ソイレント・グリーン
- Aloysius' Rating: 6/10
Soylent Green (USA 1973.98min.) [D] Richard Fleischer, [W] Stanley R. Greenberg,(NOVEL:Harry Harrison), [C] Charlton Heston,Edward G. Robinson, Leigh Taylor-Young,Chuck Connors,Joseph Cotten ,Brock Peters,Paula Kelly

2022年のニューヨーク、人口は4000万人、失業者2000万人。ということで、誰かの足を踏まないことには前へも進めない有様なのである。町は人間であふれ、空気はスモッグでかすみ、どうやら田舎は要塞化されて接近を拒み、海は死に絶えているらしい。高級アパートで食品会社の重役が殺され、主人公の警官は押し込みに見せかけた暗殺だと判断する。調査を進めていくと何者かによって尾行され、証人は殺害されてしまう。実は州知事までが絡んだ陰謀が存在し、食物資源を失った人間はすでに人間を食べていたのである。主人公はその事実を告発しながら映画は暗い結末を迎える。すでに公開当時に指摘されていたことだけど、「ソイレント・グリーンは人間だ」という叫びはそれほど衝撃的ではない。食べる物がほかになければ仕方がないだろうし、まさにその状況だからこそ、そこから先へ踏み込んだ解釈が必要だった筈である。ただ、台詞をよく聞いていると、チャールトン・ヘストン扮するソーン刑事は「次は食用人間だ」とも言っているので、人間の家畜化という次の段階への布石がまったくおこなわれていないわけではない。ならばストーリーとしてそこまで進めておくべきであったが、おそらくは70年代初頭のメジャー作品としては、モラルの制約が大きかったのだろう。フライシャーの演出は小気味がよいし、演技陣もいい味を出していたので、ちょっと残念。原作はハリイ・ハリスンの「人間がいっぱい」だが、小説の方はただもう人口過剰の未来都市を舞台に地道でハードボイルドな世界をやっているだけ。映画はメッセージを前に倒したせいで、原作のカラフルな世界を色あせたものにしてしまっている。

あと、思い出したので、この映画にまつわる失望について。劇場公開当時のポスターというのがなかなかに凄まじかった。むやみと巨大な暴徒鎮圧用ショベルカーが無量の人間をすくい上げるという構図が地上にもハイウェイの高架の上にもパノラマ的にばら撒かれていて、シャベルから振り落とされた人間がまっさかさまに転落していたりして、それはもう阿鼻叫喚という感じだったのである。そういう絵を見て中学に入学したばかりの12歳の男の子がどういう期待をしたかを想像してみていただきたい。きっとすごいに違いないと考えて、勇んで見物にいったのである。このこどもにとって肝心だったのは映画の中身でも出来でもなくて、あのすごいショベルカーがいつ出てくるか、なのであったが、これがとうとう出てこなかったのである。たしかに暴徒鎮圧用シャベルは登場したけれど、それはニューヨーク市の清掃局が普通に使っているゴミ収集用のショベル付きトラックで、一回だけ登場してちょっと人間をすくい上げただけなのであった。この時に味わった失望はちょっとしたものであったと記憶している。