ヒア アフター
- Aloysius' Rating:  7/10
2010年 アメリカ 129分
監督:クリント・イーストウッド
出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ジェイ・モーア、フランキー・マクラレン、ジョージ・マクラレン、ブライス・ダラス・ハワード、マルト・ケラー


フランスの著名なキャスターであるマリー・ルレはバカンス先の東南アジアで津波に巻き込まれて、そこで臨死を体験して死後の世界を目撃し、帰国しても仕事に集中できないために休暇を取ってミッテランの評伝を書くことにするが、関心はむしろ臨死体験に移り、ロンドンでは一卵性双生児の兄ジェイソンが交通事故で命を落とし、残された弟のマーカスは喪失感に苦しんで死後の世界とのコンタクトを試み、サンフランシスコでは本物の霊能力者であるジョージ・ロネガンが与えられた能力を呪いであると判断して死者との対話をやめて工員をして暮らし、マリー・ルレはホスピスを訪れて臨死体験に詳しいルソー博士から資料を手に入れるとミッテランの評伝のかわりに来世に関する本を書き上げ、工場を解雇されたジョージ・ロネガンは兄の誘いに乗って霊能力者としての活動を再開しようとするが、釈然としない気持ちを抱いてアメリカを離れ、もともとディケンズが好きであったことからロンドンを訪れてディケンズ・ツアーに参加し、そこでデレク・ジャコビによる朗読会がブックフェアでおこなわれていることを知ると、会場を訪れて朗読を聞いて心を満たし、同じ会場でマリー・ルレが自著の朗読をしている場面に出会って、マリー・ルレの手に触れて臨死の体験を共有するが、そこへマーカスが現われてジョージ・ロネガンの正体を見抜き、死んだ兄とのコンタクトを求めて執拗に追いすがるので、根負けしたジョージ・ロネガンはマーカスの希望を聞き入れ、マーカスの協力によってマリー・ルレとの再会を果たす。死の世界に引き寄せられた人々が現世で幸福をつかむ話である。サンフランシスコ、パリ、ロンドン、というむやみと広い三軸構造が一本の軸に束ねられて、運命の出会いを重ねて結末にいたるまでのプロセスは、どこかディケンズを見るようでもある。緩急をよく心得た、というよりも、何か達観したところで静かに呼吸をしているようなクリント・イーストウッドの演出ぶりがとにかく生理的に心地よい。情動にどこかで流されているようなマット・デイモンの演技がいい。出演場面は短いが、ブライス・ダラス・ハワードも印象的な演技を残している。ルソー博士を演じたマルト・ケラーはすっかりおばあさんになっていた。

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