定の状況を再現しているのではなく、なにしろ太平洋戦線は航空機の機種が豊富なので、それを脈絡もなく投入して空中戦をやっている。煙を吹いて落ちていくのはゼロ戦だけ。いちおうパイロ技術者が撮影に参加していて、丘や木の向こうにゼロ戦が墜落すると、派手に火柱があがったりするかなりおばかなビデオである。一度だけだが、ゼロ戦が空中で本当に火を吹いて翼が折れるという場面もあって、これはちょっと感心した。航空機以外にはシャーマン戦車、PTボートなども登場し、ラジコンの戦車が日本軍の陣地を砲撃したり、PTボートが赤城に魚雷を発射したりする。広大な箱庭のような具合に、地上にもジオラマが組まれているのだ。つまり本物の火薬と高価なラジコンを使った、それでもちゃちな戦争ごっこで、後半、数人が兵士の扮装でもぞもぞ登場して硫黄島の星条旗掲揚の場面をちょろっとやったりするあたりはもうバカ丸出しという感じであろうか。ただ、ラジコンのスケール機はどれも立派なもので、特にB25、DC3は見応えがあった。最後の方にラジコン航空ショーの紹介がちょっぴり入っていて、そこに登場するB29はかなりの大きさで(明らかにRC富嶽よりも大きい)、それがまた見事に飛行している。ただ、好みで言えばB29はあまり美しさを感じさせない機体である。やはりフォルムはB25か、B17であろう。


2001.7.19 thu.

曇り。いくらか気温が下がったようだが蒸し暑い。夜、大蟻食と待ち合わせをして 「テイラー・オブ・パナマ」 を見る。いかにもジョン・ブアマンといった風情のある傑作であった。映画館の後は久々に紅虎で食事。帰宅してから「ファイナル・ファンタジーX」をちょっとだけやってみる。例によってCGはすごいけど、冒頭のこの展開はちょっとだるい。
ところでここのところアッリアノスの「アレクサンドロス大王東征記」(岩波文庫)をぱらぱらとめくっているのだが、それでわかったのはヘレニズム時代はやっぱり苦手だということである。体質にあわない。どことなくタキトゥスめいた書きぶりなので読みにくいのはそのせいかとも思っていたら、そうではなくポリフォニーがなかったのだ。「アレクサンドロス」と「それ以外」しかいない世界ではどうしてみようもないけれど、古典古代には英雄ではなくポリフォニーを期待したい(といって、どうなるものでもないが)。クセノポンがぎりぎりの線だということになるのだろう。


2001.7.20 fri.

昼ごろに渋谷へ出て、まず「千と千尋の神隠し」の状況を見物する。予想はしていたが、やはりたいそうなことになっている模様である。というわけで映画は断念して買物をする。それから自由ケ丘に戻り、洋食屋で遅い昼食。帰宅してから「ファイナル・ファンタジーX」を最初からやり直す。アイテムの取りこぼしやアイテムの無駄づかいがかなりあったことが判明したからである。ちょっとだけやり直すつもりが4時間を越えてしまう。とめどがないのだ。ただ、そのせいでスフィア盤とかいう新しい成長システムや新しい戦闘システムにも少し慣れてきた。登場人物の性格が全般に能天気なのはよろしいのではないかと思う。大蟻食は主人公のティーダがかわいいと言う。夜は大蟻食と一緒にジェームズ・キャメロン製作の 「ダーク・エンジェル」 パイロット版を見る。この続きは、もしかしたら見ないかもしれない。


2001.7.21 sat.

起きたらもう昼になっていた。やたらと腹が減っていたのでドミノのピザを取り(カルボナーラとスパイシー・アルティメットのハーフ・アンド・ハーフ)、それを食べながら 「スペース・カウボーイ」 を見る。棺桶に片足を突っ込んだ爺さんたちに怖いものは何もない。見終わってから渋谷へ。東急ハンズで鉢植え用の水やり器を購入する。西武にも寄って買物をして、それから西村フルーツパーラーへ。喉の渇きを癒してから渋谷駅構内のロクシタンへ入り、石鹸の予備と若干の香料を購入する。それから自由ケ丘に戻り、お茶をして帰宅。大蟻食がスパゲッティを作ったのでそれを食べ、夜は再び「ファイナル・ファンタジーX」。黒魔法を使うルールーとかいう名のご婦人は名前からしても風情からしても、なんだかパリかどこかの娼婦みたい。


2001.7.22 sun.

例によって快晴。土曜日の夜には明石で恐ろしい事件が起こっていた。花火大会が終わった後の状況というのはわたしも経験があるけれど、あの混雑はたしかに殺人的である。それにしても亡くなったのがこどもや老人ばかりというのが、なんとも無残だ。
相変わらずとめどもなく「ファイナル・ファンタジーX」。で、ゲームと一緒に買ってきた最速攻略とかいう攻略本が、実は中盤までにしか対応していないということにはたと気がつく。9の時には攻略本すらなかったわけなので、とするとまたインターネットの攻略サイトに齧りついてやるという話になるのであろうか。


2001.7.23 mon.

あんまり暑いので、大蟻食はわたしを置いて新潟へ脱出。


2001.7.26 thu.

涼しくなった。


2001.7.28 sat.

曇り、時々晴れ。北東から冷たい風が吹いていて過ごしやすい。
まず 「シックス・デイ」 を見て、それからスワヴォーミル・ムロージェク「所長」(未知谷)を読み終える。社会主義政権時代のポーランドを背景にしたブラックなスケッチ集で、いわゆる「東欧ジョーク」に限りなく近い。タイトルにある「所長」というのは、どうやらポーランドでもかなりはずれた場所にある国営「櫛」製造企業の責任者らしい。で、その「所長」と、語り手の「僕」、「部長」「会計係」などが社会主義ネタの掛け合い漫才をするという趣向である。しらけた口調でひどい話をしているので、わたしはとにかく気に入った。解説によればそのままの内容が社会主義政権時代にラジオ放送されたり舞台にかかったりしていた模様で、それがまた国民にたいそうな人気で作者が国外に「脱出」してもまだ放送されたり上演されたりしていたというから、よくよくポーランド人気質というのは「社会主義」に向いていなかったのであろう。「ファイナル・ファンタジーX」は例の「最速攻略本」の攻略範囲、つまり中盤に到達。


2001.7.29 sun.

朝のうち曇り、午後から晴れ。北東からの風はまだ吹いている。
「ファイナル・ファンタジーX」を進めたところユウナ失踪イベントが始まってしまい、結局これを終えるのに一日を費やす。ティーダの親父は登場するわ、リュックの親父は登場するわ、迷路まがいの試練にはまるわ、実に長い一日であった。しかし、今回はほんとに「父と子」が多いね。というわけで夜にはティーダとユウナのキス・シーン(テレビ・スポットで流れているやつ)。


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