フィクサー
- Aloysius' Rating: 7/10
The Fixer (USA 1968) Directed by John Frankenheimer Written by Dalton Trumbo (novel:Bernard Malamud) Cast: Alan Bates, Dirk Bogarde, Georgia Brown, Hugh Griffith, Ian Holm, David Warner, Elizabeth Hartman, David Opatoshu

帝政末期のロシア。ペテルスブルクにはすでにラスプーチンがいるらしい。キエフでひとりのユダヤ人が逮捕され、殺人の嫌疑で未決囚として投獄される。殺人事件には最初から政治的な解釈が加えられていて、国家の目的は容疑者の検挙にではなくユダヤ人排斥運動の前進にある。逮捕されるユダヤ人がラン・ベイツ、妙に親切な(しかし怪しい)検察官がダーク・ボガート、もうひとりの、そして悪意に満ちた検察官がイアン・ホルム、法務大臣がデビッド・ワーナーという素晴らしいキャスティングである。しかも全員が実に見事にはまっていた。特に純白の衣装に身を包み、さらにヌビア人の召使いを抱えていた法務大臣デビッド・ワーナーはなんだかすごかった。「フィクサー」というタイトルは修理人を意味しており、それはそのまま獄中にいる囚人アラン・ベイツの職業でもある。スピノザ的な理想を掲げて世界を修理するという主題が見え隠れするが、マラマッドの原作がそうなのか、ドルトン・トランボの脚本だからそうなったのか、その成果は現代的かつ一般的なヒューマニズムの賛歌となって結実する。実によくできた映画だが、ただアラン・ベイツがユダヤ人である必要性は必ずしもなかったようなのである。囚人が獄中で瞑想に入り、その最終段階で昇天してしまうようなカバラ的飛躍をなんとなく期待してしまったこちらとしては、結末は少々味気ない。ちなみに同じフランケンハイマーの獄中物として考えるなら、 「終身犯」に軍配があがる。