毒薬と老嬢
- Aloysius' Rating: 7/10
1944年 アメリカ 118分
監督:フランク・キャプラ
出演:ケーリー・グラント、プリシラ・レイン、レイモンド・マッセイ、ピーター・ローレ、ジャック・カーソン


独身主義者で知られた演劇評論家モーティマー・ブルースターはブルックリンの牧師の娘と結婚し、新婚旅行へと旅立つために叔母の家を訪問する。この家には年老いた二人の叔母と自分をセオドア・ルーズベルトだと思い込んでいる叔父が暮らしていたが、叔母はモーティマーの結婚を喜び、モーティマーは窓際に置かれたチェストのなかに死体を見つけて驚愕する。実はこの善意にあふれた老姉妹は慈善活動の一貫として孤独な老人をかれこれ十二人も殺していて、地下室に埋葬していたであった。モーティマーは驚愕したまま、それでは叔父を入院させなければという奇妙な考えに取り憑かれ、入院許可証の署名を得るために一人で勝手な奔走を始め、そうしているあいだに家には二十年間も音信不通のままになっていた兄のジョナサンが姿を現わし、こちらはこちらで殺人鬼で、世界各国をまわってかれこれ十二人も殺していて、警察の手を逃れるために顔を変えていたが、そのための外科医を同伴していて、その外科医が手術をおこなう前に 『フランケンシュタイン』 などを見ていたせいでボリス・カーロフそっくりの顔になっている。というわけで家は殺人狂の姉妹のほかに殺人狂の兄と相棒、頭のおかしな叔父であふれ、新妻は新婚旅行に旅立つのはいつかと隣の牧師館から覗きにくるし、脚本家志望の警官まで現われてひたすらにモーティマーを追い詰める。
悪趣味なコメディである。ケッセルリングによる舞台劇の映画化で、キャプラの作品としてはかなり変わっているほうかもしれない。モーティマーがケーリー・グラントで、実を言うとこの作品ではいちばん魅力がない。設定上もとりあえずまともで、事態の収拾にかかっていると自分で信じ込んでいるせいであろう。いち押しはなんといってもレイモンド・マッセイで、これが気弱な相棒のピーター・ローレを引き連れてボリス・カーロフのメイクで出現すると、まがまがしい音楽も含めてなぜかそこだけがユニバーサル・ホラーになってしまう。このレイモンド・マッセイが陰鬱な顔をしたまま、殺した人数を叔母さんたちと競い始める場面は最高であった。で、もちろんレイモンド・マッセイ扮する凶悪な兄は演劇評論家の弟を夢に見るほど憎んでいて、早速椅子に縛りつけて殺しにかかるわけだけど、これがまたよくよくうまい具合に進行しない。冒頭から始まるあてこすりめいたナレーションは小気味よく、どたばたぶりのテンポはよく、全体をとおしてのテンションは高い。

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