スターリングラード
- Aloysius' Rating:  7/10
1993年 ドイツ/アメリカ/イギリス/アイルランド 131分
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ボブ・ホスキンス、エド・ハリス、ロン・パールマン


教育を受けていない羊飼いの青年が才能を若い政治委員に見出され、戦意高揚のために英雄に担ぎ上げられて狙撃手となり、ドイツ兵を倒していく。それを倒すためにドイツ軍はベテラン狙撃手を送り込み、ロシア側では狙撃手と女性兵士の間に恋が目覚め、政治委員もこの女性兵士に恋をするので三角関係が成立する。というわけでそのあたりのすったもんだが少々だるいが、その点を除けば実に趣味のいい映画である。まず冒頭の列車輸送のシーンが素晴らしくリアルだし、ボルガ河河畔に到着して強引な渡河をする場面は大迫力である。この後には到着したばかりの新兵の集団にろくな武器も与えずにドイツ軍陣地に向かって突撃を敢行させる場面が続き、これもまたいかにもそれらしく仕上げられていて説得力がある。CGで作り上げられた廃虚のスターリングラードも見応えがあるし、ドイツ軍の車両も丁寧に復元されている。さすがはジャン・ジャック・アノーというべきなのか、93年のドイツ映画「スターリングラード」 とはかなり格の違う映画なのである。 キャスティングの趣味も抜群で、眼鏡をかけたジョゼフ・ファインズはたしかに政治委員に見えるし、ボブ・ホスキンスは出てきただけでフルシチョフだとわかってしまう(しかもボルガ河河川海軍でやってくるのだ)。ジュード・ローもちゃんと教育のない兵士に見えるし、対するエド・ハリスのドイツ軍少佐は出色の出来栄えなのであった。これでもう少し話がストイックで戦闘に固着する形で展開してくれていたら文句はまったくなかったのだが、「愛と死」を持ち込んだことで60年代ソ連映画みたいなことになってしまっているのが少々残念でならない。つまりストーリーのみに関して言えば、なんで今更、という印象が否めないのである。エンディング・クレジットのデザインまで含めて考えると、もしかしたら30年代ソ連プロパガンダのおそろしく迂遠なパロディなのかという気もするのだが、まさかそんなことはないだろう。

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