ミスタア・ロバーツ
- Aloysius' Rating: 6/10
1955年 アメリカ 122分
監督:ジョン・フォード、マーヴィン・ルロイ
出演:ジェームズ・キャグニー、ヘンリー・フォンダ、ジャック・レモン、ウィリアム・パウエル、ベッツィ・パルマー、ウォード・ボンド、ニック・アダムス


太平洋戦争末期。アメリカ海軍の小さな輸送艦「リラクタント号」は南太平洋の島嶼をまわって練り歯磨きやトイレットペーパーを配っていたが、その貨物担当士官ミスター・ロバーツは前線勤務を望んでいた。ところが艦長はおのれの野心から有能なこの士官の転属を阻み、さらに専横を隠すこともしないで乗員の権利を奪うので、艦長とミスター・ロバーツのあいだには対立が絶えない、というなんだか バウンティ号 みたいな話だけど、いちおうコメディなのである。
ミスター・ロバーツがヘンリー・フォンダで、冒頭、沖を進む機動部隊を餓えたように見守る表情がこの好戦的なキャラクターを実に巧みに説明している。対するモートン艦長はジェームズ・キャグニーで、こちらは客船のスチュアードからのたたき上げで、輸送任務を顕彰された際に受け取った提督のヤシの木を甲板に安置して、これを何よりも大切にしている。その艦長が着任後一年半も存在に気づかずにいる洗濯係士官がジャック・レモン、軍医がウィリアム・パウエルである。話はもちろんミスター・ロバーツとモートン艦長の戦いを中心に展開し、途中、乗員やジャック・レモンが笑いをはさむ。薬用アルコールにコーラとヨードとヘアトニックを混ぜて、それでスコッチを捏造するあたりなどはなかなかにおかしいが、そうした笑いのなかではヘンリー・フォンダの生真面目な顔は不自然なまでに浮いてくるし、ジェームズ・キャグニーの一本調子な暴君ぶりは対立を陰気なものにしていって、様々な歯車が最後まで噛みあわない。一般にはきわめて評価の高い作品だが、わたしには少々退屈だったし、とにかくジェームズ・キャグニーの使い方がよろしくないように見えるのである。ところで改めて見直してみたところ、「リラクタント号」の艦橋には常に誰もいないということに気がついて、これで船は大丈夫なのかと心配になった。

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