ハルク
- Aloysius' Rating: 5/10
2003年 アメリカ 137分
監督:アン・リー
出演:エリック・バナ、ジェニファー・コネリー、サム・エリオット、ニック・ノルティ


1960年代のアメリカ。砂漠の基地で毒素に対して兵士の耐性を高める研究がおこなわれていたが、研究者の一人は研究の枠を踏み越え、人間を遺伝子的に改造して強化しようとし始める。事実を知った軍部は研究の継続を禁じるが、研究者はすでに試薬を自分の体内に注入し、しかも結婚して子供までできていた。その子供が四歳の時に何かが起こり、子供は心のどこかにトラウマを残したまま成長して話はようやく現代に移る。息子ブルース・バナーはバークレーの民間研究所で働く研究者となり、今ではナノテクノロジーを使って人間の再生能力を高めるための実験をしていた。ところがある日、事故が起こってバナーはナノマシンを身体に取り入れ、さらにガンマ線を浴びてしまう。そしてそのために怒りを感じると緑色をした巨人に変身するという難儀な特異体質になってしまうのであった。軍部はバナーの隔離を企み、事実を知った悪の企業はバナーを使って特許を得ようと軍部を取り込み、バナーに恋する将軍の娘はほとんど役に立ってくれないので、バナーの怒りは尽きることがない。とどめに父親が現われて、こちらも巨大化してくんずほぐれつの格闘となる。
デニス・ミューレンのCGはさすがにすごいものの、ハルクというキャラクター自体がもともと2時間以上の枠で持ちこたえるほどの複雑さを備えていないのである。そこで出生の秘密や隠蔽された記憶で話を持たせようとした結果、謎が後ろへずれ込むだけでどこまで行っても進展がないという悪夢のようなプロットが誕生したのではあるまいか。人物造形も凡庸で深みがない。全編にわたってひどく凝ったスプリット・スクリーンが使われているが、これもあまり効果を上げていない。いちおうは良心的な作りだけに少々もったいないような気もするのである。なお、コマンチ・ヘリコプターのアクションはなかなかに興味深かった。

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