2001.1.1 mon

<20世紀からの続き> 騒いでいるのになかなか気づかないのは冷淡な夫の証拠であると言って大蟻食は非難する。我々はこれからどうなるのかと尋ねると、ワインを飲むのだということだった。大蟻食はワインを飲み始め、アルコールが今ひとつほしくないわたしはお茶を飲むことにする。それぞれワインやお茶を飲みながらテレビで日中韓合同チームによるドミノ倒しを見物し、それからNHK教育の「20世紀の名演奏・第8夜 ニッポンの巨匠たち」を漫然と眺める。その昔に上演されたオペラの収録画像はなかなかに面白かった。
2時ごろ床に就いて9時ごろ目を覚ます。お雑煮を食べ、年賀状を読み、新聞も読んで二休みくらいしてから散歩。人出はあまりない。晴れていたが、風が強くてかなり冷たい。寒いのでスターバックへ入ってコーヒーを飲み、それからお決まりのビデオ店へ。ついで東急ストアへ入って少し買い物をして、帰宅。夕食までの時間を池田憲章・高橋信之「ウルトラマン対仮面ライダー(文春文庫PLUS)」を読んで過ごす。(なんとなくお正月っぽい)、夕食はまたお餅。さらにアジの丸干しやサンマの干物を食べ、ちょっぴりお酒も飲みながら、昼の間に借りてきた 「アメリカン・ビューティー」を見る (これもなかなかにお正月っぽい)。


2001.1.2 tue.

昼の間にモンブランでケーキを仕入れ、夕方から大蟻食と一緒にわたしの実家へ。なぜだろうか、モンブランのシュークリームにはいつもの濃厚なカスタードではなく生クリームが詰め込まれていた。年末以来、来客が多いせいなのか、ゴンゾはあまりご機嫌がよろしくない。撫でたらちょっと苛々したようだ。


2001.1.3 wed.

日中はごろごろして過ごす。夜、唐突にラーメンが食べたくなって、紅虎系列の虎一坊へ。似たようなことを考えた人が多いのか、けっこう混んでいる。帰宅してからビデオで 「ムッソリーニとお茶を」を見る。


2001.1.4 thu.

もたもたと起き出したので朝食を食べ終えた時にはもう昼になっていた。渋谷へ出て 「13デイズ」を見る。 たいそうな混み具合で、なぜか中年から初老の夫婦が目立った。キューバ危機という話題で腰を上げる世代というのはやはり限られてきているのであろうか。映画はまあまあの出来。帰宅して、21世紀最初のスパゲッティを食べる。食後は「どっちの料理ショー」の新春スペシャルを漫然と眺めた。ラーメン・チャーハン対天麩羅そば・親子丼である。大蟻食の台詞を借りれば、人類の関心はもはや木星探査にはなく、親子丼の方にあるのだ。ラーメン・チャーハンという組み合わせには学生の頃から馴染みがあるが、天麩羅そば・親子丼という組み合わせを見るのは初めてである。世の中、奥が深い。とはいえわたしはラーメン・チャーハン派なので天麩羅そば・親子丼組が勝ったのには少々納得しがたいものを感じる。ちなみにわたしは柚子が駄目で、熱いそばに柚子が乗っているともう食べることができなくなる。


2001.1.5 fri.

もたもたと起き出したので朝食を食べ終えた時にはもう昼になっていた。結局その後ももたもたと過ごして一日が終わる。


2001.1.6 sat.

もたもたと起き出したので朝食を食べ終えた時にはもう昼になっていた。つまり同じ状況がもう3日も続いているわけで、来週から仕事に復帰できるかどうかが少々不安になってくる。食事の後、散歩に出て、大蟻食はコートを購入。買い物をして帰宅するともう夕方になっていた。夜、まず 「さくや妖怪伝」を見物する。 期待していたわけではない。続いて 「クロスファイア」を見る。こちらは当たり。


2001.1.7 sun.

もたもたと起き出したので朝食を食べ終えた時にはもう昼になっていた。実は9時にはもう目覚めていたのだが、布団から出られなかったのである。食事の後、例によって散歩に出て、まずお茶をしてから近所のヤマハへ行って大蟻食が買い物をする(楽譜)。続いてBody Shopへ移動し、ここでも大蟻食が買い物をする(シャンプー)。次にその1軒おいて隣にある玩具屋へ入り、近々誕生日を迎える甥っ子のための贈り物の下見をする。やはりレゴになるのであろう。実はわたしには一度でいいから買ってみたいと考えているものがあって、それはシルバニア・ファミリーなのである。まったく、いい年をして恥ずかしい。玩具屋の後はモンブランへ。1月2日の記入でモンブランのシュークリームに生クリームが入っているのを見たと書いたが、カスタード版がなくなったのではなく生クリーム版がメニューに加わっていたのだ。まず喫茶室で大蟻食は木苺のムースと白ワインを取り、わたしはアップルパイとハーブティーを取る。ここのアップルパイはがっちりとした味がする。ムースの方も味見させてもらったが、これも喉越しの味わいが実に深い。食べ終えてからプラムケーキを購入し、スターバックでとうとうあの怪しいカップを買い求め (2000.05.14 参照) )、ビデオ屋に寄り、残りの買い物も済ませて帰宅した。夜、食事をしながら 「真夏の夜の夢」を観賞する。 たいそうきれいな映画であった。映画の後、大蟻食は風呂に入り、わたしはそのまま 「ウィング・コマンダー」を見る。拾い物。窓から外を見たら、家々の屋根が雪で白くなっている。


2001.1.8 mon.

