英雄の条件
- Aloysius' Rating: 4/10
2000年 カナダ・アメリカ・イギリス 128分
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:トミー・リー・ジョーンズ、サミュエル・L・ジャクスン、ガイ・ピアース、ベン・キングズレー


イエメンの合衆国大使館がデモ隊に包囲され、大使とその一家の救助に派遣された海兵隊が暴徒に対して発砲、83名の死者を出す。海兵隊の指揮官は暴徒が火器で武装していたと主張するが、その証拠はどこにもない。指揮官は越権行為と治安撹乱、殺人の罪で起訴され、軍法会議での弁護をベトナム戦争時代の戦友に依頼する。大使館の監視カメラは武装した群集が発砲している場面を記録していたが、大統領安全保障補佐官は国際的な責任を海兵隊の指揮官一人に負わせるために、この証拠を隠滅し、救出された大使にも軍法会議での偽証を要求する。検事は提出された事実に基づいて有罪を主張し、弁護士は証拠を得られないまま被告の軍人としてのキャリアと指揮官としての状況判断能力を強調する。陪審団は殺人について無罪を認め、大統領補佐官は告発を受け、偽証をした大使は職を追われる。
いい役者をそろえているが、話の作りが単調で、法廷場面にも工夫がない。サミュエル・L・ジャクソンはああいう役者だから仕方がないとしても、トミー・リー・ジョーンズはあのような単細胞なキャラクターには向いていていない。
あと、見ていて気になったのが、イエメンでこのような事件が実際にあったのかどうか、なのである。事実から言えばイエメンは危険な状態にあるようだし、アメリカの駆逐艦コールがテロリストの襲撃を受けてもいる。だが、大使館の前に集まった群衆が、男も女もこどもまでもが銃を持って、海兵隊に向かって発砲するような事件が実際にあったのだろうか? 市民の死者83名、海兵隊側でも死者3名というような大事件ならば、こちらの記憶に残っていてもよさそうなものではないだろうか? イエメン・タイムズのバックナンバーから公開当時の記事を調べてみたら(ありがたい時代だ)、「なんでイエメンなのか?」と書いてあった。アメリカ側の記事をあわせて読むと、第三世界ならどこでもよかったようなのである。どうやらアメリカのあのなくてもいいような被害妄想が反イスラム主義の方向へまた大きく尻尾を振ってしまったようだ。仮に作品の主題が政治的判断による現場の切り捨てと、それに対する批判にあったのだとしたら、人種差別や宗教差別を露骨に助長するような描写(たとえば5歳くらいの女の子が拳銃を乱射している)はまったく不要だった筈である。予想はしていたが、甚だしく不愉快な映画なのであった。

IMDb IMDb で  を検索します。
* Search provided by The Internet Movie Database.