ファニーゲーム
- Aloysius' Rating: 5/10
Funny Games (Austria 1997, 108min.) [D] Michael Haneke, [W] Michael Haneke, [C] Susanne Lothar,Ulrich Muhe,Arno Frisch,Frank Giering,Stefan Clapczynski

聞いたところによると、監督は「暴力が不快であること」を訴えたかったのだそうだ。夏休みで別荘にやってきた一家のところへ白手袋をした二人組が現れて、丁寧な言葉で因縁をつける。しつこいので追い払おうとすると突発的に暴力がふるわれ、一家は一室に監禁されて皆殺しを予告される。言葉や肉体の暴力で弱い者をじわじわといじめるという点では、確かに不快な内容であった。そしてその範囲では意図は達成されているように見えるのだが、実際のところ、監督の意図がそんなところにあったのか、いささか疑問に感じるのである。まず被害者の一家が感情移入を阻むようにデザインされている。夫も妻も好ましい風貌はしていない。冒頭、登場するとオースチン・ローバーでヨットを引っ張っていて、夫婦はクラシックのCDで頭だしクイズをやっている。。飼い犬はジャーマン・シェパードで、しかもどうやらしつけが悪い。これはプチブル的なスノビズムのパロディなのではないだろうか。そこへ登場する二人組は痩せとデブで、痩せは突っ込み、デブはボケの機能を備えている。白手袋をしているのは指紋を残さないようにするためではなく、こいつらが漫才師だからなのではあるまいか。実際、いじめている最中に痩せの方が観客席へ向かって訊くのである、「もう十分かな?」。主婦による反撃は似たような脱構築でキャンセルされてしまう。二人組の笑い声は、観客席への媚びが感じられる。たいそうなテーマとは無関係に、単なる(そして悪趣味きわまる)プチブルいじめの映画だったのではあるまいか。監督は(そしてウィーンの観客も)この映画を笑って見ていたのではないだろうか。そんな気がしてならないのである。