もたもたと起き出したので朝食を食べ終えた時にはもう昼になっていた。実は8時にはもう目覚めていたのだが、布団から出られなかったのである。なんとなくゲームなどをやっているうちに一日が終わり、夜は久々にマカロニグラタン。食べ終わった頃、「HERO」とかいうキムタクの新番組が始まったので、これもなんとなく見てしまう。木村拓哉はもしかしたら第二の松田優作になるのであろうか。キャラクターはいいけれど、番組はちょっとテンポが悪い。正月休みはこれでおしまい。


2001.1.11 thu.

ソルジェニーツィン「廃虚のなかのロシア(草思社)」を読み終える。壊滅的な状況にあるロシアの現状を眺めてその原因に触れ、未来のために何をすべきかを提言した本である。ソルジェニーツィンはいつもの警句に満ちた文章を使って雄弁に語ってくれるが、もし難があるとするならば採用されている視点があまりにも歴史的に過ぎていて、その歴史的な視点が強固な一貫性を保っているが故にいくらかの部分がどうしても一種の謀略史観にしか見えなくなっていることであろう。ウクライナ民族主義者がアメリカ政府の支援を受けてロシア民族の堕落と凋落を画策しているとは、日本人であるわたしにはとうてい信じられないのである(よしんば事実であるとしても)。とはいえこの著作の随所に暗示されているように、ロシアというあの大国は歴史上かつて一度も法治国家であったことがない。策略と無定見以外に国家の行動を見ることができない国にいて、そこで謀略史観めいたものが少々紛れ込んだとしても仕方がないのではないかという気もしないでもない(もっとも法治国家である我が国でも国家の行動はなぜか策略と無定見に限られているが)。そして陰謀の有無にかかわらず、あの国ではレーニン=スターリンによる民族政策の遺産が相当な障害となって、尾を引いているらしい。人工的な民族政策についてはいくらか聞いたことがあったが、同時にロシア人の民族意識に対する弾圧が存在したということは初めて知った。ソルジェニーツィンは苦難を乗り越える手段として民族意識の高揚とロシア人の団結を訴えるが、この主張はあの多民族国家の中ではどうしても微妙な色彩を帯びてしまう。その微妙な色彩を回避し、対立を迂回するために様々な努力がおこなわれていたが、たぶん、これは民族主義者のパンフレットだ。ソルジェニーツィンが目指しているのはロシア正教を背景にした一種の美徳の共和国のように見える。伝統と友愛に満たされた描かれた理想のような世界がそこに見える。悲嘆に満たされた他国のことを外から論評するのは難しい。


2001.1.12 fri.

大蟻食は日中から友達と家で酒を飲んでいた。わたしが帰宅した頃にはほどほどにできあがっていて、腹が減ったということなので3人で食事をすることにする。友達というのは古典学者をやっていて、最近は学校でラテン語やギリシア語を教えている。食事を終えて買い物を済ませ、友達を見送って帰宅してから 「スティグマータ」を見る。それなりに不気味で、それなりに笑える。


2001.1.13 sat.

大蟻食がオートバックスへ行くと言う。CDの音をトランスミッターで飛ばしてラジオから流す革命的な機械を買うのだということで、中目黒の駒沢通り沿いにあるオートバックスへ。車にはまるで縁がないのでこういう店に入るのも生まれて初めての経験で、見たこともないような雑貨が沢山並んでいて興味深い。工具が安いのは魅力である。とはいえ探し物は在庫切れということだったので、そのまま代官山を徒歩で抜けて渋谷へ出る。すでに昼を過ぎていたので食事をして、ビック・カメラへ。目当てのメーカーの物ではなかったが、同じ機能の製品があったのでそれを買い求める。ビック・カメラを出てから、さらに徒歩で北上を続けて原宿のキディランドへ。二日前、わたしのミッフィーの皿が洗っている最中に割れてしまったので、その代わりを探すためである。探していたのは緑色のミッフィーだったが、あったのはオレンジ色のミッフィーだけだった。取りあえずそれで妥協することにして原宿を後にし、歩いて渋谷へ。電車に乗って自由ケ丘に戻り、買い物を済ませて家に戻り、並んで寝台に横になる。横になって一休みをするだけの筈が、目覚めたらもう夜になっていた。雑踏の中を都合八キロくらいは歩いた計算になるので、少し疲れたのであろう。食事をして、お茶をいれてインド映画 「アシュラ」を見る。 見終わって、また寝る。察するにこの映画、それなりのインパクトがあったようで、夢に出てきた。


2001.1.14 sun.

