第9地区
- Aloysius' Rating:  8/10
2009年 アメリカ/ニュージーランド 111分
監督:ニール・ブロンカンプ
出演:シャールト・コプリー、デヴィッド・ジェームズ、ジェイソン・コープ、ヴァネッサ・ハイウッド


ヨハネスブルクの上空に巨大な宇宙船が出現し、出現したまま3か月たってもいっこうに音沙汰がないことを不審に思った人類が内部に侵入してみるとエビの特徴を備えたエイリアン180万人が栄養失調に苦しんでいることが判明し、人道的な見地から支援の手を差し伸べて地上に搬送すると居住区は瞬時にスラム化して犯罪の温床となり、反発する市民の声を受けてすべてのエイリアンを新たな集中キャンプへ移送する手筈が整えられ、作業の実施は軍事企業MNUにゆだねられ、現場の指揮官に任命されたヴィカス・ヴァン・デマーヴはエイリアンに通知書を手渡すために早速スラムを訪れるが、絵に描いたような木端役人で想像力に乏しい上に幼稚で自己中心的なこの男はエイリアンをすっかり軽蔑し、エイリアンとはまったくたいしたことのない連中であると決めつけて完全になめてかかるので、うかつなふるまいをして怪しい黒い液体を浴び、間もなく自分の肉体が変異し始めていることに気づいて激しく狼狽し、ヴィカスを貴重な研究材料とみなしたMNUは勇んでヴィカスの解体に取り掛かり、ヴィカスはそこからどうにか逃れてスラムに隠れ、状況を変えようとしている一人のエイリアンと遭遇する。
傑作。着想は 『エイリアン・ネイション』 に似ているが、舞台はヨハネスブルクのソウェトに設定され、状況はアパルトヘイトの延長線上に出現し、そして登場するエイリアンの群れはあくまでも社会の異物であり、同化の可能性は閉ざされている。つまり問題はアパルトヘイトではなく、より根源的な違和感であり、違和感を前にして反応を自動化し、偏見に傾いたまま鈍感にふるまう人類にある。だから人類はつねに人類としてふるまっているが、論理は必ずしもこちら側にはないし、状況が進行すれば何かが解決されるという安易さもない。随所に見られる黒い笑いに共感を覚えた。ドキュメンタリー調の構成はきびきびとしていて心地よい。よく考えられたディテールが楽しいし、パワーローダー系の戦闘メカ、傭兵部隊、ナイジェリア人ギャングの三つ巴の戦闘シーンも迫力がある。ラーテル、キャスパーなど南アフリカ製の装甲車両が珍しい。

IMDb IMDb で  を検索します。
* Search provided by The Internet Movie Database.