タイムマシン
- Aloysius' Rating: 4/10
The Time Machine (USA 2002,96min.) [D] Simon Wells, [W] John Logan,(novel:H.G. Wells ), [C] Guy Pearce ,Mark Addy,Phyllida Law ,Sienna Guillory ,Samantha Mumba ,Omero Mumba ,Orlando Jones Jeremy Irons

20世紀初頭のニューヨーク。コロンビア大学の若き教授アレクサンダー・ハートデゲン(だったっけ?)はデートの最中に婚約者を辻強盗に殺されてしまう。それから4年、教授は遂にタイムマシンを発明し、過去を変えるために事件の日へと遡る。だが婚約者は、今度は辻馬車に轢かれて死んでしまう。何回やっても同じ結果が出るようなのである。見ているこちらはこのあたりで悪趣味なコメディを期待し始めるのだけど、なにしろ題名が題名なのでそうはならない。教授はその理由を探して思いつくままに未来へと旅立ち、80万年後の世界へ到達すると、思いつくままにエロイ族をモーロックの脅威から解放する。原作との関係は云々しても仕方がないと思う。それよりも、これはジョージ・パルによる 1959年版 でも気になったことだけど、このタイムマシンは時間軸上を単純に前後へ移動するだけで、移動している間も地球の自転公転に合わせて位置情報を保持し続けるようなのである。つまりいつまでもいつまでもずーっとそこにいるというわけで、今回の映画のようにマンハッタン島の真中でそれをやっているという設定だと、車に轢かれないか、とか、再開発のせいでコンクリートの下に埋まってしまうのではないか、とか、いろいろ心配したくなるのだが、そういうことは一切起こらない。だからひどく不自然なのである。いっそ反対方向へ振ってしまって、ジェームズ・ティプトリーJrの「故郷へ歩いた男」のようにポエジーで満たしてしまうことだってできた筈なのに、そういうこともやっていない。何が問題なのかわからないけれど、おそらくは多くのことをさぼっているせいで時間旅行の距離感というものが全然ないのである。だったら現実の距離感を頼って80万年後の世界ではなくて中央アフリカへ出かけていって、エロイではなくて現地アフリカ人を、凶暴なモーロックの魔手からではなくて酷薄なベルギー人の魔手から救っていても同じだったのではないか、という気もしてくる。やる気の感じられない映画であった。とはいえ、エロイ族のエスニックなデザインは秀逸だったし、モーロックのVFXも見ごたえがあった。でもジェレミー・アイアンズ扮する上級モーロック、っていうのはなんだったんだろうね?