なんだか一日中眠っていたような気がする。大蟻食の実家から電話があった。新潟は大雪だそうである。こちらも寒い。


2001.1.19 fri.

「アリー・マイ・ラブ3」の1巻、2巻を見る。ふつうならアリー・マクビールはもう入院していると思うけど。


2001.1.20 sat.

少しだるい。予定では映画を見にいく筈だったが、微熱もあるので家でおとなしくしていることにして、戦場写真集「ハリコフの戦い」をめくり始める。訳者の岡崎淳子さんは大蟻食の高校の先輩である。この方には前にも「グロースドイッチュランド師団写真史」などをいただいたことがあって、とても感謝しているのである。特に「師団写真史」の方には補給や整備の場面を写した貴重なスナップがたくさん入っていて、いろいろと勉強になる。
夜になってふと外を見たら、周りの家々の屋根が雪で白くなっていた。寒いわけだ。夕食の後、大蟻食と一緒にビデオで 「サイコ2001」を見る。 すさまじい邦題がついているが、原作はイアン・バンクスの「共鳴」。その昔、原書で挑戦したことがあったが、情けないことに途中で投げ出してそのままになっている。


2001.1.21 sun.

朝起きて、北野勇作さんの新作「かめくん(徳間書店)」を読み始める。星間戦争用に開発されたカメ型のロボット(というのか、アンドロイド)がその辺のアパートに引っ越してきて、倉庫の仕事に就いてフォークリフトを運転していた。なんとなく物悲しくて、淡々としていて、ただそれでもしっかりと生きているという感じが好ましい。朝食の後、ビデオで 「千里眼」を見る。 見なきゃよかった。


2001.1.23 tue.

ジャック・ラーキン「アメリカがまだ貧しかったころ(青土社)」を読み終える。1790年から1840年までのアメリカの生活史を紹介した本で、これはなかなかに読みごたえがあった。一般向けに書かれた社会史の本としてはかなりよくできているのではないかと思う。それぞれの時代の異なった断面を見せるのではなく、生活、家、旅行、社交といったテーマごとに時代にわたる変遷を見せる仕組みになっていて、その変遷を外見の変化に留めずに社会階級全般にわたる価値観の変化まで含めて記している。しかも現代的な視点や論評は後景に置いて、日記や手記などを大量に引用しながら同時代に感得された変化として示してくれるので、変化によって生じた影響の多寡までを読み取ることができるのである。そのせいか、いろいろとこちらの空想を刺激してくれる。ちなみに19世紀初頭のアメリカというのは、ヨーロッパ人の目から見るとかなり異様な世界だったようで、そうした視点から偏見に満ちた架空旅行記を一本仕上げるのも面白いかもしれない。たぶん、しないけど。


2001.1.26 fri.

ふと思い立ってカラーライズ版の 「史上最大の作戦」 を見る。時々ちょっと不自然になるけど、よくもまあ丁寧に色をつけてある。感心した。しかもかなり昔に見てそのままになっていたので、記憶にかなり違いがあった。たとえば最後の場面で負傷して横たわっているのをわたしはジョン・ウェインだと思い込んでいたのだが、実はリチャード・バートンだったし、運河沿いの戦闘シーンに登場するのはジョン・ウェイン率いる空挺部隊だと思い込んでいたのが、実は自由フランス軍なのであった。ジョン・ウェインは何もしていなかったのである。引き続きジョン・ウェイン主演の 「硫黄島の砂」 を見る。これはモノクロのまま。


2001.1.27 sat.

朝、起きてみると雪が降っている。ほとんど吹雪いているような状態である。騒々しいので新潟方面に返却しておいた大蟻食が返送されてくる予定であったが、雪の中で立ち往生した大蟻食というのは想像したくもなかったので(戻ってからが間違いなく騒々しい)、見合わせるように連絡しようと考えて、電話に手を伸ばしたところでやめにした。なにしろ豪雪地帯出身者である。東京でどう雪が降っていようと、舐めてかかるに決まっている。そう考えて待っていると昼過ぎになって大蟻食が到着した。わたしが駅まで迎えに出なかったので、怒っての到着である。駅から家までの道に雪だるまが立ちふさがって、たいそう往生したらしい。空腹だと言うので、雪の中を食事へ。夜の買い物も翌日の朝晩の食事の買い物もして早々に帰宅。戻ってきてばたばたとしているうちに夜になってしまったので、水餃子を作って食べて、マイケル・マンの 「インサイダー」 を見る。少々長い。見終わって外を見ると、雪は雨に変わっていた。


2001.1.28 sun.

心配したほど雪は残っていない。朝昼兼用の食事を済ませて、午後から散歩へ。モンブランでケーキを食べて、玩具屋に寄って甥っ子の誕生祝にレゴを買う。「ぼのぼの」の20巻も買って家に戻り、夕食を食べ、 「雨ぞ降る」 を見て一日終わり。


 < 亭主の日々 >