未完成交響楽
- Aloysius' Rating:  5/10
1933年 オーストリア/ドイツ 88分
監督:ヴィリ・ホルスト
出演:ハンス・ヤーライ、マルタ・エッゲルト、ルイーゼ・ウィリヒ、ハンス・モーザー、オットー・トレスラー


代用教員のフランツ・シューベルトが金に困ってギターを抱えて質屋を訪れ、その様子を見た質屋の娘エミはシューベルトを憎からず思って規定以上の金を与え、さらにゲーテの詩集を貸し与えるので、ページを開いたシューベルトの頭にはたちまちのうちに曲想が訪れ、学校の算数の時間に黒板に楽譜を書き、子供たちに歌わせていると、スクルージのような顔をした校長が現われ、校長室への出頭を命じる。校長室を訪れたシューベルトの前には宮廷楽長が現われてシューベルトにキンスキー伯爵夫人の夜会で演奏を披露するように命じるので、服のないシューベルトのために質屋の娘エミは質草からいろいろと貸し出して成功を祈る。そしてシューベルトは夜会で構想中の交響楽を披露するが、第三楽章の冒頭で突然の笑い声に演奏を邪魔され、怒りに耐え切れずに退出すると、なにしろウィーンの話なのでこれが無礼であるとの悪評を呼び、エミが宮廷楽長に直談判しても効果がない。失意のシューベルトは借金取りに囲まれていたが、そこへエステルハージ家からの使者が現われ、シューベルトはエステルハージ家の音楽教師に採用され、遠くハンガリーを訪れる。シューベルトを雇うようにエステルハージ伯爵を説得したのは伯爵家の娘カロリーネであり、キンスキー伯爵夫人の夜会で笑い声を放った当人であった。シューベルトはカロリーネの謝罪を受け入れ、二人の関係は急速に接近し、一方、ウィーンにいるエミはシューベルトからの頼りがないことにいらだっている。シューベルトとカロリーネの関係はやがてエステルハージ伯爵の知るところとなり、シューベルトはウィーンに送り返されて失意の日々を送り、至急の来訪を求める手紙を受け取って再びハンガリーを訪れる。そこではカロリーネの結婚式の真っ最中で、シューベルトはカロリーネの妹の勧めにしたがって完成させた交響楽をカロリーネに捧げ、列席者の前で披露する。ところが第三楽章の冒頭でカロリーネが失神し、またしても失意のひととのなったシューベルトは交響楽の楽譜から後半を破ってハンガリーの農地を歩き、路傍に立つマリア像を眺めているうちにどこからか「アベ・マリア」が鳴り響き、マリア像も巨大になって、どんどん勝手に勝手に盛り上がるのである。
「未完成交響楽」の成立裏話を大胆に創作しているが、シューベルトのキャラクターを妙に神経質で孤立したものにした結果、つじつまが合わなくなっている。カロリーネを演じているマルタ・エッゲルトが当時のハンガリーの国民的アイドルであった、という事実を多少加えておかないと心理的な唐突さが追いきれない。テンポが速い反面、構成上の粗雑さが目立つ。

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