戦火の馬
- Aloysius' Rating:  8/10
2011年 アメリカ 146分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ジェレミー・アーヴァイン、エミリー・ワトソン、デヴィッド・シューリス、ピーター・ミュラン、ニエル・アレストリュプ


デヴォン州の小作人テッド・ナラコットは農耕馬を手に入れるつもりで馬の競売におもむいて、そこでサラブレッドの仔馬に見とれ、その仔馬の競売が始まると、地主と張り合う形で30ギニーの高値で落札し、つまり農家にはまったく役に立たないその馬を家に連れ帰って妻に叱られ、もともとその仔馬を知っていた息子のアルバート・ナラコットは馬をジョーイと名づけて調教を請け合い、調教をしながら馬と心を通わせるが、テッド・ナラコットが地主への支払いに窮したころ、ちょうど第一次世界大戦が勃発し、テッド・ナラコットは息子にだまってジョーイを軍に売り払い、軽騎兵の馬となったジョーイはほかの馬とともに大陸へ送られ、そこで突撃に参加してドイツ軍に捕獲され、救急車を牽く馬になり、軍から逃れる若いドイツ兵兄弟の乗馬となって軍から離れ、風車小屋にいたところをジャム農家の娘エミリーに発見され、エミリーの乗馬となるが、間もなくドイツ軍によって再び捕獲されて砲車を牽き、それから四年のあいだ奇跡的に生き延びて、1918年、連合軍の反攻のなかでドイツ軍の手から逃れて前線を疾駆し、鉄条網にからめ捕られて立ち往生しているところをイギリス兵とドイツ兵の手で救われ、イギリス軍の後方に送られて、そこで野戦病院にいたアルバート・ナラコットと再会する。スピルバーグの前作 『タンタンの冒険』 がひたすらに視覚的な動きで構成された作品であったとすれば、『戦火の馬』は物語的な動きで構成された作品であり、画面は常に情感にあふれ、無駄はなく、語り口はめったに見ることができないほど、よくバランスが取れている。馬が演技をしすぎと言えばしすぎだと言えないこともないものの、その演技もすべて物語的なバランスの中に巧みに回収されているのである。ヤヌス・カミンスキーの撮影が驚くほど美しい。戦争の描写もよく出来ていて、イギリス軍軽騎兵の突撃というきわめて珍しいシーンを見ることができるほか、遠い砲声から1918年の塹壕へと、選り抜いた言葉でつないでいく手つきには感動した。涙なしには見れない傑作と言うべきであろう。

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