ズートピア
- Aloysius' Rating:  8/10
2016年 アメリカ 108分
監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
出演:ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン、イドリス・エルバ、ネイト・トレンス、J・K・シモンズ、シャキーラ


ニンジン農家をしているウサギの一家の娘ジュディ・ホップスは警官になるという子供時代からの夢をかなえるために警察学校に入り、大型動物ばかりの世界で体格にチャレンジされながらも首席で卒業、雑多な動物が暮らすズートピアの市長から顕彰を受けてズートピアの中心にある警察署の配属となるが、水牛の署長はジュディ・ホップスを違反切符係に任命して捜査活動から排除し、署長にチャレンジするために違反切符係として無類の活躍をしたジュディ・ホップスは機会を得て行方不明になったカワウソの捜索にあたることになり、署長から48時間の期限を与えられたジュディ・ホップスはキツネの詐欺師ニック・ワイルドの協力を無理矢理勝ち取ると暗黒街に詳しいニック・ワイルドの知恵を借りながらヌーディストクラブ、陸運局、リムジンサービスなどをめぐり歩き、事件にマフィアのボスが絡んでいることを知り、手がかりを求めて会いにいったリムジンの運転手の変貌を目撃し、ズートピアを騒がせる一連の事件との関連に気づき、事件の背後を探りあてて友情を損ない、事件の真実にたどり着いて友情と信頼を回復する。 2D、字幕版で鑑賞。言ってしまえばきわめてありきたりなバディ物のプロットをたどっているだけで、多様性を肯定するメッセージと結末に至るまで構成にまったくぶれはないが、その前景に置かれているのは、まず擬人化された動物であり、社会的なトレンドとしてその擬人化に抵抗もする動物であり、社会的な陰謀の結果として擬人化を剥奪されて動物学的な正確さで獣性を剥きだしにする動物であり、したがってここに登場する動物たちは従来のアニメーション作品が擬人化してきた動物たちとはあきらかに一線を画した存在であって、「文明化」という虚像の影で草分け的な次元の獣性を「病」として抱えている。だから見ているこちらはこれだけ複雑なものをよくもまあ、破綻もさせないできっちりとまとめているとただ感心することになり、遠目に見ればアニメーション自体の自己パロディのようにも見えるものを、さらにその先に進めて洗練された作品に仕上げる体力を見てまた感心することになる。かわいい動物キャラクターがいっぱいで子供向けのように仕組まれているが、この映画は子供たちには複雑すぎるかもしれない。観客である我々の「習性」について、何か一言あるような気もする。冒頭の意表をついたまがまがしさと、それに続く「血まみれ」ぶりがこちらの予想を見事に裏切る。温帯、熱帯、ツンドラ、北極などのエリアで構成されたズートピアへ列車が向かっていく場面はどう見ても 『ハンガー・ゲーム』 の悪意に満ちた引用であり、猛烈に愛らしいフェネックはサングラスをかけてだみ声でしゃべるしゃべり、レミング・ブラザーズ銀行はとにかく見ているだけで恐ろしい。マフィアが登場すれば 『ゴッドファーザー』 そのまんまだし(まず門構えがコルレオーネ家そっくりだし、もちろん娘の結婚式をやっている)、奇怪な陰謀の背後では黄色いハズマットスーツが活動し、どうやらウォルター・ホワイトもジェシーもいるらしい。言うまでもなく視覚的にも豊穣で、満足感の高い傑作である。


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