ザ・コア
- Aloysius' Rating: 4/10
The Core (USA /UK 2003,135min.) [D] Jon Amiel, [W] Cooper Layne, John Rogers, [C] Aaron Eckhart,Hilary Swank,Stanley Tucci ,Delroy Lindo,Tcheky Karyo,Richard Jenkins,Alfre Woodard ,DJ Qualls ,Bruce Greenwood

まずシカゴだかどこかで心臓ペースメーカーの利用者がばたばたと死ぬのである。続いてロンドンのトラファルガー広場ではハトの群れが狂ったように飛び回って観光客を驚かす。さらにスペースシャトルは地磁気の異常でコースからはずれてロスアンゼルスの市街地へ進入し、その事故の査問会議が開かれているワシントン上空にはオーロラが出現したりする。そこで若い地球物理学者が学生を総動員して理由を調べていくと、なんと地球の核が停止していて、そのために地球の電磁場が失われつつあって、1年以内に人類滅亡という話になってくるのである。そいつは大変だということでみんなで国防総省あたりに集まって対策を練り始めるものの、方法がない。仮に方法があったとしても現地まで行く手段がない。
ところがよくしたもので、手段を実現するための技術的な問題は知り合いの発明家によって解決されていたし、方法としては案の定、核兵器を使えばいいということになり、というわけで先端にレーザーを備えた原子力ドリルメカの建造が開始され、乗員の訓練が開始され、そうしている間にも異変が起こってローマはスーパーストームによって破壊され、完成した地中潜航艇は6名の乗員と核爆弾を載せてマリアナ海溝から進発していくのである。地殻を突破してマントルへと進み、マントルの中を漂う巨大な水晶鉱に感歎し、一方、地上では電磁場の穴から侵入してきた太陽風によってサンフランシスコがこんがり焼かれ、潜航艇の方も犠牲者を出しながら奮闘を続けて地球の核へと近づいていく。そして外核を突破して内核に達し、後は核兵器を使うだけという段階になった時、恐るべき事実が明らかになる。
想定していた核の密度が実地とは少々異なっていたので、持ってきた核爆弾ではちょっと足りないことがわかったのである。どうしてぎりぎりの量しか積んでこなかったのか? と見ているこちらは考えるわけだけど、潜水艇の中では内輪もめが始まって、大統領の顧問までやっている科学者が、こんなことではミッションは完遂できないと言ってすぐさま地上に連絡を取り(有線でつないでいるわけでもあるまいに、どうやって連絡できるのかも不思議だが)、コントロールルームに控えている将軍に向かって人工地震の発生装置を使用するように進言する。なんとアメリカ合衆国は地震兵器を開発していて、その地震波が地球の核に到達することは実験によって実証済みだったのである。
それじゃあなんだ、核の停止は人災なのか、ということでまた内輪もめのようなことになり、どうしてこう内輪もめが多いのか? と見ているこちらは考えるわけだけど、地上では将軍が地震兵器の使用を命令すると地下深くではやっぱり現場が暴走し、帰還を拒否して手持ちの爆弾でなんとしようとし始める。で、もちろん地震兵器が使用されれば衝撃波で全滅は免れない。ところがコントロールルームには情報管理のためにハッカーが1人配置されていて、そいつがまた将軍に逆らって地震兵器の停止を目論み、まず電力供給を絶とうとしてハッキングを始めるものの、なかなか成功しないというところが実にうっとうしい秒刻みのサスペンスになっている。
地震兵器がめでたく無効化されると地下では連鎖爆発でなんとかなるという結論が出され、技術的な問題を解決するために乗員2人が犠牲に出され、それでもちょっと足りない部分は潜航艇の原子炉の燃料で補って(?)、見事に引き起こされた爆発によって核が再び回転し始めたことが、いったいいかなる技術によってか、地上のモニター装置でもよく観察される。ミッションは達成されたのであった。だが生き残った主人公の男女2人は燃料を失った潜航艇に乗ったまま地球の核に取り残され、生還の手段を失ってしまう。だがちょっと考えればわかることで、潜航艇に使われている新発明の超合金は、なんと周囲の熱と圧力をエネルギーに換える仕組みになっていたのである。
というわけで潜航艇は自らの制御を取り戻し、最後の核爆発の波に乗って地上を目指して出発する、というような展開で、話はこれでほとんど全部である。
プロットは 「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」 に酷似しているものの、おそらく要点は地球規模の災害にではなくて、地下世界に人類を送り込むという目論見の方にあったのであろう。その証拠に災害の描写はどれも妙に慌しいのに、潜航艇の方はメカニズムに模型、組み立て工程、シミュレーター、マリアナ海溝海上の発射台の描写まで、細かい、というよりも妙なこだわりが見え隠れするのである。つまりそういうことがしたかっただけなのであろう。だったらそこに絞って探検映画に徹すればよかったのに、危機感がないと売れないとかなんとか、そんな事情でこういうストーリーが採用されたのではあるまいか。ところがその割には内容がなかったので、今度は登場人物を片っ端からお馬鹿にしてみたり、余計な犠牲者を出してみたり、国家的陰謀を出してみたり、内輪もめをしてみたりと時間稼ぎに必死になったのではあるまいか。チェッキー・カリョなどは犠牲になって死んだというよりは、出ているのがいやになってリタイアしたようにも見えた。そしてさらに悪いことにストーリーに時間を割いた結果、メカニズムに対するフェティッシュまでが著しく後退してしまって、いいところがほとんどない、ということになっている。面白そうなアイデアがプロダクションの段階で駄目になったのだとすれば、 「エボリューション」 によく似た映画だと言えなくもない。ところで地中潜航艇にヴェルギリウスなどと命名するなら、乗員には科学者ではなくて詩人、異教徒、背教者、姦夫、贋金造り、殺人者などを選ぶべきであったと思うが、どうだろうか?