バーン・アフター・リーディング
- Aloysius' Rating: 7/10
2008年 アメリカ/イギリス/フランス 93分
監督・脚本:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、リチャード・ジェンキンス、J.K.シモンズ


もしかしたら何かを考えているにしても傍目には堂々巡りをしているようにしか見えないブラッド・ピットがなかなかにすごい。嘘をついている時間はない、と言う割には嘘にまみれている上に、自宅の地下室でファッキングマシーンを原価100ドル(ディルド代別)で自作しているジョージ・クルーニーの内的宇宙もなかなかにすごい。これに比べると女性陣には意外なまでに幻想がない。整形美容のことしか考えていないフランシス・マクドーマンドもいちおうは自分の現実のなかにいて、ただふるまいが無謀でがさつなだけなのである。その女性の現実が目に入らずに、自分が思い描く現実について語り続けたリチャード・ジェンキンスが本作ではいちばん気の毒なキャラクターであろう。頭の悪い人間が動かし始めた見通しの悪い犯罪、という点では 『ファーゴ』 にきわめてよく似ているが、その頭の悪い人間をCIAという官僚機構が官僚機構特有の鈍感さですりつぶしていくあたりでこの作品には救いがない。「こんなにいいお天気なのに」(ノースダコタ基準)などとは誰も言ってくれないのである。スパイ映画のパロディのようなフレームを悪用し、物語性を排除しながら視点は細部にまでゆきとどき、語り口のリズムには狂いがない。ティルダ・スウィントンの女医さんが怖い。堪能した。

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